2008年6月6日(金)掲載

◎森谷律子さん 闘病中の夫に送ったメールの詩歌を本に
 函館市本通3の森谷律子さん(59)がこのほど、がんで闘病生活を送る夫勝さん(61)から携帯電話のメールで送られてきた詩歌を一冊の本にまとめた。看病する妻への感謝の気持ちなどがつづられた一編一編を、律子さんがノートに書き写し、夫婦二人三脚で仕上げた作品集で、その名も「きずな」―。勝さんは「詩集は夫婦のきずなの証し。闘病生活の励みになる」としている。

 函館工業高校の元国語教諭の勝さんは、優しい人柄で行動派。律子さんとは暇さえあれば旅行などに出歩く仲の良さ。夫婦は昨年12月で結婚30周年を迎えた。勝さんは定年退職を間近に控えた2006年冬、人間ドックで胆管がんが見つかり、札幌市内の病院で手術を受け、現在は函館市内の病院に入院中。昨年10月から律子さんが毎日泊まり込みで看病を続けている。

 連絡を密に取ろうと、夫婦がそれぞれ携帯電話を持ったのは昨年4月。以前から趣味で川柳を作っていた勝さんは「携帯電話は紙に書くより楽で、保存できるから便利」と、詩歌をしたためてはほぼ毎日、消灯前に律子さんに送信した。普段は照れくさくて言えない律子さんへの素直な気持ちをつづり、半年でその数は180編を超えた。

 「来る度に ご馳走持参じゃ 疲れるよ 君の笑顔に かなう土産なし」といった妻への愛情、「哀楽も 二人で分けて 食事する」のように苦楽を共にする夫婦のきずなを表現した句も。「病食に 添えし君の 手料理は 我が家の味なり 舌に溶けゆく」「病院の 居候なれど 心に芯あり 神よどうする この僕を」など闘病生活の正直な胸の内を詠んだ歌もある。

 律子さんは「受け取ったメールに励まされ、涙ぐむことが多かった」と明かす。メールだけで残すのはもったいないと、詩歌を書き写していくにつれ、一冊の本にしたいと思うようになった。

 勝さんの実姉、武知美和子さん(65)がパソコンでの編集制作に協力。A4判72?で、各ページの詩歌の下に、旅行先などで撮った楽しげな夫婦のスナップ写真を添えた。当初は知人に配ろうと60部作り、50部増刷した。

 律子さんは「夫婦だけの作品集にするつもりが、立派なものが出来上がり、我が家の宝になった」と話している。(宮木佳奈美)


◎東日本フェリー函館ターミナルが「恋人の聖地」に認定
 全国の観光施設などを対象に、恋人同士がプロポーズやデートをするのに最適な場所の選定を進めている「恋人の聖地」プロジェクトに、函館市港町3の東日本フェリー函館ターミナルのウッドデッキと同社の青函高速船「ナッチャンRera(レラ)」が道南では初めて認定された。函館港の夜景や夕日の美しさに加え、函館と青森を「結ぶ」という縁起の良さが評価された形で、カップルが愛を誓い合う新たなスポットとして注目を浴びそうだ。

 同プロジェクトは、少子化対策や地域活性化策の一環で2006年4月からスタート。NPO法人「地域活性化支援センター」(静岡市、志垣恭平理事長)が全国の自治体・団体などから候補地の推薦を募り、ファッションデザイナーの桂由美さんや華道家の假屋崎省吾さんら各界著名人5人が選定に当たっている。

 「恋人の聖地」には全国100カ所を選ぶ計画で、これまでに61カ所が認定されている。道内では厚田公園展望台(石狩市)など3カ所が昨年までに選ばれ、今回新たに同施設と、ゆにガーデン(空知管内由仁町)が加わって計5カ所になる。

 同施設は昨年8月、新型高速船の就航に合わせて完成。海に面したガラス張り三角形のターミナルの海側にデッキが設けられ、函館山や海沿いの夜景、函館港に沈む夕日などロマンチックな港町の風景が眺められる。高速船のエグゼクティブクラスには2人がけのペアシートも用意されている。

