2008年5月30日(金)掲載

◎佐藤さん、20年以上「南部裂織」制作続ける
 女性の手仕事として母から娘へ代々受け継がれ、200年余の歴史を持つ青森県の伝統工芸「南部裂織(さきおり)」。函館市山の手町の佐藤知子さん(67)は20年以上にわたってこの技を磨き、自前の機材「躄機(いざりばた)」を使って作品制作を続けている。町会館や福祉施設で出前講座なども行っている。「ものづくりを通して多くの人と出会えた」と喜ぶ佐藤さんは同時に、「先人の手で伝え続けられた日本の手工芸の美しさ、素晴らしさをさらに多くの人に知ってほしい」と話す。(小橋優子)

 歌志内市出身の佐藤さんは1965年の結婚を機に、青森県大湊市に移住。以来、夫の転勤で八戸市や東京などを転々とし、93年から函館に住んでいる。青森時代に興味本位で参加した公民館講座で「南部裂織」の魅力に取りつかれ、基本技術を習得しようと5年ほど講座に通い、その後も独学で知識、技術を身に付けた。

 南部裂織保存会(十和田市)に加入し、89年に南部裂織地機師範教授の資格を取得。「南部裂織を手掛けるには躄機以外考えられない」と、地元の大工に依頼し、ヒバ材を使った重さ30―40センチで大きさ一畳ほどの機織りの機材をそろえた。函館市内で躄機を使って南部裂織を手掛ける人はほとんどいないという。

 幅40センチほどの竹製の「筬(おさ)通し」に上下200本ずつ糸を通し、不用になった着物や布団カバー、シーツなどの布切れ(木綿)を糸の間に通し、巻き棒を使って勢いよく手前に引き付ける。佐藤さんは「一本でも糸の本数を間違うと完成しない」と説明する。

 バッグをはじめ、タペストリーなどさまざまな作品を制作し、最近は「布草履」にも挑戦している。「安くて、履きやすい草履がほしく、本を見て試行錯誤しながら仕上げた」という。

 佐藤さんは「師範の資格を取って20年。いつか個展を開き、作品を通じて南部裂織の魅力を広く知ってもらいたい」と話している。3人以上の団体やグループへの南部裂織や草履の出前講座は可能。出前講座に関する問い合わせは佐藤さんTEL090・2056・1754へ。


◎6月1日から後部座席のシートベルト着用義務化
 道交法の改正に伴い、6月1日から公共交通機関を含めたすべての車両で、後部座席のシートベルト着用が義務づけられる。函館市内でもタクシーやバス業界などが施行に対応するための準備を整え、市内の車用品販売店では関連商品が並び、商戦も活発化している。道警は「高速道、一般道を問わず、運転者は後部座席に座る家族や友人にシートベルトを着用させ、命を守るのが義務となった。同乗者も自分の命は自分で守る意識を持ってほしい」と呼び掛けている。(鈴木潤、新目七恵)

 車内全席のシートベルト着用の義務化は当面の間、一般道で違反した場合の罰則はないが、高速道路では運転者に対し1点の減点となる。妊婦など義務化の対象外となるケースもある。

 渡島、桧山管内42社のタクシー会社が加盟する函館地区ハイヤー協会(鍵谷良一会長)では、先に開かれた総会で利用客への呼び掛けなどで法令順守を徹底することを確認。全車両に「全国乗用自動車連合会」(本部・東京)が作成したステッカーを張り周知を図る。義務化については「お客さまの安全確保のためには必要」としながらも、一方で「利用客とのトラブルが心配。定着には時間が掛かるのでは」との声も。

 「高速はこだて号」など道内の都市間バスや定期観光バスを運行する北都交通(本社・北広島市)函館支店はすでに始発時、ベルトの着用を利用客に呼び掛けている。着用をめぐる大きなトラブルはなく、「違和感なく移行準備を進めることができた」とする。

 市内の車用品販売店では関連用品の売れ行きが好調。5月上旬から特設売り場を設けたスーパーオートバックス函館(昭和3)では、ベルト着用時の締め付け感を緩和する専用パットや、6、7歳児向けの座面を上げるシートが売れ筋で、齋藤広光ユニットマネジャー(33)は「昨年5月と比べ、売れ行きは倍増している」と話す。

