2008年4月3日(木)掲載

◎園亭周辺の門完成…旧岩船氏庭園整備
 函館市が復元整備を進めている「旧岩船氏庭園」(見晴町、通称・香雪園)の園亭周辺の門などが完成した。杉の皮ぶき屋根と、ヒバや竹を使用した正門は趣深い外観となり、前庭の池にかかる木橋や井戸の屋形なども整備。園亭周辺の復元は池を除くとほぼ完了し、また一歩、大正期の姿に近づいた。

 香雪園は、道内有数の呉服商・岩船家の別荘地として、19世紀末に造成した純日本庭園。復元工事は、造園などの有識者でつくる保存整備委員会の意見を基に、1918(大正7)年ごろの姿に戻すことを前提に2004年度から進めている。園亭は昨年度から市民に開放され、親しまれている。

 復元した正門の梁(はり)までの高さは159センチ。大人だと、やや中腰で身をかがめなくてはくぐることができない。市によると、当時の日本建築での標準とされる5尺3寸(約1・6メートル)とほぼ一致するサイズで、大正期の写真などを根拠に高さを決めた。

 木製の橋は、幅が約1・1メートル、長さは約3・6メートル。松の丸太を並べた上に、三和土を敷き詰めた。井戸の屋形は柱が4本だったが、発掘調査で判明した2本に戻された。このほか、玄関先にアカマツ3本が植栽された。

 見晴公園内では引き続き、板倉保存修理が進められているほか、本年度予算には園路広場整備費などが計上されている。(今井正一)


◎サクラ情報で連携…松前町 日本気象協会
 【松前】財団法人日本気象協会(東京)は本道最南端に位置し、道内のサクラ開花の一番乗りとなる松前町と連携し、町内にあるサクラの予想開花日、開花状況を同協会のホームページ(HP)、携帯電話の公式サイトなどで情報発信する事業を開始した。同協会北海道支社(札幌)によると、主要都市以外の町で開花予想などを実施するのは国内初の試みだという。0ァ40ィ(田中陽介)

 HPでは約1カ月間にわたり、250種1万本が咲き誇る道南のサクラの名所、松前公園(松前町松城)の様子を広くPRし、画面を通して気軽にサクラを眺めることができる。松前のサクラ開花の目安となる標準木は、松前城の入館受け付け前にある樹齢約80年のソメイヨシノ。この樹木と付近のサクラが5、6輪の花びらを見せ始めると開花宣言となる。

 同協会は「豊富な種類のサクラを大切にする地域住民の熱意と、その魅力を全国の人に知ってもらいたい」と、情報発信の企画展開を町へ打診。HPのほか、携帯電話各社の同協会公式サイトで「桜情報『北海道松前特集』」と題し、配信されている(一部有料)。

 内容は、ソメイヨシノや松前を代表する南殿(なでん)などの9種類の様子を写真などで紹介。町役場職員が定期的に観察し、同協会に情報を伝える。この標準木の状況は松前町のHP、テレビやラジオの天気番組などでも活用される。

 前田一男松前町長は「サイトで咲き具合を確認し、実際に松前にも足を運んでもらい、暖かな風に舞う鮮やかな色の花びらと甘酸っぱい香りを満喫してほしい」とし、同協会北海道支社気象情報課の国田博之技師は「早咲き、中咲き、遅咲きと長期間、豪華絢爛(けんらん)に咲く松前のサクラの様子を随時伝えていきたい」と話している。

 携帯電話サイトは各社ともにメニューから天気情報関連へ。松前町HPはhttp://www.e―matsumae.com/、同協会HPはhttp://tenki.jp/の「桜子ちゃん花見情報」。

 同協会が1日付で発表した松前町のサクラ開花予想日は、平年より9日早い21日。29日―5月18日には同公園一帯で「第61回松前さくらまつり」(実行委主催)が開催される。


◎【新紙面企画】ガラス職人・菅原千香子さん(25)
 肌寒い風が吹く路地から一歩足を踏み入れると、室温28度の別世界が広がる。函館市末広町のガラス工房「ザ・グラス・スタジオ・イン函館」(水口議社長)の作業場。奥には熱さ約1200度の溶解炉がどっしりと構える。