 5月下旬に東京で行われた式典では、同センターから同社の古閑信二社長に「恋人の聖地」と書かれた記念の銘板が交付された。同社は今後、記念碑の設置やカップルへのプレゼント、船内結婚式の開催なども検討しており、「海の玄関口としてだけでなく、市民や観光客を癒やし、幸せにつながるようなランドマークなれば」と期待を寄せている。(森健太郎)


◎谷目さん制作の手廻しオルガン ヨサコイ会場に初登場
 函館市在住の「手廻しオルガン」職人、谷目基(もとき)さん(41)のオルガンが7、8の両日、札幌市内で開かれている「第17回YOSAKOIソーラン祭り」(組織委員会主催)の大通西6丁目会場でお披露目されることになった。誰もが自由にハンドルを手に取って音色を楽しめる形で、多くの人に手廻しオルガンの魅力が“発信”されそうだ。制作に追われる谷目さんは「子どもたちと一緒に音楽を奏で、YOSAKOIを盛り上げる一翼となってくれれば」と話している。

 4日に開幕した同祭りは8日まで連日、大通会場を中心に札幌市内28カ所で出場チームが踊りを披露。道南(南北海道支部)から11チームが出場する。メーンの7、8の両日、「森から来たYOSAKOIチーム」と銘打って、谷目さんの手廻しオルガンが初登場する。

 子どもから大人までが楽しめる「YOSAKOIソーラン祭り」にしようと、昨年末に組織委から谷目さんに制作依頼があり、今年1月から本格的な作業を始めた。オルガンの大きさは幅1メートル20センチ、高さ1メートル80センチ、奥行き1メートル。子どもの視点に立ってオルガンの図案を仕上げ、音を大きくしたり音色を明るくしたほか、従来のオルガンよりも持ち手を低くし、オルガンの仕組みが分かるように囲い板を外すなどの工夫を凝らした。

 「トトロ」や「ドラえもん」「千の風になって」「大きな古時計」など、なじみ深い音楽を10曲ほど用意。今回のオルガンでは、鳴子を持った小人が音楽に合わせて踊る「からくり人形」も見どころだ。オルガンは6日中に会場に運ばれる。

 谷目さんは「実際に会場で廻し方の指導をし、子どもたちと一緒に楽しみたい」と張り切っている。

 南北海道支部の参加チームは次の通り。

 ▽函館斗燃衛組&鹿児島連合、函館学生連合〜息吹〜、函館躍魂いさり火、ついんくる、YOSAKOIソーラン祭進鮮組、元祖婆あYOSAKOI、夢限舞童(以上函館市)瀬棚気合一本!!(せたな町)もり・騒乱桜、森未来人(以上森町)木古内みそぎソーラン炎の舞(木古内町)(小橋優子)


◎ママは学生 育児、勉強奮闘中…函館短期大調理師学校の久保田さん
 函館短期大学付設調理師専門学校(下野茂校長)で、“ママさん学生”が奮闘している。市内に住む久保田美佳さん(38)で、幼稚園児と小学2年の2児を育てながら製菓子、パン技術の習得に励み、7日から札幌市内で行われる「2008道洋菓子作品コンテスト大会」(道洋菓子協会主催)の同校代表4人のうちの1人にも選ばれた。久保田さんは「今後も育児と両立させながら料理の勉強をしたい」と話している。

 久保田さんは98年の結婚を機に仕事を辞め、家事や育児に専念していたが、子育てだけの生活に疲れ、子供が入学、入園した昨年春、「周りの環境を変えて何かに真剣に取り組みたい」と、長男の入園する函館短大付属幼稚園に隣接する同校の調理師科に入学した。

 「子供も自分も新しいスタートで不安だった」というが、「先生の熱心な指導や同期生たちの真剣に学ぶ姿勢に刺激を受けた」と話す。学業の傍ら家族のご飯支度や洗濯、掃除などをこなし、1年間通い続けて今春に調理師免許を取得。4月からは製菓衛生師科に進学した。

 同大会への参加は自分のレベルアップを目的に希望。ことしは同科61人中40人が手を挙げ、校内選考で参加者4人を決めた。参加する「ジュニアの部」は製菓を学ぶ道内の学生が対象で、アーモンドと砂糖をペースト状にした「マジパン」細工のデザインなどを競う。昨年は約130人が参加した。

