2008年3月9日(日)掲載

◎単位互換の協定結ぶ…大学や高専など8高等教育機関
 「函館市高等教育機関連携推進協議会」に加盟する大学や工業高等専門学校など8校は8日、「単位互換に関する包括協定書」に調印した。連携各校の学生は4月から、他校で行われる授業のうち指定された講義を履修して単位を取得できるようになる。2008年度は道教育大函館校で開講する教養科目「保健福祉」が対象となり、次年度以降徐々に対象を広げていく考え。

 同協議会は公立はこだて未来大学、北大水産学部、道教育大函館校、函館大学、函館大谷短大、函館短大、函館高専、ロシア極東国立総合大学函館校で組織。同日、市内のホテルで開かれた理事会で調印が行われた。

 単位互換はこれまでも未来大と函館高専の間で行われていたが、今後は8校すべての間で相互に行う。保健福祉は8月上旬に5日間開催される集中講義で、定員は50人。渡島保健福祉事務所と連携し、同大と大谷短大の教員が講師を務める。初年度は1科目だが、将来的には幅広い分野、科目で実施したい考え。同制度で取得した単位を卒業要件に含むかどうかは各校で定める。

 理事会ではこのほか、同協議会の名称を市民に親しみやすいものとするため、4月から「キャンパス・コンソーシアム(連合などの意)函館」と変更すること、事務局を函館市企画部から道教大函館校に移転することを承認。空席となっていた会長に未来大の中島秀之学長を選任し、副会長は函館高専の長谷川淳校長を再任した。

 08年度事業計画では、合同公開講座「函館学」の講義をまとめた小冊子を作成するほか、函館商工会議所が主催する「はこだて検定」との連携方法を模索する。(小泉まや)


◎トンネル効果認識…青函圏フォーラム
 青函トンネル開通20周年(13日)を前に、JR北海道主催の「青函圏フォーラム」が8日、函館市内のホテルで開かれた。約240人が参加。北大大学院経済学研究科の吉見宏教授の基調講演のほか、函館、青森の両市長らによるパネルディスカッションを行い、トンネルがもたらした効果や今後の両市における課題を探った。

 吉見教授は「青函トンネル〜津軽海峡を貫いた道の役割と可能性〜」と題して講演。経済は広い範囲で考えることが大切で、トンネル開通によりそのルートが実現した、と指摘した。輸送について「連絡船時代よりスピードアップ、安定し、飛行機だけに頼ることがなくなったことは経済的にも強い」と説いた。

 道新幹線について「函館と青森が隣町になり、経済圏としてこれまでとは異なる生活意識を考えるようになる。札幌まで結び、北日本に経済圏を作ることが大切」とした。

 パネルディスカッションは「青函トンネルと新幹線がつなぐ青函地域のこれから」と題し、西尾正範函館市長、佐々木誠造青森市長、坂本真一JR北海道相談役、金道太朗函館湯の川温泉旅館協同組合理事長、蝦名幸一浅虫温泉旅館組合長が、青函トンネル開通の効果、道新幹線への期待、まちの課題について意見を出し合った。

 蝦名組合長は「青函トンネル開通で宿泊客が増え、地域の人がまちの良さを見直すようになった」と紹介した。金道理事長は「函館と青森が結ばれていることをアピールしていきたい」と集客への活用を話した。

 坂本相談役が「新幹線開業のスピードアップにより、魅力のないまちは日帰り観光地になる」と指摘。佐々木青森市長は「同時期に九州、北陸新幹線が開業する。青森、函館がお互いにあるものを組み合わせ青函圏として対抗しなければならない」とし、西尾函館市長は「青函が持ち、東京や大阪にないものを売り込む」とした。(山崎純一)


◎山で海で頑張る母たち…あす農山漁村女性の日
 農業と水産業を基幹産業とする渡島半島。高齢化や後継者不足など、取り巻く環境は厳しさを増す中、長年現場で働き、家族や地域を支える山と海の“お母さん”たちがいる。函館市で44年間、イチゴ栽培などに取り組む東寺まき子さん(64)と、北斗市で46年間、タコ漁などを営む夫と暮らす吉田成子さん(64)も、そんな女性だ。10日は「農山漁村女性の日」―。

 2人は共に北斗市茂辺地生まれで茂辺地小の同級生。東寺さんは20歳で農家、吉田さんは18歳で漁家に嫁いだ。

 東寺さんは1人暮らし。2003年に夫が亡くなる前は家族で稲作や野菜作りにも取り組んでいたが、現在はイチゴ栽培を自宅横のハウス十数棟で行っているほか、小豆を生産し、農協などを通じて地元市場に出荷している。

