2008年2月8日(金)掲載

◎企画 映画と私の物語【居酒屋兆治編】(2)中島廉売の中村さん夫婦 共演…ドキドキ、平然と
 「奥さん、生きのいいの入ったよ!」

 「さあ、今夜のおかずはこれに決まり!」

威勢の良い声が飛び交う函館市中島町の「中島廉売(れんばい)」。鮮魚店が並ぶ魚屋通りを抜けた路地に面する漬物製造販売店「中村商店」(中村登社長)の初代経営者、中村登年さん(70)と妻信子さん(68)は1983年の映画「居酒屋兆治」の冒頭、居酒屋を営む藤野英治(高倉健)と妻茂子(加藤登紀子)が市場で買い出しするシーンに“出演”した。漬物を買い求める英治に商品を渡すのが当時43歳だった信子さん、隣りで仕事をしているのが45歳の中村さんだ。。

「あの高倉健さんが目の前にいるんだもの。緊張してガチガチになっちゃった」と振り返る信子さんに、中村さんは「俺は平気だったよ。休憩中、『ここは人が多いなあ』と言う健さんに、『いつもだよ』なんて声も掛けたなあ」と応える。

当時の中島廉売は、ハワイ旅行やカラーテレビが当たる「中島れんばい夏まつり」などの催しも盛んで、連日にぎわっていた。撮影は特に忙しい昼時に行われ、周囲を通行止めにしたが、野次馬や客で「黒山の人だかり」だったという。

徳島県の漬物屋の次男として生まれた中村さんは、23歳のころ親族を頼って来道。市内で働く中、朝市の佃煮屋の娘だった信子さんと知り合った。2人は手作りの漬物販売をゼロから始め、車で商品を売り歩く地方売りを約1年間続け、中島廉売に店を構えた。「本州と北海道では好みが違う。お客さんの反応を見ながら味付けを変えたり工夫したよ」

営業はことしで46年目を迎えた。数年前、長男登さん(46)に店を任せ、今の楽しみは家庭菜園。信子さんは今でも時間があると店先に立つ。

魚屋通りにある「紺地鮮魚」(紺地慶一社長)の専務、紺地敬子さん(71)も冒頭の市場風景に登場した。魚を並べる仕事ぶりが映り、「一瞬だったけど夫と行った劇場で見たとき、すぐに気づいてうれしかった」と表情を和らげる。

中島廉売内の鮮魚店の娘で、学生のころから店を手伝い、22歳で紺地鮮魚に嫁いだ。立ちっぱなしの毎日を「ゆるくないけど客商売が好きだから」と笑う。撮影から25年経った今も、中島廉売の雰囲気は変わない。

漬物屋を始めた当初、貧しさに身を寄せ合って暮らしたこともあったという中村さん。「故郷に帰ろうと思ったことは?」と尋ねると、「そんなことを考える余裕もなかったな。若い時に苦労した経験は一生の宝物だね」とさらり。

高倉健さん演じる英治は造船所を辞めた後、第二の人生に自営業の道を選び、妻と2人で小さな居酒屋を構えた。客商売に明け暮れた中村さん夫婦の人生が、映画の中の夫婦と重なって見えた。 (新目七恵)


◎バレンタイン商戦本格化
 14日のバレンタインデーに向け、函館市内・近郊のスーパーや百貨店の売り場にはチョコレート菓子が並び、商戦が本格化している。本命用の高級品、義理用のパロディー商品など多彩なチョコに加え、個性的な小物類までずらり。売り上げのピークを迎える9―11日の連休には、どれを購入しようか、頭を悩ませる女性の姿があちらこちらで見られそうだ。

 ダイエー上磯店(北斗市七重浜4)は特設売り場を設け、チョコだけで800種以上の商品を展開し、手作りチョコの材料も充実させた。本命用にはホテルオークラなど有名ホテル監修の商品が人気。アニメキャラクターや栄養ドリンクなどのパッケージを模した商品も豊富だ。「500―1000円の商品が売れ筋。チョコが苦手な男性向けに焼酎やワインも用意した」という。

 丸井今井函館店(函館市本町32)は地下1階の和洋菓子コーナーで既存テナントの商品に加え、期間限定で国内外の菓子ブランドをそろえた。6日からはフランスの有名ショコラティエ(チョコレート職人)ジャン=ポール・エヴァンの商品が登場。1500―2000円が主流という。1階にはバレンタインギフトのPRコーナーを設け、ワインホルダーやボールペンなど年配層向けの小物を提案している。

 テーオーデパート(同梁川町10)は1階を中心に特設会場を設置。チョコに関してはベルギー製など高級輸入品からリーズナブルな国内産まで幅広くそろえている。財布やキーケースなどの小物類が人気で、爬虫(はちゅう)類柄がトレンド。昨年オープンした「ザ・ボディショップ」が取り扱うオードトワレなども人気が高い。

 イトーヨーカドー函館店(同美原1)は地下1階に特設売り場を設置。食品売り場と同じフロアで、バレンタイン前日と当日の2日間に売り上げが集中するという。「他の買い物で訪れたお客さんが、あわてて買っていくケースが多いのでは」と分析している。 (宮木佳奈美、小川俊之)


