2008年7月22日(火)掲載

◎アウシュビッツの貴重な資料展示…ピオトル・祥子夫人ら企画
 【知内】第2次世界大戦時にナチス・ドイツ軍が占領地のポーランドにつくった大規模強制収容所「アウシュビッツ(ポーランド名、オシフィエンチム)」の当時の様子を資料で紹介する展示会が22日、知内町重内21の知内町中央公民館で始まる。多くのユダヤ人らが連行され、大量虐殺された歴史的事実とその悲惨さを伝え、後世に恒久平和を訴えるポーランド国立オシフィエンチム博物館所蔵の貴重な資料など約30点が並び、詳しく解説されている。終戦の日(8月15日)を前に、戦争と平和、人類の在り方について問題提起する企画展といえそうだ。8月9日まで。日曜休み。

 ポーランド在住の化学者ピオトル・クルピンスキさん(43)と吉田祥子夫人(木古内町出身)が企画。2人は昨年8月に同博物館を訪れ、復元された毒ガス室や不衛生にさらされた囚人服、人間の髪の毛で編まれたじゅうたんなどを見て回った。祥子さんは「自分の表情が青ざめていくのを感じた」と振り返る。

 今回、一時帰国することが決まり、2人は同博物館で目の当たりにした事実を古里の人にも伝え、平和の尊さを感じてもらおうと資料を集めた。同博物館のテレサ・ズブジェスカ館長に直談判し、全面的協力を得た。

 同博物館内での写真撮影は禁止で、同博物館側から所有する写真のデータが提供され、そのデータを祥子さんがメールに添付し、知内町に住む兄、吉田進さんに送信。2人の意向に賛同した知内町郷土資料館の高橋豊彦学芸員らが送られた写真を使ったパネルづくりに取り組んだ。

 各パネルには解説文を付けた。囚人服については「生地が薄いため冬の寒さをしのぐことは厳しかった」とし、上下水道が不完全だったため洗濯もままならない状況だったことを挙げて、「伝染病が流行し死亡率を高める要因になった」と添えている。

 収容所で最大規模の部屋「第1ガス室」では、「いや応なしにここで亡くなった数え切れないほどの人の運命を考えさせられる」と記している。

 展示作業にも当たったピオトルさんと祥子さんは「わたしたちが幸せであるのは、過去に犠牲を払った多くの人がいたからで、決してそれを忘れてはならない。『二度とこのような悲劇を起こしてはいけない』と、世界のみんなが心に平和を思い浮かべてくれればうれしい」と話す。吉田進さんは「パネルから悲惨な状況が伝わる。直感的に何か心打つものがある」と話している。

 8月11―18日に木古内町中央公民館で展示され、24、25の両日は知内高校文化祭でも展示される予定。学校や公共施設などで同様の展示の希望があれば、積極的に資料を貸し出すという。

 問い合わせは吉田進さんTEL01392・5・7205。(田中陽介)

 アウシュビッツ強制収容所 ポーランド南部にナチス・ドイツ軍が設けた。第2次世界大戦中(1940―45年)のナチス・ドイツ軍の人種主義的な抑圧政策に基づき、ヨーロッパでも最大級の強制収容所として、150万人とも400万人を超すともいわれるユダヤ人が虐殺された。1979年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「負の世界遺産」に認定。ポーランド国立オシフィエンチム博物館が、一部現存する施設や資料を公開している。日本国内では福島県内に同博物館所蔵の展示物の一部が並ぶ「アウシュヴィッツ平和博物館」がある。


◎清尚学院が来年度から男女共学に…「製菓衛生師科」新設
 学校法人清尚学院(土家康宏理事長)が運営する函館市亀田本町5の「清尚学院高校」(土家校長、生徒242人)が2009年度から男女共学校となることが、21日までに分かった。同時に、全日制高校としては道内はもちろん、関東以北でも唯一となる「製菓衛生師科」を新設し、既存の「生活デザイン科」は募集を停止する。これに伴って新校舎の増改築を進めており、9月末には完成の予定。

