2008年6月12日(木)掲載

◎父の日企画(1)…舶来居酒屋杉の子、青井元子さん(54)→故杉目泰郎さん(享年84)
 ことし50周年を迎える函館市若松町の老舗バー「舶来居酒屋 杉の子」。昨年10月に亡くなった名物マスターの父、杉目泰郎さんは晩年、週1回カウンターに立ち、休みでも「忙しい時はすぐに呼べ」と駆け付けた。自家製の生ハムやベーコンを切っていると、1人で仕込みをしていた父を思い出す。「自分も同じような格好で切っているのかな」。父の姿を思い、泣いたことも。

 開店は1958年。日本が高度経済成長期で、函館は北洋漁業で栄えた元気のいい時代。幼いころから父に連れられ店でジュースを飲んだり、高校生になると仕事を手伝ったりした。「各地から来ては去っていく客の話が人生勉強になる。この空間が好きで離れられない」。30代半ばで転勤族の夫の理解を得て函館に残り、父や母千鶴子さん(82)と店を切り盛りするようになった。「空気のようだったけど、とても長い時間を父と一緒に過ごした」とあらためて感じる。

 頑固な部分は父にそっくり。反発もしたが、誰にでも公平に接し、相手を受け入れた寛容な父から学ぶことが多かった。「目に見えないものをいっぱいもらった」と今になって思う。父が店名に「居酒屋」と付けたのは、誰もが気軽に酒や会話を楽しめる場にしたいから。「かつての活気が戻らなくても、住む人がいいと思える街で何でも話せる場でありたい」。店に飾った父の写真に見守られ、その思いを受け継いでいく。(宮木佳奈美)


◎「もう限界」「廃業するしか…」 イカ漁一斉休漁
 原油価格の高騰で、道南のイカ釣り漁業者が悲鳴を上げている。全国のイカ釣り漁業者の任意団体「全国いか釣り漁業協議会」(本部・東京)が18、19の両日、小型イカ釣り漁船の一斉休漁を決めたことを受けて、函館市漁協など道内、市内の関係団体も同調した。窮状を訴える目的だが、出口の見えない燃料価格の高騰に漁業者の不安やいらだちは募るばかり。函館、道南特産のスルメイカ(マイカ)漁の厳しい現状を追った。

 「このままでは廃業するしか道はない」。函館港豊川ふ頭の岸壁で出漁を見合わせたイカ釣り漁業の男性(55)が苦虫をかみつぶしたような表情で語る。現在の主漁場となる松前沖までは、1回の出漁でドラム缶3、4本分(600―800リットル)の燃料を消費する。男性は「オイルショックの時でも将来に希望は持てた。今はそれがない。自助努力ももう限界だ」と遠くの海を見つめる。

 道漁業協同組合連合会(道漁連、札幌市)の試算によると、道内の指標となる釧路港ベースの1キロリットル当たりの燃料(A重油)価格は、04年6月に4万4400円だったものが、今年6月には10万3300円となり、5年間で約2・5倍に跳ね上がった。A重油のほか、軽油やガソリンの値上がりも含めると、燃料費アップによる負担増加分は08年の1年間だけで95億円、04年から5年間の累計では約290億円に上るという。さらに漁網や保冷用発泡スチロール箱などの資材価格も上昇を続けており、先行きは不透明なままだ。

 特に集魚灯を使うイカ漁では、ほかの漁に比べて燃料の消費量が多く、経営を圧迫している一方、魚の取引価格は燃料費に比例して上昇していない。道内でイカは04年度に1キロ264円だったものの、07年度には193円まで下落。漁業者からは「出漁すればするほど赤字がかさむ状態で、廃業に追い込まれるのも時間の問題だ」といらだちを隠さない。

 道南では今月1日に解禁となったばかりのスルメイカ漁を直撃。函館市水産物地方卸売市場によると、10日現在水揚げした小型イカ釣り船は計108隻で、前年同期の6割にとどまっている。これに伴い総水揚げ量も前年同期の7割に満たない52・5トンと落ち込んでいる。

