2008年4月25日(金)掲載

◎コンブ新幹線 お先に?開業?…青函トンネル記念館で展示
 【福島】福島町日向460の鉄工所経営、鳴海健児さん(68)がコンブなどを使って仕上げた北海道新幹線の先頭車両の模型が24日、同町福島三岳32の青函トンネル記念館に展示された。鉄板などで組み立てた全長2・7メートルのトンネルの中に置かれ、手動で前後に“走る”という仕掛けも施されている。「福島を象徴する夢のあるものを」と、同車両制作のアイデアを提供した同町73、中塚建設社長の中塚徹朗さん(50)らとともに、鳴海さんは設置を喜んでいる。

 「まちの宣伝だけではなく、環境問題の提起などで地域活性化を目指そう」と今回、海の浄化能力を持つコンブにこだわって作品づくりに励んだ。

 スルメイカをモチーフにした同車両は、自転車のペダルを利用した取っ手を回すと前後に動き、イカ釣り漁船の集魚灯を模したトンネル上部のライトも点灯する。先頭部が先の壁に触れると、「キュッ」とイカの鳴き声も出る。電気配線は、鳴海さんが青函トンネル工事に従事していた際の同僚の同町白符578、木田正隆さん(60)が協力した。当時のトンネル工事の様子も伝えようと、発車時に鳴るベルとブザーは工事現場の電話や無線の音を忠実に再現した。

 同車両の名前は「雲竜(うんりゅう)号」。JR北海道の松原光雄函館駅長が、同町出身の横綱千代の富士が土俵入りで見せた「雲竜型」にちなんで付けた。近日中に別の模型が同駅でも展示される。

 3人は「皆の知恵と技術で立派な作品を作ることができた」とし、「今度は、ペダルで発電してライトを点灯しよう」と張り切っている。(田中陽介)


◎企画・西尾市長就任1年(上)…唐突な言葉、時に摩擦
 「市長の権力の在り方」を市民に問い、前市長に大差を付けて初当選した函館市の西尾正範市長はこの1年、さまざまな発言が波紋を広げた。職員の受け止めは多様だが、ある幹部は「市の現状や時代に対する危機感を強く持っているあまり、先走った発言に取られてしまうこともある」と説明する。

 「町会活動をしない職員は昇進させない」「ロシア極東大函館校を市立化させたい」などの発言は職員を慌てさせ、議会からは真意を問う声が上がった。西尾市長は否定するが、市長の座は市政の権力の頂点。議論を経て生まれた考えでなく、唐突に出る言葉は各方面で摩擦を生み、時に「独裁者」とも呼ばれた。

 西尾市長は発言の真意について「町会については、社会や組織への帰属意識の問題。地域コミュニティーを支える町会に市職員が加わるのは最低限の務め」「国際情勢から対ロシア交流は重要性を増す。友好や経済交流を深める上でも大学の経営安定が必要で、市立化はそのひとつの手法」と、思いを語る。

 発言が走る分、のちの説明が足りない感は否めない。

 表裏をなすように、市幹部や市議、西尾市長をよく知る人物からは「頑固で昔から人の言うことを聞かない」との評がある。今春退職した商工観光部長は、市長の公約である商観部の再編について経済界の意向を伝え、慎重な対応を求めた。しかし、市長は押し切って2部に分けた。

 別の幹部は説明する。「話を聞く、聞かないは別にして、市長室に担当係長を説明に向かわせることもある。市長はそれを拒否する人ではない。遠い存在だった市長と職員の距離は縮まった」。実際、各部局を訪れた市長が若手職員に声をかけ、気さくに話をしている光景もある。

 「身近な市長だが、何かと誤解を与える言動もある」というのが一般的な職員の評価のようだ。誤解を生まないためにも、ある幹部は「西尾市長が持つ時代認識や危機感を職員が共有することが欠かせない」と指摘する。貴重な財源を投入し、子育てや人材育成に力点を置いた施策が効果的に継続されるためにも、職員1人1人が市長の思いを理解し、市民に説明することができなければならない。

