2008年5月13日(火)掲載

◎ホタテの耳づり作業ピーク
 【鹿部】内浦湾(噴火湾)に面した鹿部町などで、養殖ホタテ貝の「耳づり」作業がピークを迎えている。

 貝殻の付け根部分に小さな穴を開け、テグスを通してロープにつるしていく作業で、毎年春に行われる。昨春生まれたのをかごに入れ、海中で6、7センチまで育てた稚貝をこの時期に「耳づり」し、再び海中に垂下して10センチほどになる来年3月ごろに出荷する。

 同町宮浜、漁業佐藤誠一さん(60)方の作業場では、近所のアルバイトの主婦ら12人が手際よく穴にテグスを通し、次々とロープにくくり付けていた。佐藤さんは「海に戻した貝がこれからちゃんと育ってくれれば」と話していた。作業は6月上旬まで続くという。(宮木佳奈美)


◎七飯でも硫化水素自殺…1月に
 全国で硫化水素による自殺が相次ぐ中、道南地方でも今年1月、七飯町内で硫化水素を発生させて1人が自殺していたことが12日までに分かった。硫化水素での自殺は、周囲の人が二次被害を受ける危険性もあるだけに、道南のドラッグストアでは発生に利用されかねない成分の入った入浴剤の販売を自粛する動きが広がっている。厚生労働省と道も同日までに、薬業の関連団体に注意を呼び掛ける文書を送付した。

 函館中央署などの調べによると、1月21日午前8時40分ごろ、七飯町内の公共施設の駐車場に止まっていた乗用車内で20代の男性が倒れているのを、出勤してきた町職員が発見。男性は既に死亡していて、車内からは遺書とみられる走り書きのほか、入浴剤などの容器、ビニール袋などが見つかった。

 車の助手席の窓には「危険なので近づかないように」との趣旨の張り紙があり、車内の窓にはガムテープで目張りもしてあったという。男性は中毒死したとみられ、同署は男性が車内で硫化水素を発生させて自殺を図ったとみている。

 ほかの都府県で起きたケースの中には、家屋などで発生した硫化水素で近隣の住民や駆け付けた警察官らが中毒にかかるケースもあったが、道南ではこうした二次被害は起きていない。

 硫化水素は卵が腐ったようなにおいが特徴で、高濃度の場合は一呼吸しただけでも死に至る危険があり、同署などは「刺激臭など硫化水素が発生している可能性があれば、むやみに現場に近づかず、速やかに警察や消防に通報してほしい」と注意を促している。


◎対象入浴剤、販売自粛… 道南のドラッグストア 道が注意喚起
 硫化水素による自殺が続く中、行政と業界も一体となって未然防止に乗り出している。

 道はこのほど、庁内の関係課の職員を集めた連絡会議を開き、対応策を協議。社団法人道薬剤師会など道内3団体に向け、「(硫化水素の発生に利用されかねない)製品の販売は必要に応じ、身元及び使用目的を確認すること」などとした注意喚起の文書を送ったほか、全支庁に対しても注意を求めた。

 渡島管内の21店舗を含む全国でドラッグストアを展開するツルハ(本社札幌)によると、8日には全店舗での対象入浴剤の店頭販売を自粛。希望者には個別対応し、販売に応じている。一方、渡島・檜山両管内で18店舗を展開するサッポロドラッグストア(本社札幌)も、10日には全店舗での対象商品の販売を中止した。

 両社も加盟する全国組織「日本チェーンドラッグストア協会」(本部横浜市)は9日、全国の加盟店に対し同様に店頭販売中止などを求めている。


◎イカゴロ海中還元 再開…乙部
 【乙部】乙部町豊かな浜づくり協議会(会長・寺島光一郎町長)は12日、道の中止要求で4月から中断していたイカゴロ(イカ内臓)の海中還元試験を再開した。規制の権限がある江差海上保安署に試験実施を事前に届け出て了承を得た。道からは12日になっても町に通達改正などの連絡がないため、道側の正式な通知を待たずに再開に踏み切った。0ァ40ィ(松浦 純)

 寺島町長は「道は2005年に試験実施に関する特区申請時から、国が試験を適法と認めたことを承知していたが、3年間も違法な規制を続けてきた。道の圧力に屈せず、法律を守って整然と試験を実施している漁業者の努力と情熱に敬意を表したい」と話した。

 この日は漁船2隻が館浦沖約500メートルの日本海で、急速冷凍で鮮度を保ったイカゴロ100キロを10キロごと飛散防止用のネットで包み、鉄製カゴに納めて水深約8メートルの海底に沈めた。

 町内の漁業者は本年度、試験のために水揚げ額の1%を自発的に拠出。イカゴロの冷凍加工や資材購入、作業に使う漁船の燃料などを負担している。松崎敏文乙部船団長は「環境に配慮し、徹底した管理下で試験を行っている。道が懸念している廃棄物の投棄ではないことは明らかだ」と語る。

