2008年7月17日(木)掲載

◎手こぎ舟でジュンサイ漁
 【七飯】湖上に“夏の風物詩”がゆらり―。七飯町西大沼の蓴菜(じゅんさい)沼でジュンサイ漁が行われている。大沼漁協(宮崎司組合長)の組合員8人がそれぞれ手こぎの舟に乗り込み、ゼラチン質に包まれた2―4センチのジュンサイを丁寧につみ取っている。

 湖底に根を張り、湖面に葉を浮かべるジュンサイは茎に新芽を付ける。漁業者は6月22日から、暑い日差しや雨を遮る日笠を身につけ、舟の先端で腹ばいになり新芽を採取している。ジュンサイは地元の土産物店で売られる。

 同漁協は自然保護のため午前7時から同11時半、午後1時から同4時まで時間を限って採取し、4日間の出漁後は3日間休漁する形を取っている。昨年の水揚げは1・8トンで、ことしは2トンを目指し、8月15日まで漁を続ける。(笠原郁実)


◎建設業者6人逮捕…森町談合
 【森】森町が2005年に発注した消防防災センター建設工事の入札をめぐって、業者間で談合していた疑いが強まったとして、道警捜査二課や道警函本捜査課、森署などは16日、落札した共同企業体(JV)に参加した準大手ゼネコンの東急建設(東京都渋谷区)札幌支店土木部担当部長、菅沢利昭容疑者(60)=札幌市南区=、森町上台町の町内最大手建設会社「星組渡辺土建」社長、渡邊英明容疑者(56)=函館市柳町=ら6人を偽計入札妨害(談合)の疑いで逮捕した。同入札をめぐっては、4月に道警が聴取した町の元幹部らが町の関与を認める供述をしており、同課などは湊美喜夫町長(79)のかかわりを含め、町主導の官製談合の疑いも視野に、事件の全容解明を進める。

 このほかに逮捕されたのは、札幌市内の同支店営業部長桐井秀行(55)、同支店建築部専任部長川本末男(58)、北広島市の同支店営業部次長中田務(59)、函館市松陰町、薮下機械店社長薮下宏一(61)の4容疑者。

 調べによると、6人は05年9月28日に森町が実施した消防防災センターの指名競争入札で、同じ入札の参加業者として指名された他の4JVの入札担当者と共謀し、この直前に東急建設と星組渡辺土建が組んだJVが落札できるよう、入札価格の調整を図るなど談合した疑い。

 これまでの調べで、町が発注した同センター建設工事の指名競争入札は、星組渡辺土建と東急建設の2社が組んだJVなど計14社の5JVが参加。予定価格5億1610万円(税抜き)に対し、東急建設などのJVは5億570万円(同)、落札率約98%と極めて高い数値で落札。他のJVも落札率の差が1%未満で、事前に業者間で調整があったとみられている。

 星組渡辺土建は当初、町内の別の中小建設会社2社との間でJVを組む予定だったが、入札直前になって東急建設とのJVに組み替え、出資割合も東急建設がメーンとなる形にした。

 当時、JVから外された建設会社関係者は「突然、東急建設側から組み直しを求められた」と話し、出資割合の変更などと合わせて、関係者の間では入札当初から談合疑惑が持たれていた。

 道警は4月、逮捕された2社の関係者のほか、湊町長や町幹部らの任意聴取を進めていた。その中で、当時の建設課長がJV組み替えについて、湊町長の指示をほのめかす供述をするなどしていた。道警は湊町長の関与や町主導の官製談合の疑いもあるとみて、慎重に捜査を進めてきた。

 同センターは05年4月、旧森町と旧砂原町の合併に伴い、町消防本部と防災センターを併設する形で新設され、06年10月から業務を開始。延べ床面積は約2360平方?で、総事業費は約8億5000万円。建設には合併特例債が活用された。

 渡辺容疑者は逮捕事実を認めているが、ほかの5人は一部否認しているという。


◎町に大きな衝撃走る…町長コメントせず 「真相解明して」
 【森】「ついに逮捕者が出たのか」「町長はどうなる」―。町消防防災センターの入札をめぐる談合事件で、道警が本格的な捜査に乗り出した16日、町には大きな衝撃が走った。この事件では道警が4月、業者とともに、湊美喜夫町長や町の元幹部職員らに対する任意の事情聴取を行っていただけに、「ついに…」との思いが広がった。今後、捜査は同町長の関与や町主導の官製談合の可能性も含めた展開もあり得る情勢だけに、町民は捜査の行方を注視している。

