2008年6月5日(木)掲載

◎疲れ癒す手作りの宿…日本一周した毛利さん、実家を改修
 函館市日乃出町の毛利剛さん(64)がこのほど、自宅隣で空き家になっていた実家を改修し、旅人の宿「ゲストハウス自遊旅(じゆうたび)」を完成させた。自らも自転車で日本一周などを遂げた旅人の一人として、函館を訪れた“同志”たちに無料で寝床を提供。「自由にくつろいで気持ちを新たに函館を出発してもらえれば」と話している。

 ゲストハウスは自転車で日本一周をした2004年から構想を練り、2年前から徐々に改修し、5月上旬に出来上がった。改修の途中から全国の旅人が立ち寄り、すでに50人が利用している。布団4、5人分を用意しており、寝袋を使用すれば10人ぐらい宿泊できる。毛利さんは「旅人は屋根さえあれば、どこでも寝れるから」と笑う。

 木造平屋建てのゲストハウスには、酒を飲みながら語れる「いろり」のある居間や掘りごたつの部屋、寝室があり、トイレや洗濯機、冷蔵庫もそろっている。食事は出さないが、自炊できるように台所も設置。改修費は20万円で、大工経験のない毛利さんが、ホームセンターで材料を調達して外壁から内装まですべて手作りし、趣ある古民家風のたたずまいに仕上げた。

 函館出身の毛利さんは半導体製造会社を58歳で退職後、日本一周をはじめ、紀伊半島の熊野古道などを自転車で走破。土方歳三が箱館戦争の際に歩いたと思われる道を3年かけて調べ、昨年ついに森町から江差町まで約270キロを歩き通した。旅の道中、テントを張る場所探しに困った経験から、「自分もあちこちで人の世話になったので、何か恩返しをしたい」と思い、宿づくりに取り組んだ。

 訪れるのは20代の若者が中心で、徒歩や自転車でやってくる。彼らと酒を飲み、市内を案内して一緒に山で野宿することも。旅人仲間から「も〜さん」の愛称で親しまれる毛利さんは「北海道はテントを張れるキャンプ場がたくさんあって居心地がいい。ようやく北海道の入り口・函館に着いたという思いで来る旅人たちが、疲れを癒やせる場所にしたい」としている。

 予約が必要で、利用は徒歩や自転車などで函館を訪れた旅行者に限る。問い合わせは毛利さんTEL090・1648・1556。(宮木佳奈美)


◎水産市場 数量は好転、中央市場 金額は開設以来最低…07年度実績
 函館市は4日、2007年度の水産物地方卸売市場と中央卸売市場の取り扱い実績を発表した。水産市場の取扱数量は前年度比6・9%増の4万7013トンと2年ぶりに好転する半面、取扱金額は同1・1%減の200億9593万円にとどまった。中央市場は数量が同3・5%減の6万1113トン、金額が同5・2%減の136億677万円で、1975年3月の市場開設以来、最も少なかった。

 水産市場の実績を品目別で見ると、主力の生鮮イカは数量が同47・4%増の7583トン、金額が同11・6%増の20億4984万円。11月末から12月にかけての豊漁が数字を押し上げた形だが、1キロ当たりの単価は同24・4%減の270円となり、「観光シーズンのピークでなかったのが災いした」(市農林水産部)格好だ。

 生鮮サケやホッケは低調だったものの、生鮮魚全体の数量は同10・7%増の2万1029トン、金額で同3・7%増の101億1901万円。塩干品は数量で同17・7%減の1123トン、金額で同10・2%減の18億712万円、冷凍品は数量で同5・3%増の2万4861トン、金額で同4・5%減の81億6980万円だった。

 中央市場は野菜が3万9573トンの70億9106万円で、数量、金額ともに同6・9%減で、単価は前年度と同じ179円。ニンジンが数量で同12・7%減の2408トン、金額で同25・2%減の2億2490万円だったのをはじめ、バレイショ、タマネギなど土物類の低迷が目立つ。