 学科の新設は、以前から学内外の要望が高かった製菓学習の専門性を深め、魅力ある学校づくりを図るのが狙い。現在、厚生労働省などに新設認可を申請中。継続する「調理科」を含めて男子にも門戸を開き、少子化の中で幅広い生徒を確保する。募集定員など詳しい募集要項は8月22日以降に発表する。

 同校によると、製菓実習には実務経験のあるプロのオーナーパティシエやブランジェを講師に招き、幅広い技術や理論を学べる態勢づくりに努める。

 新校舎は同校敷地内、本校舎の西側に建設しており、鉄筋コンクリート造り3階建て、延べ床面積は約2045平方メートル。既存校舎の2階と連結し、最新の設備や機器をそろえた調理・製菓実習室を完備する。11月8、9の両日には、新校舎の見学・体験入学会を行う予定。

 土家校長は「本校の歴史にとって大きな変革となる。『花より實』との校訓に基づき、さらに教育内容を充実させ、教職員と力を合わせながら頑張りたい」と話している。

 同校は1930年、和裁中心の女子校「昭和技芸学校」として市内東川町でスタート。63、64年に現在地に移転し、73年には調理師養成施設となった。2003年に現在の校名に改称した。(新目七恵)


◎国内最大「毎日書道展」近代詩文書…鈴木さん最高賞
 毎日書道会と毎日新聞社が主催する国内最大級の「第60回毎日書道展」の最高賞「会員賞」に、市立函館高校教諭の鈴木大有(だいゆう、本名・孝徳)さん(50)が選ばれた。作品は近代詩文書で、出身地で眺めていた大雪山連峰をテーマにした詩。鈴木さんは「私の原風景の書で受賞はうれしい。指導者としてこれからの責任の重さを感じる」と話している。

 鈴木さんは1957年、上川管内剣淵町で生まれた。港町にあこがれて道教育大函館校に進み、そこで書を始めた。高校教員として活躍する中で精進を重ね、創玄書道展で東京都知事賞を受賞、日展では過去4年で3回入選している。旧函館北高勤務時は、旧函館東高との統合に関する作業の忙しさの中でも作品づくりを続けてきた。

 毎日書道展は93年に会員となった。同展は今回、公募、会員、18―23歳を対象としたU23の合計で過去最高の3万2352点の応募があった。会員からは2545点、うち近代詩文書は漢字に次ぐ641点を数えた。受賞作は本道の歌人入江好之の「大雪山連峰」。太く題名を書き、細字で詩の「山巓は紺青の空に咲く非情の花か 氷雪をきらめかせて冷徹にそそりたつ 私は限りなくこの山を愛する死を思うまでも 夜明けの大雪山は孤高の中に眠っている」が書かれている。

 鈴木さんは「故郷の原風景を思いながら筆を走らせた。詩が題名に覆いかぶさるようにし、最後は文字を小さくして余韻を出した」とし、「私の身近にある言葉だからこそ字面の表現が良くなり、自分の心が作品になった」と話す。

 函館在往で、毎日書道会漢字部門審査会員の千葉軒岳さん(70)も鈴木さんの受賞を喜び、「函館から会員賞を獲得できる人を輩出したく、応援していたので、(60回の)節目の年の受賞はうれしい限り。彼はこれまでも自身の原風景の作品をしたためていたが、今回の受賞作は集大成といって良い」としている。

 鈴木さんは「(この賞は)最終的な目標だった。感無量の気分」とする一方、「これからが大切。私の使命である現代書の探求と普及、これからの書を担う高校生の育成のため、その責任がさらに重くなったと思っている」と話している。(山崎純一)


◎海で調査した漂着物並ぶ…遺愛女子中高が11年の成果展示
 函館遺愛女子中学・高校(野田義成校長)の11年間にわたる海岸ごみ調査活動の成果をまとめた「海岸漂着物展」が21日、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で開かれた。ペットボトルや医薬品など、生徒たちが市内の浜で拾ったさまざまな漂着物が並び、訪れた市民らの目を引いていた。

