2008年7月9日(水)掲載

◎南茅部地区でガゴメ短期栽培に成功…北大などの研究グループ
 北大大学院水産科学研究院(原彰彦研究院長)を中心とする研究グループが、ガゴメ(トロロコンブの仲間)を種苗(しゅびょう)から育てるには海水温が低いとされてきた南茅部地区で、短期栽培の実証に成功した。ガゴメは健康に良いとされる粘性多糖類フコイダンなどへの注目で商品化が相次いでいるが、需要過多の状況にある。今回の実証で、栽培地域が拡大し、栽培期間を縮めることで増産だけでなく、心配されてきた資源回復も見込まれ、函館の特産品が新たな一歩を踏み出す契機になりそうだ。

 同研究院の安井肇准教授によると、汐首岬を境に恵山から南茅部沖は、冬場から春先にかけての海水温が3―5度。ガゴメの短期栽培に実績のある函館市住吉から根崎、小安町にかけての海域に比べて4度前後低いという。

 こうした中、研究グループは、種苗を植え付けた2年目以降になると水温に左右されないものの、1年目の成長に水温が大きな影響を与えるというガゴメ特有のライフサイクルを解明した。

 南茅部地区の臼尻町沖で行われてきた今回の栽培では、従来の細胞が1―2層になった初期の種苗ではなく、ある程度成長し、コンブの根にあたる「付着器」が形成される段階のものを植え付けた。その結果、種苗は低水温に大きな影響を受けることもなく、生育期間とされる6カ月を経ても他の海域と遜色(そんしょく)のない状況で、その後も順調な成長を続けているという。

 安井准教授は「ガゴメは他のコンブに比べて気難しい特性があるが、環境条件に対応した栽培をすることで、短期間で大型コンブの形成を実践できた」とし、「今後は地域の漁業者の考えを聞きながら、大量生産できる仕組みづくりだけでなく、資源の保全にも取り組んでいきたい」と話している。(浜田孝輔)


◎健診報酬や文化会館管理委託費など477万円余が未払い 江差教委
 【江差】江差町教委で複数の職員が会計事務を怠ったことが原因で、2007年度に支払うべきだった健診報酬や町文化会館の設備管理委託費など477万円余が未払いとなっていることが8日、分かった。町教委が実態を把握した時点では既に5月末の出納閉鎖期限を過ぎ、07年度予算での支払い処理が困難となっている。町教委は来週中にも開かれる予定の臨時町議会に補正予算案を提案、本年度予算で未払い分の解消を図る方針だが、公金管理の在り方が問われるのは必至。飴谷副町長は「再発防止を徹底して信頼を回復したい」としている。

 生涯学習課関連分では、07年度に町立の小中学校や幼稚園で実施した眼科、歯科などの健康診断を委託した病院や医師への報酬など171万円(9件)、町教委や小中学校の備品購入費111万円(9件)、教育団体への補助金など21万円(6件)の計303万円が未払いになっている。町教委所管の町文化会館でも、07年度分の空調・防火設備の管理委託費として業者に支払う174万円余を支払っていない。

 町文化会館の委託業者から「07年度分が支払われていない」と指摘を受け、調査を進めた結果、同課所管分でも多額の未払いが発覚した。町教委によると、職員による横領などの事実は無いという。未払い分は07年度予算から本年度予算に繰り越され、財政上の実損は生じない。

 未払い分の一部は、正規の会計処理を行わずに職員が自費で弁済している例もあるという。町教委は多額の未払いがある病院や企業などに謝罪。補正予算案の可決後は、早急に未払い分を精算する方針を伝えた。

 新木秀幸教育長は「いずれも伝票の亡失や職員の事務怠慢が原因。職場全体のチェック体制にも不備があった。関係者に心からおわびしたい」としている。町教委は、関係職員の処分を町職員賞罰審査委員会に諮問し、答申を待って処分を決める。

 町では06―07年度にかけて、児童扶養手当支給や住宅使用料の徴収業務をめぐり、過払いや徴収漏れなどの不祥事が続発。担当職員延べ14人が減給や戒告処分、濱谷一治町長、飴谷逸男副町長も減給処分を受けている。(松浦 純)


◎医療ミスで右腕マヒ…函館市病院局
 函館市病院局は8日、市立函館病院(港町1)が渡島管内在住の30代の男性に行った手術で、右肩から右腕全体がまひする後遺症が残る医療ミスがあったと発表した。病院局は男性に謝罪し、3日に同院医療事故賠償額としては過去最高の8292万9651円を支払うことで示談が成立した。

 同日、井上芳郎病院局長らが会見し明らかにした。

 市病院局によると、男性は昨年4月、全身麻酔と鎖骨上部からの局所麻酔を施した上で、頻繁に脱臼していた右肩の関節形成手術を受けた。術後にまひが残ったためリハビリ治療したが症状は改善せず、同院が原因を調べたところ、米国で同様の事例があることが判明。麻酔の薬液が何らかの理由でくも膜下腔(くう)に入り神経損傷を起こしたと推察された。その後、同院が客観的な評価を得ようと、保険会社を通じて求めたセカンドオピニオン(第2診断)もほぼ同様の見解を示した。

 賠償額は保険会社の算定に基づき男性と話し合って決定。9月に開会予定の市議会定例会に関連議案を提案し、議決後に支払う。賠償額は保険で賄う。男性は右利きで、勤務する会社には現在も務めている。

