2008年3月11日(火)掲載

◎23日映画「ひめゆり」上映、大城実行委員長インタビュー
 第二次世界大戦末期の沖縄戦で犠牲となった「ひめゆり学徒隊」の生存者の証言を集めたドキュメンタリー映画「ひめゆり」が23日、函館市亀田福祉センター(美原1)で上映される。函館での自主上映は医師や元教師、市民ら約30人で結成した実行委が準備を進めており、16―22日には市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で、ひめゆり平和記念資料館(沖縄)所蔵の資料パネル約30枚を並べたパネル展を開催する。沖縄出身の大城忠委員長(57)=道南勤医協江差診療所所長=に映画への思いなどを聞いた。(新目七恵)

 ――なぜ函館で自主上映を企画したのですか。

 きっかけは昨年、沖縄戦の日本軍強制自決削除に関する教科書検定の撤回を求めた11万人が、沖縄で開いた県民大会。米軍基地問題や米兵の少女暴行事件など、沖縄に関して黙っていられない出来事がある時にこの作品を知り、平和に関心のある「函館・映画大好き九条の会」を中心とした人が集まった。沖縄県嘉手納育ちの自分も心が揺らぎ、「何かしなくては」との思いから参加した。

 ――映画の感想は。

 あらためて目の前での人の死、恐怖、死体の腐臭、痛みを感じた。しかし、沖縄で子供のころから戦争の話や映像を見て育った自分も同じように、どんな悲惨な経験も、強烈な記憶も風化する。いかに風化させないか、どう新しい形で教訓を引き継げるかを考えなければならない。生存者は少女時に戦争に巻き込まれており、大人の責任も感じた。

 ――生存者22人の証言は生々しく、貴重ですね。

 出演者の女性たちからは悲愴(ひそう)感だけでなく、明るさや輝きも感じる不思議な映画。今も当時を語れない生存者もいる一方、彼女たちはつらい過去を悩み抜き、乗り切った強さを持っている。自分の戦争生存者へのイメージも変わった。

 ――来場者へ一言。

 作品は反戦映画であると同時に、今を生きる自分たちにとって何が大切かを語る映画。戦争の実態を知ってほしいのはもちろん、沖縄の女性の明るさ、ひたむきさ、強さを見て元気になってほしい。恋人や友人、家族と一緒に来て、鑑賞後、隣にいる人を大切にしようと思ってもらえるとうれしい。


  「ひめゆり」 2006年、2時間10分。柴田昌平監督。映画雑誌「キネマ旬報」で2007年度文化映画ベストテンの第1位にも選ばれた。上映会は午前10時、午後1時の2回で、一般前売り1000円(当日1200円)、中学・高校生500円(当日も)。チケットは松柏堂プレイガイド、市地域交流まちづくりセンターなどで取り扱っている。問い合わせは映画大好き九条の会TEL0138・65・0985。


◎企画【医療連携 いま】(上)病院の枠超え「地域全体で」
 「一つの病院だけで患者を診る時代は終わった。地域全体で患者を診る地域完結型の医療を構築していかなければ」

 1月19日に開かれた道南地域医療連携協議会の設立総会で、理事長に就任した高橋病院(函館市元町32)の長谷川正病院長は、こう決意を述べた。

 道南の医療機関が患者の診療情報をインターネットを通じて共有する同協議会の「地域医療連携ネットワークシステム」が、4月1日から本格稼動する。同協議会には渡島、桧山管内の40の医療機関が参加を表明。市立函館病院(市内港町1)に事務局を置き、システムの管理、運営を行っていく。

 システムの愛称は、医療の英訳「メディカル」と函館の特産「イカ」を合わせた「メディカ」。各医療機関が診療情報を開示し、IT関連企業に設けた電子センターを通して互いに情報を取得、提供する双方向利用型のシステムで、全国的にも例が少ない。同協議会では検査や投薬、レントゲンなどの画像、病歴の要約などの診療情報を患者の同意を得て開示。各医療機関に認証された端末を接続し、不正利用や個人情報の漏えいといった危機管理にも細心の注意を払う。

