2008年4月29日(火)掲載

◎企画 函館の昭和(2) 本町
 函館市本町の五稜郭公園入口交差点付近。丸井今井函館店などには買い物客、居酒屋など飲食店には仕事が終わった会社員らが訪れ、昼夜とも人が往来する。

 昭和30年代に撮影された写真でも、商店などの建物が写っている。1951(昭和26)年4月、同交差点付近の一角で創業した「カメラのカナミ」。金道雅樹社長(50)は「以前は、亀田地区の人たちが市電などを乗り継いで買い物に訪れた。まさに函館の中心部」と話す。古い写真には、現在の本町市場の位置に鉄塔が見えるが、66年まで市消防本部本町出張所があった。「子どものころ、父と一緒に消防車を見に行った記憶がある」と振り返る。

 以前はここから五稜郭に向かう人たちでにぎわった。金道社長は「花見シーズンは市電を降りた人が店でフィルムを買うので、飛ぶように売れたという。今では人も、フィルムカメラも減り、時代の変化を感じる」と話す。


◎企画 迷走!新医療制度(上)…生活圧迫 増す不安や怒り
 1日にスタートした後期高齢者医療制度は、混乱を抱えたまま1カ月を迎えようとしている。お年寄りを中心に反発は強く、怒りも増しているのが現状だ。高齢者の声を聞き、自治体や医療現場の対応、市民団体などの動きに目を向けてみた。。

 

 「新制度のもとで安心して医療が受けられるのか、気掛かりでならない」。函館で低所得者を支援する全生連(全国生活と健康を守る会連合会)・函館生活と健康を守る会会長、松森美世子さん(70)は後期高齢者医療制度の保険証を見つめながらつぶやく。

 松森さんは10代のときに患った病気がもとで手足が不自由となり、身体障害者手帳2級の交付を受けている。新制度に移行するかどうか自ら選択できる、一定の障害を持つ65―74歳の対象者だ。

 道は、65―74歳の重度身障者が新制度移行を選ばなかった場合、医療助成の対象外とした。これまで国保(国民健康保険)に加入しながら助成の適用を受けていた松森さんは、新制度に移行しなければ窓口で支払う医療費が現役並みの3割負担となる。市内の内科と整形外科へ定期的に通院しており、「助成を受けなければ確実に負担増となるから」と、新制度への移行を余儀なくされた。

 「後期高齢者といわれる年齢まであと5年もあるのに…」と複雑な思いにとらわれるとともに、保険料が今後どうなっていくか判然としない中、新制度への不安は増幅するばかりだ。

 市内鍛治に住む男性(82)は新医療制度について、「まるで時代劇の悪代官が民衆から年貢を搾取している光景だ」と憤る。入院中の妻(82)と2人暮らしで、保険料(年額)の合計は3月まで支払っていた国保よりも9400円の負担増となる見通しだ。

 2カ月ごとに支給される年金が生活の支えだが、家賃や妻の入院費、自分の薬代と出費はかさみ、「この先、食費を削っていくしかない」と話す。貧しくてパンの耳を食べて餓えをしのいだ終戦直後の生活が頭をよぎる。

 新制度スタートから2週間後の15日には、全国一斉に保険料の徴収が行われ、渡島、檜山管内でも約4万8500人が年金から天引きされた。「年金が減額されたのと同じだ」「制度が分からない」。函館をはじめ道南各地、そして全国的に自治体の窓口は混乱をきたす事態に陥っている。高齢者の不満や不安は募るばかりとなっている。(鈴木 潤)


◎企画 エコ宣言(1)…不用な傘を利用しバッグに
 「マイ・バック」「マイ・はし」などを使うことで省資源につなげる活動が高じて、自分でそれらを作る動きも活発になった。自身で楽しみながらエコ(自然環境保護運動)ができるからだ。そんな中、長い間愛用していた傘を再生したバックづくりに注目が集まっている。

 ポリ袋1枚を製造するには18ミリリットルの石油が必要とされる。これは23度に設定した暖房を約20分間保つことに相当する。電気では60ワット電球を1時間使用するのに等しい。スーパーなどが、マイバッグ持参を呼び掛けてレジ袋の削減を目指す運動は、小さな力が結集して環境改善に多大な効果を発揮する好例だ。

 コープさっぽろ函館地区委員会」(田中いずみ地区委員長、委員12人)では、骨が折れたり、色あせたりして不用になった傘を分解し、ナイロンなどの布地部分からバッグを製作している。田中地区委員長(44)は「傘は色や柄など種類が豊富。自宅に眠る不用な傘を使い、かわいらしくて、オリジナルなバッグを作ることができる」と紹介する。

 作り方は、傘の骨から布をていねいに取り、傘の付け根部分を切り外した後、円形に外れた1枚の布を2等分する。両端をミシンで縫い合わせた後、底部分となる傘先を三つ折りにして縫う。残り半分の生地から持ち手部分を製作し、ひっくり返せば完成する。1本の傘から2つできるのである。要望があれば作り方講習会を開いている。

 同地区委員の芹澤幹子さん(44)は「ナイロンなので撥水性に優れ、丈夫で軽いので買い物に最適」、岸下朝子さん(58)は「自分の物を自分の手で製作し、手間を掛けることで市民一人一人の環境問題に対する意識向上につながる」。今後も活動を継続し、個性あふれる「マイ・バッグ」の輪を広げたい考えだ。(小橋優子)

 製作方法などについての問い合わせは、同地区委員会0138・30・2634

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 環境問題を主要テーマとする北海道洞爺湖サミットを控え、道南でもエコ活動に注目が高まっている。自分で出来るエコ活動、さまざまな活動に取り組む団体、市民の意識の現状などを5回にわたり紹介する。


