2008年6月23日(月)掲載

◎<インサイド>知事と町村会 一歩も譲らず
 【江差】高橋はるみ知事と道内145町村で組織する道町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)の関係が、支庁再編をめぐり揺らいでいる。第2回定例道議会での条例成立に意欲を燃やす高橋知事と、見切り発車の条例提案と説明不足を指摘し、再編案の白紙撤回を求める町村会は互いに譲らず“全面戦争”の様相だ。道議会は定例会会期末の27日に条例案を採決するが、両者の対立は採決の成り行きだけでなく、2期目の折り返しに近づく高橋知事の道政運営にも影を落としそうだ。(松浦 純)

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 条例提案から約1週間後の16日、高橋知事と町村会の直接会談が札幌で行われた。副会長の宮谷内留雄後志管内蘭越町町長は「町村長と知事、町村と道庁の信頼関係は最悪の状況になる」とした。高橋知事は、町村会が求める本庁・14支庁のスリム化に対して「14支庁一律の削減では効果が上がらない」としたが、寺島会長は「知事部局では局が3つ増えた。約2万人の道庁で450人の削減ができないのか」などと反論。会談は妥協点も見いだせなかった。

 高橋知事の提案に対し、町村会が問題視するのは、予算を握る本庁との調整機能が振興局にないことだ。「振興局を訪れても『総合振興局に伝えます』では無意味。機能と権限がある小回りの利く支庁が時代の要請だ」(寺島会長)。総務部門の削減など、道と町村会には妥協点もあるが、高橋知事は町村会の要請をはねつけ提案に突き進んだ。

 歴代知事と町村会の結び付きは強いだけに、支庁再編に反旗を翻すことは「不信任を突き付けたに等しい」(道幹部)。町村会や国会議員の一部から「3選不支持」の声も漏れ始めた。寺島会長も「道政始まって以来の不幸な出来事」と深刻視する。

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 道議会は会期末の27日に条例案を採決する。知事与党の自民党でも、ベテランを中心に10人前後が反対姿勢を崩さず、このうち支庁廃止地域の道議3人は反対票を投じる意向だ。野党・中間会派とともに、党内から最低6人が反対に回れば、条例案は否決される綱渡りの状況だ。会派内では執行部が造反議員の処分をちらつかせ押さえ込みを図っているが、執行部への不満も根強く「反対の3人に加えて4人以上が健康上の理由など退席戦術に出れば過半数を奪われる」(関係者)。

 自民党の道内選出国会議員は20日、再編案を支持する方針を決めたが、武部勤元幹事長らの反対意見も根強い。国会議員と高橋知事との不協和音もささやかれる中、採決への影響は未知数だ。

 また、町村会などが25日に札幌で開く抗議集会に対して知事側近が、町村長に欠席を促す電話攻勢に出るなど、道側の焦りも垣間見える。道は野党議員の取り込みも狙っているが、民主党北海道の鉢呂吉雄代表は反対姿勢を表明、支持基盤の連合北海道も党内の引き締めている。

 採決に伴う混乱を回避しようと“継続審議”を取りざたする声もあるが、高橋知事にとっては「事実上の敗北」(道幹部)であり、自民党でも執行部の責任問題に波及しかねず、道も道議会も慎重だ。道と地方の対立を懸念する公明党は、条例可決に慎重姿勢を見せ、採決のキャスティングボートを握る格好になった。採決まで4日。過半数獲得に向けた水面下の攻防が注目される。


◎厚沢部消防署が「妊婦エントリーネット119」本格化
 【厚沢部】厚沢部消防署(本田久署長)は、緊急時に妊婦を救急車で搬送するため、出産予定の医療機関や母体の情報などを事前登録する「妊婦エントリーネット119」の登録を今週から本格化する。同消防署によると、渡島・檜山管内の消防署では初めての取り組みで、事前の情報登録により、119番通報や町外の医療機関との連絡に要する時間短縮を図り、迅速な出動態勢を整えることで、出産を控えた妊婦の不安軽減につなげたい考えだ。

 制度は、町内に住む妊婦の希望により、氏名、住所、連絡先、出産予定日など母体の状況、受診中の医療機関、担当医などの情報を事前に登録。1人ずつに登録番号が入ったカードを交付する。カードを持つ妊婦から、119番通報を受けた場合は@陣痛や破水など出産の兆候があるA腹部の痛みや出血があるB腹部に強い張りを感じる―などの症状があり、自家用車などの搬送手段がない場合には、事前に登録した自宅などに救急車が出動。かかりつけの産婦人科などに搬送するほか、医療機関にも連絡して受け入れ態勢を整えてもらう。救急車内でも医師などの指示で適切な処置を行うという。

 従来から母子に危険が差し迫った場合には救急車による緊急搬送は可能だが、あらかじめ妊婦の情報を把握しておくことで、119番通報や医療機関の確認になど要する時間短縮などが可能になる。担当の柴田直行消防士は「出産を控えた妊婦の不安を少しでも和らげることができれば」としている。

 桧山管内では昨年10月、道立江差病院(江差町)の産婦人科が、出産の取り扱いを休止。管内では出産に対応できる医療機関がなくなった。町内では妊婦の届け出が年間40人前後に上るが、いずれも函館市など管外の医療機関で定期健診や出産を行っている。

 しかし、急な陣痛や破水、転倒などで腹部を打つなど、緊急に診察や治療が必要な場合、同町から函館市までは60キロ前後の距離があり、車で急いでも1時間以上かかる。このため、桧山管内では「乗用車や救急車で出産した例も少なくない。妊婦の不安は極めて高い状態にある」(関係者)。

