2008年5月12日(月)掲載

◎企画【いよいよ始動 新行財政改革・中】
業務の効率化/職員の能力 向上が課題
 人員が削減された分の仕事は、残った職員でこなしていかなければならない。新行財政改革5カ年計画で、函館市が掲げた合言葉は「4人の仕事を3人で」だ。西尾正範市長は「これまでの行革は、市バスや保育園の民営化、業務の外部委託など、職員削減に理由が付けられた。しかし、これからはそうでなく、特別職も職員も、仕事の作風自体を変えなければならない」と語る。市長は一例として、資料やあいさつ文作りの業務をやめる考えを示した。

 廃止できる仕事は思い切ってやめ、残る仕事は徹底的にやり方を見直す。

 業務の効率化で、大きな成果を挙げている部署がある。市民部では昨年3月から戸籍電算システムを導入し、大幅な人員削減と経費節減が図られた。2007年度の市包括外部監査によると、システム導入や稼動費用で10年間に10億5000万円の経費がかかるが、職員15人の削減が可能となり、10年間で15億円の経費が節減される。差し引き約4億4000万円の経費が浮く結果となった。

 包括外部監査人は「コンピューターシステムの導入で、これだけのコスト削減を実現するのは民間企業でもまれ。大きな成功事例」と高く評価した。

 ただ、業務の廃止や効率化を可能な限り進めても、人員削減で職員の仕事が増えるのは間違いない。市役所職員労働組合は「10分待たせた窓口業務が15分になるかもしれない。そこは市民の皆さんに理解、我慢してもらうしかない」と語る。

 また、人員削減は職員や職場のゆとりにも影響する。ある部長は「以前は後輩職員への目配りや、仕事の進み具合を見てアドバイスする中堅職員がいたが、人員削減でそうした余裕がなくなっているように見える」と語る。

 そのためにも、職場全体の活気の維持や、職員1人1人の能力向上が欠かせない。新計画では、職員研修の充実や民間への研修派遣、職員の提案制度の拡大などを掲げている。また、頑張った職員が報われるように、市は職員の勤務実績を給与に反映させるシステムを、早期に導入できるよう検討している。

 市総務部は「職員は市の財産。少人数で行政課題に対応していくために、職員個々の能力を高め、活用していくことが欠かせない」と話す。(高柳 謙)


◎タケノコ採り 気を付けて…11日も男性が一時不明に
 【上ノ国】上ノ国町で11日午前、木無岳(647メートル)付近でタケノコ採りをしていた江差町の無職男性(72)が行方不明になったが、警察と消防が無事救出した。町内では10日にも遭難騒ぎがあったばかり。春先の気温上昇の影響で、山間部では例年より1カ月近くもタケノコの成長が早まっており、町や警察では注意を呼び掛けている。

 江差署によると、男性は11日午前6時半ごろ知人の男性と2人で入山。同7時半ごろから行方が分からなくなった。同署と上ノ国消防署は、正午すぎから22人態勢で周辺を捜索。山林で笛を吹いたり大声で助けを求めている男性を発見した。町役場も職員約30人が捜索活動に備えて町役場で待機した。

 上ノ国は道南有数のタケノコ産地だ。ことしは春先の気温上昇に伴い雪解けが早く、タケノコの成長も例年より1カ月近く早まっている。既に大勢の愛好家がタケノコを求めて入山している。

 しかし、毎年のように遭難や行方不明騒ぎが頻発。町や関係機関は対策に頭を悩ませている。2006年6月には2週間で4人が行方不明になり、宮越の道有林に入山した町内の男性(当時77)は行方不明のまま。このほか、山中で体調不良を訴えた函館市の60代女性は、搬送先の病院で死亡した。

 昨年6月にも、木無岳付近に妻と入山した町内の男性(当時66)が死亡。今月10日にもタケノコ採りで入山していた男性が一時行方不明になる騒ぎがあったばかりという。

 遭難者はいずれも、天候不良、体の不調、装備や知識の不足などの無防備ぶりが目立つ。捜索に追われる町や同署は@天候の確認A体調の管理B家族に行き先を知らせるC目立つ服装での入山D携帯電話や非常食の携帯E笛、ラジオ、懐中電灯の携行―など、細心の注意を払うよう求めている。