 「魅力はうまく言えない。でも、もうガラスから離れられない」。ただひたむきに吹きガラスに取り組む。仕事は同工房で販売するグラスや小物などの制作。小柄な体をフルに動かし、機敏に立ち回る。水口社長(56)と2人の作業は「あうんの呼吸」で進む。一日中ほぼ立ちっぱなしだが、「じっとする作業は苦手だから」とさらり。

 鉄の棒状の筒の先に溶けたガラスを巻き付け、息を吹き込んで膨らませる。「ゆっくり、慎重に。最初のひと吹きで形が決まる」。真剣な眼差しで、クルクルとガラスを回し、形を整えていく。

 小学5年生の時、家族旅行で訪れた函館で見た吹きガラスに魅せられた。「函館で職人になりたい」。そう宣言して7年後、東京都内の高校を卒業してすぐ弟子入りした。「迷いはなかったし、職場は函館以外考えなかった」。しんの強さが垣間見える。

 「たった1人でも気に入って使ってくれたらいい」。熱い思いを秘め、きょうもガラスと向き合う。 (新目七恵)


◎不発弾5発回収…博物館分館
 2日午後3時20分ごろ、函館市五稜郭町44の五稜郭公園内にある市立函館博物館五稜郭分館の男性学芸員(51)から、「収蔵庫で砲弾のような物が見つかった」と函館中央署に届け出があった。処理要請を受けた陸上自衛隊第11旅団(札幌)が同日夜、爆発の危険性がないことを確認し、回収した。

 陸自函館駐屯地広報室などによると、見つかったのは箱館戦争(1868―69年)で使われたとみられる砲弾2発(全長約23センチ、直径約10センチ)のほか、第二次世界大戦中の旧日本軍のものとみられる「75ミリ砲弾」1発(同)、発煙筒1発(全長約16センチ、直径約8センチ)、ロケット演習弾1発(全長約44センチ、直径約3センチ)の計5発。いずれも信管はなかったが、「中に火薬が残っている可能性もある」(同旅団担当者)という。

 砲弾は同館1階の収蔵庫内の棚に木箱に入った状態で保管されていた。同館は昨年11月末で閉館していて、収蔵品を整理していた同学芸員が28日午前に見つけた。発見から5日後に警察に届け出たことについて、長谷部一弘館長は「見つかった砲弾は同館の蔵品目録にはないもので、確認作業に手間取った」と話した。

 同旅団第11後方支援隊の専門隊員2人が2日午後6時ごろ、現場に到着し、砂の入った木箱の中に砲弾5発を入れ、手作業で撤去した。不発弾は3日にも同旅団真駒内駐屯地に運び、さらに詳しく調査した後、処分するという。


◎いじめ倍増…昨年・函館法務局管内
 函館地方法務局は、同法務局管内(渡島・桧山と後志管内の一部)で昨年発生した人権侵犯事件の受理状況をまとめた。受理件数は206件で前年比57件(38・3%)増。学校でのいじめが一昨年より倍増したほか、夫婦や家族間の「暴行・虐待」の増加も目立った。函館市内では昨年8月、いじめを契機にした少年の集団暴行死事件も起きており、同法務局は「子どもたちに思いやり、人権の大切さを自覚してもらうような働き掛けを今後も拡充させたい」(人権擁護課)としている。0ァ40ィ(森健太郎)

 受理した侵犯事件の内訳は、公務員や教職員らによる人権侵害が約2割の41件で、このうち学校でのいじめは前年比8件増の15件に上った。

 残る165件、約8割については家族や夫婦、近隣同士などが占め、このうち最も多かったのは家庭や職場などでの「強制・強要」の59件(前年比11件減)。中でも夫から妻に離婚を迫るケースが22件と大半を占め、「相談者には60、70代の年配の人も多い」(同課)という。このほかセクハラ(性的嫌がらせ)が1件、ストーカーが2件あった。

