2008年8月12日(火)掲載

◎バス・タクシーも原油高で悲鳴 市内で合同デモ
 原油高に伴う燃料価格の高騰を受け、道南のバス、タクシー事業者などでつくる函館地区バス協会(寺坂伊佐夫会長)と、函館地区ハイヤー協会(鍵谷良一会長)は11日、JR函館駅前などで国に緊急対策を求めるデモ行進を行った。こうした業界団体の動きは道内で初めて。異例の要請行動は運賃の値上げが容易でない公共交通の担い手の窮状を訴える狙いがある。(森健太郎)

 この日は渡島・桧山管内の関係者100人余りと、バス、タクシー各5台ずつが参加。函館市若松町の若松小路で行われた出発式で、寺坂会長は「燃料費の高騰で企業努力も我慢の限界。強い決意でまずは行動を起こそう」と訴えた。

 一行ははちまき姿で「軽油価格を下げろ!」「このままでは市民の足は守れません」―などと書かれたプラカードを手に、同市大森町の大森稲荷(いなり)神社前まで約1?を行進。参加者は道中、「運輸事業者の救済を」「石油租税の見直しを」などとシュプレヒコールを繰り返した。

 両協会によると、バス燃料となる軽油の仕入れ価格は2004年3月に1リットル当たり約65円だったが、今年6月には約129円と倍増し、現在も過去最高値を更新中。タクシーの主燃料のLPガスも03年には50円台だったものの、現在は100円を超えるまで上昇する危機的状況だ。

 デモ行進後には、道運輸局函館運輸支局で緊急集会も開催。寺坂、鍵谷両会長名で「このままでは地域住民の足としての公共交通を守ることができない」(同バス協)、「燃料価格の高騰は経営努力の域を超えた死活問題」(同ハイヤー協)などとする要望書を同支局の斉藤芳道支局長に手渡し、石油諸税の減免措置や補助金制度の新設などの支援策を求めた。


◎企画【あの日を伝えたい(戦争体験者を訪ねて)】(4)
 「昼夜を問わず爆撃の毎日。心臓はしょっちゅうバクバクしていた」。函館市松陰町の石川慎三さん(88)の背中には、北千島のパラムシル(幌筵)島で米軍から受けた艦砲射撃の傷跡が今も残っている。

 太平洋戦争では道南を含め全国の多くの若者が出兵した。国内各地や中国、シベリア、樺太などの北方、ニューギニアなどの南方に派遣された者もいる。石川さんも戦地を経験した一人だ。

 函館で生まれ、1938年に道庁立函館中学校(現函館中部高)を卒業後、津軽要塞司令部に軍属として勤務し、40年には旭川北部2部隊に入隊した。そして43年3月、千島守備隊独立歩兵第288大隊に配属された。

 アリューシャン列島アッツ島に米軍が上陸した44年以降、パラムシル島では爆撃が日に日に激しさを増した。石川さんの目の前でも、部下2人が艦砲射撃を受けた。片足が残り、壁に肉片が飛び散った光景は忘れられない。自身も米軍艦を監視中に爆撃で吹き飛ばされた。意識が戻ると体は血に染まっていた。

 「戦時中はとにかく必死だった。頭の中は真っ白で、平常の神経ではいられない」。戦地での状況を振り返る度に、極限状態の緊張感が体を締め付ける。

 今も心残りがある。自分の腕の中で息を引き取った空知管内栗山町出身の部下のことだ。「お袋に、立派に死んだと伝えてほしい」。その願いをかなえようとしたが、戦後の混乱の中、連絡が取れずに果たせなかった。上司として、敵への攻撃命令も多く下した。「当時は任務だと思って夢中だった。振り返ると結局、同じ人間を殺していたことになる。本当に無意味なことだった」

 石川さんは戦争終結後の数日間、千島列島のシュムシュ島でソ連軍との激しい戦いも経験した。約4年半のシベリア抑留を経て49年に帰国。函館ドック(当時)で働き、大好きな絵画にも本腰を入れて取り組んだ。退職後は自宅で絵画教室を開いた。多くの生徒を教えたが、体力の衰えを理由に2005年秋に辞めた。

