2008年5月15日(木)掲載

◎“自然の思い”水墨画に込め…天野純男さん 廃校をアトリエに
 【八雲】京都市生まれの水墨画家、天野純男さん(67)は15年前から八雲町に移住し、1990年に廃校となった町立赤笹小学校の校舎(同町桜野)をアトリエに、水墨画制作を続けている。「山や川などの美しい自然に魅了された」と話す天野さん。かつては子どもたちのにぎやかな声に包まれた校舎を拠点に、精力的に制作活動に取り組む日々―。「ピュアな気持ちで素直に表現できるようになった。自然の魅力を体で吸収し、20年後に描く自身の絵がどれだけ“自然の思い”を伝えられているのか楽しみ」と目を輝かせる。

 天野さんは西陣の帯のデザインを手掛ける「織物図案師」だった父の影響を受け、20歳で同図案師の道に進んだ。その後、著名な水墨画家の展示会で水墨画と出合い、「筆一本で表現できる素晴らしさと墨の色合いに引かれた」と、83年に同画家に師事し、手法や技術を学んだ。

 京都で水墨画の制作を続ける中、「自然に触れながら取り組めば、もっと純粋な気持ちで制作できるかもしれない」との思いが高まり、知人の紹介で同小の校舎を視察。山や川に囲まれた環境と、校舎内の雰囲気が気に入り、93年に妻と移住した。校舎は町から借り受けた。

 校内には教室一つと職員室、トイレがあり、「制作するには十分の広さ」と天野さん。廊下には当時の児童が描いた作品が展示され、いすや机なども昔のまま。母校を懐かしむ卒業生らが訪れることもあるという。

 写生は主に学校の裏山や川などで行う。「その時々に感じた自然のメッセージを素直に受け入れ、絵で表現したい」というのがこだわり。アトリエに展示された当初の作品と比較すると一目で分かるほど、筆のタッチが優しく丸みのある絵が増えてきた。「自然が発するメッセージを受け止められるようになってきたのかな」と笑う。

 天野さんは函館市内や近郊、札幌市など道内4カ所で水墨画教室「楽遊会」を主宰。年1回作品展を開き、楽しみながら技術の向上を目指している。「いつか海外で作品展を開き、日本独自の水墨画の魅力を知ってもらいたい」。天野さんの夢はまだまだ膨らむ。

 楽遊会への入会希望者は天野さんTEL0137・66・2508へ。(小橋優子)


◎「人間関係」「いじめ」相談大半…チャイルドライン
 子供の悩み相談などを専用電話で受け止める「チャイルドラインはこだて」(小林恵美子代表)が2007年度の活動実績をまとめた。友達付き合いやいじめに関する相談が多く、人間関係で悩む今の子供たちの姿が浮かび上がった。話し相手がほしくて電話を掛けてくる場合もあり、小林代表は「誰かとつながりたい気持ちの表れ。初めは無言が多かったが、秘密を守り、何でも聞いてくれる相談電話として浸透しつつある」としている。

 同団体は市外局番0138圏内を対象としたフリーダイヤルの専用電話を毎週木曜日に開設。07年3月から08年2月までの1年間に同団体が受けた件数は、全国から電話を受けるキャンペーン期間を含め445件に上る。男女別では男子98件、女子148件、不明197件。小中学生は女子、中学卒業以上は男子が目立った。

 無言やいたずらなど会話が成立しなかった電話を除き、最も多かった内容は「人間関係」52件(11・6%)。「クラスで苦手な人がいる」「けんかした友達とこれからどうなるか心配」など、友人関係が大半を占めた。

 「無視される」「『死ね』と言われる」など、「いじめ」に関する相談33件(7・4%)、話し相手を求めて掛けてきた電話31件(7・0%)が続いた。「いじめられている子を助けられない」と心のaオ藤(かっとう)を打ち明ける内容、日常の出来事を聞いてほしいという子供も少なくないという。

 特に友人関係では「メールの返信がすぐこない」など、ささいなことで無視されたと思い悩むケースもみられ、他人の動きに敏感で友達に気を遣いすぎる傾向がうかがえる。

 小林代表は「人に気を遣う子供たちの優しさ、繊細さを感じる。少子化で地域に子供社会がつくりにくい中、習い事や勉強に忙しく、安定した友達関係を築きづらい面もあるのでは」と分析する。

 専用電話はフリーダイヤルTEL0120・332・565(午後4時―同8時)。(宮木佳奈美)


◎道南37人拒否…後期高齢者 重度障害者の制度加入
 後期高齢者医療制度に任意で加入できる一定の障害を持つ65―74歳で、渡島、檜山管内の対象者約3900人のうち37人が、制度が始まる4月1日以前に加入を拒否していたことが14日までに分った。

 同制度を運営する道後期高齢者医療広域連合によると、対象者の多い函館市が12人だったのをはじめ、八雲町が7人、七飯町、せたな町が各3人。知内、長万部、上ノ国、乙部、厚沢部、今金の6町はゼロで、北斗など8市町は1―2人だった。道内全体では対象者約3万8000人のうち、666人が制度の加入を拒否した。