 一方、湯ノ岱国有林で檜山森林管理署が運営する「上の沢タケノコ園」は、昨年5月に国有林内で大規模な地滑りと土石流が発生。治山工事が続いているため昨年に続き開園を見送る方針という。 (松浦 純)


◎戦没者の霊 慰める 箱館戦争の供養祭
 1869(明治2)年に終結した箱館戦争。5月11日は新政府軍が旧幕府軍を総攻撃し勝利を決め、新選組副長土方歳三が戦死した命日とされている。函館市内では同戦争の戦没者の冥福を祈る供養祭が各地で行われた。出席者は激しい戦闘に倒れた戦没者へ思いを胸に霊を慰めた。(小橋優子)(浜田孝輔)

 ○…高龍寺(船見町21)の境内にある「傷心惨目(しょうしんざんもく)の碑」前では、箱館戦争で死を遂げた会津藩士を供養する碑前祭が行われた。函館福島県人会(熊坂成剛会長、会員60人)の会員16人が参加。斬殺された戦没者の霊を慰めた。

 高龍寺は箱館病院分院として旧幕府軍負傷兵の手当てを担った。総攻撃で新政府軍側が乱入。傷病兵を殺傷したり寺を放火するなどし、多数の会津藩士が犠牲となった。戦没者を供養しようと旧会津藩有志により80(同13)年「傷心惨目の碑」が建立され、同会は1961年以降毎年慰霊に訪れている。

 同寺の有馬美博布教長ら3人の僧呂が読経。参列者一人一人が焼香した後、有馬布教長が「私たちが豊かな生活をしているのは、犠牲となった多くの故人が残した土台があるからだ」と功績をたたえた。また、熊坂会長は「毎年この日は福島の故郷を思い出してほしい」と話していた。

 ○…五稜郭タワー(五稜郭町43、中野豊社長)前では、ことしで37回目となる箱館戦争戦没者供養祭が行われた。地元の町会や団体の関係者など約60人が参列し、志半ばで命を落とした先人たちをしのんだ。

 中野社長が祭文を読み上げた後、観音寺(同町28)の中村裕康住職らが読経する中、参列者は墓前へと歩を進めて焼香した。また、供養祭は17、18の両日に箱館戦争最後の地・五稜郭を主会場に開かれる「第39回箱館五稜郭祭」の協賛事業になっていることから、イベントの成功・無事と好天に願いを込めていた。


◎4月 火災多発25件…函館
 函館市内で火災が相次いでいる。4月の1カ月間の発生件数は25件で、1998年4月の22件を10年ぶり上回ったことが市消防本部のまとめで分かった。今年は雪解けが早く進み、乾燥した枯れ草などが焼ける野火の増加が要因とみられる。同本部は「春先は空気が乾燥し、風が強く吹く時期。ごみ焼きやたばこの投げ捨ては絶対にやめ、火の取り扱いに細心の注意を」と呼び掛けている。

 4月の火災の内訳は、建物火災が11件(前年同期比7件増)で最も多く、草地で枯れ草などが燃える野火が7件(同)、ごみ収集車の火災が5件(同3件増)などと続いた。建物火災の内訳は、住宅4件、飲食店2件、作業場2、店舗、工場、機械小屋がそれぞれ1件だった。

 特に野火は今年に入り、既に11件発生していて、昨年の同時期よりも1件多い。空き地などでごみ焼きをしていて、その火が強風にあおられて周囲の枯れ草に燃え移るケースなどが目立つという。4月15日には、同市東山町131の空き地で、近所の男性がごみ焼きをしていたところ、周囲の枯れ草に燃え移り約3300平方メートルを焼いた。

 同課は「春は空気が乾燥しており、いったん火災が発生した場合、火のまわりが早く大惨事につながりかねない」と警戒を強めており、予防策として▽たき火は絶対しない▽たばこのポイ捨てをしない▽子どもの手の届くところにライターやマッチを置かない―などを挙げ、注意を呼び掛けている。 (水沼幸三)