2008年6月15日(日)掲載

◎父の日企画(4)…久上工藤商店・工藤寛文さん(22)→秀範さん(52)
 「汗水流して懸命に働く父親はいつも格好いい。その大きな背中が教科書代わりだった」。工藤寛文さん(22)の父秀範さん(52)は、木古内町札苅地区の食料雑貨店「久上(きゅうじょう)工藤商店」の店長。地域でも有名な働き者だ。鉛筆を耳の上にはさんだ“商売スタイル”で、住民から「久上さん」と親しまれている。

 年中無休で、家族総出で早朝から夜遅くまで仕事に精を出す。旅行やスポーツなどをして一緒に遊んだという思い出は少ない。「毎度お世話さま」「元気ですか?」。幼いころから、顧客と楽しそうに話す父の姿を見てきた。

 自動販売機の商品の補充などを手伝いながら、いつの間にか、真摯(しんし)に仕事に打ち込む父の姿勢にあこがれを抱いていた。「自分も父のような存在になりたい」。あこがれは確かな“進路”になった。

 寛文さんは今春、函館大を卒業し、家業を継ぐため父と二人三脚で奔走する毎日。「少しでも楽にしてあげたい」との思いが強い。腰に負担が掛かる重いビールケースなどは父に持たせられない。そんな息子のたくましさ、やさしさに秀範さんも目を細める。

 「毎日仕事は忙しいけれど、充実している。父親がそうだったように、住民の生活を支えながら生きていきたい」。父が培った地域との揺るぎない信頼関係に、さらに厚みを持たせたいと思う。「言葉より行動で周囲を納得させられる人間に」。大きな背中が教えてくれたことだ。(田中陽介)


◎南かやべ・ひろめ舟まつり盛況
 海の恵みに感謝し、豊漁を祈願する函館市南茅部地域最大のイベント「第23回南かやべひろめ舟まつり」(実行委主催)が14日、臼尻漁港特設会場で開かれた。メーンの舟こぎ競争をはじめ、地域の郷土芸能発表、漁船のパレードなど、大勢の市民らが楽しんだ。

 伝統の舟こぎ競争は、木製の磯舟に6人1組みで乗り込み、かじ取り、こぎ役、拍子役を分担して舟を進め、400―600メートルの距離を競う。45チームがエントリーし、それぞれ、初心者、女性、職場対抗などに分かれ、全8レースが行われた。

 初心者対抗戦では、思ったように真っすぐに進まず、他船と衝突したりしたが、本職の漁師らでつくるチームのレースでは、力強いピッチで舟をこいで、水しぶきを上げていた。

 女子対抗戦に出場した函館市埋蔵文化財事業団の「縄文レディース」は、昨年に続き見事に優勝。国宝「中空土偶」のお面を付けた約30人の応援団が大声援を送った。横山ゆかりさん(27)=臼尻町=は「プレッシャーはありましたが、連覇できてうれしい。地域の遺跡の世界遺産登録に向けて弾みになる」と喜んでいた。(今井正一)


◎新幹線時代に向けた「道南の魅力」新発見・再発見フェア
 道南地域の広域観光の可能性を探る「新幹線時代に向けた『道南の魅力』新発見・再発見フェア」が14日、五稜郭タワー(函館市五稜郭町43)1階アトリウムで開かれた。渡島・桧山管内の各自治体が、特設ブースで観光資源や特産品を紹介するとともに、北海道新幹線開業後の道南観光のあり方ついて意見を交わすトークセッションが行われ、地域連携の重要性などを再確認した。

 道新幹線の新函館―新青森開業予定を2015年度に控え、渡島支庁が主体となり渡島・桧山管内18市町が一堂に会してそれぞれの魅力を紹介する初の試み。各ブースにはPR用のチラシやポスターなどが並ぶとともに、特産品の試食や試飲も行われた。中でも上ノ国町のアワビ弁当や江差町のアスパラガスなどは行列ができるほどの人気を集めていた。仙台市から観光で函館を訪れている50代の男性もアワビ弁当を試食し、「とてもおいしかった。今回は函館周辺しか回らないが、機会があれば日本海側にも足を延ばしてみたい」と話していた。