 親株管理や育苗、定植、ハウス内の温度調整など、イチゴはほかの作物より収穫までに手間が掛かる。「極力農薬を使わず、土に無理をさせない」。手間を惜しまず、丹精込めて作る姿勢は稲作に励んだ義父から教わった。

 最近は枯葉や草取りのため朝早くから夕方まで、ハウス内での管理作業に励む。「自分のイチゴが『甘い』『おいしい』と喜ばれるのが一番うれしいし、それが生きがい。体力の続くまで続けたい」

 吉田さん宅はタコやワカメ、コンブ、アワビなど時期で魚種を変えながら、年中漁を行う。1962年の結婚後、子育て、家事の傍ら、コンブの製品化作業などずっと浜での仕事を担当していたが、夫の正二さん(72)が98年に脊髄梗塞(せきずいこうそく)を患い、下半身に障害を負ってからは一緒に沖に出て仕事を手伝っている。

 船に乗り始めた最初の3年間は、毎日船酔いで吐いたというが、「つらいとか、やめたいとか思ったことは一度もない。海が好きだし、漁師の仕事は楽しい」と力強い。

 指導漁業士を務めた正二さんも尽力した茂辺地漁港横の人工フノリ礁での養殖事業は、ことし7年目を迎え、今は採取の最盛期。吉田さんも採取日には手作業での摘み取りに励む。

 「フノリ採取やアサリ採りは大好きな作業。特にアサリは、砂の中で手探りで貝をつかむ感触が何ともいえない」と笑う。年々仲間の漁業者が減る現状を「不景気で仕方がない部分もある。自分は体が丈夫なうちは続けたい」と話している。

 農山漁村女性の日 農林水産業の重要な担い手である女性の貢献を評価し、経営や地域活動に参画できる社会形成を目指して1988年に農林水産省が提唱した。(新目七恵)


◎「オンパク研修会」開幕
 体験参加型イベント「オンパク(温泉泊覧会)」を題材にした「オンパク人づくり事業研修会in函館」が8日、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で始まった。オンパク発祥の大分県別府市をはじめ、今後開催を予定・検討する道内外の温泉地などから約70人が参加。事例発表や意見交換などを通じて、情報の共有化を図る。

 オープニングで、湯の川温泉街を主会場に3回の開催実績を重ねてきた、「はこだて湯の川オンパク」実行委の刈田眞司実行委員長があいさつ。「温泉街として何かやらなければとの思いで始めたが、最初は反響の大きさに戸惑うとともに、連帯の大事さを教えられた。とはいえ、町づくりや活性化への第一歩をしるしたに過ぎす、今回の研修会を相互で有意義な場にしていきたい」と述べた。

 続いて、大分県別府市のオンパクを運営する、NPO法人(特定非営利活動法人)「ハットウ・オンパク」の鶴田浩一郎代表理事がオンパクの概要を紹介。「地元にある資源をどのように商品化していくかが、オンパクの根底にある」とし、地域への愛着や人的な仕組みづくりなどを成功へのカギと位置づけた。

 9日は、参加者に函館のオンパクで人気のプログラムを体験してもらい、最終日には意見交換などを行って、3日間を締めくくる。(浜田孝輔)


◎元町公園にパブリックアート設置
 函館市元町12の元町公園内に8日、神奈川県藤沢市在住の彫刻家安藤泉さん(58)の作品が設置された。函館を代表する観光名所に、訪れる人の目や心を癒してくれる新たなシンボルが誕生した。

 市が1999年度から進める、公共空間の魅力向上を目的とした「パブリックアート設置事業」として、これまで市内各所に27基を整備。本年度が、後期5カ年計画の3年目にあたる。

 安藤さんが手掛けた作品のタイトルは、「大地と海と僕たちと」で、一部ブロンズ鋳造を含む7基の銅板鍛金彫刻から成る。高さ最大2・2メートルの木をはじめ、犬と戯れる少年、眺望を楽しみながら腰掛ける少女、親子の熊など、人や動物が自然と共生する姿が、函館港を一望できる同公園の一角約32平方メートルのスペースに、バランス良く配置されている。

 安藤さんは「スケール感がどうなるのか心配だったが、うまくまとまったように見える。身近に感じてもらい、違和感のない周りの景色と一体化した存在になってくれれば」と話していた。(浜田孝輔)