2008年4月16日(水)掲載

◎レトロな車体 今シーズンも
 レトロな姿で市民や観光客から人気の市電「箱館ハイカラ號(ごう)」が15日、今シーズンの運行を開始した。赤を基調とした愛らしい車体が、歴史を感じさせる建物の並ぶ西部地区を駆け抜け、乗客は車窓から趣ある街の風情を堪能していた。

 ハイカラ號は1992年、大正時代の図面を基に除雪車を復元し、93年から運行を始めた。車内はぬくもりを与える木張り。車輪が単車なため、独特な揺れや走行音がある。

 函館市末広町の八幡坂では、函館湾や今年運行開始100年を迎えた青函連絡船(摩周丸)をバックに、走る姿を写真に収めようとする鉄道愛好家が訪れた。同市美原の男性(66)は「この電車を見ると春本格化を感じる。今日は天気が良いので市内各地で撮影する」と話していた。

 始発のみ湯の川発で、日中は五稜郭公園前と函館どつく・谷地頭間を往復する。運行は10月31日まで。料金は一般の市電と同じだが、カード乗車券は利用不可。(山崎純一)


◎大森、竹田氏が立候補…木古内町長選
 【木古内】任期満了に伴う木古内町長選が15日告示され、現職で3選を目指す大森伊佐緒氏(54)、新人で前町助役の竹田則幸氏(64)=届け出順=が立候補を届け出た。町長選は8年ぶりの一騎打ちとなり、両候補は早速、20日の投票に向けて舌戦に入った。

 町選管によると、14日現在の選挙人名簿登録者数は男性2308人、女性2640人の計4948人。投票は20日、町内11カ所で午前7時―午後7時。開票は同日午後8時から木古内町中央公民館で行われる。

 森氏は昨年9月の町議会で出馬表明。(1)町財政の健全化(2)保健医療福祉の充実―などを挙げ、「これまで以上に全力でその問題解決に当たりたい」とした。「北の大地の福祉都市」として、介護老人保健施設を伴う公営住宅「いさりび団地」の完工などを前面に、福祉政策の充実を訴える。

 2月17日に後援会事務所を開き、中村三男後援会長を中心に支持を求める。4月4日の総決起集会で、二戸傳次副後援会長が「2期8年間の経験と実績をここでゼロとせず、3期目に向けその花を咲かせよう」と結束を誓った。

 竹田氏はことし1月上旬に出馬表明。「国保病院建設計画や木古内高校存続、新幹線到来などの諸問題がある中、しっかりとした財政計画を立てなければ夕張の二の舞(財政破たん)になる」とし、「『いまやらなければ手遅れになる』との強い思いで出馬する」と決意を示した。

 1月27日に後援会事務所を開き、岡山次男後援会長らが支援を呼び掛けている。4月11日に総決起集会を開催。岡山後援会長は「約40年間の確かな行政経験と実直な性格の竹田(候補)こそが、古里のリーダーにふさわしい」と支持拡大を訴えた。


◎道南でも天引き始まる…後期高齢者医療
 期高齢者医療制度の保険料の年金からの天引き(特別徴収)が15日から全国で始まり、道南でも渡島管内で約4万3000人、檜山管内で約5500人の年金から保険料が引かれた。保険料の算定ミスや保険証の未着などトラブルを抱えたまま1日に始動した同制度は、対象者の不満や将来への不安の声が絶えない。

 函館市昭和の82歳の男性は「保険料はいずれ払わなければいけない。でも年金から前もって引かれるとその後の生活のやりくりが大変になる。減額と同じだ」とため息をつく。男性は複数の年金受給者で、徴収する際の優先順位によって天引きされないが、妻が年金から天引きされたケース。道後期高齢者医療広域連合が示した算定方法で、おおよその保険料を把握したが、「制度の周知が不十分。トラブルが起きるのも当たり前」と国の対応を非難する。

