2008年4月8日(火)掲載

◎夢いっぱい コンブとイカで新幹線…福島の鳴海さん
 【福島】コンブなどの特産でものづくりに励み、古里の魅力を伝える福島町日向460、鉄工所経営の鳴海健児さん(68)が、2015年度までに開通する北海道新幹線の先頭車両を仕上げた。全長1メートル30センチ、高さ22センチ、幅75センチ、重さ約4キロで、マイカのイメージを重ねた。計3台つくり、青函トンネル記念館(町三岳32)に1台寄贈を予定し、JR北海道も展示スペースの貸し出しを決めた。鳴海さんは「この新幹線は福島の素晴らしさと未来への希望が詰まった夢の乗り物」と声を弾ませている。

 鳴海さんは「自分の特技で地域貢献を図りたい」と昨年4月、町役場に「北前船」をモチーフにしたコンブの宝船を届けて以来、知人の結婚式には祝船、母校の福島小には干支(えと)のネズミの縁起物などを寄贈してきた。

 今回は「ひと目で福島を象徴し、夢があるものを」と、各種イベントで地域活性化に取り組む同町三岳73、中塚、建設社長の中塚徹朗さん(50)がアイデアを提供。ペットボトルや廃材で型枠を作り、コンブ2キロ分を張り合わせ、先端にスルメを付けた。

 鳴海さんは1975年から88年まで、青函トンネル工事に土木機械担当として参加。当時の苦労や仲間との充実した日々を回想しながら製作したという。「今度は(塗料として)イカスミを使おう」と夢を加速させている。(田中陽介)


◎湊町長ら 一両日にも聴取へ…森町官製談合疑惑で
 森町が2005年に発注した消防防災センター(同町森川町)の建設工事の入札で、町が主導した官製談合で落札業者が不正に選定された疑いが7日までに強まり、道警捜査二課などは一両日中にも、偽計入札妨害の疑いで、湊美喜夫町長(79)ら当時の町幹部と、工事を落札した建設業者2社の役員ら数人の事情聴取に乗り出す方針を決めた。容疑が固まり次第、強制捜査に踏み切り、不正入札に至る経緯や癒着の構図など事件の全容解明を進める。

 関係者によると、疑惑が持たれているのは、05年9月に行われた同町消防防災センターの建設工事の指名競争入札。町側が入札業者の選定直前に新たに参入してきた、東京に本社を置く準大手のゼネコンを、当初は地元3業者で組んでいた町内最大手の建設会社との共同企業体(JV)に組み替えるよう働き掛け、公正な入札を妨害した疑いが浮上している。

 問題の工事の入札には、同JVの2社を含め計14社が5つのJVを組んで参加。同センターの予定価格は5億4190万5000円だったのに対し、同JVの2社は予定価格ぎりぎりの5億570万円で落札した。落札率は98%。

 同センターは05年4月の旧砂原町との合併に伴い、町消防本部と防災センターを併設する形で新設され、06年10月から業務を開始。延べ床面積は約2360平方メートルで、総事業費は約8億5000万円。建設には合併特例債を活用した。

 町の入札参加業者を審査する「入札参加者指名選考委員会」の委員長を務める阿部眞次副町長は「今回の入札でJVの組み替えがあったこと自体、分からないし、報道で初めて知った。どんな入札も規定に従い公明正大に行われている」と強調。「町側が参加業者への指示や働き掛けをすることなどはあり得ないし、あってはならない話で、湊町長も『(入札に関して)指示したことはない』と言っている」と話している。

 町側が入札に参加したJVの組み替えや業者間の談合が主導していたとされる疑惑について、湊町長は7日、「現在報道されているうわさのような話は全く身に覚えがなく、今の時点で町長としてお話しすることは何もない」とのコメントを発表した。


◎ベロタクシー運行開始
 函館市内で7日から、環境に優しい乗り物として脚光を浴びている自転車タクシー「ベロタクシー」が運行を始めた。道内では初めて。導入したのは、北大水産学部3年の茂呂信哉さん(22)が設立した「トライワッカ北海道」。西部地区を拠点に3台を走行させ、観光客の新たな足となって函館の魅力をアピールする。

 ベロタクシーは、ドイツで開発された電動アシストモーター付きの三輪自転車。車体はリサイクル可能なポリエチレン製で、排気ガスを一切出さず環境に配慮した交通手段として注目されている。車両は動く広告媒体にもなり、欧州を中心に日本でも22カ所で運行されている。前席に運転手1人、後部席に大人2人が乗車でき、速さは平均時速約11キロと早歩きよりも少し早い程度。坂道の多い西部地区でも歩き疲れずに、ゆっくりと町並みを堪能できるという。

 初日は午前10時に金森洋物館前(末広町)から運行をスタート。オレンジと赤色などのカラフルな広告が施されたベロタクシーは、さっそうとベイエリアを駆け抜けた。茂呂社長自らドライバーとして乗車し、道行く観光客に声を掛けてPR。「期待を裏切らない走りで観光客に喜んでもらえるサービスを提供したい」と意気込みを語った。観光シーズンの本番に向け、さらに2台増車する予定だ。

 同社は昨年12月に設立。これに先立ち同11月から1カ月間、仙台市で運行しているベロタクシーを1台借りて函館市内で試験運行し、約200人が乗車した。茂呂社長は「ベロタクシーを通じて観光客に地元の人と触れ合う機会を提供し、函館の良さを売り込みたい」と地域活性化への思いも込める。

 料金は1人15分2000円から。4月から11月まで運行する。不定休で天候などにより運休する場合もある。午前11時から午後5時まで、金森赤レンガ倉庫付近を中心に西部地区やJR函館駅付近を巡回する。乗車する際は走行中に呼び止めるほか、電話予約もできる。予約はTEL080・3290・0476。(宮木佳奈美)


