2008年5月23日(金)掲載

◎【企画・映画と私の物語】第3部「渡り鳥シリーズ」(4)…野島邦夫さん
 「北帰行より 渡り鳥北へ帰る」のクライマックス。小林旭演じる伸次が、函館空港から飛び立つ飛行機で逃げようとする悪党と格闘するシーンに、本業の警察官役で参加したのが函館市の野島邦夫さん(81)だ。「俳優気分で参加した。スクリーンに映った時はうれしかったね」。表情がほころぶ。

 函館で生まれ、海軍に所属し太平洋戦争に参加した。終戦後に帰郷し、「市民を守る仕事を」と22歳で函館市警入りした。6年ほどの交番勤務の後、パトカーに乗る無線自動車警ら係に配属され、函館方面で初めて導入された白黒ツートンのセダン型車両に乗った。当時パトカーはジープ型が主流で、セダン型は仲間から「あこがれの的」だったという。

 エキストラの要請は市観光課を通じて受けた。撮影は夜。パトカーの助手席に乗った小林旭が、さっと降りて函館空港入口へ走っていく演技を何度も繰り返した様子が目に焼き付いている。

 「アキラは背が高く、映画のイメージそのままだった。白いセーター姿が格好良かったことが、印象に強く残っている」。現場はクライマックスならではの緊張感があり、小林旭とは結局ひと言も言葉を交わせないままだった。それでも、十数センチの近さで大スターと共演した経験は今でも大切な思い出だ。

 公開時、作品は職場でも話題になり、「周囲から羨望(せんぼう)の眼差しで見られたよ」と笑う。

 その後、野島さんは交通違反者即決裁判担当として函館の裁判所勤務となり、58歳で定年退職した。現在も函館西防犯協会の事務局長を務め、地域の安全確保に励んでいる。多忙な日々の中でも、小林旭の活躍はチェックし続けてきたという。

 約37年間の警察官人生で思い出深いのは交番、パトカー勤務時代。当時、函館は北洋漁業の基地として栄え、乗組員の男たちが毎晩のように大門のキャバレーで疲れを癒やし、にぎやかに飲んで騒いでいた。当然酔っぱらいのいざこざも多く、その分野島さんら警察官の出動も増えた。「絶えずけんかがあるくらい活気があったっていうことかな」と振り返る。

 「ギターを持った渡り鳥」「北帰行より」でも、函館の夜のシーンでは、ネオンがまぶしい繁華街が決まって登場する。映画も街も元気だった時代の勢いが伝わってくる。 (新目七恵)


◎「道南脳卒中地域連携協議会」発足
 地域の脳卒中診療のネットワーク化を図るため、道南の脳神経外科医らがこのほど、「道南脳卒中地域連携協議会」(伊藤丈雄代表)を立ち上げた。同協議会は急性期病院から他の医療機関への転院、リハビリへの移行などを円滑にするため、患者の診療情報を医療機関が共有するシステム「地域連携パス」を導入する方針で、6月からの始動を目指し準備を進めている。脳卒中患者の早期回復が期待される取り組みとして注目を集めそうだ。(鈴木 潤)

 同協議会は、脳卒中の診療に携わる医師らでつくる道南脳神経懇話会(松崎隆幸会長)などが準備会を立ち上げ、発足に向けた協議などを進めてきた。南渡島地域リハビリテーション推進会議副会長を務める伊藤代表ら11人を役員に選任し、会則や運営方法などを決め、事務局を函館新都市病院(函館市石川町)内に設置した。渡島、檜山管内の約20医療機関が加入する意向を示している。

 札幌市の手稲渓仁会病院が構築したシステムを採用し、治療内容や薬の処方歴、入退院時の状況などをパソコンに入力。患者の同意を得て転院先の医療機関に情報を伝達する。診断や治療の判断に差異が生じないよう、情報の記載は統一した書式を使う。

 診療報酬改定で今年度から地域連携パスにも点数加算が認められるなど、医療の地域連携が推進されている状況を受け、本格的な導入を決めた。同協議会は「入院から退院、リハビリまで時間差のない医療が可能となり、患者の早期回復につながる」と、連携によるメリットを強調する。

 今後は医療機関の加入を増やし、ネットワークの拡大を進めていくほか、患者のかかりつけ医や介護施設などとの連携も模索していく。

 26日には函館市内で道南の医療機関を対象とした地域連携パスの説明会を開き、協議会の加入も呼び掛けていく。


◎捜査の可視化へ 地検が取り調べ録音・録画機器公開
 1年後の来年5月に導入が迫る裁判員制度を見据え、函館地検は22日、容疑者の取り調べを録音・録画する機器を報道機関に公開した。同地検は裁判員裁判の対象事件で順次利用する方針で、これまで「密室」で行われてきた取り調べ状況が可視化され、一般市民から選ばれる裁判員にも分かりやすい真相解明が期待される。

 録音・録画は、裁判員裁判の対象となる殺人や傷害致死などの重大事件のうち、公判で自白の任意性、信用性が争われる場合に、記録したDVDが証拠として利用される。東京や大阪など都市部の14地検では06年7月から先行して試行が進んでおり、実際に証拠として提出されたケースもあるという。

 録音・録画には容疑者の同意が必要。同意があれば、取調室で検察官の背後に置かれた2台のカメラで容疑者の表情と取調室の全景を音声付きの動画として撮影する。2つの映像が立会事務官のパソコン画面に映し出され、撮影時刻とともに表示される仕組みだ。法務省によると、設置費用は1基当たり約195万円。

