2008年5月21日(水)掲載

◎【企画・映画と私の物語】第3部「渡り鳥シリーズ」(3)…西崎 春吉さん
 「映画のじじいが来たぞー!」。全国でも珍しい「移動映画」を約40年間、道南で続けている函館市の西崎春吉さん(81)の姿を見つけ、子どもたちが駆け寄ってくる。

 西崎さんは「ギターを持った渡り鳥」のロケハン(撮影に適した場所を探す作業)に協力した思い出がある。「函館山やハリストス正教会…。一日かけていろいろ回ったなぁ」。古い映写機を積んだ年季の入ったワゴン車にもたれ、しゃがれた声で切り出した。

 後志管内余市町出身の西崎さんは子供のころ、「鞍馬天狗」をスクリーンで見て、映画の面白さに取りつかれた。両親に小遣いをもらい、週に3日は近くの劇場に通った。大人になっても映画熱は冷めず、30代の時に函館市内の映画館の宣伝係として働き、1967年からは八雲や福島など道南の地方の劇場4館を経営した。

 ロケハンを手伝ったのは宣伝係時代。当時の函館日活劇場の支配人の紹介で、東京から来た美術担当のスタッフと一緒に車で回った。

 「宍戸錠と決闘するシーンで使えそうな場所はないか」「ロマンチックな風景を」―。スタッフの注文に応じて、七飯町の駒ケ岳や函館市豊川町の七財橋、市内元町の函館ハリストス正教会などを紹介した。

 豊かな海と山、教会や寺院が建ち並ぶ坂道。異国情緒ある函館の街並みに、スタッフが「いい場所で助かる」と喜んだ様子を覚えている。「(スタッフは)年も自分と近く、話しやすい人で楽しかったな」。教えた場所はロケ地として採用され、いつまでも観客の心に残る映画の風景になった。

 「移動映画」は劇場経営を始めたころ、函館近郊の映画館がバタバタと閉鎖する状況を心配して始めた。発想のヒントは昔好きだった自転車の紙芝居屋。中古の映写機など機材一式を車に積み込み、妻と二人三脚でせたな町や後志管内古平町など、地方の町々に毎日のように出掛けた。

 03年に妻を亡くしてからは会場手配から集客活動、集金を1人でこなす。最近は「ドラえもん」や「ワンピース」など小学校低学年向けのアニメ映画が中心で、少ない時は数人しか集まらない日もある。それでも、「死ぬまで止めないよ」とさらり。

 上映が始まると、子供たちは背筋をピッと伸ばし、スクリーンを食い入るように見詰める。「その真剣な様子が好きなんだ」。幼いころに受けた映画館での感動。それを1人でも多くの人に伝えようと、きょうも車を走らせている。(新目七恵)


◎管内女性トップ今金町86・4歳…道南自治体平均寿命
 厚生労働省はこのほど、全国の自治体別の平均寿命をまとめた「2005年市区町村別生命表」を発表した。渡島、檜山両管内では今金町の女性が全国、全道平均、七飯町の男性が全道平均をそれぞれ上回った一方、森町の男性は道内で最下位となるなど、自治体間で差が見られた。

 全国平均は男性78・8歳、女性85・8歳、全道平均は男性78・3歳、女性85・8歳。女性が男性より7―7・5年長生きするという結果となった。

 道南でも同様の傾向が見られ、両管内18市町すべてで女性が男性を上回った。女性では、今金町(86・4歳)が両管内で最も長寿。続いて、せたな町、長万部、乙部両町の順だった。男性では、七飯町(78・5歳)が最上位で、せたな町、乙部町と続いた。

 一方、女性では福島町と北斗市、男性では森町、、北斗市、松前町などが道内の下位10市町に入った。函館市は男性(77・0歳)が両管内で10番目、女性(84・7歳)が10番目、北斗市は男性(75・9歳)が17番目、女性(84・1歳)が17番目だった。

 男女差が最も大きいのは、今金町の9・0歳、最も小さいのは福島、知内両町の7・2歳。両管内の最上位と最下位の比較では、男性で2・8歳、女性で2・7歳の開きがあった。道内の最上位は男性が札幌市手稲区(80・1歳)、女性が胆振管内壮瞥(88・0歳)だった。