 関係する社長らに逮捕状が請求されたという情報を受けて、町内上台にある「星組渡辺土建」の前には、報道陣が詰め掛けた。物々しい雰囲気の中、社員らは淡々と業務をこなしていた。

 一緒に入札に参加したという町内のある業者の幹部は「町長は地元の業者を大事にすると思っていたが、準大手ゼネコンが決まったときはびっくりした」と、当時の入札状況を振り返る。

 この日、湊町長は通常通りに出勤し、町長室で執務をとった。報道陣に対しては一切コメントせず、午後4時40分ごろ退庁した。

 4月、官製談合疑惑を巡る報道が続いたこともあって、町民の捜査に対する関心は高い。

 同町森川町に住む男性(57)は「疑惑に対するうわさや風評が飛び交っていた。(業者らを)非難したり、かばう気持ちもないが、道警には真相を解明してほしい」と話す。同町尾白内町に住む60代の男性は「以前にも同様の疑惑があった。今回はどうなるのか注目はしていた」、別の80代の男性は「(湊町長の)長期政権が招いた結果。町政の刷新が必要な時期」とし、「業者が逮捕され、町長はどうするのだろうか」と話していた。


◎住民投票は個別条例で…市自治基本条例検討委 対象年齢 結論出ず
 函館市自治基本条例策定検討委員会(横山純一委員長)の18回目の会合が16日夜、市役所会議室で開かれた。住民投票制度を条文に盛り込むことを決め、市民から住民投票の請求があった場合、その都度、住民投票条例を制定して実施する「個別型」とすることを決めた。請求者や投票者の対象年齢は18歳以上とする意見もあったが、同日は結論が出なかった。

 自治基本条例に関連した住民投票は、市町村合併や米軍基地の誘致、原発の建設などまちの将来を左右する重大事項に際して実施するケースを想定している。有権者の50分の1以上の署名で直接請求でき、市長や議会は投票結果を尊重しなければならない。

 「市民参加の観点から、住民投票ができるハードルを下げるべき」などの意見から、必要に応じて条例制定を請求し、議会の議決を得るようにした。この場合、函館市では約4900人の署名で直接請求ができる。

 直接請求や投票ができる対象について「将来のまちを問う投票なので、18歳以上の若者まで意思を問うべき」との意見があった。こうした場合の作業について質問があり、事務局の市行政改革課は「20歳以上であれば選挙人名簿で対象が分かるが、18歳や19歳となれば住民基本台帳との突合作業などが必要となることが考えられる」と答えた。(高柳 謙)


◎ギリヤークさん函館で20日公演
 函館市出身で国際的な創作舞踊家、大道芸人として活躍するギリヤーク尼ケ崎さん(77)の青空舞踊公演「祈りの踊り」が20日午後2時から、大門グリーンプラザ(松風町)で開かれる。ことしは街頭で踊り始めて40年の節目の年。2006年秋に肺気腫を患って以来、命を削りながら踊り続けている。ギリヤークさんは「節目の年に、故郷での公演を成功させたい一心で頑張ってきた。体に不安はあるが全力で頑張る」と話している。

 「今日まで続けられたのはファンの声援はもちろん、私が街頭で踊ることに魅力を感じているから。その原点は子どものころ函館で見た大道芸」と話す。ギリヤークさんは1930年、同市若松町に生まれた。子どものころ、近所に大道芸人が多く訪れ、それらを見て育った。21歳のとき、俳優を志して上京したが、“なまり”で夢を断念。少年時代に見た大道芸を思い出し「自由に踊りたい」と創作舞踊家への転向を決意し、57年、全日本芸術舞踊協会主催の公演で舞台デビュー。約10年後から街頭公演を始めた。

 2002年9月11日にはニューヨークで、同時多発テロの犠牲者を慰霊する公演を行ったほか、阪神・淡路大震災、JR福知山線脱線事故の犠牲者の無念を表現しようと関西公演を続ける。赤い長襦袢(じゅばん)姿で、津軽三味線のじょんがら節などに合わせる踊りは熱く激しい。「見る人の目が肥えているので全力で踊らなければ。今年も皆さんに喜んでもらえるよう、精魂込めて踊ります」と話している。

