2008年7月31日(木)掲載

◎江差町長ら会談、公選法改正問題、民主・小沢代表「反対」の考え
 【札幌】道の支庁制度改革に反対する濱谷一治江差町長ら3町長が30日、札幌のホテルで民主党の小沢一郎代表と会談した。濱谷町長らは支庁再編条例が、支庁廃止地域や道町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)など地方4団体の反対を押し切り、道議会に提案、可決された経緯を説明。条例施行の前提となる公職選挙法改正の阻止に向け理解を求めた。会談後に記者会見した小沢代表は「町長の意見は正論と思う」とし、秋の臨時国会に法案が提出された場合は改正に反対する考えを示唆した。(松浦 純)

 会見で小沢代表は支庁再編について、「道内の首長は筋道の通った改革を求めている。支庁改革や市町村合併は、地方分権の理念やビジョンが無ければだめだ」と批判。公選法改正は党道連の鉢呂吉雄代表と協議した上で、党の正式な方針を決める考えを示した。

 参院で法案が否決された結果、道議会が可決した条例に基づく支庁再編が、行き詰まる事態については「条例は法案が通らなければ施行できない要件がある。条例は法律の範囲内で定めるものであり(法案が否決されても)矛盾はしない」とした。

 同日の会談には、濱谷町長、谷川弘一郎日高管内浦河町長、道町村会副会長の泉亭俊彦石狩管内当別町長の3人が出席。小沢代表、鉢呂道連代表と支庁再編や開発局廃止問題について意見交換した。

 谷川浦河町長は「道の行革には反対しない。道町村会は14支庁全体で痛みを分かち合うべきと訴えてきた」と訴え、公選法改正に向けた対応についても同党の理解を求めた。

 道は臨時国会への法案提出に向けて総務省と協議している。しかし、同党など野党勢力が過半数を占める参院で、法案が否決に追い込まれれば、支庁再編条例は施行期日を定められない事態にもなりかねない。


◎企画【地産地消でいただきまーす】(1)がごめ
 シャキシャキとした歯触りと同時に、コンブの風味が口いっぱいに広がる。函館市本町22の「sleek」(岸部悟司社長)の「がごめ飯」は、南茅部で採れたガゴメを使った新しいランチメニュー。岸部社長(44)は「老若男女を問わず好評です。函館発のオリジナル商品として全国発信したい」と期待を込める。

 岸部社長がガゴメに着目したのは昨年春。コンブ締めのイカを開発するなど地元特産品にこだわった創作料理に試行錯誤する中、食品業界の仲間から食材として教えてもらったのがきっかけだった。

 がごめ飯は、薄く刻んだ乾燥ガゴメを炊いたご飯と混ぜ合わせ、コンブ締めのイカ、鹿部産タラコ、カニなどを盛り付けた海鮮丼。途中でお吸い物をかけると、雑炊風にも味わえる。「ガゴメの食感を残し、おいしく味わえるよう工夫した。産地の函館市民にもっと食べる機会を提供したい」と岸部社長は話す。

 ガゴメは函館近海に分布するトロロコンブの仲間で、でこぼこ模様と粘り気の強さが特徴。健康に良いとされる物質などが含まれ、商品化が相次いでいる。近年は多くが養殖で水揚げは通常のコンブより早い6月がピークとなる。

 南茅部の尾札部で養殖ガゴメに取り組む下池崇仁さん(43)によると、作業は午前4時半ごろから始め、約1?沖で水揚げし、乾燥させたガゴメを規格の形にそろえて出荷する。最盛期は家族総出で作業に当たる。「真面目にコツコツ働いている人のためにも、さらに地産地消を進めてほしい」と話している。(新目七恵)

 sleek ランチタイム(月―金)正午―午後2時半、ディナータイム(月―土)午後6時―午前零時。がごめ飯は850円。日曜定休。TEL0138・53・0039。

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 食品をめぐる偽装事件が後を絶たない中、あらためて食の安全が叫ばれている。さまざまな海産物と種類豊富な農作物に恵まれた道南で「地産地消」に取り組む店の料理と、食材を提供する生産者の思いを紹介する。


◎女性刺殺、弁護側「責任能力なし」無罪主張
 昨年11月、函館市内の会社員無量林智子(むりょうばやし・さとこ)さん(当時23)が自宅前で大学時代の同級生に刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた兵庫県姫路市飾磨区、無職中原哲也被告(23)=当時函館市在住=の初公判が30日、函館地裁(柴山智裁判長)で開かれた。中原被告は罪状認否で「間違いありません」と起訴事実を認めたが、弁護側は「被告は心神喪失状態にあり、責任能力はなかった」などとして無罪を主張した。