 果実はスイカが数量で同32・3%増の1754トン、金額で同29・3%増の3億1769万円と好調さを見せ、豊作だったミカンが数量で同36・6%増の4680トン、金額で同3・4%減の10億3728万円。果実全体では数量で同4・4%増の2万921トン、金額で同2・7%減の61億8763万円だった。

 同部は「夏場の高い気温が少なからず影響したとはいえ、市場を通さずに産地から直接発送するという流通構造の変化に歯止めが掛からないのが低迷の主因」としている。(浜田孝輔)


◎議員定数4人削減…北斗市議会
 【北斗】北斗市議会(小泉征男議長)の各会派代表者らで構成する「議会改革等に関する調査特別委員会」(花巻徹委員長)は4日、議員定数を現行の26から22に4人削減する方向をまとめた。同特別委は10日開会の第2回定例会に議員定数を改める「市議会議員定数条例」案を提案する見通しだ。

 同特別委は6会派の代表者らに無会派、副議長を加えた8人で構成。各会派から提案された見直し検討項目は95件45項目に上り、うち議員定数の見直しは全会派が検討項目としていた。

 これまで5回にわたり、議員報酬の引き上げなどの報酬審議会の答申、同規模の7市の状況、財政状況などを考慮して審議を継続してきた。この日開かれた第7回目の委員会で、大勢を占めた4人減の方向性が固まった。

 現在の議員定数は旧上磯町と旧大野町の合併協議で制定した「廃置分合に伴う議会の議員の定数に関する協議書」に伴うもので、現議員の任期は2011年4月30日。(笠原郁実)


◎高校生が字幕や音声ガイド付け体験へ…ユニバーサル上映映画祭
 9月5―7日に北斗市内で開かれる第3回「北海道ユニバーサル上映映画祭」の実行委員会(島信一朗代表)は初の試みとして、高校生を対象にしたユニバーサル上映の制作体験を15日、函館水産高校で行う。日本語字幕と音声ガイド付けを体験し、映画祭やユニバーサル環境、バリアフリーに興味を持ってもらうのが狙いで、その成果は映画祭当日に発表される。同映画祭のポスターやチラシも完成し、関係者は「多くの人に来てほしい」と呼び掛けている。

 同映画祭は障害者や高齢者が健常者と一緒に映画を楽しめるよう、手話通訳や要約筆記などの各種サポート環境を整えた上映会。弁士付きの無声映画や函館ロケの「犬と私の10の約束」など幅広いラインナップのほか、シンポジウムなども予定している。

 高校生向け体験会は、さまざまな障害を持つ人がいることを知ってもらい、その経験を将来に生かしてもらおうと企画。事前に北斗市内の高校などに参加を募り、希望した函館水産高と上磯高校の生徒4人に、上映するアニメーション映画「銀河鉄道の夜」の1場面(10分間)のオリジナル字幕などの作成、映像と合わせる編さん作業などを体験してもらう。

 完成したポスターはB3版で200枚、リーフレットは1万5000枚印刷し、函館、北斗などの公共施設などに配布する。チケット(3回鑑賞券一般1500円、ジュニア800円など)も販売中。実行委ではポスター展示や当日の会場運営などの協力者も募集している。問い合わせは函館保健企画内の橋本和幸さんTEL0138・31・0010。(新目七恵)


◎「金額は公開すべき」 公文書公開審査会が答申…ドッククレーン売却の公募
 2006年に持ち上がった旧函館ドック跡地の大型クレーン撤去に関する公文書の公開で、函館市土地開発公社が応募のあった3社の提案金額など一部を非公開とした決定に対する異議申し立てがあり、市公文書公開審査会(山崎英二会長)は4日、同公社の工藤寿樹理事長(副市長)に、提案した3社の名前と結び付かない形で提案金額を公開すべきとする答申をした。

 公文書公開請求に対し、同公社は関連する複数の公文書を公開し、公社の理事会議録では応募のあった業者名を明らかにしている。しかし、公募に対する提案書などの公文書では業者名や提案金額は伏せている。