 このシステム連携は、医療現場が抱える課題解決の手段として期待されている。課題のひとつに、病院が変わるたびに一から検査、治療を行う、いわゆる“ぶつ切り医療”の問題がある。患者の医療費負担も増え、医師に対する不信感にもつながっている。しかし、各医療機関が連携し、情報を共有することで、不要な検査や薬の重複投与を防止することができる。同協議会の下山則彦副理事長(市立函館病院副院長)は「発症から回復するまで一貫した治療が可能となり、患者の負担の軽減にもつながるはず」と力を込める。

 全国的な問題となっている救急医療崩壊の危機は道南でも起きている。医師不足や患者増で市立函館病院の救命救急センターや、2次救急医療機関がパンク寸前といわれている。打開策として、急性期、慢性期、回復期といった医療の機能分化、病院の規模に応じた役割分担の体制が求められている。一病院完結型の医療から、地域完結型の医療への転換期を迎えようとしている。

 システムの活用はこうした状況を見据えた取り組みだが、安定した医療サービスの提供を通じて、患者の満足に結び付けることが真の狙いでもあり、同協議会としての大きな使命だ。情報共有、連携のメリットを最大限に生かせる体制づくりの模索は、始まったばかりだ。

 道南でも地域医療連携の動きが出始めている。その先駆的な取り組みとなる道南地域医療連携協議会のシステム「メディカ」が、注目を集めている。メディカは、崩壊の危機も取りざたされる地域医療の在り方に、どんな道筋を示そうとしているのか。今後の展望、課題を探る。(鈴木 潤)



◎井上前市長が西尾市長提訴へ/名誉棄損、賠償求める
 前函館市長の井上博司氏(71)が名誉棄損で現市長の西尾正範氏(59)を提訴することが10日、分かった。複数の関係者によると、自身の名誉回復と損害賠償1000万円などを求め、11日に函館地裁に提訴する。井上氏は代理人の弁護士とともに同日、市内で記者会見する予定。

 関係者によると、西尾氏が助役時代と助役退任後に開いた記者会見や、昨年4月の市長選時の演説などで、井上氏の名誉を傷つけたとされる。

 西尾氏は2006年12月、地元情報誌の主宰者と井上市長の関係などを批判し、助役を辞任。辞職後の記者会見で、06年7月20日、認められない有料老人ホーム建設について井上氏が再検討を指示した、と告発した。市長選では対立候補の井上氏を時代劇になぞらえ「悪代官」と称した。

 有料老人ホーム問題は改選前の市議会議会運営委員会の調査で「再検討の指示はなかった」との結論を得ている。ただ、西尾氏当選後に設置された有料老人ホーム問題調査特別委員会では、再検討の指示があったかどうか明確な結論は出ず、審議を終了している。

 選挙戦での「悪代官」発言は、西尾氏も昨年7月の市議会代表・一般質問で認めている。ただ「その後に井上さんは悪い人ではないと述べた」と釈明している。

 西尾氏は昨年4月の市長選挙で約8万9000票を獲得。3選を目指した井上氏に約3万5000票の大差を付けて初当選した。(高柳 謙)


◎高3集団暴行死 16歳少年に懲役5―8年を求刑
 函館市内の公園で昨年8月、私立高3年の佐藤智也君(当時18)が中学時代の同級生ら7人に集団暴行を受けて死亡した事件で、起訴された少年4人のうち、事件当日まで被害者と面識がなく、致命傷を与えた可能性が高いとされる元高校生の少年(16)の論告求刑公判が10日、函館地裁(柴山智裁判長)であった。検察側は「犯行はリンチとしか言いようがなく、執拗(しつよう)で残酷」として、懲役5年以上8年以下の不定期刑を求刑し、結審した。判決は27日。