 今回天引きの対象ではなかったという市内谷内頭町の女性(77)は「高齢者の行き場がなくなるようで将来が不安」と漏らす。

 函館市役所の医療助成課では連日、電話や窓口に問い合わせ、相談が相次ぎ、職員9人が対応に追われる。1人当たり50件以上対応することもある。

 同課によると、「国保の保険料より高いのはなぜか」「特別徴収開始通知書が届いていない」といった問い合わせが大半で、制度の内容、年金天引きに対する抗議も寄せられている。

 後期高齢者医療制度の保険料の特別徴収は年6回の年金支給時の支払いに対し、国保の保険料は年10回に分割して支払うため、1回当たりの支払う保険料が高くなる。「問い合わせ、相談に対してはしっかり説明していくしかない」と同課。制度の撤回を訴える函館地方社会保障推進協議会(堀口信会長)は「生活の支えとなる年金から天引きするべきではない。高齢者をいじめる制度だ」としている。 (鈴木 潤)


◎イカゴロ海中還元は違法?
 【乙部】乙部町の漁業者が日本海の磯焼け対策として実施しているイカの内臓(イカゴロ)を海中還元する試験事業について、檜山支庁が3月末、海洋汚染防止法に抵触するとして中止を指導していたことが分かった。イカゴロを魚のmノや海藻の肥料として海中投入することは漁業の一環で、規制は受けないとする国の見解を根拠に試験を進める町、漁業者は猛反発している。道は15日に一転、中止指導を撤回。檜山沿岸全域で試験実施を認めるよう規制を緩和する方針を示し、理解を求めているが、町や漁業者との溝は深い。

 15日に開かれた「豊かな浜づくり協議会」の緊急総会で、寺島光一郎町長は「漁業者の名誉を傷付けた。法的措置も辞さない」と強調。阿部一ひやま漁協副組合長も「行政の磯焼け対策が遅れる中で漁業者が立ち上がった。なぜ中止なのか」と憤った。出席した漁業者もこぞって反発、早期に道庁を訪れて高橋知事に抗議する方針を決めた。

 こうした激しい反発の中、道は同日までに、指導を撤回する方針を町に伝え、(1)本年度の試験を速やかに実施できるよう対応(2)檜山沿岸で新たに海中還元を行う地域でも簡素な手続きで実施を認める―などの方針を示して理解を求めている。

 乙部町や上ノ国町は2004年、磯焼け現象や海中の貧栄養化の改善に向けて、従来は廃棄物として、海中投入が厳しく規制されていたイカゴロの海中還元を検討。国に構造改革特区の申請を行ったが認められなかった。05年には再申請も却下されたが、国は新たに漁業の一環で行う海中還元を容認。上ノ国町では06年から道の承認を受けて、イカゴロをmノに魚をおびき寄せる集魚試験をスタートした。乙部町でも昨年10月から磯焼け対策に重点を置いて、上ノ国町の試験を補完するとして独自に試験事業を開始した。

 上ノ国町の試験は昨年度末で終了したが、乙部町は国が示した見解を根拠に、本年度も試験を継続する方針を示した。こうした動きを受け、同支庁はあらためて道の承認が必要と指摘。承認を得ずに試験を継続すれば「摘発対象になる」として警告し、試験中止を求めたという。

 これに対して、乙部町は「国は漁業の一環として海中還元を認めている。道が承認を求めることには根拠がない」と反発していた。(松浦 純)


◎新暗号システムを開発…未来大・高木剛教授ら
 公立はこだて未来大学情報アーテクチャ学科の高木剛教授(38)と富士通の子会社FDK(東京)などは15日、情報セキュリティー(安全対策)の世界最先端技術となるICチップの試作品開発に成功した、と発表した。次世代の暗号技術として注目を浴びている「ペアリング暗号」を使用した新たなシステムで、ICチップの計算速度は従来の製品の1000倍、消費電力も1000分の1という。数年以内の実用化を目指している。

 インターネットや携帯電話を使った決済、電子メールなどで使用するパスワード(暗号)の流出や第三者による攻撃などで、情報ネットワークのセキュリティー対策が求められている。ペアリング暗号は国際暗号学会で認知されており、世界で初めて試作品が完成した。