 後部座席のシートベルト未着用の場合、交通事故の致死率は着用時の4倍で、車外放出の危険性も2倍、前席者にぶつかり、前席者が頭部に重傷を負う確率は50倍に跳ね上がるとされている。 10年ほど前に車同士の衝突事故に巻き込まれたという北斗市内の30代の女性は「事故当時、助手席に乗っていたが、シートベルトを着用していたおかげで大事には至らなかった。安全面から見て義務化してもいいのでは」と話す。

 日本自動車連盟(JAF)と警視庁が昨年10月に行った調査では、道内における一般道の後部同乗者のシートベルト着用率は8・3%(全国平均8・8%)、高速道でも12・9%(同13・5%)と低くなっている。


◎焼酎の絞りかすからメタンガス、プラント建設へ
 【厚沢部】町内産サツマイモを原料に、本格芋焼酎を生産している札幌酒精工業厚沢部工場(岩崎弘芳工場長)から出る焼酎の絞りかすを生かし、メタンガスや肥料を作り出す「バイオガスプラント」が同工場の隣接地に建設される。ガスはサツマイモの育苗に利用、肥料はサツマイモの栽培農家に提供する。原料生産から醸造まで一貫した循環型システムを整えるのは全国の焼酎工場でも初の試みとみられ、地球温暖化など環境問題への関心が高まる中、注目を集めそうだ。

 プラントを建設するのは同社が町内に設けた農業生産法人ノアール(小堤文郎社長)。プラントは6月中にも着工し、今シーズンの醸造が始まる11月中の運転開始を目指すという。 プラントは年間約1000?生じる絞りかすを、微生物の働きで発酵させてメタンガスを取り出す。ガスは工場に隣接する育苗ハウスの熱源などに利用、ガス分離後に生じる液体は肥料として栽培農家に提供して畑に散布する。

 芋焼酎の本場・鹿児島県の焼酎工場では、産業廃棄物となる絞りかすをメタンガスの原料や家畜用飼料として活用しているが、農家と連携して育苗から醸造まで一貫した循環型システムを整えるのは「全国の焼酎工場でも初めての試みではないか」(同社)としている。

 小堤社長は「焼酎醸造の工程が見学できる工場は、観光スポットとして注目されている。今後は環境面に力を入れた醸造現場の見学を通じ、循環型社会を考えるきっかけを提供できれば」と語る。

 総事業費は4億1234万円。国が2分の1に当たる1億9635万円を町を通じて補助する。町は30日の第2回臨時町議会に、補助金を盛り込んだ一般会計補正予算案を提案する。 (松浦 純)


◎駒ケ岳の入山規制継続、ことしも「勉強会登山」実施へ
 【森】函館市や七飯、鹿部両町、函館海洋気象台、渡島支庁などで構成する駒ケ岳火山防災会議協議会(会長・湊美喜夫森町長)は29日、駒ケ岳自然休養林保護管理協議会(同)との合同会議を開き、1998年10月から実施している駒ケ岳の登山規制の継続と、昨年1回だけ実施した「勉強会登山」を7月から9月にかけて数回行うことを決めた。

 駒ケ岳は96年の噴火以降、98年、2000年と小噴火を繰り返している。01年に火山性微動が観測された以降、目立った活動はなく「静穏」を保っているが、前兆現象が乏しく、噴火までの推移が早い特性から、両協議会は慎重な対応を取り、規制を継続している。

 会議では駒ケ岳の特性を改めて確認するとともに、防災対策への課題などを検討。安全面や防災面を考慮し、入山規制は続けるものの、高まる登山愛好者の入山を求める声なども踏まえ、防災教育や防災意識の高揚を目指す目的の勉強会登山は行うことを決めた。

 昨年は予定していた3回の登山のうち2回が大雨の影響で中止になっている。ことしの勉強会登山の内容や日程は詳細が決定した後、両協議会の構成自治体、森林管理署のホームページや広報紙などで発表し、参加者を募る。(笠原郁実)


◎辻仁成監督がロケハンで函館入り
 全編函館で撮影される映画「アカシアの花の咲き出すころ―ACACIA―」のロケハン(撮影に適した場所を探す作業)のため、辻仁成監督や東京の映画制作会社のスタッフらが29日、函館入りした。辻監督らは市内の団地などロケの予定地を見て回り、各シーンのイメージを膨らませていた。(新目七恵)

