2008年5月28日(水)掲載

◎市民有志が赤い靴の女の子ブロンズ像を函館に建立へ
 童謡「赤い靴」(作詞・野口雨情)の女の子のモデルとされる岩崎きみちゃん(1902―11年)のブロンズ像を函館港に建立しようと、市民有志が準備を進めている。函館はきみちゃんが2年余りを過ごし、母親と別離したゆかりの地で、設立準備会の宮埼衛委員長(77)=湖月社長=は「歌の舞台となった歴史を伝え、親子のきずなの大切さを感じてもらえるようにしたい」と話している。函館港開港150周年に合わせて来年6月に設置する予定。

 同準備会によると、静岡県で生まれたきみちゃんは1歳で母かよさんと本道に移住。市内東浜町(現末広町)の桟橋付近で約1年間共に暮らした後、市内の教会のアメリカ人宣教師夫妻の里子となった。1908年に同夫妻が米国に帰国することになり、離函していた母親と会うこともなく、同夫妻とともに函館港から上京。同夫妻は渡米したが、きみちゃんは都内の孤児院に預けられ、そこで死去した。

 5年ほど前、童謡の誕生秘話を紹介した本を読んだ同準備会メンバーが事実を調べ直し、仲間を集めて像建立への準備を進めていた。像の制作は、函館出身の彫刻家小寺真知子さん(ローマ在住)に依頼しており、既にデザインは完成。台座を含めて高さ約165センチで、母親と別れて不安げな表情を浮かべている。

 13日に函館近郊の会社員や大学教授ら約25人が準備会を発足。事業費約1500万円は協賛金や募金を募り、同様のデザインの小さな像も販売して賄う計画で、6月中には総会を開く。

 大橋良平副委員長(62)=U建築事務所代表=は「失われつつある日本の童謡をよみがえらせ、親子の関係を見直すきっかけになれば」と話している。問い合わせは準備会事務局TEL0138・54・3755。(新目七恵)


◎辻仁成監督、アントニオ猪木主演の映画が函館で6月から撮影。函館市民のエキストラ募集
 芥川賞作家で函館西高校出身の辻仁成さん(48)が監督を務める映画「アカシアの花の咲き出すころ―ACACIA―」が6月中旬から、全編函館ロケで制作されることが27日までに分かった。元プロレスラーのアントニオ猪木さん(65)が初主演する。元覆面プロレスラーの初老の男性と1人の少年との交流を通じ、人のきずなや家族愛の大切さを伝える内容で、来年の公開を目指す。辻監督は「素晴らしい映画になるよう全力挙げて撮影したい」と意気込みを語っており、広く市民のエキストラ参加者を募集している。(新目七恵)

 映画は、かつて悪役覆面レスラーとして知られ、現在は団地に1人で住む孤独な老人(アントニオ猪木さん)が、いじめられっ子の小学生と出会い、互いに心の交流を交わしていく物語。孤独死、年金問題、暴力、自殺など現代社会の現状を盛り込み、函館の自然と情緒あふれる街並みを舞台に人の優しさや愛の重みなどを描き出す。共演は石田えりさん、北村一輝さんら。制作はスカンヂナビア(東京)。

 辻監督は中高生時代の4年間を函館で過ごし、小説「海峡の光」で第116回芥川賞に輝いた1997年には函館市栄誉賞を受賞している。

 映画の函館ロケは01年の「ほとけ」以来7年ぶり。今回、制作に当たって辻監督は「心のふるさとである函館への思いがここ数年強くあった。老人と少年の心の交流を通して、孤独を生きる人々を励ます温かい映画にしたいと思い、書き上げた作品の撮影地選びには函館を強く推薦した」という。

 スカンヂナビアは、市民エキストラとして50歳以上を中心に幅広い年代を募集する。希望者はエキストラ担当窓口に電話(090・6486・0594)などで申し込む。問い合わせも同じ。はこだてフィルムコミッションホームページからのエキストラ登録も可能。

 29日からは、辻監督らスタッフが撮影場所などを探すロケハン作業のため来函する予定。


◎市、都市経営会議設置へ
 函館市は、市政の基本方針や重要施策について、情報を共有しながら協議、決定する「都市経営会議」を早期に設置する。現在の政策会議に代わる組織で、都市経営の観点から市長をトップとする特別職と幹部職員が重点課題について意見交換し、部局間の調整を図りながら施策を決め、市政の効率的な運営を目指す。(高柳 謙)

 現在の政策会議は1989年に設置。傾向として市政の基本方針の審議や決定に重点が置かれてきたが、衣替えする都市経営会議は、事前の情報共有や意見交換も重点化し、部局間の総合的な調整を図りながらさまざまな計画を推進していく。

 構成メンバーは市長、副市長、理事、交通・水道・病院局長、教育長、企画・総務・財務部長で、月2回程度、市長が招集する。検討、協議する市の基本方針や重点課題は、例えば子育て推進や高齢者福祉計画、中心市街地活性化などが挙げられるという。

 必要に応じて意見交換し、市計画調整課は「高齢者福祉であれば福祉部長、中心市街地活性化であれば都市建設部長や経済部長ら、関係する部局長が会議に出席し、意見を交わすことになる」としている。

 既に「政策懇談会」の名称で新組織の母体が作られ、本年度から定期的に会合を開いている。同課は「現在、都市経営会議の規定を策定しており、近々に立ち上げたい。市政方針について迅速かつ的確な意思決定が図られる」とメリットを説明する。