 同協議会は10日に水中カメラで撮影したイカゴロ投入地点の写真も公開した。鉄製カゴの周辺では、磯焼けの影響で白く変色した岩石を覆い多量の海藻類が生い茂り、カレイやナマコなどが群がっていた。町は「試験を継続して効果やメカニズムを解明すべき」としている。


◎企画【いよいよ始動 新行財政改革・下】
市民の役割/時代認識の共有が必要
 行財政改革は、市民にも手数料値上げなど応分の負担を求める。このため行革で生まれた財源は本来、市民生活の向上を図る事業に役立てられなければならない。しかし、国の三位一体改革などで函館市の地方交付税は5年間で50億円落ち込み、市税収入も伸び悩んでいるため、他の自治体と同様に「財源不足を埋める財源」という性格となっている。

 事務事業の見直しによる歳出削減で、廃止される事業や制度が出ることも予想されるため、行革の推進には市民の理解と協力が欠かせない。そのためには、市の現状や時代認識を市と市民が共有することが求められている。

 こうした背景から市は、新行革計画に臨む姿勢として「行政と市民が一緒に考え、ともに汗を流す」ことを基本に掲げ、計画を進める大きな視点のひとつに「市民と協働し、信頼される市役所づくり」を挙げた。取り組みとして「自治基本条例の制定」「市民と行政が力を合わせたまちづくり」などの項目を据えている。

 自治基本条例は「自治体の憲法」といわれ、市は来年4月の施行を目指し、市民とともに策定作業を進めている。住民と行政、議会の役割などを明確化し、まちづくりの基本方向を定める。

 市民との協働は具体的に、NPO法人や市民活動団体と連帯し、活動支援や育成に力を注ぐ。市民も職員もまちづくり活動に積極的に参加し、地域の活力を生み出していく目標を掲げた。西尾正範市長は「職員削減や財政の健全化だけでなく、市役所全体が活発に活動する組織となり、市民とともに歩み、まちの元気をリードしていく。それが新行財政改革の目的」と語る。

 市民と行政が力を合わせるとともに、両者の役割分担を明確化していく。市民も「何でも行政がやる時代は終わった」という意識を持つことが必要となる。それは「自分たちや地域でできることは、しっかりやる。我慢するところは我慢する」(市OB)ということだ。

 西尾市長は「市民の手による、市民のための、市民の市政を実現する。そのために市民と協働し、一緒に市政を推進し、市民に信頼される市役所をつくっていくことが大きな課題」と強調する。

 西尾市政の行財政改革は、時代の流れに沿った「市民の自治の拡大」が特徴だ。(高柳 謙)


◎愛の言葉に観客ホロリ…「夫婦の手紙」全国コンクール公開発表会
 【松前】松前町松城の松前公園内の夫婦(めおと)桜前広場で11日、「『夫婦の手紙』全国コンクール公開発表会」(実行委主催)が行われた。接ぎ木でソメイヨシノと八重ザクラが肩を寄せ合うように咲く夫婦桜(樹齢75年)の近くで、コンクール入選作品7点を町内の高校生2人が読み上げた。感情を込めて夫婦ならではの愛情や絆(きずな)、苦労などを紹介。心の琴線に触れる内容に、目を閉じて聞き入る男性や涙をぬぐう女性の姿が見られた。

 同コンクールは夫婦桜を全国にPRするとともに、手紙で夫婦の愛情を表現してもらおうと企画。全国から1066通の応募があり、4月に町民100人が審査した。

 朗読は松前高校の船木歓喜君(2年)と阿部幸恵さん(3年)が担当。妻や夫への感謝の言葉が並ぶ約2分間の“ドラマ”は、感動的で濃密な時間を演出した。

 最優秀作品に輝いた石川県金沢市の西森茂夫さん(84)の「亡き妻へ」を船木君がしっとりと読み上げると、感動はクライマックスに達した。5年前にガンで妻が亡くなる前に発した言葉「ここの桜はきれいね。今年は見られないかもしれない」の場面では会場も静まり返り、西森さんが天国の妻に寄せたメッセージ「ぼくの妻はきみだけ。天国にも桜は咲いてますか」の一節ではすすり泣きが漏れた。

 疋田清美実行委員長(松前観光協会長)は「このような素晴らしい時間を過ごすことができてうれしい」と話し、優秀賞の主婦矢野静香さん(33)=札幌市=は「18歳まで松前に住んでいたので、感動と喜びもひとしお」と話していた。

 応募作品の一部は本としてまとめられる予定で、実行委は「製本されれば、さらに多くの人に感動を与えられるはず」としている。(田中陽介)