2008年8月13日(水)掲載

◎フェリーターミナル「恋人の聖地」記念モニュメント除幕式
 鐘を鳴らして二人の愛を誓いませんか―。今春、道内5カ所目の「恋人の聖地」に認定された東日本フェリー函館ターミナル(函館市港町3)で12日、「聖地」認定記念のモニュメントの除幕式が開かれた。「聖地」選定委員のブライダルデザイナー桂由美さんも特別ゲストとして招かれ、ロマンチックな雰囲気を醸し出す新スポットの誕生を祝った。

 「恋人の聖地」は静岡市のNPO法人「地域活性化支援センター」がプロポーズにふさわしい観光施設などを選定するもので、7月末現在、全国で64カ所が選ばれている。函館港の眺望のほか、青函を「結ぶ」という縁起の良さが評価された同ターミナルと、同社の高速船「ナッチャンRera(レラ)」は4月に道南で初めて認定を受けた。

 モニュメントは高速船と同じアルミ合金製で、高さと幅が約3メートル、奥行き約2・2メートルのハート型のデザイン。中央部に鐘を設置し、真ちゅう製の認定プレート(縦28センチ、横40センチ)も一緒に取り付けられた。式典では、桂さんや東日本フェリーの古閑信二社長、同NPO法人の鈴木由紀子理事らが白幕を引き、集まった市民や関係者にお披露目された。

 同社の古閑社長は「多くの恋人が愛を語らい、ここからいくつものカップルが誕生してほしい」とあいさつ。桂さんは「これを契機に、津軽海峡が冬景色から明るい希望が持てるイメージに変わり、日本のモデルケースとなるような聖地に育ててほしい」と祝辞を述べた。式典後には、桂さんらのトークショーも開かれ、今後、来訪者への恋人証明書の発行や船上結婚式の開催など、「聖地」を生かした新たな構想も明らかにされた。(森健太郎)


◎企画【あの日を伝えたい(戦争体験者を訪ねて)】(5)
 「食べるものがなくていつも空腹。雑草なんかもおひたしにして食べていたのよ」。函館市柏木町のピアノ講師、布施谷信子さん(73)は6月、教室の生徒を集め、戦争体験を語った。ことしで3年目になる。

 終戦を迎えたのは小学5年生の時。普段は人に語るような時間を持てないが、8月が近づくと思い出す。市内船見町で生まれ、父親の仕事で道内を移動し、再び函館に戻った小学2年生から現在まで柏木町に暮らしている。

 函館空襲があった1945年7月14日は、いつもより早く学校から帰宅し、家族全員がそろっていた。空襲警報が鳴り響き、自宅庭の防空壕(ごう)に一家4人で身を隠し、けたたましい爆音におびえた。飼っていた猫も連れて行こうとしたが、震えて抱えられなかった。

 心細い声で鳴いていた猫はそのまま姿を消し、1週間後にやせ細って帰ってきた。水を与え、何か食べさせる物がないか母親にたずねると、「人間だって食べるものがないのに」と返された。人間の言葉が分かったのか、猫はそのまま家を出たきり。「当時は食糧難で親は自分の食べる分も子どもに分け与えていた。動物もかわいそうだったが、現在では想像もつかない大変な時代」と振り返る。

 布施谷さんが戦争体験を語るようになったのは、教え子が通う函館港小学校のPTAや児童が千羽鶴作りに取り組んでいることを知ったのがきっかけ。折り鶴は中学生の「平和大使」が長崎や広島で開かれる平和祈念式典にささげるもので毎年、市が募っている。

 同校の千羽鶴作りは、5年生の二男が布施谷さんのピアノ教室に通う同校PTAの川合優子副会長が提案し、大塚綾さん、松田智美さん、大高友子さんの4人を中心に3年前から学年単独で取り組んできた。3年間で制作した折り鶴は8万8000羽。戦争に関する講演会や読み聞かせなども企画し、ことしは新たに1、2年生も参加するなど活動が広がった。

 「どうすれば戦争がなくなる」「けんかをしないこと」「欲張りにならないこと」―。そんな会話が生まれ、子どもたちが戦争や平和について考える機会になっている。「小さな作業の積み重ねが協調性や優しい気持ちを養う。言葉で上手く伝えられないが、子どもなりに『平和』について考えているのが分かる」と川合さんらは口をそろえる。

