2008年5月20日(火)掲載

◎【企画・映画と私の物語】第3部「渡り鳥シリーズ」…小坂与志雄、美智子さん
 黒縁の眼鏡を掛けた男性が、七財橋(函館市豊川町)のたもとで小林旭に風船を渡している。男性は当時、市内西川町(現大手町)で小間物店を営んでいた故・小坂与吉さん(享年90)。この写真は「ギターを持った渡り鳥」の撮影風景だ。「子煩悩で優しい父。映画は今でも良い思い出です」。湯川町の小坂与志雄さん(61)、美智子さん(60)兄妹は懐かしそうに話す。

 与吉さんは東京生まれ。18歳で司法省に入省したが低給与のため退職し、徴兵後の1945年、妻の故光子さんの故郷、函館で商売を始めた。

 出演依頼は知り合いの問屋を通じて受けた。店番は光子さんに任せ、兄妹を連れて撮影に出掛けた。現場は見物人で人だかりができていた。

 「おじさん、黄金飴(あめ)と風船ちょうだい」と小林旭。「はいはい、60円です…ありがとう」

 小林旭に、手早く商品を渡して会釈する与吉さん。「小林旭は背が高くて良い男だった。全然オドオドしない父をすごいと思った」。12歳だった美智子さんは日活のスーパースターを相手に、自然な演技を見せる父の姿が目に焼き付いている。セットの風船作りを手伝った与志雄さんは当時13歳。「俳優さんは皆、アカ抜けてた」と振り返る。

 公開後、父と劇場に観に行った兄妹は20秒ほどのシーンに「出た、出た!」と大喜び。現場に来られなかった光子さんも、撮影後は小林旭ファンになり、テレビや映画を熱心に見るようになったという。

 洋裁糸、手芸用品、食料品、日用雑貨…。戦後の貧しい時代、客の要望に合わせて何でも仕入れた店は、近所から“小坂デパート”と呼ばれて頼りにされた。プラモデルや文具類も扱い、子供のたまり場にもなった。夜桜や運動会などにも出掛け、露天商としても稼ぎ、神山町でも数年経営していたが、73年ごろに閉店。その後、湯川町に一家で引っ越した。

 最近、与志雄さんは「渡り鳥」シリーズのDVDを購入した。十数年ぶりに目にした若き日の父の元気な姿に、涙があふれた。

 美智子さんは、アルバムにあった撮影風景の写真を、いつも見えるようにテレビの上に飾った。兄妹にとって「ギターを持った渡り鳥」は、商売に明け暮れた父の人生の1ページが刻まれた特別な作品だ。

 「父さん、良かったね」

 “屋台のおじさん”としてフィルムに残る父を思い出す度、美智子さんは遺影に向かってそっと話し掛けている。(新目七恵)

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 マイトガイ・アキラこと小林旭と浅丘ルリ子主演で大ヒットした日活の「渡り鳥」シリーズ。1作目「ギターを持った渡り鳥」と8作目「北帰行より 渡り鳥北へ帰る」はいずれも道南が舞台だ。函館山、赤レンガ倉庫、ハリストス正教会…、函館の代表的な景色を詰め込んだ両作品は今でも映画としての新鮮さを失っていない。「硝子のジョニー」「居酒屋兆治」に続く「映画と私の物語」第3弾は、この「渡り鳥」シリーズを取り上げる。



◎雨天専用 似顔絵ブース開設…小鳥さん 本町市場内で
 観光客の多い函館市元町など西部地区を中心に、路上で似顔絵を描き続けている市内鍛治町在住の画家小鳥時夫さん(58)がこのほど、函館本町市場内(市内本町)に似顔絵を描く専用ブース(奥行き1メートル20センチ、幅1メートル80センチ)を設けた。屋外での制作は天候に左右され、降雨の際は中止を余儀なくされてきたが、雨の日限定で同ブースを使用するという。「雨降りの日でも、あなたの“似顔絵”を描きます」と、屋内での制作活動にも意欲を見せている。(小橋優子)

