2008年6月20日(金)掲載

◎瀧澤清さん・中空土偶モデルに木像
 函館市元町の瀧澤清さん(85)がこのほど、同市著保内野(ちょぼないの)遺跡で出土した国宝「中空土偶」をモデルにした木の彫刻を完成させた。高さ41・5センチ、幅20・1センチという大きさはもちろん、細部にわたるまで実物を忠実に再現した。7月7―9日に開催される「北海道洞爺湖サミット」の会場での展示が決まるなど、依然として関心の高い「中空土偶」を身近に感じられる存在として、話題を呼びそうだ。

 移住者支援などに取り組む「北海道コンシェルジュ」(寺西隆経社長)が、函館ならではのマスコットとして活用しようと制作を依頼。瀧澤さんは長年従事した歯科技工士時代に培った手先の器用さを生かし、35年ほど前から独学で木彫りを始め、同社企画の木彫り体験の講師も務めている。

 出来上がった木像は「中空土偶」が載ったパンフレットを基に、桂の木の角材に姿をデッサン。のこぎりやのみで大まかにかたどった後、ほとんどが自家製という大小、形状さまざまな彫刻刀を駆使して1週間ほどで仕上げた。

 瀧澤さんは、これまで約500体にも及ぶ仏像を制作しているが、今回ばかりは少し勝手が違った様子。「文様や顔の表情などが思ったよりきめ細かかった。テレビや新聞で見て興味があったので、歴史の重みを感じながら楽しんで制作できた」と話している。

 この木像に関する問い合わせは北海道コンシェルジュTEL0138・23・0001。(浜田孝輔)


◎DV被害者の子ども支援…ウィメンズネット「フワット」設立
 NPO法人ウィメンズネット函館(古川満寿子理事長)のメンバーがこのほど、配偶者・内縁者間での暴力、ドメスティックバイオレンス(DV)に巻き込まれた子どもを支援するグループ「子どもサポート・ふわっと」(加茂章子代表)を立ち上げた。母親に連れられてシェルター(一時保護施設)に来る子どもが増加している現状を受け、入居中の相談・遊び相手になり、学習指導もする。10月にはシェルターを出た子どもたちが安心して自由に過ごせる「居場所」も開設する。

 年々被害者と一緒にシェルターに駆け込んでくる子どもが増え、同法人はケアの必要性を痛感しながらも、人手不足などの理由で手が回らなかった。昨年度から道や市の主催で始まったDVサポーター養成講座でボランティアの確保が可能になったことなどから、同法人メンバーの加茂代表を中心に発足。グループ名に「子どもたちが無理をせず、『ふわっと』した気分で過ごせる時間を持てたら」という願いを込めた。

 シェルターに入居した子どもは学校に通えず、退去後はほぼ100%転校を余儀なくされる。入居中の学習指導とともに、退去後、心の傷を抱えながら新しい環境になじまなければならない子どもには、よりどころとなる居場所が必要となっている。

 このため、「ふわっと」はシェルターの子どもに勉強を教え、遊び相手になるほか、誕生会などの行事を開催。すべてを捨てて逃げてきた子どもたちに「これはあなたの物」と渡すため、歯ブラシやタオルなどを詰め合わせた「ウェルカムバッグ」も作る。

 シェルターを退去した子どもには、ゲームや工作など好きな遊びができる憩いの広場を月1、2回開設。学生らに呼び掛け、送迎や学習指導、遊び相手などのボランティアを募る。加茂代表は「閉ざされた心が少しでも開き、不安感を和らげる楽しい時間を提供したい」と説明。大人のように自らの被害を語れない子どもも多く、「心のサインを見逃さずにケアしなくては」としている。

 「ふわっと」設立に当たり、個人1口1000円、法人1口2000円の寄付を集めている。寄付は郵便振替で口座番号02760―6―45289、「子どもサポート・ふわっと」へ。(宮木佳奈美)


◎07年度DV相談件数…1500件突破 過去最多
 NPO法人ウィメンズネット函館が受けたDVの相談件数が2007年度、初めて延べ1500件を突破し、シェルターの入居件数と共に過去最多となった。同法人は「社会的なDV問題への意識、ウィメンズネット函館の認知度の高まりも一因」とする一方、「不景気による仕事の不調や借金などに伴うストレスのはけ口が妻子に向かい、DVの引き金にもなっている」とみている。