 同協議会の休漁決定を受け、函館市漁協(村田純一組合長)も同協議会の方針に従う考え。佐藤博光専務理事は「A重油の価格が100円を超えるのは異常。イカ釣り業の窮状を訴えるという協議会の趣旨に賛同した」と話す。同漁協によると、函館港での小型イカ釣り漁船が燃料や集魚灯の発電に使うA重油価格は5月現在、昨年同月比32・5円増の1リットル102円まで高騰しているという。佐藤専務理事は「道漁連や上部団体とも協力しながら、国に対しても対策を働き掛けたい」としている。(森健太郎、鈴木潤)


◎76校に5640万円支給…函館市教委「知恵の予算」
 函館市教委が昨年度から独自事業として始めた「創意ある学校づくり推進事業(知恵の予算)」の本年度の計画内容が固まった。ことしも昨年度同様、市内の小学校46、中学校26、小・中学校の併置校2、高校2の計76校を対象に計5640万円が支給される。来年度、西小と統合する弥生小は児童が撮影した現校舎の写真を記念展示する「校舎思い出写真館」を企画しているほか、各校が芸術鑑賞や地域学習など多様な取り組みを展開する予定。

 知恵の予算は子供の実態を踏まえ、地域の特色を生かした教育活動を推進する目的で実施。1校当たりの児童、生徒数が200人未満の学校には60万円、200―500人には80万円、500人以上には100万円を支給する。主に学校活動や行事などの教育活動などが対象事業となる。

 市教委がまとめた各校の事業計画によると、小学校26校の事業項目計102のうち、昨年と事業名がほぼ同じで継続する取り組みは62、小学校併置校の亀尾、鱒川を含む中学校28校の項目計57のうち継続は39、函館、恵山高校の項目計7のうち継続は4だった。新規に取り組む事業では、中部小の「安全指導充実のための教育活動」や北星小の「情操教育の推進」、戸倉中の「コンピュータソフトを活用した学力向上対策」などが盛り込まれている。

 市教委では「昨年度は地域の人材を活用して開かれた学校づくりが進んだり、多様な体験活動を通して児童、生徒の社会性をはぐくむ教育活動が展開できた一方、年度途中の実施で準備不足の


◎知内でオオカミウオ2匹捕獲
 【知内】知内町中の川で11日、鋭い前歯と怖い顔つきが特徴のオオカミウオ2匹が捕獲された。体長はともに約70センチ、重量は3キロと3・5キロ。上磯郡漁協所属の西山徹さん(39)と小林仁正さん(44)が同町森越の沖合い約1キロに仕掛けた底立て網に入った。「ただでさえ珍しいのに、同じ日に2匹も獲れるとは」と関係者は驚いている。

 黒褐色のオオカミウオはスズキ目オオカミウオ科で、オホーツク海やベーリング海などの海水温が低いところに多く生息している。国内では観賞用にされることが多い。知内町での水揚げ記録はこれまでになく、今回が初めてという。

 この日午前4時半に出漁した西山さんは「何か黒いのがいるなと思って網をのぞき込んだら、口を大きく開けて威嚇してきたのでびっくり」と振り返り、「テレビで見たことはあったが、まさか知内で獲れるとは思わなかった」と話す。

 2匹は同漁協中の川支所(伊藤一英支所長)のいけすに入れられた。伊藤支所長は「本来水温の低い海を好む魚。ことしは知内近海の水温が低く、その影響を受けてここまで来たのではないか」とし、西山さんは「表情をよく見ると目はつぶらでかわいい。水族館にでも連れて行ってもらえればうれしい」と話していた。(田中陽介)


◎函館地域産業振興財団・米田副理事長ら3人に文科相賞
 ガゴメ(トロロコンブの仲間)の資源化など、地域水産資源の付加価値向上に貢献したとして、函館地域産業振興財団の米田義昭副理事長ら3人が、産学官連携功労者表彰の「文部科学大臣賞」に内定した。14日に京都で開幕する「第7回産学官連携推進会議」(内閣府など主催)で、道内の関係者としては初めて表彰を受ける。