 小鳥さんは1979年に東京デザイナー学院アニメーション科卒業後、鷹美術研究所(東京)に入所し、油彩画や水彩画の勉強に励んだ。同時にアニメーション映画などの制作も手掛け、80年の帰函後には、油彩画や水彩画、パステル画など多岐にわたって人物や風景、デッサンなどの制作活動を行ってきた。

 似顔絵を手掛けたのは、40歳のころに連日通っていた市内の喫茶店で、来店客の顔を描いたのがきっかけ。当時は気軽な気持ちで描いていたが、周囲から好評だったため、似顔絵中心の制作活動に切り替えた。小鳥さんは「似顔絵を描くようになって、人とのコミュニケーションが弾み、制作も一層楽しくなった」と笑顔を見せる。

 屋外の制作現場には、水彩絵の具と画材を持参。絵のサイズは気軽に持ち運びできるようにと、1人用の縦14センチ×横18センチと2人用の同24センチ×同19センチの2種類を用意している。制作時間は一人当たり5―10分。輪郭や目、ほおなどの特徴を短時間でとらえ、そっくりな顔の絵を手際良く仕上げる。

 そうした屋外活動では降雨が最大の悩みだっただけに、同ブースの開設を喜ぶ。小鳥さんは「ほとんどが“旅の思い出に”という観光客だが、中には家族や恋人、友人、ペットと一緒の絵を希望する人もいる。遊び心で気軽に来場し、天候がはっきりしないときは、気軽に問い合わせてほしい」と呼び掛けている。1枚1000円(サイズによって一部変更)。時間は午前10時から午後6時まで(日曜日は休館)。問い合わせは同市場事務局までTEL0138・51・5418。


◎市営函館競輪 28日から重勝式くじ「Kドリームス」導入
 市営函館競輪は28日から、国内最大の12億円が払い戻し可能な「ビッグドリーム」など3種類の競輪くじ「Dokanto(ドカント)―Kドリームス」を発売する。複数レース分の着順を予想する「重勝式」の投票方式で、平塚競輪(神奈川)、立川競輪(東京)に続いて3場目の導入。インターネットの専用サイトからのみの販売となる。市競輪事業部は「宝くじ感覚で購入できるので、競輪になじみの薄い若い人たちにも魅力を知るきっかけとなってほしい」と、新規ファン開拓に期待を寄せている。

 「ビッグドリーム」は後半4レース分の1、2着(着順不問)を当てる4重勝2車複式で、的中確率は167万9616分の1。1口200円でコンピューターが自動的に番号を選ぶクイックピック方式で投票、番号は10回まで選び直すことができる。的中がない場合は、キャリーオーバーとして次回発売分に配当金が繰り越され、最大で12億円のチャンスが発生する可能性がある。

 後半3レース分の1着を予想する3重勝単勝式の「K―3」(的中確率729分の1)と、同じく5レース分を予想する5重勝単勝式の「K―5」(同5万9049分の1、最大6億円のキャリーオーバーあり)は1口100円で、購入者が予想して投票する。

 4月から「Kドリームス」を実施している立川競輪では「ビッグドリーム」で、累積で約400万円のキャリーオーバーが発生中。同部事業課は約25万人の電話投票会員や、各地の競輪場に函館競輪の情報誌「スターライト」を配布するなど、全国各地からの投票を期待している。同課は「既存のファンにも楽しんでもらえる。競輪場にも足を運んでほしい」と話している。

 投票は、Kドリームスのサイト(http://kdreams.jp)で無料の会員登録後、電子マネー「デルカ」の購入が必要。レース前日の午後7時から発売を開始する。6月7日からは携帯電話での投票も可能となる。問い合わせは同課TEL0138・51・3121。(今井正一)