 相談件数は電話1201件(前年度642件増)、面接466件(同61件増)の計1667件(同703件増)。このうちシェルターの入居件数は51件(同8件増)に上る。被害者の半数以上が幼い子ども連れで、同伴者数も05年度19人、06年度40人、07年度60人と急増している。

 同伴者の増加について、同法人は「(入居した各被害者の)子どもの数が多いのが要因。加害者からの性交渉の強要や避妊拒否で、子どもが多いのもDV家庭の特徴」と説明。被害者は10代から70代までと幅広いが、30代が最も多い。同伴者は乳幼児、小学校低学年の子どもが主で、親を連れて来るケースもある。同伴者といえ、子どももDVを目撃した心の傷を抱えていたり、父親から身体的、性的暴力を受けていたりする場合も少なくないという。

 DVを受け、精神的に不安定な母親が適切な育児をできないケースもある。同法人は「喘息(ぜんそく)や発育不全になるほか、いい子を演じたり、ひどくおびえるなど、子どもに身体的、精神的な症状が現れる」と指摘。「子どもも被害当事者として手厚くケアしていく必要がある」としている。 (宮木佳奈美)


◎函館で2人目「金」佐々木さん…少年補導員全国表彰
 長年、少年補導員として活動を続け、青少年の非行防止に尽力した人を表彰する本年度の全国少年補導功労者表彰が決まり、函館西署少年補導員連絡協議会顧問の佐々木幸吉さん(77)が栄誉金章に選ばれた。函館市内の金章受賞者は1995年以来2人目。このほか、函館中央署少年補導員連絡協議会副会長の岡崎サユリさん(71)に栄誉銀章、函館西署少年補導員連絡協議会副会長の市中益雄さん(72)に栄誉銅章が贈られた。

 佐々木さんは地域で少年補導活動を32年間継続し、役職を退いた後も、協議会の活動に協力している。函館西署(清水博明署長)でこのほど行われた伝達式で、佐々木さんは受賞を報告し、「特別なことをしてきたわけではなく、日常生活の中で、気配りや目配りを心掛けて活動したことが受賞につながった。感謝と感激でいっぱい」と喜びを語った。

 活動22年となる市中さんは「昭和公園での高校生の暴行死事件以来、重点的に事件、事故がないよう巡回を強化している。子どもたちがかわいいので、活動が続けられる」とした。清水署長は「地域全体で子どもたちを見ているということが大切。子どもたちの安心につながっている」と感謝した。

 一方、函館中央署では19日に伝達式が行われ、谷口茂樹署長が岡崎さんの長年の労をねぎらった。岡崎さんは少年補導員のほか、子ども会や町会活動などにも積極的に参加し、28年間にわたり地域の子どもを見守ってきた。

 岡崎さんは「頼まれると断れない性格なので、ここまで続けてきた。家族や周囲の協力があったからこそ、いただけた賞だと思う」と話した。谷口署長は「警察だけではなく、地域住民や学校、家庭の活動があってこそ、非行防止につながる」と話した。

 同表彰は全国少年警察ボランティア協会(遠山敦子会長)が毎年実施し、金章のみ警察庁長官と同協会会長の連名で賞が贈られる。このほど、東京都内で表彰式が開かれ、吉村博人警察庁長官から佐々木さんのほか、全国47人の受賞者らに賞状が贈られた。(今井正一)


◎支庁再編 抗議集会参加に圧力…道幹部 町村長らに呼び掛け
 道町村会長(会長・寺島光一郎乙部町長)と道町村議会議長会(同・川股博空知管内由仁町議会議長)が25日に札幌市内で開催する支庁再編に反対する緊急抗議集会をめぐり、出席を予定している各地の町村長や支庁廃止地域の産業団体幹部に対して、複数の道幹部が出席を見合わせるよう求めていることが19日分かった。道町村会などの関係者は「再編案に反対する町村を分断しようとする卑劣な行為で容認できない」と反発している。

 関係者によると、道町村会、道町村議会議長会が集会の開催を決めた16日以降、出席を予定している町村長や産業団体幹部に、複数の道幹部が電話などで「出席を見合わせてほしい」「町村会は一枚岩ではないはずだ」などと述べ、集会に参加しないよう働き掛けているという。

 複数の関係者は「道の再編案に反対する地方への圧力」と猛反発し、寺島会長も「姑息(こそく)な手段で支庁再編を強行しても、道民の理解を得られるはずがない」とする。他の出席予定者にも同様の働き掛けが行われていないか、道町村会などで事実関係の確認を急いでいる。