 久保田さんの出品作品のテーマは「親子愛」で、幸せそうに子供に添い寝する母親が配されている。「どんなに忙しくても寝る前の読み聞かせは欠かさない」という久保田さんの子供に対する愛情が伝わる仕上がりだ。

 将来は「20代の時に留学したニュージーランドの人たちに料理を振る舞って恩返ししたい」という。「お母さんの笑顔が好き」と話す長男啓太郎ちゃん(5)に寄り添い、「まずは子供が独立するまでしっかり育てながら、自分の技術を生かせる場所で働きたい」と意気込んでいる。(新目七恵)


◎◎故・益田喜頓さん原作「案山子語」来年8,9月再演
 函館生まれの喜劇俳優、故・益田喜頓さん(享年84)の生誕100周年を記念し、益田さん原作の市民ミュージカル「案山子(かかし)物語」が来年8、9月、函館と東京浅草(台東区)で再演されることになった。5日に函館市民会館で開かれた市や文化団体などでつくる実行委(委員長・金山正智市文化・スポーツ振興財団理事長)の総会で決まった。今月中にも出演者を募集し、7月からレッスンを始めたい考えだ。 

 益田さんは1909年生まれで、来年が生誕100周年に当たる。再演の場所は函館のほか、益田さんが俳優時代に長く住んでいた浅草を選んだ。浅草公演では台東区のダンス団体に所属する児童、生徒にも出演を呼び掛ける。函館公演は8月23日、市民会館大ホールで、浅草公演は9月21日、東京台東区の浅草公会堂で開く。両公演とも2回上演で、配役は来年1月のオーディションで決定する方針。

 「案山子物語」は益田さんが市民ミュージカルを函館で開こうと書き下ろした作品で、94年3月、市民による「函館ミュージカル劇場」が初演。益田さんも劇に出演する予定だったが、公演3カ月前に病死したため、実現できなかった。同年10月にも道文化振興条例制定記念の招待公演として、札幌JRシアターで上演し、高い評価を受けた。益田さんの13回忌に当たる2005年11月には、市民文化祭の舞台部門として公演している。

 案山子物語は「じっちゃんかかし」と孫娘の「ペコ」が台風に乗って世界中を巡り、そこで出会った人たちと交流を深める物語で、「愛と平和」がテーマになっている。

 実行委ではこのほか、来年9月5、6の両日、市民会館で益田さんが出演した映画上映会、同月5―13日には益田さんの遺品を公開する「喜頓メモリアル・アラカルト展示会(仮称)」を開催。11月には益田さんを偲(しの)ぶ会を開くことも決めた。(鈴木 潤)


◎公共性やデザイン重要 利活用へ検討委が意見…駅前市有地
 長く懸案となっているJR函館駅前の市有地など約1万平方メートルの活用方法を探る検討委員会(委員5人)の初会合が5日、市役所会議室で開かれた。委員長に北大大学院工学研究科の瀬戸口剛・准教授(都市計画)を選出し、有効活用に向けて意見交換。従来の概念にとらわれず、低容積でデザイン性や公共性がある施設や空間が必要ではないか、とする意見が寄せられた。

 同地は、ホテルルートイン函館駅前の裏側で、市土地開発公社と市所有が約6800平方メートル、JR北海道所有が約3100平方メートル。事務局の市企画部が、市の土地区画整理事業で整備され、1997年3月に策定された駅周辺の土地利用基本計画で青少年科学館、総合情報センターなどの整備が盛り込まれたことなどを説明した。

 意見交換では「対象地はホテルなどの裏側で、国道5号からも距離がある。施設を建てるとするならば、新たな動線が生まれるよう、集客力や魅力を持たせなければならない」「商業施設は難しく、サービス性と公共性のあるものをミックスしたものが望まれる」「函館の“顔”であり、居心地のいい公開空地やデザイン性が必要では」などの意見が寄せられた。

 7月末まで委員会を3回開く予定で、活用方針をまとめて市長に提言する。市の渡辺宏身企画部長は「民間の力を導入しながら、駅前地区の活性化や雇用創出に結び付く活用法の検討をお願いしたい」とあいさつした。

 他の委員は次の通り。

 木村健一公立はこだて未来大学教授、藻谷浩介日本政策投資銀行参事役、渡辺良三函館都心商店街振興組合理事長、桜井健治函館商工会議所常務理事(高柳 謙)