2008年6月4日(水)掲載

◎ここがロシア人の居留地…研究会が函館市内のマップ作成
 はこだて外国人居留地研究会(岸甫一代表)は、函館市内のロシア人居留地などを示したマップを作成した。函館市観光課などによると、市内の観光名所をまとめたガイドマップはあるが、国別居留地にスポットを当てた地図は初の取り組み。14日に市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で開く設立1周年記念講演会の参加者に配布するほか、市中央図書館など公的機関や市内の学校などに提供し、函館の歴史の再発見に役立ててもらう。

 同会は、地元住民の目線でかつての外国人居留地や居留外国人の活動などを掘り起こし、市民の知的財産とすることを目的に昨年6月に発足。現在会員は約20人。函館の開港の歴史や中国、ロシアなど各分野を研究していた退職、現職教員、会社経営者らが集まり、研究報告会やパネル展示、会員向け会報の作成などに取り組んでいる。

 マップの作成は昨年秋に準備を始め、2月から編集作業を本格化。B3版両面カラーで、3000部印刷する。表面にはロシアと函館の交流の歴史や年表のほか、幕末に市内のロシア病院が繁盛した出来事など、エピソードも4つ紹介している。裏面では市内西部地区周辺の地図と文久2(1862)年の市内絵図などを記載し、「ロシア人墓地」「旧ロシア領事館」「旧シュウエツ邸」などの位置と説明を盛り込んだ。

 岸代表は「幕末と現在の町並みを比べ、現存建築物を時代の流れの中で捉えると函館の歴史が立体的につかめるのでは」と話している。同会では年度内に英、米、中国編マップも作成し、来年にはそれらを使った外国人居留地ツアーも企画している。

 講演会は同日午後2時からで、函館日米協会の井上能孝副会長による講演「箱館英学アラカルト」、同会会員の清水憲朔さんの研究報告「日本最初の外国人居留地」を予定。参加費500円(資料代)。希望者は12日までに岸代表TEL0138・40・6164へ。(新目七恵)


◎江差高 09年度1学級増…道教委 公立高配置計画案
 道教委は3日、2009―11年度の公立高校配置計画案を公表した。本年度から1学級減の3学級となった江差高校は、09年度の1学級増が盛り込まれた一方、上ノ国高校の中高一貫教育を09年度末で終了することが示された。11年度計画では道南で函館西、函館稜北、長万部の3校の各1学級削減が提示された。道教委は7月に渡島、桧山など道内各地区で協議会を開き、地域の意見を踏まえた上で9月に正式決定する予定。

 適正配置計画は中卒者の増減状況などを踏まえて学校数、学級数の適正化を図る目的で毎年作成。道教委が06年度に策定した「新たな高校教育に関する指針」に基づき、07年度から翌年以降3年分をまとめて公表し、内容を見直す形になった。道南では10年度の木古内高校募集停止や函館商業高校の学科転換などがすでに示されている。

 同日示された同計画案によると、11年の道内の中卒者見込み数は4万8636人(前年比2853人減)。渡島管内では3787人(同177人減)、檜山管内では336人(同34人減)と減少傾向が続く。

 江差高校の1学級増は、江差町内や近郊からの同高への進学希望者が増えると予想されるためで、道教委は「高校進学希望者に見合った定員確保は大前提にあり、今回はそれに沿って対応した」と説明。5月13日に道教委を訪れ、09年度の4学級の確保を求める要望書を提出した濱谷一治江差町長は「進学動向の実態に沿った学級数の確保の実現に感謝したい。09年度は地元進学希望者が多い特別な状況で、10年度以降も地域の実情に応じた学級数確保を要請したい」と話している。

 上ノ国高校は07年度に公表された同計画で08年度からの1学級が示されており、新たな高校教育に関する指針に基づき自治体と協議し、中高一貫教育の終了が決まった。

 1学級減となる3校は、11年度の函館市の中卒者が約100人減る推計などを踏まえ、管内の学校配置のバランスなどを考慮して選定。函館西、函館稜北は普通科、長万部は商業科で各1学級減となり、11年度からの学級数はそれぞれ4、4、1となる。(新目七恵)


