2008年6月14日(土)掲載

◎父の日企画(3)…宝来町の三上ふとん店三代目 三上元久さん(60)→故三上徹義さん
 さまざまな表情の招き猫と、色とりどりの手作り布団が並ぶ店内。函館市宝来町の「三上ふとん店」は、1921(大正10)年創業の老舗だ。初代で祖父の故・徹蔵さんのころは、冬に木炭の卸売り、夏には綿の打ち直しで生計を立て、2代目の父、徹義さん(享年88)が布団店として軌道に乗せた。92年に3代目に就いた。

 働き者で気が早く、近所の人たちからは「てっちゃん」「兄さん」の愛称で親しまれていた父。5月に心筋梗塞で亡くなるまで、綿打ちを“使命”として元気に働いていた。幼いころは勉強に厳しく、怖い存在だった。「口より先に手が出る。げんこつが当たり前で、毎日たんこぶが絶えなかった」。あの痛みは忘れられない。

 仕事を一緒にするようになってからは、経営方針をめぐり意見がぶつかることも多かった。仕入れた洋物や羽毛の布団を店に並べると、「店で作った物だけを売ればいい!」と言われ、またけんかになった。「自分の綿が一番だと、仕事に誇りを持っていた」。今はその職人気質が理解できる。

 「客から注文が入ると、父は大喜びで段取りをしていた。共通点は仕事好きなところかな」とさらり。

 「父が残した店と客の信用をしっかり守っていく」。3代目の決意は固い。店は夏から秋にかけてが一番忙しい。もうすぐ、父が亡くなって初めての夏を迎える。(鳴海麻由)


◎函館中華会館が4年ぶりに公開へ
 2005年から開館を休止していた函館市大町1の「函館中華会館」が、4年ぶりに一般公開されることが13日、分かった。中国・四川大地震の被災者を支援するためで、入館料の一部を義援金に充てることにした。期間は7月5日から8月16日までの約1カ月半。同館を管理する社団法人「函館中華会館」の陳上梅理事長は「多くの日本の皆さんに100年近く前の中国文化を見てもらい、被災地の復興支援に役立てたい」と話している。

 同館は1982年から入館料と開館期間を設け、一般公開していたが、入場者の減少や建物の老朽化、日中関係が一時悪化したことなどを理由に05年から3年間、公開を休止していた。

 四川大地震の直後から、函館華僑総会(陳上梅会長)が募金を検討し、6月の同会役員会で開館を決定。12日に開館案内の看板を同館前と中国人墓地(船見町)に立てた。同館には中国で最も強い神とされ、華僑の心の支えとして日本各地にもつくられた三国志の英雄「関羽」をまつる関帝壇がある。陳理事長は「海外にいるわたしたちも関羽に被災地の復興を祈り、気持ちを1つにして応援していく」としている。

 同館は清朝末期の純中国の建築様式で知られ、建築当時の姿で現存する日本唯一の建物。1910(明治43)年、函館在住の華僑が出資し、中国から大工や彫刻師、漆工などの技術者を呼び寄せて建設した。くぎを1本も使わない純中国式れんが造りの平屋で、2001年に国の登録有形文化財に指定された。

 82年から2004年まで毎年開館していたが、入館者は1990年前後の8万人をピークに減少し、近年は8000人にまで落ち込んでいた。来年の函館開港150周年を機に、一般公開の再開を望む声も出そうだが、現時点では未定という。

 期間中は正午から午後4時半まで。無休。入場料は大人600円、高校生300円、小中学生200円。


◎益田喜頓さん原作のミュージカル 出演者募集…来年8、9月再演
 函館生まれの喜劇俳優、故益田喜頓さん(享年84歳)が来年、生誕100周年を迎えるのを記念し、益田さん原作の市民ミュージカル「案山子(かかし)物語」が来年8月に函館、9月に東京浅草(台東区)で再演されことを受けて、実行委(委員長・金山正智市文化・スポーツ振興財団理事長)は出演者の募集を始めた。締め切りは7月15日。