◎函館の“顔”22点…13日から画家「木村捷司記念室」肖像画展
 【七飯】生涯にわたり道南で創作活動を続けた画家、木村捷司さん(1905―91年)の作品約600点を収蔵・展示する「木村捷司記念室」(七飯町鳴川1)は、開室15周年の記念事業の第1弾として、13日から昭和の函館の経済、文化などを支えた重鎮の「顔」を集めた肖像画展を開催する。市立函館図書館を設立した岡田健蔵氏(1883―1944年、市中央図書館所蔵)やトラピスト修道院初代院長の岡田普理衛(ジェラール・プーリエ)氏(同修道院所蔵)など各施設が所蔵し、普段は見ることができない作品ばかり。同室を開設する二男で芸術家の裕行さん(62)=琢磨工房社長=は「生き生きとした表情を見てほしい」としている。(笠原郁実)

 木村さんは函館市に生まれ、27年に東京美術学校(現・東京芸術大)に入学し、卒業後は七飯町に居を構えて創作活動を続けた。38年から終戦にかけては幼少期を過ごした樺太を、戦後は道南各地の風景など身近な題材、70年からはヨーロッパやアジアなど世界各地を訪れ、自然や文化、人々の生活を描いた。

 今回テーマとした肖像画は生涯にわたって数多く手掛けた。高いデッサン力と対象人物の内面や人生が垣間見える描写に、深い観察力を感じさせる。

 展示されるのは同室に所蔵する10点に加え、各企業や施設の協力を得て借りた作品を含め全22点に上る。合同容器の設立者で石川啄木の研究を支援した杉崎清一郎氏、魚類内蔵の飼料化の技術を確立した日本化学飼料設立者の竹井俊郎氏、棒二森屋デパートを開店させた一人の萩野清六氏のほか、天佑寺を再建した大僧正・山口知順氏、函館ハリストス正教会長司祭の白岩徳太郎氏など明治に生まれ、函館経済・文化の基盤を作った故人が顔をそろえる。

 交流を重ねた岡田健蔵氏の肖像画は43年、当時市内青柳町にあった市立函館図書館館長室で描いた。陽光を背に文献を読む姿は、私財を投じて図書館建設に力を注いだ岡田氏の人柄と人生が映し出されている。

 裕行さんは「函館に活気があった時代のユニークな人物像を若い世代に見てもらいたい」としている。同企画展は6月29日まで。赤松街道沿いの同記念室には、世界の風景画や素描などのテーマのフロアもある。

 11月まで毎週日曜、午前11時から午後5時まで開館している。入場料は500円。問い合わせは同記念室TEL0138・65・2324。


◎道町村会 寺島会長が支庁制度改革最終案に反対姿勢
 【乙部】道の支庁制度改革をめぐり、道町村会長の寺島光一郎乙部町長は7日、函館新聞の取材に対して、現行14支庁を9総合振興局に再編する最終案について「14支庁全体で職員削減や合理化を進めることが先決だ。中途半端な改革は地方に混乱をもたらす」と述べ、道町村会として最終案への反対姿勢を明確に打ち出す考えを示した。

 寺島会長は14支庁を6支庁に削減するとしていた当初案が、最終案で9支庁(総合振興局)になった経緯が「不透明で根拠も明確でない」と批判。「(最終案では)江差・浦河両町など、衰退を懸念する支庁廃止地域の不安は解消できない」と述べた。

 5つの支庁廃止地域に置く振興局の機能や権限も不明確とし、「振興局―総合振興局―本庁の3重行政は地方を混乱させる」と述べ、道州制や地方分権の推移を見守りながら(1)14支庁体制での組織合理化や職員数削減(2)本庁部局の大幅削減(3)道内のほぼ全域で支給されている巨額のへき地手当見直し―などで「最終案以上の行財政改革は実現できる」との見方を示した。

 今後は、最終案に慎重姿勢を示す道議会最大会派の自民党・道民会議とも連携、6月の定例道議会で支庁設置条例改正案の提案を目指す構えの道をけん制する考えだ。(松浦 純)


◎函館7−13人に…今年1月時点ホームレス
 厚生労働省は7日までに、今年1月時点のホームレスの人数が、全国で1万6018人に上ると発表した。昨年同月と比べて2546人(約14%)の減。全国、道内でホームレスは減少傾向にあるが、函館市は13人で同6人増加している。

 実態調査は「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」に基づく施策効果の把握を目的に、03、07年にも行われた。同法ではホームレスを「都市公園、河川(中略)駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」と規定しており、各自治体の担当者が1月、公園や駅などを巡回し、目視で人数を確認した。

 函館での確認場所別の内訳は、都市公園が2人、道路が1人、駅舎が10人。男性10人、女性は3人だった。調査を始めた03年は25人、07年は7人と減少していたが、ことしは前年比増に転じた。

 全国の内訳は男性1万4707人、女性531人、性別不明780人。都道府県すべてで確認され、最多は大阪府の4333人。これに次ぐ東京都の3796人との合計が、全体の過半数を占めている。03年は2万5296人、07年は1万8564人。

 道内は145人と同16人減。札幌市は109人で同23人減、旭川市は函館と同じく13人で同3人増だった。

 厚労省は「地域差はあるが、全体的な減少傾向は各自治体が取り組んだ支援効果の表れでは」と分析。道内のホームレス施策は札幌市が総合相談推進事業を行っているものの、函館市を含め他の自治体で特別な取り組みはなく、同省は「人数が少ない自治体も、道と連携するなどして施策を検討してほしい」としている。(新目七恵)