 最近、戦場をテーマにした大作に挑戦し始めた。「戦争体験者の生き残りが減る中、自分の得意分野で反戦平和を訴えたい」。どうしたら戦場の雰囲気が表現できるか―。自分の記憶を手繰り寄せ、丁寧に描き進めてきた。「まずは象徴的に悲惨な戦争の雰囲気を表現したい。次からは兵隊、戦車と具象画に取り組む予定で、いつか個展を開きたい」という。

 死んだ仲間への鎮魂、反戦の信念、平和への祈り…。さまざまな思いを胸に、縦1メートル、横1メートル30センチのキャンバスに向かって筆を走らせている。(新目七恵)


◎青函で「赤い糸」事業、観光ルートや魅力創出
 函館市と青森市は青函圏域の新たな魅力づくりに向け、青森ゆかりの作家、太宰治の作品にヒントを得た「赤い糸プロジェクト」を実施する。2009年が太宰生誕100年、青函ツインシティ提携20周年、函館開港150周年の節目となることから、両市で本年度中に具体案をまとめ、来年度からの情報発信や青函回遊の観光スポットづくりなどを進める。 (高柳 謙)

 両市の交流拡大、観光振興に向け、函館市の西尾正範市長と青森市の佐々木誠造市長がこのほど合意した。

 太宰の「赤い糸」は、小説「思ひ出」(1933年)の中に出てくる。弟と一緒に青森港の桟橋に出かけた太宰が、男女を結ぶ「赤い糸」について弟と語り合う。「函館と青森も運命の『赤い糸』で結ばれているのではないか」(函館市地域振興課)と、テーマが生まれたという。

 「赤い糸」の物語をイメージした新たな観光アイテムの創出を、来年度から実施できるよう目指す。同課によると、一例として西尾市長はモニュメント(記念の碑や像)、佐々木市長は像の設置を提案したという。

 併せて2009年度に実施する「太宰生誕100年」や「ツインシティ提携20周年」「函館開港150周年」などの各種記念事業と連携しながら、全国に青函の「赤い糸」物語を発信する。港町の物語性を高める環境整備を進めながら、全国に青函地域をPRしていく考え。

 同課は「2010年度に東北新幹線新青森が開業し、その5年後に北海道新幹線新函館開業を迎える。観光客へ新たな魅力をアピールできるよう、本年度内に『赤い糸プロジェクト』の方向性をまとめ、来年度以降の継続実施を進めていきたい」と話している。


◎姥神祭で照明用バッテリーが破裂 5人けが
 【江差】11日午後5時半ごろ、江差町茂尻町278の町道上で、姥神大神宮前渡御祭に参加していた山車「源氏山(げんじやま)」で、交換作業中のバッテリーが2度にわたり破裂し、5人が負傷する事故があった。

 江差署によると、山車行列の巡行に参加していた町内の上野町が管理する「源氏山」は夕食の休憩中、夜間照明に使うバッテリーを積載する作業を行っていたところ、バッテリー容器が「ドン!」という大音響とともに破裂。破片や希硫酸を含むバッテリー液が飛び散り3人が負傷。さらに同6時40分ごろには、再び接続しようとしたバッテリーが破裂して2人が負傷した。

 1度目の破裂で負傷したのは、帰省中で巡行に参加していた東京都中野区弥生町、建設業増川潮さん(38)、江差町上野町、無職疋田基樹さん(21)、同町水堀町、会社員長内和哉さん(19)の3人。2度目の破裂では同町豊川町、会社員菱田耕三さん(56)、同町柏町、自営業木村勍さん(61)の2人が負傷。5人のうち増川さんは目に破片やバッテリー液を浴びて、左目や顔面に負傷。函館市内の病院に搬送された。生命に別条は無いという。残る4人は顔面や上半身に破片やバッテリー液を浴びて軽傷。

 同祭では、13基の山車が10、11の両日にわたり町内各地を巡行。夜間にはそれぞれ10基前後の大型車両や船舶に使用するバッテリーを照明用に搭載する。「源氏山」は事故発生後に巡行を取りやめた。同署は業務上過失致傷などの疑いもあるとみて、12日以降、道警科学捜査研究所などの応援を得て、事故原因の解明を行う。