◎企画 エコ宣言(2)…段ボール利用した堆肥作り
 年間約6万7000トンの家庭ごみが排出される函館市。このうち生ごみは水分を多く含み、重量比では家庭ごみのほぼ半分を占める。水分をよく切るなど排出方法の工夫や、堆肥(たいひ)にするなど資源化の促進がごみ削減、環境保全の鍵になる。

 「生ごみも腐らせなければ重要な資源。捨てるのはもったいない」。函館の市民団体「ゴミ土楽(どーらく)の会」(竹花郁子代表)は、段ボール箱を利用した生ごみ堆肥作りの普及を進める。「簡単、安価で手軽なごみ減量策」とPRする。

 札幌の市民団体「循環(くるくる)ネットワーク北海道」が考案した方法。ここから技術を教わり、2001年から町会などで出前講座を開いている。ことしは北海道洞爺湖サミットにちなみ、7月まで毎月開講する。

 ミカン箱程度の大きさの段ボール箱を用意し、園芸店で入手できる「ピートモス」と「もみ殻くん炭」を6対4の割合で混ぜた基材(あらかじめ混合してある商品でも可)を入れる。その箱に生ごみを入れてへらでかき混ぜると、微生物の力で生ごみが分解・発酵し、約3カ月で堆肥になる。合言葉は「水分しっとり、温度ほかほか、空気たっぷり」。箱は床や壁から離して通気性をよくし、こまめにかき混ぜて空気を含ませ、温度を上げて微生物の働きを促すのがコツだ。

 同会の中西弘子さん(66)は夫と2人暮しで、1日約500?の生ごみを毎日入れる。3カ月間入れ続けると45?に増えるはずが、実際は微生物の働きで分解され、半分から3分の1程度まで減る。「収集日に出すのは20?の有料ごみ袋で月1回程度」という。林栄子さん(70)も「出来た堆肥で作る野菜は甘くておいしい」と勧める。

 「みんなが取り組むようになれば、会はもう必要ない」。市民にその技を広めようと発足した同会。目指すは“ごみゼロ”のまち函館―。(宮木佳奈美)

 堆肥の作り方や出前講座の問い合わせは「ゴミ土楽の会」事務局(中西さん)TEL0138・59・2944。


◎コンサート、展示会 企画多彩…「津軽海峡・海と大空のフェス」2日開幕
 高速フェリー「ナッチャンWorld(ワールド)」の就航と、来年に函館港開港150周年を迎えるのを記念したイベント「津軽海峡・海と大空のフェスティバル」(実行委主催)が5月2日、東日本フェリー函館ターミナル(函館市港町3)で開幕する。大型連休期間中を中心に、有名アーティストによるコンサートや海にまつわる展示会などが企画されている。18日まで。

 2日午前9時からは青森発の「ナッチャンWorld」が函館に入港するのに先駆け、ヨットやヘリコプターによる歓迎セレモニーを実施。午後6時からはジャズトランペット奏者の日野晧正さんと歌手マリーンさんのコンサートが行われる。

 翌3日午前10時半からは俳優の石田純一さんらがクラシックカーに乗り、約1時間にわたって市内を走行した後、参加した約30台の車両を同ターミナルに展示。午後3時20分からは歌手の尾崎亜美さん、同6時からは地元のアマチュアオーケストラ・バンドのコンサートが開かれる。

 2、3の両日は午前10時から「ヘリコプター防災・防犯フェスティバル」(午後3時まで)と、ホットスープやスイーツなどさまざまな食材を集めた「フードフェスティバル」(同5時まで)を開催。最終日の18日までは同ターミナル2階で、おもちゃコレクター北原照久さん所有のブリキ製の船の玩具、イラストレーター鈴木英人さんが海と船をテーマに描いたイラストが展示される。

 なお、いずれのコンサートも入場整理券が必要となり、開催当日に会場で配布。実行委では会場内の駐車台数に限りがあるため、公共交通機関での来場に協力を求めている。問い合わせは、実行委(東日本フェリー内)TEL0138・62・5435。(浜田孝輔)


◎30周年記念誌の刊行準備…歴風会
 創設30周年を迎えた函館の歴史的風土を守る会(歴風会、落合治彦会長)は、記念誌「函館の歴史と風土」の刊行準備を進めている。有識者らが執筆した函館の縄文時代から近現代までの歴史、同会の歩みなどを盛り込み、6月下旬の完成を目指している。このほど、函館パークホテルで編集会議を開き、会員らが出来上ったばかりの原稿のチェック作業を行った。

 同会は函館らしい街並みや建物などを、市民の手で後世に託す目的で1978年4月に発足。歴史的建造物や団体を表彰する歴風文化賞を83年度から継続している。30周年記念誌は佐々木馨副会長(道教育大函館校教授)を編集委員長に、昨年秋から準備を進めてきた。

 同会が10周年の時に刊行した「函館のまちなみ」のイメージをベースに、合併した旧4町村地域や縄文時代の文化、女性史、文学史など幅広い視点から函館を紹介する内容となる。校正のため刷り上がった原稿は110ページで、最終的には150ページのボリュームになる見込み。校正作業では、掲載する写真やタイトルのバランスなどについて会員らが意見を交わした。

 落合会長は「函館の歴史や街並みは、そこに人が生活しているから注目される。民間団体として30年活動をしてきたが、この伝統を残すためこれからも活動を続けていきたい」と話す。また、佐々木副会長は「函館全体の理解につながるような市民に親しまれる記念誌としたい。歴史的建物の老朽化など転機も迎えているが、函館の文化について考えるきっかけとなる1冊になれば」と話している。

 記念誌は市内の一般書店でも販売を予定している。(今井正一)