2008年5月3日(土)掲載

◎企画・SLが走るまち(3)森町
 「SL函館大沼号」が大沼国定公園の小沼に差し掛かるころ、左手に駒ケ岳が見えてくる。大沼公園駅を出発し、森町内に入ると、線路が曲折を描き、勇壮な姿は進行方向の左右、東山駅周辺では正面に、その直後には後ろに見える。

森駅に到着すると、列車は折り返しで函館に向かう。今度は砂原を経由するため、駒ケ岳をひと回りする。往路とはまったく違った山容を発見して、変化に富んだ山の表情を目に焼き付ける。


◎函館市が記念事業計画…日加修好80周年
 函館市は本年度、日本とカナダの修好80周年を記念した事業を開催する。詳細は在日カナダ大使館の意向などを確認して決めるが、市国際課は「12月のはこだてクリスマスファンタジーに合わせて、カナダと函館の友好関係を紹介するイベントを考えている」と話している。

 1928年に日本がオタワに公使館を設置し、正式に国交を樹立してから80周年を迎えた。

 函館市はカナダ・ハリファクス市と1982年に姉妹都市提携を結び、昨年は提携25周年の節目となった。今年1月にはピーター・ケリー市長が初来函し、市民をはじめ函館ハリファックス協会(山崎文雄会長)などの友好団体と親交を温めた。ハリファクス市からは98年の第1回クリスマスファンタジーから毎年、ツリーのモミの木が寄贈されている。

 市はこうした友好関係やカナダを紹介するパネル展の開催、カナダ映画の上映、カナダ大使館職員を招いての講演会などのイベントを考えている。クリスマスファンタジーの開幕も例年通り、大使館関係者を招いて点灯式を行いたい考えで、今後、大使館やファンタジー実行委員会などと調整していく。

 同課は「函館と同様、ハリファクス市も映画のロケ地や舞台となる街。ともに映画祭を実施しているほか、ハリファクスにはアニメなどのクリエーター(作者)も多いと聞いている。実りあるイベントを企画したい」と話している。

 在日カナダ大使館は、日加修好80周年事業について「政治、経済、ビジネス、科学技術、文化、教育など各分野での日加間の友情と協力を振り返り、今後の80年を希望的にとらえる機会としたい」としている。

 今年の函館市は、国際交流イベントが豊富。ロシア領事館が開設されて150周年を迎えたことから、この1年を「函館におけるロシア年」として関連イベントを計画しているほか、7月の北海道洞爺湖サミットではロシア政府首脳の訪問を大使館や政府高官に要請している。(高柳 謙)


◎「ナッチャンWorld」が就航
 東日本フェリー(函館市港町3、古閑信二社長)は2日、2隻目となる高速フェリー「ナッチャンWorld(ワールド)」を函館―青森間に就航させた。青森を午前8時に出発した初便には、佐々木誠造青森市長らが乗船して来函し、西尾正範函館市長らの熱烈な歓迎を受けた。

 同船は、オーストラリア・インキャット社製の波浪貫通型双胴船で、大きさは全長112メートル、幅30・5メートル、総トン数1万700トンと、昨年9月に就航した「ナッチャンRera(レラ)」と同型。最大時速は約67キロに達し、同区間を2時間で結ぶ。2隻体制で1日6、7往復する。

 同社函館ターミナルに第1便が到着したのは、午前10時ごろ。西尾函館市長や函館商工会議所の松本栄一副会頭、函館国際観光コンベンション協会の沼崎弥太郎会長らが出迎える中、ねぶた囃子(ばやし)の演奏者に続き、佐々木青森市長をはじめ、青森からの乗客が次々と降り立った。

 到着後には、「ナッチャンWorld」の就航を記念した青函交流式典を開催。佐々木青森市長は「双子の船が誕生したのを機に、青函が新しい経済文化圏に育っていくよう応援してほしい」、西尾函館市長は「ナッチャンWorldの導入により、本州と北海道を結ぶ物流・旅客体制が強化され、青函交流の促進に大きく貢献してくれるはず」とそれぞれあいさつした。

 また、両市長は今後、さらなる青函交流の実現を盛り込んだ宣言書を交換。古閑社長は「これからやらなければという活力と勇気をもらった。社員一丸となって、地域の人に役立ち、青函エリアの発展や活性化の一助になれるよう頑張っていきたい」と抱負を述べた。

 同ターミナルでは同日、「ナッチャンWorld」の就航と、来年に函館港開港150周年を迎えるのを記念したイベント「津軽海峡・海と大空のフェスティバル」(実行委主催)が開幕。有名アーティストによるコンサートや、海にちなんだ展示会などが企画されている。18日まで。問い合わせは、実行委(東日本フェリー内)TEL0138・62・5435。(浜田孝輔)