 募集するのは、小学3年生以上の函館市民約50人で、函館、浅草の両公演に出演でき、浅草公演での旅費の一部(1―2万程度)を自己負担できる人。経験は問わない。

 練習は7月下旬から毎週土曜、日曜の夜、函館八幡小学校で行い、歌や踊り、演劇の基礎を体得する。来年1月ごろにオーディションを行い、配役を決定する。

 函館公演は8月23日、函館市民会館大ホールで、浅草公演は9月21日、東京台東区の浅草公会堂で開く。両公演とも2回上演。

 案山子物語は、「じっちゃんかかし」と孫娘の「ペコ」が台風に乗って世界中を巡り、そこで出合った人たちと交流を深める物語で、「愛と平和」をテーマにした内容となっている。

 演出を担当するみのゆづるさん(劇団自由飛行館代表)は「前回(2005年11月の公演)よりもより充実した作品に仕上げたい」と話している。

 会費は毎月1000円。申し込みは、はがきかファクスで。住所、名前、年齢(学校名、学年)、電話番号を明記し、函館市民会館「市民ミュージカル係」(〒042―0932 函館市湯川町1の32の1、ファクス0138・57・3115)に送る。

 問い合わせは同係TEL同57・3111。(鈴木 潤)


◎エコともそう…廃材で器具、廃油でキャンドル
 函館市環境部は、市内のごみ収集で集めたゴルフクラブやフライパンなどの廃材を使い、かがり火をともす器具を制作した。7月に開催する北海道洞爺湖サミット(G8サミット)を前に市が27、28日に開催する「環境サミット2008in函館」で使用する。巨大キャンドルメッセージで使う、廃油で作ったろうそく2000個も13日までにすべて完成し、開催を待つばかりとなった。

 環境サミットは地球温暖化防止や自然環境保全の啓発などが目的。キャンドルメッセージは27日午後8時から函館市大手町の旧シーポートプラザ前広場で行い、「eco365」のメッセージとかがり火をともす。28日午後1時からは函館国際ホテルで、基調講演やパネルディスカッションなどを予定。

 同部では「エコ」にこだわろうと、廃材を使った道具作成に知恵を絞った。かがり火の器具は、部内各課の職員が連携して考案。ゴルフクラブ3本を中央付近で交差させてフライパンを載せたものを溶接して強度を増し、学校給食調理場の廃油から作った巨大ろうそくを乗せて火をともす。ストーブの部品を活用して風で火が消えない工夫を施し、8基制作した。

 メッセージは同様の廃油のろうそくの小型版で形作る。ろうそくは廃油を80度まで熱したものに油脂凝固剤を混ぜ、たこ揚げ用の糸をしんに入れ、冷やして固める。5月下旬から同部の職員が業務の合間に作業を重ね、13日までに2000個が完成した。

 同部環境保全課課の菅原康徳課長は「かがり火は周囲が暗いとかなりきれいに見える。廃油で作った明かりを見に来てほしい」と来場を呼びかけている。(小泉まや)


◎繊細な技、大胆なデザイン…全国建具組合連合会北海道・函館大会開幕
 国内の優れた建具が集う「全国建具組合連合会北海道・函館大会」(同連合会、道建具工業協働組合連合会主催)が13日、函館市民体育館(湯川町1)などで始まった。ふすまや障子、格子戸など全国各地の職人やメーカーが出品した建具約110点が並び、大勢の来場者を楽しませている。展示は15日まで。

 業界の活性化と建具の良さを多くの人に認識してもらおうと、都道府県ごとの組合が持ち回りで業者大会と展示会を毎年開催。業者大会は今年で53回目、展示会は42回目。函館では初開催。

 展示会の会場には、業者大会で入賞した作品を中心に、建具独特の技「組子」を駆使した伝統的な作品や、実用性を重視したものなど各メーカーの力作が並び、来場者は繊細な技や大胆なデザインなどをじっと眺めていた。ステンレスで繊細に製作した鷲のオブジェや、函館市の木「オンコ」を材料にした飾り棚なども目を引いていた。

 同日、業者大会の表彰式が市民会館(湯川町1)で行われ、「組子J逡浴vで最高賞に当たる内閣総理大臣賞を受賞した中村木工所(長野県上松町)ら延べ約80社が表彰され、函館からもaオ西木工場が製作した「The beauty curved lines」も道内出展者では最高位となる「中小企業長官賞」を受賞した。

 同社の社長で、実行委員長を務めるaオ西松夫さん(函館建具工業協働組合理事長)は「多くの人に来場して、大会を成功させたい」と話していた。市内本通から来場した女性(47)は「匠の技に圧倒されました」と感動していた。(鈴木 潤)