◎渡島西部4町、キャンプで引率職員飲酒問題で4教育長を減給処分
 松前、福島、知内、木古内の渡島西部4町教委が主催し、松前町内で7月30、31の両日開催した「四町交流ふれあいキャンプ」で小学生を引率した職員の一部が飲酒し、危機管理体制が問われた件で、各町は11日までに関係職員らの処分を決めた。今回のキャンプの当番だった松前町教委では、依田養助教育長が8、9月減給10%(8月分は11日から日割り計算)となった。

 同キャンプは4町が持ち回りで当番を務めている。松前町教委の職員は訓告2人、厳重注意が4人で、キャンプ中に無断で外出し、交通事故で首の骨を折る重傷を負った1人については、現在入院中のため容態が回復次第処分を決める。

 この日、福島町では町議会が開かれ、冒頭で金谷裕教育長が「保護者や子どもらに不安や心配をかけたことを申し訳なく思う。町民に喜ばれる生涯教育の実現を目指し、信頼を取り戻せるように頑張りたい」と謝罪し、関係者の処分を報告した。

 松前町以外の3町教育長はいずれも減給10%1カ月。関係職員では木古内町が4人に厳重注意、福島町は訓告4人、厳重注意1人、知内町は訓告1人、厳重注意3人となった。

 この問題では、既に4町の教育長が集まり、各種行事での危機管理体制の強化と情報共有を確認した。広域交流を図る同キャンプについては、地域住民から開催を望む声が強く、次年度以降も続投されることになった。(田中陽介)


◎歴風会が記念誌発刊
 函館の歴史的風土を守る会(歴風会、落合治彦会長)は11日、創立30周年記念誌「函館の歴史と風土」を自費出版した。合併した地域を含む函館の歴史、貴重性や景観への寄与を評価する同会の顕彰制度「歴風文化賞」に選ばれた建造物などを掲載。同会の佐々木馨編集委員長は「市民だけでなく、観光客にも喜んでもらえる内容。歴史的建造物を残していく意味を再確認する機会になれば」と期待している。(宮木佳奈美)

 同会は1978年に発足。84年から歴風文化賞を設立するなど、歴史的町並みの保存に向けた活動を展開してきた。書籍の刊行は10周年記念誌「函館のまちなみ」以来となる。

 市全体の歴史から函館らしさを伝えようと、古代・中世から戦後までの歴史、宗教文化のほか、南茅部地区の縄文遺跡群や国宝の中空土偶にも触れた。一般住民4人に函館の魅力を語ってもらったほか、運営委員の声も取り上げ、計40人が執筆している。

 過去の歴風文化賞の中から、ケーブルテレビのNCVの番組で放映された24件の保存・再生保存建築物を写真と文章で紹介し、巻頭の地図でその位置を表示。巻末では西部地区の坂を写真付きで説明している。

 2000部発行。B5判全162ページ。12日から市内の書店、五稜郭タワーなどの観光施設で販売。1800円。15日までは1620円の特価で提供。市内の全中学、高校、大学、近郊の一部の学校に1冊ずつ配布する予定。

 問い合わせは佐々木さんTEL0138・54・3845。


◎函病、07年度末の未収金1億減
 市立函館病院(函館市港町1、吉川修身院長)の未収金の累積額が2007年度末で約6億300万円となり、06年度末の約7億2900万円よりも約1億円以上減ったことが11日までに分かった。同病院は07度から実施した徴収体制強化の効果の表れと見ている。

 同病院の未収金累積額は包括外部監査や議会でも問題視され、07年度から対策を強化した。未収金の多くは失業などで経済力のない人が該当しているが、中には医療費の支払いを踏み倒す人もおり、悪質な患者には法的措置も含めて徴収に当たった。

 また、夜間救急にも支払い窓口を置き、治療費を即日徴収する体制に移行。所持金が無く支払いができなかった患者には誓約書を提出してもらい、入院予定患者には事前に医療費の想定額や支払い方法を説明するなどの対応をした。

 対策の強化によって累積額を圧縮したが、6億以上の累積額は病院経営を圧迫する要因の一つとなっている。同病院医事課は「累積額の圧縮に向けて対策を続けていくが、払っていない人に対する相談、交渉もしていきたい。医療費が高額となり、支払いが難しい方はぜひ相談をしてほしい」としている。(鈴木 潤)