◎支庁再編 狭まる包囲網…道・道議会の最終決断は?
 【江差】道の支庁制度改革に対する包囲網が急速に狭まっている。改革のメリットが無い再編案に道町村会をはじめ地方は猛反発。反対の火の手は全道に広がっている。道は地方を納得させる修正案も提示できず手詰まりの状態。条例提案の最後のチャンスとなる6月の定例道議会を“背水の陣”で臨む高橋はるみ知事は連休明けの最終判断を迫られている。

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 「こんな振興局ならいらない」。1日に開かれた桧山町村会と町村議会議長会の緊急合同総会の席上で高橋貞光せたな町長が語った。支庁存続運動から一線を画してきた檜山北部の首長による踏み込んだ発言に、江差町関係者は驚きの声を上げた。

 江差町にとって“オール桧山”の存続運動は悲願だった。だが、人口減少や経済的打撃に比重を置く運動に対する他町の視線は厳しい。地域エゴを排除して、広く道民の支持が得られる運動への脱皮が課題だった。管内全町の支援を得た濱谷一治江差町長は「支庁再編は全道の課題だ。全道の市町村と共同歩調で決戦に臨む」と語る。町村会・議長会と産業団体は結束して、再編案の撤回と条例提案の断念を道に迫る構えだ。

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 14支庁を9総合振興局に再編する道の最終案。桧山支庁など5支庁は窓口業務中心の振興局に格下げする。「道庁―支庁」だった事務の流れは「道庁―総合振興局―振興局」の3重構造になる。3つの総合振興局を置く道央では、地域間の政策調整も必要になり「支庁再編は弊害こそあれ恩恵がある市町村はどこにもない」(寺島光一郎乙部町長)のが現状だ。

 道は5月に入り、振興局を置く地域に幹部を派遣して(1)地域づくりや産業担当のスタッフ配置(2)土木現業所の機能維持(3)地域事情に応じた職員配置(4)3年程度の段階的な職員削減―などの条件を示し、支庁再編への理解を求めている。だが、地方側は「考慮に値しない内容。条例提案へのアリバイ作り」と冷淡だ。

 2009年度の新支庁体制発足を目指す道にとって、6月の第2回定例道議会は条例提案の最後のチャンスだ。高橋知事は、地方の猛反発を押し切ってでも条例提案に踏み切るかどうか、連休明けにも最終判断を迫られる。だが、知事与党の自民党・道民会議は慎重姿勢のまま。13日には道町村会、道町村議会議長会、道市長会、道市議会議長会が足並みをそろえて支庁再編反対を知事に申し入れる。包囲網が狭まる中での政治決断が注目される。(松浦 純)


◎企画 エコ宣言(4)…大沼の水質改善に取り組む
 七飯町と森町にまたがる大沼は、道南の米どころ大野平野を潤す水源になっている。大沼の水の一部は、函館湾にも注ぐことから、三方を海に囲まれた函館市ともつながりが深い。

 その大沼はここ数年来、水質が問題になってきた。4月には大沼の自然浄化を目指す「大沼水質改善研究会」が発足。民間非営利団体(NPO)や研究者、乳製品製造会社などが一体となり、大沼の環境改善に真剣に取り組もうと動き始めた。

 同研究会の榊清市会長が沼の水質に注目したきっかけは大沼観光だった。榊会長は「サミットもいいが、足元から目を背けて環境問題は語れない。道南に住むわたしたちは、まずは道南の大切な観光地の大沼の水質に目を向けるべきだ」と話す。

 大沼の環境について研究する道教育大学函館校の田中邦明教授や、函館高専の田中孝助教、乳製品製造業者、建設業者、函館水産高校教諭なども巻き込んだ。多様な立場からの参加で、より多角的な現状分析、対策が可能になると期待が集まる。

 大沼の汚れの原因は、農地やゴルフ場への過剰施肥、山林や下水からの土砂や栄養物質流出、畜産業の影響などさまざまだ。これについて、それぞれの立場から調査し、議論を深めていくことで、最終的には沼の水質を向上させようと考えている。

 大沼を漁場とする大沼漁業組合(組合員22人)の宮崎司組合長は沼の水質について、「漁業資源は減少の一途。きれいすぎても魚は住みにくいが、現在は逆の要因で住みにくくなっている」と言い、会の今後に期待する。しかし同会の活動には多くの住民の理解や支援が必要で、新たな会員や活動資金の寄付、ボランティアを募っている。榊会長は「この活動にはたくさんの人の協力が必要です。皆で大沼の水質について考えてみませんか」と話している。 (小泉まや)