◎早く釣り糸取って…電線に絡まったウミネコ 住民ら救助
 【知内】道南でも有数の好漁場で、釣りのメッカとして知られる知内町小谷石地区で5月中旬、くちばしから出た釣り糸が電線に絡まり、宙づり状態になったカモメ(通称ウミネコ)が見つかり、地域住民らが助け出す騒ぎがあったことが3日分かった。カモメは海辺に捨てられていたか、漂着した釣り糸を餌と見誤り、飲み込んだ可能性が高く、町では「釣り糸の処理は釣り人が責任を持って!」と、海釣り客に対してマナーの徹底を呼び掛けている。

 小谷石町内会館近くの電線で、宙づり状態でもがくカモメが見つかったのは5月17日午後。住民が発見して木古内署涌元駐在所に届け出た。

 翌18日正午ごろ、電線を管理する北電の作業員が工事用のクレーンに乗って「宙づり現場」に近づき、カモメを保護し、地上で飲み込んだ釣り糸を丁寧に取り外した。カモメは飛び立つ力もない様子で、飛び跳ねるように近くの川に行き、そこで水を飲んでしばらく休んでいたという。

 関係者は「人間の身勝手な行動が動物の命を危険にさらしている」と怒りをあらわにし、町も広報誌6月号で「ウミネコの災難」という見出しを付け、この騒動を取り上げた。

 知内町では同様の事案がここ30年間で約10件報告されている。町職員で日本野鳥の会会員の竹田徹夫さん(57)は「ウミネコは雑食性なので、釣り針に餌が少しでも付いていようものなら迷わず丸飲みしてしまう。針や糸を飲み込んだ鳥はもがき苦しむ」とその悲惨さを伝え、「釣りのごみにかかわらず、あらゆるごみのポイ捨て禁止を徹底することが急務」と話している。(田中陽介)


◎フードアナリスト 女性に人気…飲食店経営の八十科さんが一般向けに講座
 食と食空間の知識を身に付け、評価・分析する専門家「フードアナリスト」が、食への関心の高まりに伴い、目指す資格の一つとして注目を集めている。函館市内では飲食店2店を経営し、同資格2級を持つ八十科(やそしな)淳さん(44)が従業員全員に資格を取得させたほか、このほど初の一般向けの教養講座を開催した。八十科さんは「作り手と食べる人の懸け橋となる資格。飲食業界の知識や接客レベルの底上げ、食育などに役立ててもらい、より食を楽しむ動機付けになれば」と話している。

 フードアナリストは日本フードアナリスト協会(東京)が認定する民間資格。検定内容は食文化をはじめ、食事マナーやホスピタリティー(もてなしの心)など食べ物、飲食サービスの幅広い分野に及ぶ。“生活の学問”として、飲食業界の関係者よりも、食に興味がある一般女性の資格取得が多いという。4級を持つ市内湯川町3の主婦村上千織さん(36)は「今まではただ食べるだけだったが、知識が増えて視点が変わり、食を楽しむ幅が広がった」と話す。

 同協会は昨年11月で設立2周年を迎え、まだ歴史は浅いが、有資格者は全国で3000人以上、道内は120人、うち函館には20人いる。八十科さんは同協会道支部長を務める。4級から特級までの資格を生かし、雑誌などへの執筆や大手食品会社への商品開発・販促アドバイス、飲食店を評価するミステリーショッパー(覆面調査員)など、仕事への道も広がっている。

 有資格者による一般向け講座もあり、道内で2人しかいない認定講師の八十科さんは5月28日、経営する飲食店「酒肴菜友じょっぱり」(本町)で「箸(はし)講座」を開催した。はしの歴史や文化、正しい使い方の講義、自分の手の大きさに合うマイはし作りが参加者の好評を得た。

 八十科さんは「講座は外食を楽しみ、家庭での食事を豊かにする第一歩」と、今後も随時講座を開く計画。全従業員が資格を持つ同店を「心地良い食空間を提供する拠点にしたい」と意欲を見せている。

 講座や一日で4級が取得できる速習講座(15日に札幌で開催)など、資格に関する問い合わせは同店TEL0138・32・8555へ。(宮木佳奈美)