 女性の平均寿命が管内最上位となった今金町によると、「要因ははっきり分からない」とした上で、高齢者の閉じこもり防止を目的に毎月町内の温泉施設を利用し、健康講座を受けてもらう「あったかサロン友・悠・湯」事業に力を入れてきたことや、自治会単位の希望を取り入れた自主的な講座実施などの例を挙げ、「役割や楽しみを持ち、地域のリーダー的存在となるお年寄りの女性が多いのかもしれない。地元団体のイベント企画も活発で、参加する場が多いのも要因の1つでは」としている。(新目七恵)


◎市が和解金支払い…双子胎児死亡訴訟
 市立函館病院(吉川修身院長)で適切な措置が行われず、双子の胎児が死亡したとして、石狩管内に住む女性(34)とその夫(49)が函館市を相手取り、1650万円の損害賠償を求めた訴訟の和解協議が20日、函館地裁(東海林保裁判長)であり、市が和解金を支払うことで和解が成立した。市は「原告側が公表を望んでいない」などとして、和解金の額などを明らかにしていない。

 原告側代理人は「実質的には医療過誤が前提の損害賠償金として受け止めている。原告の主張がほぼ受け入れられた形だが、病院側からこれまで謝罪の言葉がなかったのは不誠実で残念だ」と話している。

 訴状などによると、この女性は妊娠約8カ月の2004年4月、実家のある函館市内の同病院に入院。同5月21日に超音波検査したところ、胎児の一人が心肺停止で既に死亡していることが判明し、もう1人も翌日死亡した。

 原告側は、胎児の心拍状態などを調べる分娩(ぶんべん)監視装置の確認を助産師のみで行っていたため異常の発見が遅れ、適切な治療が行われなかったなどと主張。05年5月に函館地裁に提訴し、昨年12月に同地裁から和解勧告が出されていた。

 和解成立について、同病院事務局は「当院の医療処置に誤りはなかったと考えている。裁判の長期化を避け、紛争の早期解決を図るため裁判所の和解勧告に応じた」としている。

 市は和解金を6月に開かれる定例市議会で本年度の補正予算案に盛り込む予定。


◎昨年度は単年度黒字…市営競輪
 2005年度から累積赤字を計上した函館市の競輪事業は、07年度に1300万円の単年度黒字に転じる見通しとなった。05、06年度の2年間で7億9300万円あった累積赤字は07年度末で7億8000万円に減少する。当初は08年度からの単年度黒字を予定していたため、1年間の前倒しができた。最終的な決算は6月以降となる。

 市競輪事業部によると、07年度の売り上げは、当初予算188億8000万円に対し190億3474万円で、約1億5000万円上回った。人気とグレードの高い「ふるさとダービー」(GII)の売り上げは目標を12億円下回ったが、普通競輪(F1、F2)は目標を13億6100万円上回り、ふるさとの減少分をカバーした。見込まれる必要経費を差し引くと、1300万円の単年度黒字になるという。

 売り上げの増加のほか、昨年度から日本自転車振興会の交付金(負担金)の還付制度が始まり、07年度は2億円の還付があった。「単年度黒字の要因はこの2点が大きい」と同部は説明する。

 本年度からは一層の経費節減を図る競輪開催業務の包括委託が始まった。市は2011年度の累積赤字解消を目指している。累積赤字分の補正予算は、21日の市議会臨時会に議案を提出する。(高柳 謙)


◎33年間民生・児童委員努めた坂さんに厚生労働大臣特別表彰
 【木古内】木古内町本町251の坂秀隆さん(75)は、1974(昭和49)年11月から昨年11月まで33年間にわたり、民生・児童委員を務めた。独居老人への定期的訪問をはじめ、買い物や官庁への事務諸手続きなどの支援を必要とする町民を世話しながら、地域を支えてきた。坂さんが営む「さか理容院」には活動をたたえる計6枚の感謝状が並んでいる。3月には舛添要一厚生労働大臣からも特別表彰を受け、「自分だけの力ではなく、地域住民の協力と家族の理解があったからこそ続けられた。感謝状は苦楽をともにした町民との絆(きずな)の結晶」と笑顔を見せる。

 坂さんは樺太出身で、戦後、函館に家族で引き揚げてきた。地元の高校を卒業後、理容師の見習いを経て22歳で理容師の国家試験を取得し、知人の紹介で木古内に理容店を開業した。

