2008年5月8日(木)掲載

◎企画【ありがとう 母の日に寄せて】(1)
本町市場の「秋山青果」専務 北村美知子さん(59)、母・秋山アイさん(78)
 小さいころから母が大好きだった。「買い物でも何でも、後ろをついて歩いてました。姿が見えないと半べそをかいたことも」と笑う。幼いころ、東京の動物園でパンダを見るため1時間以上も一緒に並んだこと、いろいろな場所に遊びに連れていってもらったこと…。「してもらったことは数え切れない」とほほ笑む。

 学生時代も仲が良く、恋愛や学校のことなど、どんな話もオープンにした。「母というより仲の良い友達」の感覚で、並ぶとよく周囲から姉妹と間違われた。一方で、口げんかは日常茶飯事。「でも家族だからすぐに和解する。主人より仲直りは早いかも。それが血のつながりでしょ」とさらり。

 母の性格は「自由奔放」で、人を縛らず、小言も言わない。好きに生きる。長男を産んだ後、東京の友人の店を手伝って10年ほど戻らなかったこともあった。「昔の女性とは違い、今風のサバサバした考えを持つ人。精神的に若いので、年より若く見える」と語る。

 母の日には「長生きして、頑張って働き続けて」との言葉を贈りたい。「物心ついた時から商売に携わっている人だから、健康のためにも一緒に働いてほしい。それが私の親孝行」と笑顔を見せる。

 昔は親子そろって仕入れに出掛け、評判だったという二人。アイさんは「男勝りの仕事をこなして感心」と娘をねぎらう。

 店に客の姿が見えると、即座に二人から「はい、いらっしゃい!」の声。そっくりのとびきりな笑顔で客を出迎える。(新目七恵)

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 自分を産み、育ててくれた「母親」は、誰にとっても特別な存在だ。身近にいても、離れていても、その存在は温かく、時に厳しい。11日の「母の日」に合わせ、4人の女性たちに、それぞれの母親の思い出や感謝の気持ちなどを聞いた。



◎企画【サイベ沢の贈り物(上)】畑地に眠る地域の財産
 戦後間もない1949年5月、道内考古学史に残る一大発掘事業がスタートした。現在の函館市桔梗町にあるサイベ沢遺跡の発掘だ。市立函館博物館と北大の児玉作左衛門教授、大場利夫助手を中心にした45日間の調査には、延べ1335人の市内や近郊の中学生、高校生らも参加した。見物客が連日大勢押し寄せるなど、市民に縄文ブームを巻き起こした。函館市教委の田原良信文化財課長(56)は「道内の考古学史の中でトピック的な出来事。戦後復興期の函館地域に明るい話題をもたらした」と評価する。

 サイベ沢遺跡は明治時代から知られていた。JR函館本線の西側の函館山や津軽海峡を見据えるなだらかな台地に広がり、北側には常盤川が流れる。東西500メートル、南北300メートルで、全体面積は約15万平方メートル。約6000―4000年前の縄文前期から中期にかけて、大規模集落が存在したと推察される。規模としては道内最大級の遺跡だ。

 49年の発掘では、常盤川左岸に位置する2カ所の貝塚周辺約100平方メートルを対象とした。掘り下げた結果、地層の違いから堆積(たいせき)層が25に分かれ、縄文前期の円筒下層式土器を「サイベ沢I式―IV式」、縄文中期の円筒上層式土器を「同V―VII式」とし、7つの文化層に分類。約2000年の長期間、ほぼ途切れることなく人々が暮らしていたことが分かった。

 これらの出土品は復元可能な土器300点、石器1200点、土器片はリンゴ箱65箱に達し、密度が濃い遺跡であることも分かった。出土品の一部は道の有形文化財に指定されている。土器の特徴を市立函館博物館の長谷部一弘館長(56)は「上層式は下層式に比べて文様や装飾が複雑になり、芸術性も高い。粘土の質も上がり、焼成もしっかりしている」とする。

