2008年7月12日(土)掲載

◎渡島信金が振り込め詐欺防止策、ATM周辺 携帯やめて
 【森】渡島信用金庫(本店・森町御幸町、伊藤新吉理事長)は、振り込め詐欺を未然に防止しようと、店舗内の現金自動預払機(ATM)周辺での携帯電話の使用をやめるよう呼び掛ける取り組みを開始した。本・支店全15店のATMコーナーと機械にポスターを掲示し、注意を喚起している。道警函館方面本部生活安全課は、携帯電話で被害者をATMに誘導し、振り込みを行わせる手口が増えていることから「携帯の使用を禁じるのは、道内でも珍しい取り組み。地道な方法だが、被害防止のために有効な手だて」としている。

 同課によると、最近の振り込め詐欺事件は、交通事故や事件をかたり、示談金を請求する従来からある「オレオレ詐欺」の手口のほか、社会保険庁や税務署などの職員を装い、医療費や税金の「還付金がある」として、被害者をだますケースが増加。振り込み場所を大型スーパー内などの金融機関外設置のATMを指定し、携帯電話で操作手順を教えながら現金を振り込ませるなど、手口は巧妙化しているという。

 同課は「役所などの機関が電話で振り込みを要求することはあり得ない。自分ひとりで判断せず、まずは誰かに相談をしてほしい」と注意を促す。また、同信金の佐藤広子業務部長は「窓口であれば、職員が声を掛けて被害を防止したケースもあるが、ATMでは対処できない。不便と感じるお客さまもいるかもしれないが、事件防止のための対応として理解を呼び掛けている」と話している。(今井正一)

 管内の振り込め詐欺発生状況 道警函館方面本部生活安全課によると、管内では、ことし1月から6月末までに、28件(前年同期比22件増)の振り込め詐欺事件が発生し、被害総額は約5120万円(同約4360万円増)。5月以降、年金や税などの還付金を装う手口が増加しているという。道内では6月末現在で、268件(被害額約3億2200万円)あり、昨年1年間の発生件数305件、約5億3580万円を上回るペースで増加している。


◎自治基本条例、住民投票どう盛り込む
 来年度からの施行を目指し策定作業を進めている函館市自治基本条例に、住民投票制度をどう盛り込むか、議論が始まる。自治基本条例は市民参加や住民協働が大きな柱となるため、制定したほとんどの自治体で住民投票に関する条文を設けている。函館市もその方向で、住民投票を実施する場合の細かい規定まで条文化するかが議論の中心になりそうだ。

 自治基本条例に住民投票に関する条文を盛り込んだとしても、すぐに投票が実施できるわけではない。住民投票条例の制定が必要で、一般的に住民が首長に直接請求する場合、有権者の50分の1以上の署名を集め、条例の制定を求める。これを受け、首長が議会に条例案を提出し、可決されると投票実施となる。

 近年では合併前の旧大野町の住民有志が2005年1月、796人の署名(法定の必要数176人)を添え、当時の上磯町との合併について、住民の意思を把握する住民投票条例制定を請求したが、同2月の臨時町議会で否決された。

 市行政改革課によると、今年4月現在で自治基本条例を制定している全国26市で、条例の中に住民投票を規定しているのは25市。帯広市まちづくり基本条例では「選挙権を有する住民は、法令の定めるところにより、住民投票を規定した条例の制定を市長に請求することができる」と、地方自治法で定められている内容を条文化している。

 一方、神奈川県大和市の自治基本条例では、住民投票を請求できる対象を「満16歳以上」、大阪府岸和田市は「定住外国人を含む住民のうち18歳以上」など、自治法の内容以上のことを規定した。

 住民投票をしなくても有権者を代表する議会がある、との声もあるが、住民投票はあくまでも議会制間接民主主義を補完し、住民の意思を把握するための制度であるとされている。投票結果に法的な拘束力はないが、一般的に首長や議会は結果を尊重しなければならない。

 住民投票 市町村など地方自治体の将来を左右する重要な事項に対する住民の意思を把握する投票制度。住民が署名を集め首長に直接請求する場合と、首長や議会が投票条例を提案するケースがある。1996年に新潟県巻町で、原子力発電所建設をめぐり初めて行われた。(高柳 謙)