 検察側の論告に先立ち、傷害致死罪などで起訴された少年4人に対し、佐藤君の母親が意見陳述を行った。

 母親は「なぜ何も悪くない智也が、こんな死に方をしなければならないのでしょう。智也がされたことを思えば、わたしは一生、(被告らを)許すことなどできません。殺したいほど加害者を憎んでいます」などと訴えた。

 論告で検察側は、富岡中央公園で別の少年が暴行していた際、「『早くやれ』と言ったり、逃げられないように被害者を取り囲んだりした時点で共謀が成立した」と指摘。その上で「自己の力を誇示しようとした短絡的で自己中心的な動機に酌量の余地は全くない」とした。

 一方、弁護側は「死に至らしめるほどの暴行ではなかった」とし、刑罰を科すのではなく、保護処分が相当とした。


◎集団暴行死、遺族の母親「一生かけて償いを」
 「たった一人、暗い公園に置き去りにされ、どんな思いで意識をなくしていったのか。どんなに痛く、苦しくて、悔しかったか。智也の思いを考えるとかわいそうで、私は頭がおかしくなりそうです」。亡くなった佐藤智也君の母親は、起訴された少年4人を前に、一連の公判廷で初めて胸中を明かし、裁判官に厳罰を求めた。

 母親は智也君について「優しくて思いやりがあり、転んでも痛いと言わない我慢強い子だった。小中学校は1日しか休まず、高校では皆勤を目指し、“あの日”まで無遅刻、無欠席で頑張っていた」と証言。「こんなに早く亡くなってしまうのなら、智也のやりたいことをもっとかなえてあげたかった」と早すぎる死を悔やんだ。

 事件発生から半年以上が経過しても遺族の心の傷は癒えない。母親は「月日がたっても現実を受け入られません。でも写真を見れば、智也は死んだんだ、話すこともできないんだと思い、どうしようもなく悲しくなって涙があふれます」とハンカチを手に声を震わせた。

 被告の4少年に対しては「わたしは一生許すことなどできません。殺したいほど憎んでいます」とした上で、「あなたたちはいつか社会復帰するが、智也にはその将来がない。自分が犯した罪を絶対忘れずに一生かけて償い、そして人間の心を取り戻してほしい」と説諭した。

 最後に裁判官に向かって「少年たちの犯した罪は、計り知れないほど大きい。智也の可能性に満ちた未来を無惨にも奪った少年らに殺人罪に値する厳しい刑を科してほしい」と求めた。少年4人は法廷で終始うつむいたまま、母親の悲痛な叫びにじっと耳を傾けていた。


◎「ホテルネッツ函館」来月25日オープン
 函館市本町26の市電通り沿いに4月25日、ビジネスホテル「ホテルネッツ函館」(加賀基子支配人)がオープンする。市街中心部という立地の良さと広い空間づくりを生かし、ビジネス客だけでなく、グループや家族連れまで、幅広い客層の取り込みを目指す。

 昨年12月に発足したホテル運営会社「ネッツマネジメント」(札幌)が建築主から業務を受託。大手のサンルートホテルチェーン(東京)と提携し、サービスの充実を図る。

 敷地面積1845平方メートルに立つ建物は地上14階、地下1階で、延べ床面積は9254平方メートル。1階にはコンビニエンスストアとエステサロン、2階にはすし店、美容室、直営レストランが入居。客室は3―14階部分で、シングル、ツインが各54室、ダブルが88室、デラックスツインが6室の全202室を有する。

 客室は、広めのベッドやバスを用いているのが特徴で、全室に高速インターネット回線を完備。料金はシングルが8400円―、ダブルが1万500円―、ツインが1万3650円―で、開業から5月末まで(5月2―5日を除く)は3割ほど安いオープン記念価格で利用できる。同ホテルは「利用客と笑顔のキャッチボールができるよう、心のこもったサービス提供に努めていきたい」と話している。

 予約に関する問い合わせは、同ホテルTEL0138・30・2111。ホームページアドレスはhttp://www.hotelnets.co.jp(浜田孝輔)