2008年6月19日(木)掲載

◎イカ釣り一斉休漁
 原油価格高騰のあおりを受け、全国の小型イカ釣り漁船が18日、2日間の一斉休漁に入った。燃料価格の高騰を理由にした操業停止は史上初めて。全国有数の道南近海を漁場とする函館市漁協所属のイカ釣り漁船約30隻も、全国組織の方針に追随する形で“ストライキ”に突入。出口の見えない燃料価格の高騰に、関係者からは先行きを不安視する声が相次いでいる。

 一斉休漁は、イカ釣り漁業者の任意団体「全国いか釣漁業協議会」(本部・東京)が、燃料高騰にあえぐ漁業者の窮状を訴えるとともに、国に燃料価格への補てんなど支援を求める狙い。イカ釣り漁は集魚灯を使うため燃料の消費量が多く、ほかの漁に比べ価格高騰の影響が大きい。今年は函館近海の海水温が低いため魚体が小さく、卸値も低調で「燃料高と魚価安のダブルパンチ」(同漁協)という。

 所属船31隻が休漁した同漁協によると、燃料となる函館港のA重油価格は、今年6月に1リットル当たり102円と初めて大台を突破。1リットル40円台だった2004年に比べると倍以上に上昇し、この1年だけで1リットル約32・5円も上がった。函館から松前沖の燃油代は一晩で8―10万円の計算になる。

 燃料代を節約しようと、漁業者は速度を落として漁場に向かったり、集魚灯の数や交換頻度を減らしたりしているが「焼け石に水」。18日午前、函館漁港(同市入舟町)に係留中のイカ釣り漁船で整備に当たっていた男性漁業者(81)は「自助努力も限界を超えている」と嘆き、「漁師が漁に出ないなんて本望じゃない。休んだから油が安くなるわけでもない」と続けた。

 ただ、市水産物地方卸売市場によると、18日のスルメイカ(マイカ)の競り値は、いけすイカが高値で1キロ1750円と解禁初日以来の高水準に。今シーズンの平均卸値より1000円以上も急騰した。

 2日間の休漁で19、20の両日はマイカの入荷がなくなるため、活イカを提供する飲食店への影響も少なくない。休漁初日は活イカ用の大型水槽を持つ業者から仕入れは可能だが、マイカは弱りやすく、水槽で買いだめすることも難しい。「2日目はどうなるか分からない」と飲食店関係者は不安げに口をそろえる。

 函館朝市どんぶり横丁市場に恵比寿屋食堂を出す函館朝市協同組合連合会の井上敏廣理事長は「店でも100円程度値上げした。イカの入荷状況や値段が今後どうなるか、朝市関係者から不安の声も聞こえてくる」と話す。

 活魚料理専門店の「いか清」(室田秀文店長)は「活イカが売りなので、もし入荷がないと予約をキャンセルされてしまうこともある」。市内で3店舗を展開する「居酒屋ココ」(林崎勇一社長)は「仕入れ値は前日から1パイ150円程度上がった。最近はいろんな食品が値上がりしているので、お客さんに飲食代を節約されるのが困る」と懸念している。(森健太郎、宮木佳奈美)


◎南茅部高 ことしも「逆サマータイム」
 南茅部高校(溜雅幸校長、生徒112人)は地域の基幹産業のコンブ漁が最盛期を迎える7月、生徒の登校時間を30分遅らせる「逆サマータイム」をことしも導入する。早朝から漁を手伝って遅刻したり、授業中に体調を崩す生徒たちに配慮した取り組みで、昨年7月に試行的に実施して効果が確認されたため。同校によると、地域の実情を考慮したこうした措置は道内でも極めて珍しいという。同校は「コンブ作業と学業との両立で、規律ある学校生活を送ってほしい」としている。