 映画は元覆面レスラーの初老の男性と1人の少年との交流を通じ、愛の重みや人のきずなの大切さを伝える内容。元プロレスラーのアントニオ猪木さんが映画初主演し、6月中旬から撮影を始める予定。ロケハンは今回で2回目となる。

 この日、映画のメーン舞台となる団地を訪れた辻監督は、台本を片手に建物や周辺の雰囲気を熱心に見て歩き、撮影したい場所やセットの構想などをスタッフと丹念に打ち合わせていた。ロケハンは31日まで行う予定。

 辻監督は「函館の風景は良く素晴らしい成果があった」と話していた。

 制作会社のスカンヂナビア(東京)では、市民エキストラを募集している。希望者は担当窓口に電話(090・6486・0594)。問い合わせも同じ。はこだてフィルムコミッションホームページからのエキストラ登録も可能。


◎コカ・コーラ自販機の売り上げの一部を精神障害者の支援に
 売り上げの一部を精神障害者の支援に役立てる自動販売機が函館市内に登場した。地域ぐるみで当事者への支援活動を応援する試みで、市内のNPO法人全国精神障がい者地域生活支援センター(能登正勝理事長)の運営費に充てられる。能登理事長は「当事者への支援の輪を広げるアイテムになれば」と期待している。

 北海道コカ・コーラボトリング(札幌、角野中原社長)の社会貢献活動の一環で、札幌市内に2台、函館市内に12台の計14台を設置。函館では同社の自販機を設置している不動産管理プレジデント・コーポレーション(成田勝彦社長)が管理するアパートやマンション前に5月から導入した。同法人に贈られるのは12台で年間8―10万円程度という。

 利用者に賛同してもらうため、自販機にA3サイズのポスターを張り、売り上げの一部が支援に充てられることを周知。成田社長は「趣旨を理解してこの自販機だから利用するという人、設置場所の提供者が増えるよう協力したい」とし、函館だけでなく札幌の同業者にも働き掛けている。

 同法人は、精神障害者や精神疾患の当事者で活動する全国組織で、相談支援機関として全国から電話で相談を受けている。能登理事長は「精神障害は目に見えず世間からの誤解や偏見が強い上、医療・福祉の中でも遅れている分野。当事者のかゆいところに手が届く支援をしてきたい」と強調。地域からの応援に対し、「空き缶やペットボトル、リングプルの回収、自販機周辺の清掃ボランティアを通じて、地域に恩返ししたい」としている。

 自販機に関する問い合わせは同法人TEL0138・46・0600へ。


◎函館地域産業振興財団、総合情報サイト「函館がごめ」開設
 函館地域産業振興財団(高野洋蔵理事長)はこのほど、函館特産のガゴメ(トロロコンブの仲間)に関する総合情報サイト「函館がごめ」を開設した。ガゴメの生態・成分や加工品、漁業者の声などを紹介。一般市民がわが町の特産品を知る情報源としても、広く活用されそうだ。(浜田孝輔)

 同財団は文部科学省から受託する「都市エリア産学官連携促進事業」に取り組み、ガゴメはその成果を代表する産品のひとつ。知名度を全国区に押し上げ、さらなる地域経済の活性化に貢献しようと、渡島支庁からの助成と自己資金を基に専用サイトを立ち上げた。

 サイトは、基本情報の「函館がごめ」、商品や料理などについての「がごめランド」、成分やコンブの種類などに関する「がごめ大辞典」の3部構成。基本情報では北大大学院水産科学研究院の安井肇准教授のコメントや、地元漁協関係者へのインタビューなどが紹介されている。

 「がごめランド」では民間企業や団体が製造、販売する商品や料理のレシピ、ガゴメのメニューを提供している飲食店、「がごめ大辞典」では含有成分「フコイダン」とその機能性、海中での生態を見られる写真・映像などを掲載している。会員登録すると、調理法などに関する情報を投稿でき、利用者間のコミュニティーの場として集約していく。

 同財団は「単なる情報提供の手段にとどまらず、研究から生産、販売、料理へとつながる一連の流れを理解してもらうことで、地域資源を身近に感じてほしい」と話している。 サイトのアドレスはhttp://www.hakodategagome.jp/