 同署は、今週から事前登録の受け付けを本格化。町の「母親教室」などでもPRする。同署、町保健福祉課、保健センターで手続きを行う。問い合わせは同署救急係TEL0139・64・3064へ。 (松浦 純)


◎ミニSLの旅 大人気
 JR函館駅(函館市若松町)の新駅舎開業5周年を記念したイベント「はこだて駅スポ2008」(JR北海道函館支社主催)が22日、同駅前広場などで開かれた。隣接する函館朝市の市民感謝祭や、前日から旧クィーンズポートはこだて前広場で開かれている花と緑のフェスティバルなどの催しも重なり、同駅周辺は大勢の家族連れらでにぎわった。

 駅スポで人気を集めたのが約20人乗りの小型SL「ミニ弁慶号」の乗車体験。同広場に全長約90メートルの特設レール敷かれ、車掌の「出発進行」の合図で走り出すと、子どもたちは1回約3分間の“小旅行”に歓声を響かせた。乗り場には機関車のヘッドマークの展示コーナーもあり、鉄道ファンが熱心にカメラに収める姿も見られた。

 父親と訪れた市内北浜町の橋本大知ちゃん(4)は「思ったよりも速くて楽しかった。もう1回乗りたい」とにっこり。このほか、地元チームのYOSAKOIソーランの演舞や焼きそば、駄菓子くじなどの縁日コーナーにも大勢の人が詰め掛け、周辺は華やいだ雰囲気に包まれた。

 また「函館朝市市民感謝祭」(同朝市協同組合連合会主催)が開かれた朝市特設会場には、午前8時の開始と同時に新鮮な海産物目当ての市民がどっと押し寄せた。カニ汁やイカめしなどは約1時間で売り切れる盛況ぶり。格安販売された殻付きのホタテやホッキなども人気を集めていた。

 特設ステージで行われた「全国大道芸グランプリIN函館朝市」では全国から集まったパフォーマー9組が自慢の妙技を披露。初代グランプリには一輪車を使ったアクロバットショーで観客を沸かせた2人組「witty look(ウィッティー ルック)」が選ばれた。(森健太郎)


◎28、29日に劇団自由飛行館25周年記念公演
 函館や近郊の演劇愛好家で構成される「劇団自由飛行館」(みのゆづる代表)の創立25周年記念第一弾「ま・ど・う」(神品正子作)が28、29の両日、金森ホール(末広町14)で開かれる。4人の女性が18歳から40歳までにたどる苦悩、悲劇などを描いた作品。みのさんは「流行のドラマもあったり、今の時代に合った内容を楽しんでほしい」と来場を呼び掛けている。

 同劇団は1983年、4人で創立。現在の団員は女性7人、男性2人の9人。演出はみのさんが担当。1年に約2回、同ホールや市芸術ホールなどで公演し、今回は46回目を迎える。キャストと舞台づくりは全員で行う。手作りの公演について「照明など裏方作業も自分たちで行うことで、より良い舞台ができることや、費用を抑え、入場料を安くしてお客さんに楽しんでもらうことができる」とみのさん。

 団員に女性が多く、今回の公演の題材に女性のドラマを選んだ。18歳の女子高生4人が仕事、家庭、恋愛、趣味とさまざまな生き方を選び、自分の世界を惑いながら見出して生きていく。年代は1980年ごろのバブル経済期から21世紀を迎えるまでで、劇団の歴史とも重なっている。また、最近のテレビドラマで40歳前後の女性たちのaオ藤や苦悩を描いたドラマもあり、みのさんは「4人の生きざまを叙事的に描いていく。偶然だが、劇団が成長した時代の話で、なおかつ、今、流行の話題になっている」と話している。

 開演時間は、28日は午後6時半、29日は同2時。入場料は一般1300円(当日1500円)、学生800円(当日1000円)、小学生300円(当日400円)。前売り券は松柏堂プレイガイドで発売中。問い合わせは同劇団事務所TEL0138・65・8891。(山崎純一)


◎ピアノ教室アカシア会の生徒が「すいとん」味わう
 8月に開かれる広島・長崎の平和祈念式典にささげるため、毎年折り鶴を制作している函館市柏木町11のピアノ教室「アカシア会」(布施谷信子代表)は22日、生徒らに戦争時の様子を知ってもらおうと、当時の人々が空腹を満たした料理「すいとん」を振る舞った。

 布施谷さんは、毎年折り鶴の制作に取り組む函館港小の活動に賛同し、3年前から教室単独で生徒や保護者と共に毎年3000羽ずつ作っている。折り鶴は市の「平和大使」として式典に参列する中学生を通じて広島や長崎に届けられる。これを機に、小学5年の時、「函館空襲」(1945年7月)を体験した布施谷さんは年1回、生徒に戦争体験を語る場を設けている。

 この日は、実話を元にした絵本「ランタンとつる」を読み聞かせた後、ニンジンを皮をむかずに入れるなどして当時を再現した、しょうゆ味とみそ味のすいとんを提供。味わった子どもたちがお代わりするほど好評だった。

 布施谷さんは「当時はすいとんがごちそうだった。野菜はこんなに入ってないし、小麦粉の質は悪く、砂が混じっていた」と説明。「食べるものがなく、いつもお腹が減っていた」と当時を振り返った。若山美月さん(駒場小4)は「すいとんはモチモチして思ったよりおいしかった」と話していた。(宮木佳奈美)