 1997年から同校地学部の活動や全校ボランティアの一環として、大森浜などでの漂着物調査を続けている同校が、「海の日」に合わせて自分たちの生活、地球環境について考えてもらおうと初めて企画した。

 会場には、ハングル文字などが書かれた外国のカップラーメン容器やライター、市内と近郊から流されたと見られる漁具や農薬品、食品容器などがずらりと並んだほか、それらの起源や材質の分析結果などをまとめたパネルも展示。来場者には「プラスチックごみを減らして、地球上の命の母、海を汚さないようにしよう」などと書かれたパンフレットが配られた。

 同校地学部の佐藤涼子さん(中2)は「活動していて海のごみが多くて驚いた。これから海水浴などでもしっかりごみを持ち帰るよう気をつけてほしい」と話していた。(新目七恵)


◎「迷子ベル」商標登録、特許出願中 木古内カトウ時計店
 【木古内】住民の安全を守るユニークな商品開発で知られる木古内町本町45、カトウ時計店の加藤幸矢店長(64)が手掛けたペットボトル再利用商品「迷子ベル」がこのほど、特許庁から商標登録(商標)の認可を受けた。現在は「特許」となる実用新案登録出願中で、手続きを行う専門家は「国内でも同様の技術を有する人材はほとんどいない」とし、今秋にも登録される可能性が高いとしている。加藤店長は「地域の安全を守ろうと長年培ってきた技術と活動が認められてうれしい。木古内を盛り上げるため、この商品を全国へアピールしたい」と意気込んでいる。

 ベルは音楽機器を主な材料に、キャップを閉める度に大音量のメロディーがアトランダムに流れる仕組み。20年ほど前から加藤店長が試行錯誤しながら開発を進めてきた。最新作は280ミリリットルのペットボトル型。誤作動防止や医薬品、食料を備える空間を設けるなど、年々機能性を増している。

 商標は5月30日付で認可となり、特許庁の原簿に登録された。登録日から10年間(更新可能)、同店の知的財産権として活用される。

 実用新案権の認可を受けると、商品の製造・販売のアイデアへの独占権が与えられ、営業や広報活動に有利となる。

 加藤店長は「顧客や家族などの協力が大きな支え」とし、「『木古内頑張ろうよ!』と、まちの活性化をいつも考えている。今回の商標登録が地域を盛り上げる追い風になることを期待したい」と話している。(田中陽介)


◎合唱や絵本上映会…函館メサイア
 「函館メサイア2008」(函館メサイア教育コンサート実行委主催)が21日、函館市芸術ホール(五稜郭町37)で開かれた。市民ら約250人が集まり、ヘンデルが作曲した「メサイア」の合唱をはじめ、絵本のスクリーン上映会など多彩な催しを楽しんだ。

 実行委(委員長・松原仁公立はこだて未来大教授)は地域活性化を目的に「メサイア」の演奏会や各種音楽イベントなどを行っており、本年度は函館が混声合唱の発祥地だったという史実を基にした絵本「実業寺の小坊主 とっ珍さんはおおいそがし」の製本化にも取り組んだ。今回は函館開港150周年プレイベントとして企画した。

 絵本の上映会では、スクリーンに映し出された場面に合わせ、日本オルガニスト協会会員でFMいるかの番組制作スタッフ石崎理さんら3人がそれぞれ日本語、ロシア語、英語で順番に朗読し、「函館は日本で初めて混声合唱が流れた坂の町でした」などと紹介した。続いて行われた第3部では、市内の合唱グループ3団体のメンバーら約50人が会場に並び、バッハの「ロ短調ミサ曲第1部キリエ・グロリアより」と「メサイア(抜粋)」を力強く歌い上げ、観客からは大きな拍手が送られていた。

 これに先立ち、函館開発建設部の伊藤晃次長が「我が国最初の貿易港としての函館港」と題して講演した。(新目七恵)