◎函館版環境サミット開催検討
 地球温暖化をはじめとした「環境問題」を主要な議題とする「北海道洞爺湖サミット」が7月7―9日、胆振管内洞爺湖町で開催されるのに合わせ、函館市でも「函館版環境サミット」の開催を検討していることが7日分かった。このサミットを通じて、市民1人ひとりがごみの減量化、地球環境問題に積極的に取り組む契機にしたい考えだ。(鈴木 潤)

 7日に開かれた市簡易包装等推進懇話会のあいさつで、市の阿部喜久雄環境部長が明らかにした。

 函館版環境サミットは、西尾正範市長が開催に意欲を示しており、環境部が中心となって現在、庁内で検討を進めている。環境に配慮した取り組みを行っている市内の事業所を招いた事例発表、意見交換の場などを想定している。洞爺湖サミットの開催日と近い日程を考えているという。

 市は1998年から、ごみの減量化やリサイクルに取り組む小売店などを認定し、市民に周知する「市ごみ減量・再資源化優良店認定制度」を行っており、現在コンビニエンスストアやデパートなど128店が認定を受けている。99年には環境基本条例を制定し、翌2000年には環境基本計画を策定。この計画ではさらに地球温暖化防止計画を策定することになっており、今後、国の対策や施策の動向を見極めながら検討していく方針だ。

 北海道洞爺湖サミットの成功に向け、国、道、市町村、民間企業、関係団体などが連携した地球環境問題への取り組みが広がりを見せている中だけに、阿部部長は「(地域版のサミット)開催に向けて、これから具体的な内容を決めていきたい」と話している。


◎函館地域産業活性化協議会設立へ
 函館、北斗両市と七飯町などは14日、昨年6月に施行された企業立地促進法に基づく「地域産業活性化計画」の認定を目指し、「函館地域産業活性化協議会」を設立する。協議会設立は道内7地域目。認定後には企業誘致や人材育成などにかかわる事業費補助など、国からの支援措置を受けることができる。協議会設立が即座に企業誘致に結びつくものではないが、地域間競争が激化する中、函館圏域が連携して取り組む環境を整える。

 同法は、地域の産業の集積や活性化に向けた取り組みを国が支援するために定められた。自治体や地域の経済界、学術研究機関が参画する協議会で、企業立地の方向性を盛り込んだ基本計画を策定。国から認定を受けた計画地域には、新規に企業が進出しやすい環境を整えるさまざまな支援措置が受けられる。

 例えば、集積したい業種に合わせた人材育成事業の実施費用、進出企業側には税制の優遇措置や新規採用社員の研修費補助などの利点がある。道内ではすでに、北見地域と苫小牧・厚真・安平地域の2計画が認定を受けているほか、釧路・白糠地域や旭川地域など4カ所が協議会を設立している。

 函館地域は2市1町のほか、渡島支庁、函館商工会議所、北斗市商工会、七飯町商工会、函館地域産業振興財団、北大大学院水産科学研究院、公立はこだて未来大、函館工業高等専門学校の11機関が参画。各機関の実務者レベルで、各市町それぞれの特性を生かした産業集積の方向性など、計画内容を協議する。 (今井正一)


◎善光寺で霊牛記念法要、函館市へ20万円寄付も
 函館市栄町3の天台真盛宗善光寺(三山興鋭住職)の「霊牛入山111年記念法要」が6日、同寺で行われた。檀家や地域住民ら約150人が参列。本山の長野県善光寺の小松玄澄(げんちょう)貫主ら全国の僧侶20人が出仕し、仏法興隆や国家安穏、函館経済の活性化などを祈願した。小松貫主と三山住職らは7日、函館市役所などを訪れ、西尾正範市長に市観光振興資金として20万円を贈った。(高柳 謙)

 「牛に引かれて善光寺参り」の言葉通り、函館善光寺にも牛にまつわる縁起がある。三山住職によると、善光寺の別院として1894(明治27)年に開山し、5年後の99年に寺へ牛が逃げ込み、境内で霊牛として18年間飼った。4代目の三山住職は「牛は観音さまの化身と信じられ、寺の山号も牽牛山(けんぎゅうざん)。今年は牛が逃げ込んで数えで111年目に当たり、記念法要となった」と語る。

 法要は6日夜に行われ、檀家らがご詠歌を奉納。僧侶10人による雅楽に包まれ、小松貫主や三山住職が本堂に入った。函館善光寺の縁起を唱えながら参拝者の無事などを祈願するとともに、善男善女が焼香をした。

 函館市への寄付で三山住職は「これを契機に函館と長野の友好関係を築きたい」と述べた。函館新聞社も訪れ、小笠原金哉社長と対談。小松貫主は「記念法要で函館の経済や産業を活性化させることも祈った。一方で、物が豊かになるとどうしても心の豊かさが薄れてくる」とし、伝教大師・最澄の言葉を紹介しながら「実行しがたいことだが、自己の利益だけでなく、他人のお役に立つ心も大切」と述べた。