 同院は昨年10月の「日本臨床麻酔学会第27回大会」に同事例を報告し、全国の麻酔医に注意を促した。吉川修身同院長は「男性への麻酔方法は一般的なもので、このような事故になったことは非常に珍しい」とした。(小泉まや)


◎桧山北高が道南唯一の「環境教育」指定校に…道教委
 道教委は8日までに、せたな町の桧山北高校(志村秀裕校長、生徒312人)を含む道内7校を「環境教育プロジェクト校」に指定した。北海道洞爺湖サミットを契機に新設した助成事業で、指定期間は本年度から3年間。渡島、桧山両管内からは同校のみ選ばれた。

 道内の環境教育の推進を図る目的で道立高校から募集し、優れた実践研究に取り組む学校を選定した。桧山北のほかは、札幌南(定時制)や礼文などが選ばれた。

 桧山北では総合学科のさまざまな関連科目を活用し、生徒がジャガイモの無農薬栽培や環境問題をテーマにしたディベート(討議)などに取り組んできた。指定事業となった実践テーマは「『持続可能な循環型社会』の構築を目指した環境教育の推進」で、今後は外部講師を招いた講演会やポスター作成、配布による啓発キャンペーンなどを検討している。

 環境庁学校教育局では「桧山管内の各校に環境教育を広める拠点校として期待したい」としている。同校の高本和明教頭(48)は「これまで積極的に行ってきた環境教育活動をさらに充実、発展させたい」と話している。(新目七恵)


◎支庁再編 徹底抗戦…江差町
 【江差】濱谷一治江差町長は8日の町議会議員協議会で、道の支庁再編条例可決に抗議する「町民総決起集会」を7月下旬にも町内で開く方針を明らかにした。条例施行の阻止も視野に入れ、町民の結集を求めていく考えだ。

 総決起集会には、道町村会長の寺島光一郎乙部町長ら桧山管内の町長、町議会議長に参加を要請する。道議会で条例案に反対した自民党道議3人、同じ支庁廃止地域の根室・留萌両市と日高管内浦河町の首長らにも出席を呼び掛けていく方針という。

 濱谷町長は「今後の国会審議を見守るだけではなく、自ら行動し訴えていく必要がある。住民集会を国政の場に向かうスタートラインとしたい」と述べ、支庁再編に徹底抗戦していく構えを見せた。町議会も濱谷町長の方針に同調した。11日に町内で開かれる、桧山支庁存続を求める住民団体の総会でも同様の運動方針を決議する見通しだ。

 道は支庁再編を進める一方、現行14支庁と35市区からなる48の道議選挙区は現状維持とする方針。選挙区を支庁単位と定めている公選法の改正が必要で、法改正後でなければ14支庁を9総合振興局に再編する条例も施行できない。

 法案を審議する参議院では「ねじれ現象」で、民主党などの野党が過半数を確保。既に民主党北海道の鉢呂吉雄代表をはじめ、同党では複数の国会議員が支庁再編に反対しているほか、公選法改正についても「地域の同意がない。認めるべきではない」と慎重姿勢を示している。(松浦 純)


◎15人が再就職先報告 団体など高い役職多く…函館市が初公表
 函館市は、退職職員の再就職状況を初公表した。昨年4月1日以降に退職した課長補佐(管理職)以上で、要綱に従い6月末までに市長へ再就職先を報告したのは15人。各種団体に12人、民間会社に2人、大学に1人が就職し、ほとんどが事務局長や支店長など高い役職に就いている。

 15人の内訳は特別職2人、部長級3人、次長級2人、課長級8人。離職年月日は14人がことし3月31日で、1人が昨年6月30日。再就職年月日は12人がことし4月、3人が同6月。

 特別職2人は清掃業界団体の専務理事・事務局長と民間企業の函館支店長に就いた。部長級3人は函館商工会議所常務理事、財団法人市水道サービス協会事務局長、市夜間急病センター事務部長として再就職。

 次長・課長級では造園や建具、管工事、製氷関係などの業界団体、市民生児童委員連合会や函館東商工会などの専務理事や事務局長に就いている。私立短大の准教授、民間企業の非常勤事務員、市水道サービス協会の検針員などの職を得た元職員もいる。

 市は退職職員の再就職について、公平性や透明性を確保するため公表する要綱を策定。課長補佐級以上で離職後2年以内に再就職した場合、自主申告するよう定めた。市人事課によると道や札幌市、旭川市など多くの自治体で要綱や指針を定めている。

 再就職状況については市人事課のホームページで公表している。(高柳 謙)


◎道南15漁協 15日に一斉休漁
 渡島管内の14の漁業協同組合は8日、全国漁業協同組合連合会などが燃油高の窮状を政府、消費者に訴えるために15日に予定している一斉休漁へ参加することを決めた。ひやま漁協(乙部町元町520)も休漁の方針を打ち出しており、道南15漁協が一致団結し、漁業者の苦しい状況をアピールする。

 一斉休漁は全国各地のさまざまな団体がすでに行っており、道南地域でも6月18、19日に函館渡島イカ釣り漁業協議会が出漁を見合わせた。全国規模の動きは今回が初めてで、北海道漁連函館支店(函館市豊川町11)によると、15日午前11日から東京都内で行われる抗議集会に、道南地域の漁業関係者ら約20人が出席。同時間帯に函館市内でも漁協幹部ら約150人の集会を予定している。

 同支店は「政府が効果的な対策を未だに打ち出さない現状では、ぎりぎりまで追い詰められた漁業者の状況を訴える苦肉の策であることを理解してほしい」としている。(小川俊之)