 受賞するのは「函館マリンバイオクラスター形成の推進」に尽力した米田副理事長のほか、山内皓平愛媛大社会連携推進機構特命教授(元北大副理事)、宮嶋克己公立はこだて未来大共同研究センター産学官連携コーディネーター(元道立工業技術センター研究開発部長)。

 3人は2003年に函館市が策定した「函館国際水産・海洋都市構想」の下で、同財団が中核機関、山内氏が研究の統括、同センターが企業の連携促進とそれぞれの役割を分担。06年度までに、ガゴメの資源化やスルメイカの活締めなどを実現して70件の商品化に結びつけ、地元の経済活性化に寄与してきた。

 同表彰はことしで6回目となり、都道府県の推薦を受けた個人・団体について、技術や市場、社会への貢献、連携体制の特徴・波及効果を基準に審査。最高賞の「内閣総理大臣賞」をはじめとする11賞に16事例を選定した。

 表彰式は14日に行われるほか、ガゴメなどの成果品は2日間にわたって会場で展示され、約4300人が見込まれる来場者にPRする。米田副理事長は「地元の産物を生かした産業が脚光を浴びるのは、非常に光栄なこと。事業にかかわってきた全体の代表として賞を受け取り、今後さらなる地域発展に向けて力を注いでいきたい」と話している。(浜田孝輔)


◎函水ヨット部・7年連続インターハイ出場…瀧川、木村君のペア
 函館水産高校(齋藤隆校長、生徒479人)のヨット部に所属する3年の瀧川亮太君(17)と2年の木村将大君(16)のペアが、8月に東京で開かれる本年度の「全国高校総合体育大会ヨット競技大会兼第49回全国高校ヨット選手権大会」(全国高校体育連盟など主催)への出場を決めた。同校ヨット部の高体連全国大会への出場は7年連続となり、2人は「上位を目指したい」「できる限りやりたい」と意気込んでいる。

 競技は2人乗り用の艇「FJ級」に乗り、海面上のマーク3カ所の周囲約4キロを回って順位を決め、同じコースのレースを6回繰り返して成績の良かった5回分の得点の合計を競う。全国大会へは道予選会の上位2組が出場し、同校は2002年度から毎年出場を果たしている。

 ことしの予選会は7、8日に江差港沖で行われ、小樽や室蘭などから4校が参加。瀧川君らが参加した「男子FJ級ソロの部」には8組が出場し、小樽水産高校が優勝、瀧川君らは2位に輝いた。

 ヨット部の部長を務め、今回で3年連続の全国大会出場となる瀧川君は「予選では有利な風上のマークに行くコース取りの判断がうまくできなかった。今まで培ったものをすべて出して結果を残したい」と気合い十分。初めてのインターハイ参加となった木村君は「1つのミスが結果に大きく響くことを実感。スタートラインに立ったつもりで頑張りたい」と話している。(新目七恵)


◎補正予算など19議案提出…函館市議会開会
 函館市議会の第2回定例会は11日開会し、市が本年度の一般会計補正予算案や市夜間急病センター条例案、東消防署的場支署庁舎改築工事請負契約など議案19件を提出した。会期は26日までの16日間。16日午前10時から一般質問が始まり、20日まで20人が質問に立つ。

 一般会計補正予算案は、道の制度変更による重度心身障害者の医療助成対象者増加に伴い832万円を見込むなど、7億3592万円を追加して総額を1231億4592万円とする。老人保健医療事業特別会計は5億1974万円追加して総額を35億8040万円に、介護保険事業特別会計は1億5717万円を追加して総額を181億5429万円とする。

 市夜間急病センター条例案は、同市五稜郭町の市総合保健センター内に急病センターを移転設置し、指定管理者が管理する内容。市桔梗福祉交流センター条例等の一部改正では、児童館の利用時間を学校が定めた外遊びの時間と同じになるよう調整する。

 各議案は23日に開かれる各常任委員会で審議する。(小泉まや)