 都市経営会議の設置は、本年度から5カ年の新しい行財政改革計画の中で盛り込まれた。時代の変化に対応できる市役所づくりの中で、新たな行政システムづくりの一つに掲げている。


◎支庁再編、乙部町長 条例提案は時期尚早
 【札幌】道議会の道州制・地方分権改革等推進調査特別委員会(竹内英順委員長)は27日、道町村会長の寺島光一郎・乙部町長、道市長会長の新宮正志・室蘭市長、道町村議会議長会長の川股博・空知管内由仁町議会議長から、支庁制度改革に関する意見聴取を行った。寺島会長らは6月10日開会予定の第2回定例道議会への支庁再編関連の条例提案は時期尚早と指摘、全道180市町村の意見を尊重した上で拙速な改革を行わないよう強く求めた。

 特別委は道町村会、道町村議会議長会、道市長会、道市議会議長会の4団体が13日、道と道議会に拙速な支庁再編を行わないよう要請したことを受け、あらためて市町村の意見を聞いた。公務で欠席した道市議会議長会長の畑瀬幸二・札幌市議会議長を除く3会長の意見表明後、質疑を行った。

 寺島会長は「全道145町村はいかなることがあっても容認できない。道議会は是々非々の良識を持って町村の思いを受け止めてほしい」と述べ、再編案への反対姿勢を重ねて強調。新宮会長は「改革のメリットが道民に示されていない。4割もの職員が削減される支庁廃止地域は衰退が懸念される。本庁と14支庁全体での改革に向けて地方と双方向の議論が必要」と指摘した。

 寺島会長はさらに、道が支庁統廃合後の地域振興策として新たな交付金制度を検討していることについて、「財政難の中でどこから金が出てくるのか。道の行財政改革は不十分だ。金を与えなければ支庁廃止で地域の衰退が一層進むということではないのか。改革の大義は全く見えない」と批判した。

 川股会長も「6月5日の定期総会では、条例提案は性急に過ぎるとして、道や道議会に慎重な議論を求める決議を行う方針だ」と述べ、第2回定例会で条例提案を目指す道側の動きをけん制した。(松浦 純)


◎支庁再編、来月4市町 条例提案強行で抗議運動
 【札幌】支庁統廃合に反対する江差、日高管内浦河、根室、留萌の4市町の緊急首長会談が27日、札幌で開かれ、道が6月10日開会予定の第2回定例道議会で、支庁再編に関する条例提案を強行する場合、1000人規模の抗議運動を6月上旬にも道庁周辺で展開する方針で一致した。(松浦 純)

 濱谷一治江差町長、谷川弘一郎浦河町長、高橋定敏留萌市長は同日、道議会の道州制・地方分権改革等推進調査特別委員会を傍聴。根室市を含む4市町から議会関係者ら約30人が傍聴席に陣取り、支庁再編への反対姿勢をアピールした。

 道議会では、最大会派で知事与党の自民党・道民会議が30日の幹事会で、条例提案の是非をめぐる会派の方向性を議論。6月2日の議員総会で最終判断を行う見通しという。

 委員会終了後に開いた首長会議では、道が条例提案を強行したり、道議会自民党が条例提案を容認した場合の対応を協議。道や道議会の情勢を見極めながら、必要に応じてただちに道庁や道議会周辺で抗議行動を展開できるよう、4市町で1000人規模の動員体制を整えることで合意。抗議活動では道庁や道議会を住民らで包囲するほか、市内中心部でのデモ行進などを想定しているという。

 4市町は当初、30日にも抗議運動を行う方針だったが、日高、根室、留萌の3支庁区選出の自民党道議から「幹事会での議論を慎重に見極めてほしい」との要請を受けて、実施を見送ったという。

 濱谷江差町長は今後の反対運動の展開について「幹事会の議論を見た上で、抗議行動の実施を判断する。道が提案を強行したり、自民党が提案を容認するような事態になれば、道町村会をはじめ地方4団体と足並みをそろえて総力を挙げた抗議行動を展開していく」としている。


◎6月1日からタクシー車内 乗務員禁煙
 函館地区ハイヤー協会(鍵谷良一会長)は6月1日から、乗務員の車内での禁煙化に取り組む。対象は同協会に加盟する法人41社の1104台と、函館個人タクシー協同組合(相澤雄三理事長)の108台の計1212台。来年1月1日には、乗客を含む車内全面禁煙に移行する予定で、道内では7月に全面禁煙を開始する札幌地区に次いで2番目となる。

 公共の交通機関や施設内での禁煙、分煙化の動きが全国で広がる中、時代のニーズに呼応するのが狙い。渡島・桧山管内のタクシー会社では、3年ほど前から事業者が自主的な取り組みとして乗務員の車内禁煙を始め、昨春からその動きが本格化し、現在ではすでに管内の全車両台数の6割に上る。

 6月1日からは全タクシーの車両内外に、乗務員の車内禁煙と来年1月1日からの全面禁煙を告知するステッカーを掲示。乗務員向けには禁煙に至った経緯や関連規則だけでなく、乗客とのやり取りに関するマニュアルを配布し、全面禁煙の本格導入に備える。

 28日には乗務員の車内禁煙開始に先駆けて、同協会の役員らがJR函館駅前など函館市内3カ所で、ポケットティッシュを配りながら街頭広報活動を実施。同協会は「禁煙は全国的な流れでもあり、利用客の理解は得られるはず。快適な車内を提供するのはサービスの一環でもあり、業界のイメージアップにつながってくれれば」と、その効果に期待を寄せている。(浜田孝輔)