 高木教授によると、ペアリング暗号のチップは高速性だけでなく安全性に優れ、非常に高度な技術がなければ暗号の解読はできない。応用することでデジタルの映像や著作物の不正コピーの防止、コンテンツの不正利用防止などができる。住基カードなどに入っている国や道、市のデジタル署名をコンパクトにしたり、見られたくない情報にシステムを応用した鍵をかけることもできる。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から3億1800万円の研究費を得て、2005―07年度の3カ年で開発した。未来大、FDKのほか、筑波大と情報セキュリティ大学院大学による共同研究で、高木教授は暗号部分を担当した。

 試作品は約3センチ×2センチの大きさで、高木教授は「ICチップはUSBメモリー(小型の記憶媒体)に入る程度まで小さくしたい。研究開発をしている企業のセキュリティー対策など幅広い利用ができる」と話している。(高柳 謙)


◎ことしも「中空土偶」公開…9月に特別企画展
 2007年6月、道内初の国宝に指定された函館市著保内野(ちょぼないの)遺跡出土の中空土偶が、本年度も一般公開されることが決まった。9月に市立函館博物館(青柳町17)で開かれる特別企画展で展示される予定。同館は「せっかくの国宝を、多くの市民や観光客に見てもらえるようにしたい」としている。

 一般公開は昨年7月から8月にかけて同館で開催された特別企画展以来。国宝指定後、地元で初めての展覧会とあって、前回は多くの関心が集まり、観光客も足を運ぶなど1万人以上が来場した。

 本年度は「国宝 中空土偶と函館発掘物語」と題し、特別企画展を9月上旬から中旬にかけて15日間開催する計画。地元から誕生した国宝をメーンに、函館をはじめとする道南の考古学の歴史を黎明(れいめい)期から現代まで、最新の発掘情報を交えて年代ごとに説明する。

 この中で、函館市内・近郊で見つかった土器や石器、土偶などの考古資料300―500点を紹介。期間中、南茅部地区では小学生やその保護者向けの同館講座で遺跡発掘体験も実施する。

 開館時間は午前9時から午後4時半(観覧は午後5時)まで。入場料は一般300円、大学・高校生200円、小中学生100円の予定。

 問い合わせは同博物館TEL0138・23・5480へ。(宮木佳奈美)


◎再移送の2人少年院へ…高3集団暴行死
 昨年8月、函館市内の私立高3年佐藤智也君(当時18)が中学時代の同級生ら少年7人から集団暴行を受けて死亡した事件で、傷害致死罪などで起訴され、函館地裁の判決で再び家裁への移送決定を言い渡された16歳の少年2人の審判が15日、函館家裁で開かれた。板橋愛子裁判官は「保護処分が相当」とし、2人を中等少年院送致とする決定を下した。処遇期間は「相当長期(3年程度)」とした。

 板橋裁判官は決定理由で「犯行は悪質で、結果も重大。その責任は相当に重い」とする一方、▽犯行を主導したのは年上の共犯少年▽致命傷になる暴行を加えていない▽非行時15歳で犯罪傾向が進んでいない▽刑事公判手続きを経て反省を深めつつある―ことなどに言及。「教育的な働き掛けで更生を図るのが適切かつ有効」などとして保護処分を選択した。

 審判は非公開だが、少年の弁護人などによると、2人は「裁判所がくれたチャンスを裏切らないようにしていきたい」「今回の事件を忘れずに遺族に賠償していきたい」などと、時折涙ながらに反省の言葉を述べたという。

 2人は、昨年10月に函館家裁で開かれた少年審判でいったんは検察官送致(逆送)され、函館地検が傷害致死罪などで起訴。犯行当時15歳の少年の刑事裁判は道内初のケースとなったが、3月27日の同地裁の判決公判で「保護処分で更正を図るのが相当」などとし、再び同家裁への移送を言い渡された。

 決定などによると、2人は昨年8月26日夜、同罪などで起訴された主犯格の少年2人サ不定期の有罪判決確定済みサらと共謀し、同市内の公園2カ所で約2時間にわたり、佐藤君を代わる代わる集団で暴行し、翌27日未明、外傷性脳浮腫で死亡させた。