 西尾市長は語った。「職員と相互理解を深めるため、各課の職員を集めて懇談する場を設定する。市長はなかなか直接、説明する場がないのが実情だが、これからは、ここ一番で説明が必要なところは思い切ってやってみようと思う」

                      = ◇ =

 「市政刷新」を訴えて当選した西尾市長が就任し、27日で1年を迎える。市長となってからの発言や公約の達成状況、前市長との確執など1年を振り返り、今後の課題を探る。(高柳 謙)


◎市民団体 経産省に異議申立てへ…大間原発設置許可
 経済産業省が電源開発(本社・東京)に対して、大間原発(青森県大間町)の原子炉設置を許可したことを受けて24日、同原発建設に反対する函館市の市民団体「大間原発訴訟の会」の竹田とし子代表らが市役所内で記者会見し、経産省に取り消しを求める異議申し立てを行うことを明らかにした。異議申立人となる原告団メンバーの募集も同日から始めた。経産省の対応によっては、国と電源開発を相手に、同原発の建設差し止めや原子炉設置許可の取り消しなどを求める訴訟を起こす構え。(鈴木 潤)

 会見には竹田代表のほか、中森司副代表、大場一雄事務局長が出席。竹田代表は「原発の建設は地球環境を大切にしようとする時代に逆行する行為。今回の決定は未来や命に対する暴挙」と怒りをあらわにし、同日付で経産省に抗議文を送付したことを明らかにした。

 6月下旬までに異議申し立て書を経産省に提出するが、5月末まで20歳以上を対象に異議申立人を1000人以上募る考えで、委任状への署名と押印の協力を求める。竹田代表は「原発を稼動させないよう国や電源開発に求めていく。多くの賛同者を募りたい」としている。

 異議申し立てが却下された場合、電源開発に対しては原子炉の建設差し止めの民事訴訟を函館地裁で、国に対して処分取り消しの行政訴訟を青森地裁で起こす方針だ。

 同会は2006年12月、「訴訟準備会」として発足したが、設置許可の正式決定を受けて同日、「訴訟の会」に名称を改めた。

 西尾正範市長は同日の記者会見で「非常に難しい問題。国は安全性に問題がないとの見解だが、事故が発生した際の避難、観光や水産物への風評被害などが大きな課題。国や道と連携して情報収集などに当たり、住民の不安が解消されるよう電源開発や関係機関に働き掛けていきたい」と述べた。同原発が世界で初めてのフルモックス燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)を使用することも懸念材料との考えを示した。

 電源開発は5月にも着工し、2012年3月の運転開始を目指している。


◎650人削減、効果額160億円…函館市新行革計画
 函館市は24日、本年度から5カ年で取り組む行財政改革の新計画を発表した。5年間で650人の職員削減を計画し、約160億円の累積効果額を見込んでいる。記者会見した西尾正範市長は「削減で単に財政状況を良くするということではなく、市役所全体が活発に活動する組織となり、まちの元気をリードしていくための改革」と説明した。

 病院局を除き、昨年度3060人いた職員を、本年度から5年間で2410人まで減らす内容。本年度分は既に143人を削減済みで、職員数は2917人となっている。効果額160億円の内訳は、職員削減による人件費抑制が104億円、事務事業の見直しや経費節減で47億円、各種手数料の値上げや市税の収納率向上などで9億円。

 市民と行政が一緒に考え、ともに汗を流すという基本姿勢の下で、時代の変化に迅速に対応できる行政組織の構築や、持続可能な財政基盤の確立などを目指す。庁内分権の推進や職員の能力開発、部局横断的な行政課題への対応、病院事業の健全経営化などの目標を掲げた。