◎ドック跡地、クレーン撤去 「差し止め」陳情 不採択…市議会経済建設常任委
 函館市議会の経済建設常任委員会(小山直子委員長)が3日開かれ、市民団体から提出された「旧函館ドック跡地のゴライアスクレーン売却撤去の差し止めを求める陳情」を賛成少数で不採択とした。市からクレーンごと土地・建物を買収した後に函館どつくが、クレーンを撤去した跡地を船舶の修繕部門の事業に活用する考えを示しており、安全性の確保や地域経済の振興などの面から、売却を妥当とする意見が多数を占めた。

 北原善通氏(市民クラブ)は、十勝沖地震や道南西沖地震などの歴史的背景を引き合いに、耐久性に乏しいクレーンの存続に疑問を投げかけた上で、「函館どつくが景気を再編のため、活力を出そうとしている」とし、売却、撤去に賛成の意思を示した。

 一方、福島恭二氏(民主・市民ネット)は陳情が提出されているにもかかわらず、議会に対し、クレーン撤去を含む市とどつくの確認書締結が事後報告になったことについて、「議会を軽視している」と指摘。高橋良弘港湾空港部長は同社の株主総会を控えていた事情を説明し、「報告の仕方については今後、検討していきたい」と述べた。

 いわゆる「スーパー銭湯」の進出で経営が圧迫されている零細経営の銭湯を守ってほしいとする「『公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律』の適切な運用に関する陳情」は継続審査とし、民生常任委の主導で審議していくことを決めた。「土地区画整理事業に関する陳情」も継続審査とした。(浜田孝輔)


◎学童保育所を開設…介護サービス会社「マイエルフ」が赤川の民家利用
 函館市鍛治の介護サービス会社「マイエルフ」(吉田正樹社長)は7月中旬、市内赤川1の民家を利用し、6カ月の乳児から小学6年生までを対象に預かる託児所兼学童保育所「函館保育総合支援センター」を開設する。宿泊保育も行う24時間対応の施設。小学生を対象にした学童保育で24時間対応の施設は市内初となり、吉田社長(44)は「子供たちが伸び伸び楽しめる施設にしたい」と意欲を見せている。

 昨年2月に開設した介護員養成講座の受講生のため、託児所を教室に併設した際、受講生の要請で小学生も受け入れたことが、同センターの開設を目指すきっかけになった。

 認可保育所では子供を預ける場合、両親が共働きであることなど条件があり、この条件から漏れた家庭などのニーズがあると判断し、開設準備を進めてきた。吉田社長は「資格取得や就職活動のため一時的に子供を預けたいと望む声があった」と話す。

 センターの開設時間は午前7時から午後9時まで。日中や放課後に預かる月決めのほか、1時間単位で預かる「一時保育」、「夜間保育」(午後6―9時)、「お泊り保育」(午後9時から翌午前7時)がある。

 施設は一戸建ての民家を借り入れて運営し、延べ床面積は約170平方メートル。学童保育、託児の定員は各20人。保育士5人を配置し、宅配弁当や配食サービスを行う業者と提携し、親の希望に応じて給食サービスも行う計画だ。

 問い合わせは同社0138・33・0301(鈴木 潤)


◎ツチクジラ店頭に…例年より安め
 松前沖で2日に捕獲され、函館港に水揚げされた初物のツチクジラが3日朝、函館市水産物地方卸売市場で競りに掛けられた。函館市内の業者1社が競り落とし、同日午後には市内のスーパーや鮮魚店などの店頭に並んだ。

 今回のツチクジラは体長約9メートル、体重約7・5トンで、そのうち赤肉約780キロ、小切れ肉約260キロが取り引きされた。1キロ当たりの卸値は昨年の初値をやや下回り、赤肉が1350円、小切れ肉が1000―1050円だった。

 市内のスーパー魚長では3日朝、小切れ肉約200キロを仕入れ、市内やその近郊の15店舗で販売。函館市亀田本町の八幡通り店では、200―400グラムずつパックに詰められたカット肉が、100グラム195円で並んだ。価格は例年より安めで、買い物客は物珍しそうに手に取り、熱心に品定めしていた。

 2パックを購入した市内富岡町の主婦菊地由貴子さん(36)は「懐かしさもあり、毎年解禁を楽しみにしている。夕飯に刺し身で味わいたい」と話していた。売場担当者によると、ツチクジラは淡泊で歯応えがあるのが特徴で、竜田揚げや焼き物に適しているという。(森健太郎)