 7月2日から夏休み前の25日までの間、登校時間を従来の午前8時半から同9時とするほか、午後の作業にも配慮し、1週間程度は授業数を1回減らして5時間授業とする。足りない授業時数は冬休みを1日短縮するなどして調整する。夏季に標準時刻を早める「サマータイム」の逆の措置で、同校が逆サマータイムと名付けた。

 全国でも主要のコンブ産地である南茅部地区では、漁の繁忙期には地区住民の多くが作業に協力。同校でも、生徒の9割近くが午前3時ごろからコンブ取りや乾燥作業などを手伝って登校しており、例年7月には作業が原因で遅刻したり、体調不良を訴える生徒が増えていた。

 逆サマータイムで昨年7月は遅刻者数平均が4・1人と前年同月の8・3人に比べ半減。保健室利用者数も前年の7・3人から4・5人に減少するなどした。保護者、生徒へのアンケートでも歓迎する意見が多かった。

 同校3年の長男がいるコンブ漁を営む熊谷真理子・PTA副会長(41)は「機械化が進んでも人手は足りず、子供がいないと作業は大変。登校時間前の30分は子供にも親にも大きい」とする。

 実家のコンブ漁を手伝う2年B組の工藤千尋さん(16)も「学校に間に合うよう自転車で急いで登校していたけれど、少し余裕ができて楽になった」と話している。

 ただ、登校時間が遅くなった分、生徒の作業時間が延びたとの意見もあり、同校の根上和也教頭は「生徒が登校前に仮眠したり、余裕を持って自転車通学できるようにとの趣旨の理解を求めていきたい」と話している。(新目七恵)


◎ロシア語で北海道発信…八雲・ウェルビングがポータルサイト開設
 【八雲】八雲町栄町の美容関連商品のインターネット販売会社「wellbeing(ウェルビング)」は、ロシア極東大函館校に翻訳を一部依頼し、ロシア人に日本の観光・ビジネス情報を発信するポータルサイトの試行版を開設した。経済成長が著しいロシアに着目し、観光客誘致やビジネスチャンス発掘のきっかけを作ろうと本格運用を目指している。山内智子社長(34)は「函館はロシアゆかりの地。地域の知的資源である極東大の力を借り、道南から北海道の魅力を伝えたい」と話している。

 山内社長は看護師の資格を持ち、保健師として八雲町役場に勤務していたが、退職して昨年10月に会社を設立した。海外市場を視野に入れる中、石油、天然ガスなどの資源輸出で経済が好調なロシアの個人消費の活発化に注目。北海道に目を向けてもらうため、ウェブ技術を生かした情報発信を思い付き、4月からサイトの構築に取り組んでいる。

 サイトは観光とビジネスに大きく分類し、道内の情報が中心となる。観光名所や宿泊施設をはじめ、中古車販売、不動産などの企業情報も掲載。ロシアの顧客獲得を狙う不動産、ホテル業界の関心が高いという。

 山内社長は「ロシアと近いのに、向こうでは北海道の情報が少ないと聞いた。サイトを通じて観光客が増え、道内企業とのビジネスチャンスが生まれるなど地域の活性化につながれば」と期待する。情報は随時更新し、写真や動画などを多用、ひと目で分りやすいサイトづくりを心掛ける。翻訳は有料で同校のロシア人講師が担当。同校は「ロシア人に日本のことを知ってもらえるなら協力したい」としている。

 本格運用後は企業から翻訳料や広告料を徴収することも検討。山内社長は「観光だけでなく、ビジネスも視野に入れたロシア人向けのポータルサイトは珍しいのでは。鮮度の高い情報を提供し続けたい」と意欲を見せる。

 問い合わせは同社TEL0137・63・4101。サイトはhttp://www.japan-russia.info/(宮木佳奈美)


◎「自殺予防」体制作りへ…来月にも連絡会議設立 函館市議会
 函館市は7月にも「函館市自殺予防対策連絡会議」を立ち上げ、市民の自殺予防対策に乗り出す。市や医療機関、警察、教育関係機関、商業者団体、市民団体など、幅広い団体が集まって自殺や自殺予防についての情報を共有。対策を練り、知識の普及や啓発などの取り組みに反映させる。