◎地場産給食おいしい…北斗市小中学校本格スタート
 【北斗】北斗市の小中学校全16校で19日、地場産食材を使った給食が本格的にスタートした。新函館農協や上磯郡漁協の協力を得て購入項目を大幅に増やし、冷凍野菜を生野菜に切り替えたり、品質の変わらない安価な品を仕入れるなどし、安くて安心な“旬”の食材を提供。子どもたちは地元で育った野菜をおいしそうにほおばっていた。

 中国産ギョーザの中毒事件を契機に、市は子どもたちに生産者の「顔」が見える食材を提供するとともに、食材への関心を高めてもらおうと地場産食材を導入。初日は「秀」ランクとほとんど品質が変わらない「優」ランクのダイコン90キロと、冷凍から生に切り替えたコマツナ92キロを使ったのっぺい汁、コマツナ炒めなど5品が並んだ。

 上磯小学校(花田雅博校長、児童634人)の1年2組では担当教諭が「皆さんが住んでいる北斗市で作られた野菜がいっぱい入ってます」と説明。「いただきます」の合図とともに、児童は口いっぱいにほおばり、「おいしい」と笑顔を見せていた。コマツナ炒めをペロリと平らげた大井川雄飛(ゆうひ)君は「野菜もとってもおいしい」と声を弾ませた。(笠原郁実)


◎水稲の播種作業スタート
 【北斗】水田に直接種籾(もみ)をまく栽培法に取り組む水稲直播推進協議会(事務局・新函館農協大野基幹支店、新関一郎会長)の播種作業が19日、北斗市稲里232の農業冨樫富市さん(58)の水田で始まった。冨樫さんは同協議会が本年度購入した播種機に「ななつぼし」の種籾と肥料をセットし、代かきした水田に規則的に播種。豊穣の秋を思い描きながら、2年目の取り組みをスタートさせた。

 直播は付加価値の向上と低コスト、省力化に期待が寄せられている。同協議会は北斗市内と七飯町内の5人のメンバーで昨年発足し、今シーズンから新たに14人が加わり、作付総面積は20ヘクタール増の32ヘクタールに拡大した。

 冨樫さんも作付面積を昨年の65アールから180アールに広げ、「確実な収穫を目指し、早目に播種した。昨年は冷害があっても一定量の収量があったので、今年も期待したい」と話している。同作業は同協議会メンバーの各農家で順次行われる。(笠原郁実)


◎3年連続減も不当請求は激増…消費生活センター07年度相談件数
 函館市が消費者の苦情、相談に対応するため開設している市消費生活センター(若松町17、棒二森屋7階)の2007年度の相談件数がこのほどまとまった。相談受け付けは前年度よりも665件少ない2229件で、04年の3884件をピークに05年度から3年連続で減少した。半面、有料サイト情報料などの不当請求の相談は激増。市市民課は「相談件数は減っているが、依然として契約、売買に関わる不当請求は後を絶たず、手口も悪質、巧妙化している」と指摘している。

 相談件数の減少要因について、同課は04年度に頻発した架空請求事件や振り込め詐欺などが社会問題化したのを契機に、(1)手口や対処法が周知されたこと(2)消費者保護の法整備が進んだこと―が要因と分析している。

 07年度の分類別に見た相談件数の概況は、架空請求を主とした「商品一般」の相談が842件から200件ほどに激減したが、一方で、有料サイト情報料の不当請求、電子通信消費料の架空請求など「運輸・通信サービス」の相談が262件から約500件増加している。

 内容別の総相談件数は「契約・解約」に関わるのが全体の47・3%に当たる1554件と最多。次いで、業者の販売方法に対するもの906件(27・6%)、価格・料金184件(5・6%)、品質・機能・役務167件(5・1%)と続き、内訳は例年と同じような傾向になった。

 市市民課は「賞味期限、食品表示の偽造など消費者問題は近年、広範化、多様化している。架空請求など被害防止や啓発に向け情報を流していきたい」としている。(鈴木 潤)