 この決定に対し、公開請求をした市内の市民団体が昨年12月、同公社に異議申し立てをした。同審査会の意見陳述で、同団体は「クレーンは市民の財産であり、撤去方法は一大関心事。応募した会社はどこか、どういう理由から選定されたかを知ることは当然の権利」などと主張した。

 これに対し同公社は、選考に漏れた業者名などを明かせば業者の不利益となり、選定された業者も公社と本契約に至らなかったことから、同様に企業の社会的地位に影響が出ることが考えられる、などと主張した。

 同審査会は「買い受け価格や撤去費用を公開しても、それを提案した法人と結び付くことはない」とし、金額は公開すべきとした。(高柳 謙)


◎函館市役所の食堂に「くじら定食」登場
 函館市役所の地下食堂に4日、函館で本年度水揚げされたツチクジラの肉を用いたメニュー「くじらの和風ポン酢唐(から)揚げ定食」が登場した。1999年度に農水省認可によるツチクジラ漁が始まって以来、同食堂でクジラ料理を提供するのは初めて。一日20食前後限定で560円。

 クジラ肉はやわらかさを出すために、しょう油や酒などで下味をつけた後、衣揚げにしていて、おろしポン酢に浸して食べる。定食にはご飯とみそ汁、小鉢がつく。注文した同市駒場町の男性会社員(30)は「もちもちしていて、ちょうど良い食感」と味を楽しんでいた。

 道南日本海沖のツチクジラ漁は5月25日に解禁され、しけの影響で、初水揚げは2日にずれ込んでいた。市水産課によると、1頭目を水揚げしてから3日連続でツチクジラを捕獲しているという。今月末までの操業期間で捕獲枠は10頭となっている。

 食堂は一般市民も利用でき、営業開始時間は午前11時で、ラストオーダーが午後2時半。入荷状況にもよるが、クジラ肉は今月末まで取り扱う予定。同課は「食堂で味わうのをきっかけに、家庭でクジラ料理を試してほしい」と話している。(浜田孝輔)


◎優秀作品に「乙部の釣りたらこ」…サミットで北海道を発信する絵本
 【乙部】7月の北海道洞爺湖サミットで、本道の独自の環境や文化を世界に発信しようと、道を中心に行った絵本作品の募集で、乙部中学校(山田活美校長、生徒129人)の生徒たちが、スケトウダラの資源保護などをテーマに制作した「乙部の釣りたらこ」が優秀作品に選ばれた。サミットに参加する主要国の言語に翻訳し、首脳や随行員に披露される。

 伝説や民話などをテーマにした絵本の募集は2006年度、道と国際デジタル絵本学会(会長・馬淵悟道東海大学教授)の共催でスタート。絵本をデジタル化することで、ホームページ(HP)での公開やDVD制作などによる保存、管理も容易になる。

 本年度はサミットを契機に、本道の環境や歴史文化をテーマにした絵本を募集。06、07年度に応募があった計85作品の中から、アイヌ民族の伝承、本道の自然環境や食文化などを題材にした10作品がサミットで発信する優秀作品に決まった。道南では乙部中の作品だけが選ばれた。

 「乙部の釣りタラコ」は、60年代にスケトウダラが乱獲の影響で枯渇したため、10年にわたる禁漁、はえ縄漁による乱獲の防止、産卵場所の保護、漁期の短縮といった漁業者独自の取り組みを紹介。禁漁中に漁業者が町を離れて出稼ぎに向かった苦い記憶や、はえ縄で水揚げした高鮮度のスケトウダラの高級タラコ「玉粒(たまつぶ)」の新商品開発もPRしている。

 作品は英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語、中国語などに翻訳され、HPでの公開とともに、各国首脳、随行員などに鑑賞してもらう予定。作品は既に道のホームページ(http://www.pref.hokkaido.lg.jp)の「デジタル絵本館」で公開を開始。サミット道民会議オフィシャルサイト(http://www.do-summit.jp)でも近く発表する予定だ。(松浦 純)