 集会では、支庁再編関連の条例案を道議会に提案した高橋はるみ知事に抗議し、再編案の白紙撤回を求める方針。道議会では会期末の27日に条例案の採決を予定している。

 集会には全道145の町村長、町村議会議長のほか、農協、漁協、商工会議所などの産業団体にも参加を要請。道議会議員や道内選出の国会議員にも出席を求めている。同日、道庁周辺で第二波となる大規模な抗議行動を計画している江差町、日高管内浦河町の住民も合流する予定だ。(松浦 純)


◎日本の伝統 肌で感じる…恵山高、授業で「歌舞」伎学ぶ
 来春閉校する市立函館恵山高校(日向稔校長、生徒13人)は本年度、「歌舞伎」にスポットを当てた授業を行っている。2回の講義を受けた後、7月7日に市川段四郎さん、市川亀治郎さんらが出演する「松竹大歌舞伎」の函館公演を鑑賞する。最後の卒業生となる生徒たちに日本の伝統芸能・文化の楽しさを体感し、本物の舞台に触れる感動を味わってもらうのが狙い。19日には初回の講義が函館市女那川町の同校で行われた。

 授業は総合的な学習の一環で、函館市の独自事業「創意ある学校づくり推進事業(知恵の予算)」を活用して行う。

 30日から7月31日まで函館を含む全国27カ所を訪れる松竹大歌舞伎の巡業公演(全国公立文化施設協会主催)を知った同校側が、貴重な機会として授業を企画。道教育大函館校の内藤一志教授(49)に、舞台鑑賞前の予習として講師を依頼した。

 初回は全校生徒13人(3年生)全員が参加。内藤教授は生徒に歌舞伎のイメージを尋ね、独特の化粧について「『いい男の役』という約束事を示すもの」などと説明した。生徒らが鑑賞する舞台の3演目についても触れ、そのうちの1つ「弁天娘女男白浪」の冒頭と山場の各シーンを映像で紹介。登場人物や場面などを分かりやすく解説し、「役者に声を掛ける『大向う』は観客の楽しみ。ぜひ鑑賞会で挑戦してみて」と呼び掛けた。

 三好忠弘君(17)は「歌舞伎はよく分からなかったが、観るのが楽しみになった。場の空気を読んで掛け声もやってみたい」と話していた。

 日向校長は「少人数だからこそできる取り組みで、本物の芸術を観る感動を味わってほしい。予想より生徒が歌舞伎にのめり込み、講義の反応も良かった」と話していた。(新目七恵)


◎「平和の火」携え 列島南から北へ…東京の久川、原さん
 広島の原爆投下の残り火がともる「平和の塔」(福岡県星野村)から分灯された「平和の火」を持ち、福岡県から北海道を目指していた東京在住の久川マイさん(20)と原由梨瑛さん(20)が19日に函館入りし、しらかば薬局ギャラリー(市内中道)で市民に「火」がお披露目された。灯を通じて平和の貴さを実感し、その思いを広く共有しようという試みで、2人は「原爆の正確な事実を知り、その事実を後世はもちろん、今を生きる多くの人たちに伝えていきたい」と話している。

 キャンドルナイトワンピース実行委員会(大阪)が「地球」と「平和」、「同じ火を見詰める世界中の仲間のつながり」を感じようと実施しているイベントの一環で、全国の市民団体などから20人ほどが参加。2人は12日に東京を出発し、14日に平和の塔から灯を受け、全国で活動する仲間たちのつてを頼りに、広島、新潟、青森を経て、フェリーで来函した。

 知人に勧められて気軽な気持ちで参加したという2人は、「“原爆”という言葉は知っていてもどんなことがあったのか分からず、旅を通じて多くの人の憎しみや悲しみなどの思いを実感した」と語る。オリンピックの聖火リレーで使用される「聖火保存灯」で灯を保ち、「絶対に灯は消さないように、肌身離さず持ち歩いている」と原さん。ヒッチハイク生活を通じて、久川さんは「出会った人、一人一人に心から感謝している。“人間の輪”ってこんなに素晴らしいんだと思った」という。

 フェリー乗り場から世話している函館市元町の田畑光信さん(45)は「最後まで応援してあげたい」と話す。2人は20日に札幌へ移動し、市民団体「北海道アースデイ」に灯を引継ぎ、21日の「屈斜路湖のキャンドルナイト」(釧路管内弟子屈町)に参加する。今回の活動を通じて、2人は「お金では買えない時間と出合いがあった。まずは友人たちに原爆の事実を伝えていきたい」と話した。 (小橋優子)