 「暴行・虐待」は、前年比17件増の58件。内訳は夫から妻が25件(同2件減)、親から子が11件(同7件増)、子から親が5件(同2件増)。妻から夫に対する暴力も1件あった。このほか、騒音をめぐる近隣間のトラブルなど「住居・生活の安全関係」が23件(同17件増)だった。

 相談件数は、前年比1010件(29・7%)減の2388件。一昨年に相次いだ架空請求による被害の減少が要因とみられるが、同課は「依然として相談窓口として周知不足。潜在的に悩みを抱えた人はもっと多いはず」と話す。一方、いじめに関する相談は65件で前年比47件増えた。特に昨年8月末に起きた集団暴行死事件以降、被害者本人や保護者からの相談が39件と急増した。

 近年のいじめは友人から仲間外れや無視、「死ね」「キモイ」などといった言葉による暴力が目立つといい、「子どもたちのいじめは年々陰湿化、巧妙化している。加害者と被害者が入れ替わることも頻繁にあり、学校側も実態を把握しきれていないのが現状」(同課)と分析している。人権に関する相談電話はTEL0138・26・5686。


◎詞『五稜郭の藤の花』の作曲公募
 函館市内の五稜郭公園にあるフジ棚に親しんでもらおうと、市民団体「五稜郭の藤の花の会」(山崎淳子代表)が、フジ棚を題材にした詞「五稜郭の藤の花」の作曲を公募している。花が見ごろとなる6月までにCDをつくり、市内のコーラスグループなどに歌ってもらう計画。山崎代表は「フジ棚の存在を再認識してもらうきっかけにしたい」と話している。0ァ40ィ(宮木佳奈美)

 作詞したのは千葉市に住む会員の田口徹さん(62)。日本詩人連盟会員の田口さんは、箱館奉行所復元整備事業に伴い、フジ棚の移設が検討されていることを知り、保存への思いを詞に込めた。「詩人連盟の研究会で好評を得たので、函館市民に歌ってもらえたらありがたい」としている。同会は「せっかく詞を作ってもらったのだから、曲を付けて皆で歌ってはどうか」という地元会員の声を受け、作曲を募ることにした。

 山崎代表は昨年6月から市民団体「五稜郭藤棚を守る会」を立ち上げ、フジ棚の保存に向けた陳情や署名活動を展開している。一方、これらの活動とは切り離して、多くの市民とフジ棚を楽しむ目的で「五稜郭の藤の花の会」を発足し、6月1、8日に花見会を企画した。山崎代表は「完成した曲をフジの花の下で皆で歌いたい」と話している。

 市教委は本年度の発掘調査で、現在フジ棚がある場所と復元する表門の位置が合致するかどうか確認し、結果が分かり次第、方針を決める考え。

 応募締め切りは5月6日必着。形式はCD、MD、カセットテープ、楽譜のいずれかで同会が編曲する。著作権は同会に帰属するが、作曲者名は記載される。結果は同15日ごろまでに本人に通知する。住所、氏名、電話番号を明記し、〒041―0806函館市美原3―8―23、山崎淳子さんへ。問い合わせは山崎代表TEL0138・46・5549。

 『五稜郭の藤の花』


 1 胸いっぱいに 風を吸い込み

 市電に揺られて 訪れるのは

 藤が見ごろの 五稜郭

 橋を渡れば 迎えてくれる

 八十余歳の 花の門

 未来に このまま 残したい

 ああ 函館に その生命(いのち)

 心に深く 刻まれる

 2 かんざし舞うような 花のトンネル

 人が安らぐ 憩いの園は

 歴史の跡の 五稜郭

 季節の色彩(いろ)は 優しさ溢(あふ)れ

 石垣に沿う 花の海

 景色を 変わらず 伝えたい

 ああ 函館に その香り

 甘く流れて 身を包む

 3 泉が湧いて 広がるように

 揺れて連なり 伸びていく

 花穂のさざ波 五稜郭

 夏に変われば 涼しさ運び

 冬には雪に 格子影

 巡る年にも 見続けたい

 ああ 函館に その光

 あの淡色が 眼に浮かぶ

 (終)