 また「新幹線が連れてくる道南観光バラ色時代」をテーマに行われたトークセッションでは、北海道じゃらんのヒロ中田編集長、五稜郭タワーの中野晋常務、松前町の前田一男町長がパネリストととして参加。新幹線を基点に、道南地域が一体となった観光ルート作りの大切さについて意見を交わした。

 渡島支庁の畑秀叔支庁長は「道新幹線開業が迫る中、観光面ではこれまで以上に道南地域の連携が重要になってくる。今後もこのようなイベントを積極的に開催していきたい」と話していた。(小川俊之)


◎摩周丸でシンポ/保存の意義など探る
 函館市青函連絡船記念館摩周丸(若松町12)が15日にリニューアルオープンするのを記念したシンポジウム〜摩周丸ひかりふたたび〜「青函連絡船と北海道の産業観光」(NPO法人語りつぐ青函連絡船の会主催)が14日、同館で開かれた。54人が参加。全国産業観光推進協議会の須田寛副会長の基調講演やパネルディスカッションで、摩周丸の保存の意義や函館の観光に対する役割などを探った。

 須田副会長は基調講演で、摩周丸は日本の産業を近代化させた近代化産業遺産という観光資源であり、道の玄関口である函館の観光の核を担う役割があるため、保存の意義があると説いた。

 また、これからの観光は学習、体験型が主で、観光客のニーズに応えられるよう、市民は観光客の目線で街を見ることが大切であるとし、市にあるさまざまな観光資源の一つとして、摩周丸を見直してほしいと話した。

 引き続き須田副会長のほか、音楽評論家の湯川れい子さん、西尾正範函館市長によるパネルディスカッションが行われた。湯川さんは「摩周丸の存続には函館市が元気になる必要がある。地域の人や観光客が訪れる魅力をどうつくるか、NPO、若者、女性からアイデアを募集しては」と話した。須田副会長は「連絡船の船員のチームワーク、コミュニティーが客を守った。この心や気持ちは文化であり、伝えてほしい」とし、西尾市長も「船という建物ばかりを残すのではなく、心を残していきたい。市民が集まる場所は観光客も集まるので、活用法を考えたい」と話した。(山崎純一)


◎夷王山まつり、たいまつ行列 山頂目指す
 【上ノ国】夷王山(いおうざん)神社例大祭・夷王山まつり(上ノ国町観光協会主催)が14日、開幕した。同日夕の宵宮祭では、町内で剣道・柔道・空手などを習う子供たち約40人が、赤々と燃えるたいまつを掲げながら夕闇が迫る夷王山を目指した。

 たいまつ行列は、午後7時前に国道沿いの上ノ国八幡宮を出発。胴着姿の子供たちは燃えさかるたいまつを片手に、標高159メートルの山頂にある夷王山神社に向かった。国指定史跡・勝山館跡を通り、山頂に到着。夕焼けに染まる日本海を見下ろす社殿に参拝し、武道の上達を願った。

 本祭の15日も夷王山一帯で多彩なイベントが行われる。午前10時から、夷王山特設コースで「第36回道南地区ばん馬大会」が開幕。午後1時40分には「第20回演歌まつり」(STVラジオ公開録音)が開かれ、演歌歌手の西尾夕紀さん、江差町出身の民謡歌手・木村香澄さんが出演する。いずれも入場無料。夷王山では無料駐車場を用意している。(松浦 純)


◎北大で火事、けが人なし
 14日午後3時25分ごろ、函館市港町3、北大水産学部管理研究棟4階から出火、鉄筋コンクリート造6階建ての研究室一室約126平方メートルのうち、天井や床など約20平方メートルを焼いた。出火当時、室内で実験していた男子学生2人のほか、建物内に複数の学生がいたが、けがはなかった。

 函館西署と市消防本部によると、出火当時、室内で学生が実験で使用していた揮発性で可燃性の薬品が気化し、何らかの原因で引火、燃え広がった可能性があるとみられる。室内にいた学生が119番通報し、消防車など14台が出動。火は約40分後に消し止められた。

 当時、室内にいた男子学生(22)は「薬品を瓶から移し替える途中、別の場所で使用していたガスコンロの火が引火したようだ」と話していた。現場では、キャンパス内にいた学生ら約50人が消火作業を心配そうに見守っていた。

 同署などが詳しい出火原因を調べている。