 検察側は冒頭陳述で、無量林さんに抱いていた恋愛感情を断ち切れずにいた同被告が、事件直前に無量林さんから「もう来ないでほしい」と拒絶されたことで、一方的な恨みを募らせて犯行に及んだと指摘した。

 さらに、同被告の統合失調症の症状は軽いとし、「犯行に影響を及ぼす妄想や幻聴はなかった。完全な責任能力がある」とした。

 一方、弁護側は同被告が大学在学中に同級生からいじめられていると思い込み、小中学校時代に受けたいじめの記憶が重なり、強い被害妄想を抱いたと主張。「いじめの苦しみから逃れたいという強迫観念があった」とした。犯行当時、同被告に無量林さんに対する恋愛感情はなく、責任能力があると認めた精神鑑定の前提が間違っているとした。

 起訴状などによると、中原被告は昨年11月26日午前7時35分ごろ、函館市北美原3の無量林さん方の駐車場付近で、出勤しようとした無量林さんの首や胸などを用意していた折りたたみナイフで数十回突き刺し、失血死させた。さらに、その場にいた無量林さんの母親(58)の顔などもナイフで切り付けるなどし、約4カ月の重傷を負わせた。

 次回公判は9月9日で、被告人質問や証人尋問が行われる。


◎無量林さん両親「あらためて憤り」
 「一瞬で命を絶たれてしまった娘の無念を思うと、言い表せない深い悲しみと怒り、憎しみでいっぱいです」―。

 無量林さんの両親は29日、代理人の弁護士を通じて、初公判を前に心境を語った。最愛の娘を突然失った苦しみをつづった上で、中原被告に対して「自分の犯した罪と責任の重さを自覚して(裁判に)臨んでほしい」とした。

 30日の初公判では、晴れ着姿で笑顔をみせる智子さんの遺影を抱えた両親が、傍聴席から裁判を見守った。

 入廷した中原被告は髪を短く刈り上げ、白いTシャツと灰色のジャージー姿。罪状認否で起訴事実を認めた後、「すみませんでした」と小声で謝罪した。公判中は終始、検察官席をみつめ、眼鏡を触る以外はほとんど顔を動かさなかったが、時折、手や足を小刻みに揺するなど落ち着かない様子もみせていた。

 また、一般傍聴席では24席分の傍聴券を求め、約60人が並んだ。無量林さんの友人とみられる女性らもいて、公判中、犯行の状況などに話が及ぶと、ハンカチで涙をぬぐう姿もみられた。中原被告が退廷する時も厳しい視線を浴びせていた。

 無量林さんの両親は同日夜、「長期にわたる周到な殺人計画を知り、(中原被告の)卑劣な行為にあらためて憤りを感じました。殺人という重罪を犯した者が無罪を主張することには納得がいきません」とコメントした。


◎函館えさん小児童が全道陸上大会で優勝と準優勝
 函館えさん小学校(後藤愼一校長、児童157人)の児童2人が、このほど十勝管内芽室町で開かれた第26回道小学生陸上競技大会(財団法人道陸上競技協会など主催)の砲丸投げで優勝、80メートルハードルで準優勝に輝いた。2人は「うれしい」「これからも頑張りたい」と喜んでいる。全道規模の陸上競技大会で同校の児童が優勝するのは初めて。

 同大会は4年生以上が対象で、地区別の予選会や各種記録会で標準記録を越えた児童が9種目で競った。

 同校からはえさん陸上同好会に所属する6人が出場。このうち、砲丸投げに挑戦した6年生の佐藤めぐみさん(11)が決勝で8メートル20センチを記録し、6年女子の部を制した。80メートルハードルに出場した伊藤麗奈さん(12)は13秒62のタイムで6年女子の部2位となった。2人とも自己ベストを更新した。

 佐藤さんは「練習では7?を越えるのがやっとだったけれど、8?台を出せてうれしかった」とし、伊藤さんは「全国に出場した選手に追いつくため、もっと練習を頑張りたい」と話す。

 6年生にとっては最後の全道大会で、日々練習に打ち込む姿を見守ってきた同好会顧問の小川尚史教諭(39)は「2人とも上位入賞を狙っていたが、ここまで記録が伸びるとは思わなかった。気候も良く、自分の力を出せたのは」と喜んでいる。(新目七恵)