2008年3月12日(水)掲載

◎井上前市長が名誉棄損で西尾市長提訴
 昨年4月の函館市長選に絡んだ言動をめぐり、著しく名誉を傷つけられて精神的苦痛を負ったとして、函館市の井上博司前市長(71)は11日、現市長の西尾正範氏(59)個人を相手取り、1100万円の損害賠償と新聞への謝罪広告を求める訴訟を函館地裁に起こした。井上氏は同日、提訴後に代理人の弁護士とともに同市内のホテルで記者会見し、「身の潔白を証明し、汚名を返上したい」と述べた。(森健太郎)

 訴状などによると、西尾氏が助役時代の2006年12月19日と辞任後の07年1月29日、市役所内の市政記者クラブで記者会見した際、(1)許可されなかった市街化調整区域への有料老人ホーム建設計画をめぐり、井上氏が建設するよう福祉部に再検討を指示した(2)井上氏が地元情報誌と癒着し、その主宰者とともに市政をゆがめている。また、西尾氏が市長選前の同4月11日の集会で、(3)井上氏を時代劇になぞらえ、何の具体例も挙げず「悪代官」と称して批判した―ことが名誉棄損に当たると主張している。

 選挙から1年近くたつこの時期に提訴に踏み切った理由について、井上氏は「これまで議会や調査特別委などの推移を見てきたが、(再検討の指示について)結論があいまいで白黒が付かなかったため」と説明した。

 市長選については「西尾氏はもともと市長の座を狙っていた。しかし市長と助役なので施策に大きな差がないため、対立候補を引きずり下ろそうと福祉施設問題を取り上げ、自身がクリーンで井上がクロの印象を与えた」と要約した。

 代理人の弁護士は「選挙の怨念(おんねん)を晴らすためではない」と強調。その上で「選挙で架空の事実をでっち上げ、対立候補をおとしめる発言がどこまで許されるのか。民主主義の基本にある言論の自由が、どこまで認められるかが試されている」と訴えた。

 弁護士によると、これまで選挙戦での言論の違法性を主張し、訴訟に発展した事例はないという。


◎あす青函連絡船廃止20年
 7日に就航100周年を迎えた青函連絡船。80年の歴史の中、72万回の航海で約1憶6000万の人と約2億5000万トンの貨物を運んだ。函館市では現在、青函連絡船記念館摩周丸(若松町)が勇姿を残すものの、函館に繁栄をもたらした功績、支えた人たちの心を語りつぐ存在は、元船員の高齢化などで少なくなってきた。13日には最後の汽笛が鳴った終航から20年を迎える。節目を契機に、市民の連絡船への関心が高まりつつある。(山崎純一)

 同館で31日まで開かれている就航100周年記念写真展を訪れた同市東山の主婦赤井きよさん(68)は、船から大きな荷物を担いで出てくる女性の写真を見つめ「かつぎ屋さんが運んでくれた闇ゴメはおいしかった」と声を詰まらせた。

 終戦後、青森から闇ゴメを運び、朝市で販売した「かつぎ屋さん」といわれる存在は、当時の函館の食糧難を救った。赤井さんは「娘は闇ゴメを買った祖母や当時の苦労を分かるが、孫に理解させるのは苦労する。この写真を見せたい」と話す。

 毎年7月の海の日、同館では連絡船OBらが出港の模擬操船を披露し、天候の確認など細かい動きを再現する。石狩丸の甲板長だった同市大縄町の小川重弘さん(74)は「先人の航海の安全に対する思いを引き継ぐことが誇り。形にないものを伝統にして伝えたい」と意気込む。今月7日の記念行事で行われた模擬操船を見学していた同市本通の大川信哉さん(76)は「同じ年代が頑張っているのはうれしい。写真でもあまり見ることがない光景で貴重な体験だった。開催を増やせないものか」と話す。

 連絡船最後の日、摩周丸の船長を務めた同市深堀町の山内弘さん(73)は「88年3月13日で摩周丸、連絡船の歴史が終わったわけではなく、産業遺産として形を残していく。函館の人の心に長く存続してもらためにも、市民に摩周丸を訪れてほしい」と願う。