 サイベ沢に人々が住んでいた時代は、ちょうど青森・三内丸山遺跡が存在した時代と重なる。田原課長は「考古学者は『この土器は顔つきが違うから、出土場所が違う』という言い方をするが、青森・津軽地方の遺跡で出土する土器とサイベ沢のは区別が付きにくい」と話す。長谷部館長も「青森と函館の間では技術の伝達や物流が活発だった証拠。津軽海峡は当時から『しょっぱい川』だったと言える」とする。

 道南から北東北に広がる円筒土器文化圏として、縄文時代の青函交流を知る上でも資源的価値は高い遺跡だが、全容を解明するような発掘は行われたことがない。

 サイベ沢には今、豊かな畑が広がっている。

 函館市桔梗町に広がるサイベ沢遺跡はこれまで、数回の調査発掘などで、青森市の三内丸山遺跡に匹敵する大規模な縄文遺跡と考えられている。道登録の埋蔵文化財包蔵地に位置付けられ、大規模な開発もなかったため、広大な敷地は、現在も手つかずのまま存在する。これまでの発掘の歴史などから、地域の財産としてのサイベ沢遺跡を考える。(今井正一)



◎鳥インフルで巡回調査、渡島・桧山管内「異常なし」
 根室管内別海町の野付半島で見つかったオオハクチョウの死骸(しがい)から強毒性の鳥インフルエンザウイルス「H5N1型」が検出された問題で、渡島、桧山両支庁は7日までに、七飯町大沼と上ノ国町の天の川、厚沢部町の厚沢部川の計3カ所を巡回調査した。野鳥の死骸などは見つからず、両支庁では「異常はない」としている。

 両支庁によると、道の指示を受けて2―6日、支庁職員らが各所を巡回し、野鳥の生息状況を調べ、死亡した鳥がいないかなどを確認。大沼では調査日によって数に変動はあるものの、カモが100羽ほど確認されたほか、6日にハクチョウ1羽が見つかった。いずれも弱るなど異常な様子はなかったという。桧山支庁は7日も天の川と厚沢部川の河口付近を巡回したが、異常はなかったとしている。

 両支庁では電話での住民相談窓口を設けており、3―6日の連休中も「鳥が死んでいる」などの相談が数件寄せられたが、いずれも鳥インフルエンザの可能性のある情報ではなかったという。

 両支庁では「鳥インフルエンザは感染した鳥との濃密な接触をしない限り、人には移らない。野鳥の死骸は素手で触らず、異常な死に方をした野鳥を見つけたら連絡を」とし、引き続き情報提供を呼び掛けている。問い合わせは渡島支庁環境生活課TEL0138・47・9439、桧山支庁環境生活課TEL0139・52・6494。(新目七恵)


◎JA新はこだて、あす初の直売所オープン
 【北斗】JA新はこだて(小野寺仁代表理事組合長)は9日、同JA大野基幹支店東前事業所(北斗市東前62)敷地内に、同JAとして初の直売所を開設する。地元農家が育てた旬の新鮮野菜やコメを並べ、生産者の「顔が見える食」を提供することで、地産地消を進めるのが狙い。

 食品偽装表示や中国産冷凍ギョーザ問題など、消費者に食への不安感が広がる事態が相次いでいる中、安全な食品を販売しようと企画。店名は広大な「平野」と販売所の「小屋」のイメージを重ね、「北斗へい屋」とした。

 場所は国道227号沿いで、店内は約30平方メートルの広さ。北斗の農家女性グループ「かりんの会」(加藤柳子代表)メンバーなどが協力し、ハクサイやホウレンソウ、レタスなどさまざまな採れたて野菜を持ち寄るほか、道南産米「ふっくりんこ」など同JAの商品も並べる。営業時間は午前9時―午後4時(商品が無くなり次第終了)、定休日は月曜と祝祭日。

