2008年4月28日(月)掲載

◎企画 函館の昭和(1) 市民会館前
 函館市湯川町1の市民体育館や市民会館など並ぶ一帯。6万平方メートルを超える広さには、大正から昭和初期にかけて「新世界」という娯楽施設があった。現在の市民会館前電停より約50メートル湯の川電停寄りに大きな入り口があり、市民を迎え入れた。

 新世界は、青森出身で函館に本道初の常設映画館「錦輝(きんき)館」を建設した岩見永次郎が手掛け、1920(大正9)年9月19日に開業。動物園や音楽堂があり、市内の企業が運動会を開いていたほか、博覧会などの催しが行われていた。

 子どものころから近くに住む湯川町1丁目町会の村山信夫会長(72)は「子どものころは友だち同士の遊び場所だった。今、当時の面影が残る場所は滝の跡くらい」と話す。

 子どもや大人の歓声で包まれていた場所は現在、スポーツ活動の普及、振興に寄与する施設の玄関口。新世界同様にさまざまな年代が利用する。

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 激動の昭和時代、函館では昔日の面影がないほど、まちの様子が変わっている所も少なくない。29日は「昭和の日」。在りし日を伝える写真、絵はがきと現在の姿を見比べてみる。(山崎純一)


◎駆け込み需要で混乱必死…1日にも暫定税率復活濃厚 ガソリン大幅値上げ確実
 政府与党が30日に租税特別措置法改正案の再可決を行い、翌5月1日にもガソリン税などの暫定税率を復活させる方針を表明したことにより、ガソリンの大幅値上げは確実な状況となった。大型連休中ということもあり駆け込み給油に拍車がかかれば今月はじめの値下げ時を上回る混乱は避けられない見通しで、地元住民と旅行客を巻き込んだガソリン争奪戦に発展することも心配される。

 暫定税率廃止をきっかけにガソリンの値下げ競争が過熱した函館市内では、現在もレギュラーガソリンを120円台前後で販売するスタンドがほとんど。前週の道内のレギュラーガソリンの平均131・5円と比較してもその安さは明らか。しかし暫定税率が復活すると税率分の約25円のみならず、依然として続いている原油の高騰分も加算されることとなり、30円程度の大幅値上げは避けられない見通しだ。

 市内の男性会社員(55)は「車は日常の足として必要不可欠なので、値段にかかわらずガソリンは使わざるを得ないが、政治の駆け引きで毎月数十円単位で乱高下されるのはたまらない」と不満げな様子。函館市港町のガソリンスタンド所長は「値上げの幅やタイミングについてはまだ最終決定していない。今のところ販売状況は例年並で、特に目だった駆け込み需要は見られない。ただ月末には観光客を含めて需要が増えそうなのと、値上げに伴う各種変更作業などで4月上旬の値下げ時以上に負担が増えそうだ」と顔をしかめる。

 様々な混乱と不安をもたらしている暫定税率問題だが、市内の男性会社員(43)のように「今まで当たり前のように払わされてきた暫定税率にスポットが当てられただけでも大きな収穫。今後も徹底的に暫定税率が必要かどうかを論議して、国民が納得できる結論を出してほしい」と前向きに捉える声も少なくなかった。(小川俊之)


◎米の豪華客船 スタテンダム寄港
  本年度初めての豪華客船寄港となるホーランド・アメリカ・ライン社(米国)の「スタテンダム」(5万5451トン)が27日午前7時、港町ふ頭に接岸した。約1400人の乗客は短い滞在時間中、咲き誇るサクラや西部地区観光などを楽しんだ。

 同船の寄港は2年連続2回目。国内では、長崎、東京などに寄港し、ロシア・ペトロハバロフスクに向かう途中、函館を訪れた。

 船内で行われた歓迎式で谷沢広副市長は函館の見どころをPRし、「みなさんの旅が安全で楽しいものとなるように願っています」と歓迎。ミスはこだての明本吏紗さんらから、ジャック・クーバードン船長らに花束や市民手作りの折り鶴が贈られた。クーバードン船長は「函館が日本最後の寄港地。旅の途中の素晴らしい友情ともてなしに感謝しています」と話し、谷沢副市長に寄港記念の皿をプレゼントした。

 この日は、函館遺愛女子高校の生徒75人が、善意通訳会メンバーとともに通訳を兼ねて、観光案内役として五稜郭タワーなどで活躍。シャトルバス乗り場となった末広町の地域交流まちづくりセンターでは、華道や茶道を体験できる日本文化コーナーが設置され、入れ立ての日本茶を味わいながら、市民と交流する乗客の姿が見られた。

 同船は同日午後、よさこい演舞に見送られ、出港した。(今井正一)


◎花見マナー守って!! 地面に炭、掘りにごみ…
 26日に満開を迎えた函館市のサクラ。五稜郭公園では大勢の花見客が訪れ、シートを広げ炭火で焼き肉を楽しむ姿が見られる。本道ならではの花見だが、後始末が悪いグループもいて、散策や写真撮影を楽しむ人から「せっかくのサクラの名所が台無し」との声が上がっている。同公園管理事務所などではマナー遵守を訴えるしかなく、傷ましい姿になった公園の清掃に追われている。

 「色んな楽しみ方はあるが、公園を汚してまで楽しむことは許されない」。同市亀田港町の写真愛好家の男性(72)は語気を強める。時間によって変わるサクラの表情を捉えようと、開花中はほぼ毎日、朝から夜桜まで公園内を回るという。「焼き肉の煙りは写真に影響するが仕方ない。しかし、ごみが散らかり、シャッターを押せないのは怒りを覚える」。同公園管理事務所は「公園内は風が強く、放置されたごみは風にあおられ、堀に落ちていく。ボートに乗り、ごみを拾い集めるのは大変」と苦労を話す。

 朝に散策する同市中道の女性(66)は「木の根元に炭があるのを見かける。サクラがかわいそう」と話す。同公園管理事務所では、消した炭を入れる箱を設けているが、地面に巻かれていることがあるという。

 五稜郭のサクラは樹齢が高く、傷んでいるものも多い。市住宅都市施設公社などでは後継樹の育成に力を入れている。そんな一方でサクラを傷つける行為に市民らは憤りの声を上げる。写真愛好家は「場所取りや食べ物の用意を引き受けている店があるのだろうか。後片付けをしている一部で食べ残しや油を木の根元に置いていくのを見掛けた。マナー以前の問題」と説く。

 七飯町の桜研究家の浅利政俊さん(76)は「花が咲くときはサクラにとって“お産”の状態で、水分が必要な時期。油や炭で根毛を傷められるのは木にとって良くない。妊婦さんをいたわるようにサクラも優しく見てほしい。先人から受け継がれている絶景を後世に伝えるべきだが、自分ひとりくらいというマナーを乱す行為は慎んでほしい」と訴える。