 18日の市議会第2回定例会の一般質問で、市立函館保健所の田中俊弘参事が松宮健治氏の質問に答えた。

 同保健所が調べた函館市の自殺者実態は増加傾向にあり、2004年度が65人、05年度は86人、06年度や89人だった。人口10万人当たりの自殺による死亡率(06年度)は、全国23・7、全道26・4を上回る30・3となっている。

 市内の各団体に現在参加を呼び掛けており、構成団体は今後正式に決まる。年1回程度の全体会議を開くほか、実務者会議を定期的に行い体制づくりを進める。同時に同保健所のホームページにコーナーを設け、自殺予防についての情報や相談機関の紹介などを進める。田中参事は「道が秋ごろに策定する『自殺予防対策行動計画』を見据えつつ、一層の自殺予防対策に取り組みたい」と述べた。

 道内では保健所単位で設置する場合があるが、道自殺予防対策連絡会議は「市単位での設置は初めて聞く。函館は規模が大きいので非常に有意義」としている。(小泉まや)


◎大谷前住職の教え継ぐ…東本願寺別院で追悼会
 今年1月に93歳で亡くなった真宗大谷派函館別院の前住職で、宗門の門首代行を務めた大谷演彗(えんねい)さんの追悼会が18日、函館市元町16の同別院で開かれた。本山の東本願寺や大谷家、宗議会、道内や青森の寺院住職らが出仕し、別院の門徒ら合わせて約300人が大谷前住職をしのび、教えを受け継ぐことを胸に刻んだ。

 大谷さんは1972年に函館別院住職となり、93年から約3年間、門首代行。葬儀は宗派葬として2月に本山で行い、別院で追悼会として法要としのぶ会を企画した。

 同別院の梨谷哲栄輪番が「大谷前住職の薫陶を受けた方々が一人でも多くご縁を結ぶ追悼会にしたい」とあいさつし、法要で参列者全員が焼香した。

 しのぶ会では、同別院責任役員の安井悟さんが「大谷前住職は別院の興隆とともに、次世代を担う青少年の教化に力を注がれた」と述べ、別れを惜しんだ。大谷さんから最後に話を聞いた市内3つの大谷幼稚園の年長児71人が「仏の子」になることを誓い、元気に歌を歌った。

 このほか、大谷さんが作った別院の青年会「友信会」や大谷婦人会、大谷ボーイスカウト・ガールスカウトなどのメンバー代表が追悼の言葉を述べた。(高柳 謙)


◎署名3千筆追加提出…五稜郭のフジ棚保存求め
 函館市内の五稜郭公園にあるフジ棚の現状保存を求め、署名活動を行っている市民団体「五稜郭の藤棚を守る会」(山崎淳子代表)は18日、新たに集めた3022筆の署名を西尾正範市長あてに追加提出した。これまでに集まった署名は計8566筆に上る。

 市教委が同公園で進める箱館奉行所の復元整備に伴い、フジ棚は現在地の周辺に当時の表門が存在したと推測されるため、移設が検討されている。

 同会の署名提出は昨年7月、同9月に続き、今回で3回目。今回は2回目の提出以降、今月16日までの集約分で、フジ棚に関心を持つ札幌市民が集めた720筆のほか、五稜郭公園のフジをテーマに詞を制作した千葉県のシンガーソングライター田口徹さんの協力で、同県からも134筆が寄せられた。

 この日は山崎代表らが市教委文化財課を訪れ、署名簿を手渡した。市教委は同表門の存在を確認するため、9、10月に実施する発掘調査の結果を踏まえ、最終判断する考えをあらためて示した。山崎代表は「フジの運命が決まるまで皆さんの声を届けたい」としている。(宮木佳奈美)