◎支庁再編に留萌市容認、存続運動 結束にひび
 【江差】道の支庁制度改革で振興局に格下げになる留萌市の高橋定敏市長が10日、再編容認を表明した。対象の4支庁のうち再編受け入れは初めて。支庁廃止阻止の結束にほころびが生じる中、江差・日高管内浦河の両町と根室市は、存続運動を継続、道との対決姿勢を堅持する構えだ。3市町が“最後のヤマ場”に位置付ける公選法改正阻止に向けた運動は、参院で過半数を占める“野党頼み”とならざるを得ず、与野党の壁を乗り越えた地域や住民の結集が大きな課題として浮上している。(松浦 純)

 道は14支庁を9総合振興局に再編するが、14支庁と35の市・区からなる道議会議員の選挙区は現状を維持する。このため、選挙区を支庁単位と定める公選法の改正が必要だ。改正後でなければ、道議会で可決した「総合振興局設置条例」は施行できない。道は構造改革特区を活用、法改正前にも条例を施行したい意向だが、総務省は難色を示している。

 国は8月の臨時国会に法案を提出する方針だが、参院は、民主、共産、社民などの野党勢力が過半数を確保。民主党北海道の鉢呂吉雄代表ら複数の国会議員は法改正に反対の意向で、支持基盤の連合北海道も働き掛けを強めている。

 しかし、衆院解散をにらむ民主党や労働組合と一体化した運動は「もろ刃の剣」(自民党関係者)と懸念する声もある。保守系の首長や住民の拒否反応も根強い。住民の1人は「野党の党利党略にどこまで踏み込んでよいのか」と戸惑いを隠さない。道議会では自民党議員会長も務めた高橋留萌市長も、以前から野党や労組と一体化した運動には否定的だった。

 道議会の民主党会派は、支庁再編への賛否がまとまらず、採決で全員退席したこともあり「どこまで信じてよいのか」(労組関係者)との声もある。存続運動の先行きは「楽観視できない厳しい道のり」(江差町)になることは確実だ。

 高橋知事と道町村会など、地方4団体との関係修復は難航気味だが「野党と一体化した運動は政治色が濃すぎる。方針決定も容易ではない」(ある町長)との声もあり、4団体の去就にも注目が集まっている。


◎函館市臨海研究所16日から「モース」の資料コーナー開設
 東京の大森貝塚を発見したことで知られる動物学者エドワード・モース(1838―1925年)の資料コーナーが、函館市大町13の市臨海研究所2階メモリアルホールに開設され、訪れた市民や観光客の目を引いている。モースは貝類の専門家で、東京帝国大学教授を務めていた1878(明治11)年の夏、北海道・函館を訪問。当時の函館船改所の一部を借りて実験室とした。その場所が現在の臨海研究所だ。

 函館市在住で「モースの見た北海道」の著書がある鵜沼わかさん(69)や、神奈川県藤沢市の広崎芳次さん(79)=野生水族繁殖センター代表、前江ノ島水族館館長=らから著書や関係資料、論考集などの展示協力を得た。16日から8月15日までは1階交流ホールで、モースの略年表や著書、北海道研究旅行の足跡、モースが函館で採集したとみられる貝類などを加えた特別展を開く。

 臨海研究所と鵜沼さんによると、モースは当時の東京帝国大学の植物学教授、矢田部良吉ら8人で本道を訪問。函館では開拓使が蒸気船や実験室、宿泊所などを用意し、研究に当たった。著書「日本その日その日(邦訳)」には函館船改所や街角のスケッチなどを残している。

 鵜沼さんは北大水産学部医務室の元看護師で「モースが着任したころ、動物学を講義するにも標本がなかった。そのため矢田部とともに魚や貝、ウナギなどの標本採集に訪れた。130年前も現在も、標本を集めるという学問の作業は変わらない」と話す。

 同研究室を訪れた市民らはモースと函館の関係を知るなど、新しい知識を得ている。(高柳 謙)