 町内で知り合った絹子さん(72)と結婚し、娘2人にも恵まれ、仕事の傍ら20年間、寝たきりだった絹子さんの父親の介護にも当たった。

 こうした介護の様子を知った当時の町議や役場関係者から民生・児童委員に就くことを勧められた。「前任者から『中途半端な気持ちではやるな』と言われ、責任の重さを感じた」と振り返る。

 同委員は24時間対応しなければならず、家族は当初、「体を壊すのではないか」「本業がおろそかになるのでは」などと心配したが、常連客からも「坂さんだから出来る大役だ」と励まされたという。

 台風や地震があったときは、担当する124戸の住民の安否確認に回った。「いまでも救急車の音がするとすぐ外に出てしまう」と笑う。

 お年寄りには春と秋、「お元気ですか?」「過ごしやすい季節を迎えました」など、手書きの手紙を送り、休日は趣味のハーモニカを演奏して交流した。

 坂さんは「あっという間に年月が過ぎて自分自身も高齢となった。多くの人との素晴らしい触れ合いがあった」と充実した活動の日々に満足している。(田中陽介)


◎五稜郭公園のフジの曲決定…藤の花の会
 函館市内の市民団体「五稜郭の藤の花の会」(山崎淳子代表)は20日までに、公募していた五稜郭公園のフジをテーマにした詞に付ける曲を決定した。採用したのはフリーで作・編曲活動をしている埼玉県草加市の蓬田梓さん(24)の作品。山崎代表は「明るく軽やかな曲。みんなで楽しく歌いたい」と話し、6月8日の花見会で披露する。

 公募は、箱館奉行所の復元工事でフジ棚の移設が検討されているのを知った千葉市のシンガーソングライター田口徹さん(62)がフジの花をテーマに詞を作り、同会に送ったのがきっかけ。4月3日から5月6日までに20―70代の15人から応募があった。五稜郭公園の思い出話やフジの花への思いを添え、市内や近郊をはじめ、東京、大阪などからも寄せられた。

 同会会員や音楽関係者、市民コーラスグループの有志らが審査。最終的に2曲まで絞り、田口さんの意見を聞いて蓬田さんに決めた。しかし、残ったもう1曲の市内的場町、小学校教員加藤一明さん(47)の作品も「外すには惜しい」との声があり、特別賞とすることを決めた。

 蓬田さんは「北海道へ一度も行ったことがないのに歌詞で情景が浮かび、自然と曲が思いついた。採用されてびっくり」と喜んでいる。山崎代表は「函館観光のPR材料にしてもらえたら」と期待している。(宮木佳奈美)


◎生育 例年より早く…渡島・桧山の作況
 渡島、桧山両支庁は20日、15日現在の農作物生育状況調査の結果を発表した。4月から5月上旬の気温は平年より高めに推移し、農作物の生育、農作業は全体的には順調で平年より早い傾向にある。桧山では5月中旬の低温による降霜、少雨の影響でバレイショ(ビニールで土を覆うマルチ栽培)など一部作物の葉が変色するなどの被害があったが、檜山支庁は「大きな影響はない」としている。

 水稲は、渡島では5月前半の好天によって苗の生育が順調で、田植えは平年並みの21日ごろに始まる見込み。草丈は9・2センチと平年比92%、葉数は2・7枚と同98%。桧山は苗の生育が平年よりやや進んでおり、乙部町など一部地域で田植えが始まっている。草丈は10・7センチと同114%、葉数は3・1枚と同111%。

 バレイショは両管内で植え付け作業が終了。このうち渡島(露地栽培のみ)では萌芽が始まっているところもある。桧山では、降霜の影響からマルチ栽培では芽が枯れるなどの被害があり、生育が1週間程度遅れる地域もある。

 桧山の秋まき小麦は5月の少雨の影響から熊石など南部の生育が停滞し、茎数は平年比約6割にとどまった。北部の生育は早く、一部うどんこ病が見られる。テンサイは両管内とも移植作業を終えており、渡島は生育が順調。草丈は平年並みで葉数は多い。桧山は降霜から一部移植の遅い場所で葉が変色するなどの被害があった。

 渡島のリンゴは4月の好天で開花が2週間程度早まったものの、5月中旬の低音が響き、生育は11日早い状況。牧草は両管内とも萌芽が3日早く、生育は順調。サイレージ用トウモロコシは現在、種まき作業が始まっており、渡島で4日、檜山で7日早く進んでいる。(新目七恵)