 同日は午後5時から市地域交流まちづくりセンター(末広町)で、自身の生い立ちから最近の活躍までをまとめた記録映画「平和の踊り」の上映会も行う。青空公演、上映会とも入場無料。投げ銭を受け付けする。0ァ40ィ(山崎純一)


◎久生十蘭の資料公開…来月15日まで市文学館
 函館出身の直木賞作家久生十蘭(ひさお・じゅうらん、1902―57年、本名・阿部正雄)の直筆資料が、函館市末広町22の市文学館(和田裕館長)で公開されている。海軍報道班員としてジャワなどに赴いた際に記した「従軍日記」のほか、戦線へ向かう激励で受けた日章旗などが展示されている

 久生は函館市元町で生まれ、28年に上京。29―33年に渡仏し、帰国後に小説家として活動を始めた。43年に戦線に赴き、52年に「鈴木主水」で直木賞を受賞した。直筆資料はことし2月、妻のめいで、著作権継承者である東京在往の三ツ谷洋子さんが寄贈した。和田館長は「上京から80年ぶりに直筆資料として里帰りした」と話す。

 従軍日記では、43年6月に戦闘がないジャワで、朝から飲酒やマージャンでのんびり過ごしていた様子や、同年7月のティモールでは、敵機が上空で旋回している緊迫感、故郷函館への想いがつづられている。中には帰還後に書いた小説に活用した言葉もある。旧日本海軍の公文書を書き写した「第九三四海軍航空隊戦闘詳報」や、取材メモをつづった「NOTEBOOK」は赤裸々な戦地記録として貴重。日章旗には、妻となる三ツ谷幸子、岡本太郎の父の岡本一平、「新青年」編集長の水谷準らの名前が記されている。

 公開に合わせ15日夜、久生の日記帳の活字化、刊行に携わった道教育大函館校の小林真二准教授による講演会「久生十蘭直筆資料公開に寄せて―貴重資料の見どころ解説」が行われた。小林准教授は「日記を編集、加工し小説にしたことが分かり、自身や自己の文学を語らない十蘭の私的側面を知る唯一の資料。戦いの前線では緊迫した様子が伝わり、読み物としても面白い」などと、資料の貴重性を話した。

 公開は8月15日まで。観覧は通常入館料(大人300円、小学―大学生150円)。問い合わせは同館TEL0138・22・9014。(山崎純一)


◎水産高 初の「全国高校カッターレース大会」に出場
 函館水産高校(齊藤隆校長、生徒469人)の生徒18人が、18日から4日間にわたり青森県の八戸市鮫漁港で開催される「第10回全国水産・海洋高校カッターレース大会」(全国水産高校長協会主催)に出場する。同校として初めて、道内の水産高校としては8年ぶりの全国大会参加となる。キャプテンの米本弘一君(2年)は「道代表として期待に応えられるよう頑張り、優勝を目指したい」と話している。

 函館水産高校(齊藤隆校長、生徒469人)の生徒18人が、18日から4日間にわたり青森県の八戸市鮫漁港で開催される「第10回全国水産・海洋高校カッターレース大会」(全国水産高校長協会主催)に出場する。同校として初めて、道内の水産高校としては8年ぶりの全国大会参加となる。キャプテンの米本弘一君(2年)は「道代表として期待に応えられるよう頑張り、優勝を目指したい」と話している。

 全国大会は“海の甲子園”とも呼ばれ、毎年各地の水産高校が参加するが、道内からは2回目の2000年に小樽水産高、2005年に国立小樽海上技術学校が出場して以来、部員不足などで参加が途絶えていた。

 今回、同校が参加を呼び掛けたところ、海洋技術科の2年生17人と1年生1人が名乗り出て、参加が決まった。練習は約2週間前から土・日曜日も含めて毎日放課後1時間半行っている。大会には同校含め全国16校、生徒約320人が参加する予定。

 舵取りを担当する艇長の三浦秀眞君(16)は「全力を尽くしたい」と気合い十分。指導する我妻雅夫教諭(55)は「短期間でも良い仕上がり。カッターは海の男のスピリットを培うのに良い」と話している。(新目七恵)