◎野又学園、2専門学校2009年度から募集停止
 函館大学などを運営する野又学園(野又肇理事長、函館市高丘町)は、2009年度から設置校の再編に着手する。少子化などの影響で函館短大(同)を除く全校が定員割れの状況にあり、学校運営を立て直すのが狙い。同年度から函館ビジネスアカデミー専門学校(市内田家町)と日本ビジネス綜合専門学校(札幌)の2校の募集を停止し、函館医療保育専門学校(市内柏木町)の保育科を「幼児教育保育学科」として函館短大に設置する。11日に野又理事長らが記者会見して明らかにした。

 野又学園は現在、大学や短大、専門学校など9校のほか、自動車教習所も運営する。

 再編は昨年度の決算が赤字となるなど、生徒、学生の減少で、このままでは経営が難しいと判断したため。野又理事長は「体力のあるうちに再編して経営資源を集中させ、短大と大学を中心にした高等教育に力を入れる」とした。

 函館ビジネス―は、情報通信科や情報処理科など4学科で定員220人だが、現在の学生数は138人(昨年5月1日現在)。日本ビジネス―は、医療事務学科や医薬学科など定員200人に対し、学生は75人(同)。両専門学校ともに募集に苦慮していた。

 函館医療保育専門学校は保育科と看護科、歯科衛生士科の3科があり、保育科の募集を09年度から行わず、幼児教育保育学科として同短大に新設する。同科ではこれまで通り保育士と幼稚園教諭の資格が取得できるほか、食を通じた子育てや健康などについて学べるような内容を目指す。2年制で1学年の定員は100人とする予定。

 10日に同科の計画書を厚生労働省に提出しており、4月下旬には文部科学省に新学科の設置を申請する。これに伴い、同短大の校舎を約8億円かけて増築する計画で、5月の着工を予定している。(小泉まや)


◎デンコードーが八雲に出店へ
 家電販売店チェーンのデンコードー(宮城県名取市)が、八雲町東雲町に新店舗の出店を計画していることが11日までに分かった。同社は函館市美原3への出店をすでに表明しており、家電業界の競争が激しさを増す中、道南での販売力を強化する方針だ。

 八雲町の建設予定地は、ホームセンター大手のホーマック(札幌)が八雲店を構える所有地の一角で、駐車台数が現在の443台から307台に縮小される。新店の店舗面積は約2000平方メートルを見込んでおり、9月下旬の開業を目指している。

 また、函館市では函館バス(寺坂伊佐夫社長)が旧昭和ターミナルに建設計画を進めている商業施設「函館バス美原ビル」に出店を予定。店舗面積は5655平方メートルで、早ければ10月にオープンする。

 なお、同市石川町320の既存店「マックスデンコードー函館店」は、3日から改装のため閉店しており、20日に「ケーズデンキ函館パワフル館」としてリニューアルオープンする。

 デンコードーは、同市内での店舗再編について「そのまま残すか、業態を転換するかなどいろいろな選択肢はあるが、現段階では正式に決まっていない」と話している。(浜田孝輔)


◎桧山荘 31日で営業終了 新年度にも売却へ
 【江差】桧山支庁の宿泊施設「桧山荘」(江差町陣屋町308)が31日で営業を終了することになった。道は新年度の早い時期にも施設を売却処分する方針だ。

 同支庁に隣接する桧山荘は、道職員の福利厚生を目的にした宿泊施設だが、一般の宿泊者も低料金で利用できる。主に道職員の出張や職員の親ぼく交流行事などに活用された。

 同様の施設は石狩支庁(札幌)を除く全道13支庁所在地に設置されていたが、民間施設の充実などで全道的に利用率が低下し、道は財政再建の一環として02年度、全道の13施設を全廃する方針を決定した。函館市にあった「渡島荘」は既に廃止されている。

 桧山荘については、これまで土地測量など売却に向けた準備を進めてきた。同支庁総務課は「内部事務の整理が終了次第、速やかに売却する」としており、新年度の早い時期にも売却手続きが始まる見通しという。建物は2000年11月の完成。コンクリートブロック造2階建てで、延べ床面積は773平方メートル。宿泊室は和室8室、洋室7室。宿泊定員は26人。会議室や宴会場の設備もある。(松浦 純)