 「4人の仕事を3人で」を合言葉に、全庁一丸となって徹底した業務の効率化を目指す。西尾市長は「これまでの行革は仕事の外部委託などが多かったが、今後は仕事の作風自体を変える必要がある。会見や行事のための資料作りやあいさつ文も要らない。シンプルな仕事の進め方をするよう、職員も幹部も意識改革が必要」と述べた。

 地方交付税の削減や市税収入の伸び悩みを抱える市にとって、行革は財源を生み出す取り組みとして欠かせない。市は2000年度から07年度までの8年間で733人の職員を削減している。

 ただ、単純比較はできないが、人口が同程度の旭川市と比較して函館市の職員数は昨年度、普通会計ベースで300人以上多い。(高柳 謙)


◎7年ぶり土地分譲…臨空工業団地
 観光土産品卸売・製造業の「北海道ロビアン商事」(本社・札幌、和田真幸社長)が、函館臨空工業団地内に新たに土地を取得することが決まった。同団地内の新規分譲は2001年3月以来7年ぶり。5月に仮契約を結び、市議会の議決を経て正式に土地を分譲する。記者会見で西尾正範市長は「昨年8月に分譲価格を引き下げた大きな効果が出てきた。(将来的に)新規雇用も見込まれ、新しい函館ブランド誕生も期待できる」と述べた。

 同団地の総面積は27万3000平方メートルで1988年に造成を開始。現在、精密機器メーカーなど9社の事業拠点がある。昨年8月、企業誘致の競争力を高めるため、1平方メートル当たり1万7060円の分譲価格を同1万円に値下げしていた。

 同団地内に函館営業所を持つ同社は、数年内に菓子製造工場を新設する計画があり、新たに約3621平方メートルの区画を取得する。

 また、横浜に本社を置くソフトウエアシステム開発業の「アットウェア」(牧野隆志社長)が、4月に市内本町に「函館ラボラトリー」を新設。同社は東京・秋葉原にある公立はこだて未来大学のサテライトオフィスを通じて函館進出を決めた。今後、地元からも技術者を採用するなどし、事業拡大を図る意向を持っているという。

 西尾市長は「企業が北海道に目を向けてきていることもあり、引き合いも来ている。業種ごとにきめ細かく育成施策を組み立て、企業を呼ぶことに全力を注ぎたい」とし、産業振興に意欲を示した。 (今井正一)


◎支庁再編は慎重に…道町村会・定期総会 本年度の活動方針決定
 【札幌】道町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)の第62回定期総会が24日、札幌で開かれ、道に対して拙速な支庁再編を行わず、慎重な改革を要望することを盛り込んだ本年度の政務活動方針を全会一致で決定した。

 支庁制度改革をめぐる状況について道町村会は、地方分権や市町村合併をめぐる重要事項が不明確であり、本道の町村も国による基礎的自治体の体制整備を注視している段階にあると指摘。道が昨年10月に実施した支庁再編に関する市町村意見の照会結果でも、慎重意見が多数寄せられた現状から、「市町村や道民のコンセンサスが得られるよう道は一層の努力が必要」とし、道に対して要望活動を行っていく方針を確認した。

 寺島会長は開会あいさつで「道州制基本法は検討段階にあり(支庁廃止後に設置される)振興局地域では三重・四重行政になり、今まで以上に地域の衰退が進む」と述べ、6月の第2回定例道議会で関連条例案の提案を目指している道の動きをけん制。道町村会行財政常任委員長で、支庁問題を担当する谷川弘一郎日高管内浦河町長は「道が示した9総合振興局案は、当初の6圏域を基本とする当初案と大きく異なる。改革の理念は理解しがたい」と訴えた。

 総会に出席した道の山本邦彦副知事は「地域の意向を十分にうかがいながら、新しい支庁体制の在り方を検討していく」と述べ、出席した町村長に理解を求めた。

 総会では、道路特定財源やガソリン税の暫定税率の回復、暫定税率の失効に伴う自治体の歳入欠陥を国が補てん措置を講じることなどを求める緊急決議も採択した。(松浦 純)