 同地検ではことし初めから、札幌高検主催の研修会などで模擬の取り調べを行い、録音・録画の効果と問題点の洗い出しを進めている。同地検の中屋利洋検事正は「これまで自白の任意性の立証には長い時間を要したが、視覚や聴覚に訴えることで裁判員にも判断しやすくなるはず。裁判員の負担が少しでも軽減され、検察官の捜査能力の向上にもつながれば」と話している。 (森健太郎)


◎5月31日、6月1日にダンス公演、道教大函館校モダンダンス部など4大学が共演
 道教育大学函館校のモダンダンス部(竹内光部長)をはじめ、地元大学のダンス部員と日本女子体育大学(東京)の学生が共演し、函館金森ホール(函館市末広町)で5月31日と6月1日の2日間、「トマトが赤くなるとお医者さんが青くなるダンス公演」を開く。学生ダンス部員の大掛かりな合同企画は初めての試みで、竹内部長は「本番以外メンバー全員がそろって練習することができないが、ダンスに掛ける情熱は一緒。息の合ったダンスを見て、メンバーの意気込みを会場でぜひ感じてほしい」と張り切っている。(小橋優子)

 今回は金森赤レンガ倉庫開業20周年にちなみ、これまで以上に盛大な公演にしようと、舞踏家で同ダンス部顧問の清水フミヒトさん(40)が企画。日ごろから清水さんの指導を受けている学生が集結することになった。同校とはこだて未来大、北大水産学部、日本女子体育大の4大学で総勢21人の学生が出演する。

 演題には、栄養豊富な熟したトマトを食べると、医者がいらないほど健康な体を作れるという言い伝えを基に、「青く小さなトマトが真っ赤に熟するように、まだまだ半人前の学生たちも、練習を重ねることで未来が膨らんでいく」(清水さん)との思いを込めたという。

 日ごろ練習しているバレエやジャズ、モダン、ヒップホップ、ソシアルダンスなど、一人一人の持つ経験を生かし、融合した形の創作ダンスに挑む。20周年に合わせ、80年代から現代までの音楽に合わせて「時の流れ」を表現するなど、高度な技術を交えた創作ダンスも見どころ。学生が生み出した振り付けも各シーンに取り入れられている。

 清水さんは「学生たちの持つ可能性を存分に生かしたダンス公演なので、ぜひ見てほしい。ダンスを通じて金森ホールが活性化し、今後も多彩なイベントで発展してもらえればうれしい」と話している。

 31日は午後7時、1日は午後3時開演(各公演30分前に開場)。チケットは一般2200円(当日2700円)、高校生以下1800円(当日2300円)。チケットの販売や申し込みは金森ホール(TEL0138・23・0338)か、清水さんTEL090・1549・8206。ホームページはhttp://www.shimichan.com/tomato


◎「旭山動物園号」JR函館駅に展示
 札幌―旭川間で週末や長期休暇期間に運行する特急列車「旭山動物園号」が22日、JR函館駅(函館市若松町12)に展示された。ユニークなイラストの描かれた車体や、動物のグッズで埋め尽くされた車内に、訪れた子どもたちは大喜びしていた。

 JR北海道(札幌)の会社設立20周年を記念し、昨年4月に誕生した「旭山動物園号」は、23日に函館を出発する1泊2日のツアー「滝上芝ざくらと旭山動物園の旅」の専用列車として運行するために来函。ことし4月下旬に新たに加わった「オオカミ号」や、フリースペースを新設した「ホッキョクグマ号」を含む全5両が一般市民らに無料で開放された。

 ききょう幼稚園(川村兼悦郎園長)の園児18人は、かわいらしい動物ずくめの列車に興味津々。大きな着ぐるみを装着した座席に腰掛けたり、カーペット敷きのスペースでくつろぐなどし、車内には歓声が響いた。宮崎黎ちゃん(5)は「テレビで見た通りで、本も読めたし、列車全部が楽しかった」と笑顔を見せていた。 (浜田孝輔)


◎支庁再編、特別委が27日に寺島乙部町長らから意見聴取
 【江差】道議会の道州制・地方分権改革等推進調査特別委員会は27日、道の支庁制度改革に反対姿勢を示している道市長会、道町村会、道町村議会議長会の3会長から意見聴取を行う。

 道町村会など4団体は13日、高橋はるみ知事や道議会各会派に対して、拙速な支庁再編を行わないよう連名で要望。特別委でも4団体のうち、出席できない道市議会議長会長を除き、道市長会長の新宮正志室蘭市長、道町村会長の寺島光一郎乙部町長、道町村議会議長会長の川股博空知管内由仁町議会議長の3人から意見を聞く。会議では3会長が意見を述べるほか、委員長が代表して質疑を行う。

 この特別委に合わせて、支庁廃止に反対する江差・日高管内浦河の両町、留萌の根室両市は市町長や市町議会議員、支庁再編に反対する地域住民による傍聴団を動員。道が条例提案を目指す第2回定例道議会の開会が6月10日に迫る中、道は6月3日前後にも条例提案の是非を最終判断する方針だ。

 4市町は支庁再編をめぐる情勢が大詰めを迎える中、特別委の傍聴を通じて、道議会に反対姿勢をあらためてアピールしたい考え。濱谷一治江差町長は「条例提案を何としても阻止したい。4市町としても6月上旬をめどに総力戦で反対運動に取り組んでいきたい」としている。 (松浦 純)