 同制度では、医療機関の窓口に支払う医療費は原則1割だが、国民健康保険などに残った場合、1―3割負担となる。道は財政負担を抑えるため、65―74歳の重度身障者の医療助成については同制度への加入を条件とし、道と共同で助成を行っている各市町村も同調している。各市町村に申請すれば同制度の加入、脱退は自由にできるが、負担増を懸念して大半の対象者が同制度に加入せざるを得ないのが実情だ。

 同制度の廃止を訴えている函館地方社会保障推進協議会(函館社保協)は「加入拒否の分析まではしていないが、保険料を比較して選択したケースもあるのでは」としたうえで、「(道と各自治体が)制度加入を医療助成の要件にするのは、事実上選択肢を限定していることになる」と批判している。 (鈴木 潤)


◎行政評価分室と函館市が初 23日に合同相談所
 春の行政相談週間(19―25日)にちなみ、総務省道管区行政評価局函館行政評価分室(稲川吉一分室長)と函館市は23日、国や函館市の行政に対する苦情や意見を受け付ける「一日合同行政相談所」をテーオーデパート函館本店(梁川町10)で行う。同分室が函館市と合同で相談会を実施するのは初めて。

 同週間期間中を中心に、函館市や北斗市など道南の2市13町では行政相談委員による「特設相談」なども行われる予定で、同分室では「日ごろ感じている行政への意見や困りごとを気軽に相談して」と呼び掛けている。

 行政全般についての相談を受け、関係機関へ通知するなどして問題解決や制度改善に反映させるのが目的。総務省では自治体ごとに1人以上の行政相談委員を選んで委嘱しており、道南では30人が活動している。

 「合同行政相談所」は午前10時―午後4時に開き、同分室と市の職員が来所者の相談に応じる。26日午後1時半―同4時には同分室主催の「特設相談所」がイトーヨーカドー函館店(美原1)で開かれるほか、16日から6月3日まで、各自治体で相談所が開設される。日程などの詳細は同分室TEl0138・23・0909。

 14日には函館国際ホテル(大手町)で渡島、檜山、後志管内の「行政相談委員全体会議」が開かれた。約40人が参加。長年行政相談活動に励んだ同委員6人に対する表彰が行われ、昨年度の業務実績や本年度の事業計画などが報告された。(新目七恵)


◎5年間で事業所7%減…06年企業統計調査
 函館市は、総務省が実施した事業所・企業統計調査の結果を発表した。2006年10月1日現在の市内の事業所数は1万5162で、01年の前回調査(旧4町村含まず)と比較し1138(7・0%)減少した。従業員数は13万1904人で、同6248人(4・5%)減少している。

 過去30年間で、事業所数は1981年の1万8527が最高で、86年調査から減少を続けている。従業員数も多少の増減はあるものの、96年の14万7711人をピークに減少が続いている。

 調査は個人経営の農家・漁家を除き、民間と官公庁の事業所全体を対象とした。

 民間事業所を産業別にみると、農林水産業の一次産業が0・1%、建設業や製造業の二次産業が12・8%、サービス業などの三次産業が87・1%を占める。建設、製造、卸売・小売、運輸、金融・保険、飲食店・宿泊などほとんどの業種で減少しているが、医療・福祉は806で前回より5・2%増加した。

 従業員数もほとんどの業種で減少しているが、医療・福祉関係は1万4577人で、同20・8%、2506人の大幅増となった。統計を担当する市総務課は「高齢社会に伴い福祉関係の施設が増え、就業の場が増えた」と話す。

 民間事業所の規模は、1―4人と5―9人で全体の8割超を占める。10―19人が1割弱で、20人未満の事業所が全体の92・3%。100人以上は123事業所で、構成比はわずか0・8%。男女別の従業者数は医療・福祉、飲食店・宿泊、金融・保険、卸売・小売で女子が半数以上だった。

 全国の事業所数は591万1038、全道は25万1883で、ともに前回比6・9%減だった。従業員数は全国5863万4315人で同2・5%減、全道241万4969人で同6・6%減となっている。(高柳 謙)


◎七飯町長、議案を撤回…採石業者へ町有地売却
 【七飯】七飯町桜町726の町有地(山林)約14ヘクタールについて、町が町内の採石業者に売却する方針を示していた問題で、中宮安一町長は14日、土地の処分に関する調査特別委員会(畑中静一委員長)に売却処分の議案の撤回を申し出た。委員は全員一致で了承。中宮町長に売却中止を申し入れていた下流域の桜町第4町内会の片桐正志会長は「ほっとひと安心。今後も町の緑を守ってほしい」と安Gヒ(あんど)の表情を浮かべた。

 同日の第7回特別委の冒頭で中宮町長が発言した。中宮町長は昨年の第4回定例会で提案した後、地域町民らから質問や申し入れがあった経過を説明。同町有地の雨水量の変化や調整池の具体的図面、購入を希望する事業者の経営状態などを踏まえた計画書が早急に示せないことから、「地域住民に安心感を与えられない、机上での概略的計画だった」と撤回理由を述べた。さらに、「町民の不安を招き、議員も委員会や現地調査など時間を費やすことになった」と謝罪した。

 傍聴した片桐会長は「町長と委員の決断に感謝したい。地域関係者へは経緯なども添え、知らせたい」とした。(笠原郁実)