 店舗運営を統括する同支店の新谷正人営農センター長(44)は「安心・安全な食を求めやすい価格で提供するので、気軽に立ち寄ってほしい」とPRしている。

 オープンを記念し、9、10の両日は来店客1人につき、ふっくりんこのミニおにぎり1個(先着100人限定)、11日は直播栽培米「ななつぼし」1人約500グラム(先着100人)を無料配布するほか、9―11日は道南圏の宅配サービスを無料とする。問い合わせは同事業所TEL0138・77・7779。(新目七恵)


◎青柳町「啄木通」チューリップ50本切断される
 全国的に花壇の花々が切断される被害が相次ぐ中、函館市青柳町の市道函館公園通「啄木通」沿いにある花壇のチューリップ約50本が切断されていることが7日分かった。25年以上前から町内の花壇の手入れや植栽を続けている「矢車会」は警察などに被害届を出す考えはないが、北村哲雄会長(80)は「二度と同じことがないことを祈りたい」と心を痛めている。

 チューリップは青柳町にある亀井勝一郎文学碑周辺と青柳小学校周辺、護国神社前の花壇も含め計約2500本植えられているが、被害は啄木通沿いだけ。同会は青柳町内の住民16人で構成され、「色とりどりの花で美しい景観を作ろう」と丹念に手入れをしている。

 6日夜は雨と強風だったため、北村会長が7日午前9時半ごろに各花壇を巡回したところ、悲惨な姿に切断されたチューリップを発見。6日午前にはメンバーが巡回を兼ねて手入れを行ったが、通常と変化はなかったという。北村会長は「これまでにも強風や大雨の被害で植物が倒れてしまったことはあるが、茎の途中から切断されたのは今回が初めて」としている。

 見ごろを迎えたチューリップは30センチまでに成長。被害に遭ったチューリップは、全て根から15センチほどの位置で切断され、花壇の中に放置されていた。北村会長は「怒りで『もう二度と植栽はしない』とも思ったが、やっぱり花が好きなので、きれいな花で明るい町づくりを地域で続けていきたい」と話している。(小橋優子)


◎人材派遣業のシグマテック・国から函館地区の求人開拓事業受託
 人材派遣業のシグマテック(東京)が、4月から渡島・桧山管内での求人開拓事業(市場化テスト)を国から受託し、事業所への訪問に奔走している。道内では初の試みで、民間企業の参入が低迷する雇用情勢の打開に向けたてこ入れとなるのか、その成果に期待が集まる。(浜田孝輔)

 市場化テストは、雇用情勢の厳しい地域を対象に、民間事業者による競争入札で業務の委託先を選定。前段となる市場化テストモデル事業を道内では2005年度に札幌、06年度に旭川で実施したのを経て、本格導入となった07年度は旭川で取り組む予定だったが、規定の条件を満たす企業がなく、本年度の函館地域が道内で初めてのケースとなる。

 シグマテックは、昨年度に青森県東青地域(青森市、東津軽郡)での市場化テストを受託し、本年度も継続して業務に着手。函館地域での事業に際しては求人開拓アドバイザーとして男性4人、女性2人のほか、事務スタッフ1人を配置した。

 開拓の対象となる求人は(1)地域内に所在する事業所(2)地域内が就業地(3)雇用保険への加入―が条件。企業側からの求人は函館公共職業安定所に直接申し込むこともできるが、シグマテックが訪問先で記入してもらった求人申込書を同職安に提出した情報も公開される。

 同社の受託期間は4月―来年3月末。本年度の函館地域での目標値はこれまでの実績を踏まえて算出され、開拓求人数は4500人以上、開拓求人が安定所の紹介あっせんで求職者の就職に結びつく件数(充足数)は1700人以上となっている。実績次第では開拓促進費の支給、委託費減額の措置もある。

 道労働局(札幌)は「民間ならではの知恵や発想を取り込むことで、これまで拾い切れなかった求人を掘り起こし、地域活性化につながることに期待したい」と話す。

 同社の加藤洋一郎北海道・東北統括部長は「手探り状態の中、青森で培ったノウハウを基に、成功させなければならないという使命感は強く抱いている。募集して人が集まらない場合には、企業に対してきめ細かなアドバイスに徹し、委託先からも高い評価を得たい」と意気込んでいる。