 布施谷さんの自宅の庭には、防空壕の横に植えられていたオンコの木が戦後2回の引っ越しに耐え、生き続けている。当時1メートルほどの高さだったが、現在は3メートルを超える。

 昨年、戦争体験を語った時は木の前で、子どもたちと記念写真を撮った。「戦争がなくなったおかげで木はこんなに大きくなったの」と布施谷さん。防空壕のそばで布施谷さん一家を見守り、ともに戦禍を逃れたオンコの木は、戦争を知らない子どもたちに平和の尊さを伝える教材になった。(宮木佳奈美)


◎森町談合、湊町長の拘置延長
 2005年9月に森町が発注した町消防防災センター建設工事の指名競争入札をめぐる談合事件で、函館地検は12日、偽計入札妨害(談合)容疑で逮捕、送致された町長の湊美喜夫容疑者(79)と同町の元建設課長、釜沢弘容疑者(61)について、22日まで10日間の拘置延長を函館地裁に請求し認められた。湊容疑者は依然として談合への関与を否認している模様だが、同地検は既に起訴した業者らの供述などから、湊容疑者が主導したとされる官製談合の実態を解明、立件する方針だ。

 道警捜査二課、道警函本捜査課などの合同捜査班はこれまでに、湊容疑者をはじめ、共同企業体(JV)を組んで同工事を落札した東急建設幹部や仲介役の男ら計9人を談合容疑で逮捕した。このうち、東急建設札幌支店の幹部3人と、星組渡辺土建の前社長渡辺英明被告(56)、函館市内の設備会社社長藪下宏一被告(61)ら5人が6日、起訴されている。

 藪下被告とともに談合の受注工作に動いたとされる同市内の自称自営業登真人(のぼり・まこんど)容疑者(60)については、同地検が拘置期限満期となる13日、同地裁に起訴する見通しだ。

 これまでの調べで、工事受注をもくろんだ東急建設が急きょJVに参入した背景に、湊容疑者の強い意向が働き、これまでの調べで容疑を認めている釜沢容疑者が関係書類の偽造を行うなどして、調整を図ったとみられている。

 一方で、町長が不在となった森町は6日の記者会見で、湊容疑者が弁護士を通じて「自分は大丈夫だ。心配掛けてすまない」と話していると明かしたが、片野滋総務課長によると、同日以降、湊容疑者からの連絡はないとしている。


◎農協組合長会が原油高支援対策求める街頭署名活動
 道南地区農業協同組合長会(細川信一会長)は12日、原油価格高騰に伴い、国に支援対策を求める街頭署名活動を函館市内7カ所で実施し、3000人を超える署名を集めた。今回の署名活動はJA北海道中央会、北海道漁連、北海道生協連が道民100万人を目標に共同で行っている署名活動の一環で、9月末までに集められた署名は福田康夫首相に提出される。 (小川俊之)

 農業に関する生産コストは肥料や燃料などの値上がりが続き、この1年で約3割上昇しており、農家の経営に大きな打撃を与えている。今回の街頭署名は、JA北海道中央会が21日に札幌市で開く「全道農業危機突破総決起大会」を前に、地域で団結をアピールする目的で行われた。

 新はこだて、函館市亀田、今金、北檜山の4農協から関係者約100人が参加。午後1時からJA新はこだて本店(北斗市本町170)駐車場で行われた出発式では、JA新はこだての畠山良一組合長が「政府は食糧自給率の向上を目標に掲げているが、このままでの状況が続けば、農家を廃業しなければならない人たちが増えていく。一致団結して地域住民や消費者に農家の厳しい状況を理解してもらうとともに、国に対して効果的な支援対策を粘り強く求めていこう」と訴えた。

 この日は参加者が市内7カ所に分かれて街頭署名活動を実施。帰省客や観光客などでにぎわうJR函館駅前(函館市若松町12)では、若者から高齢者まで幅広い年齢層が署名に協力するなど、関心の高さをうかがわせていた。


◎函館市、職員採用試験の応募低調
 2009年度の函館市職員試験採用試験の申し込みが伸び悩んでいる。11日現在の応募者数は52人で、低調だった前年同期の60人をさらに下回っている。市人事課は「道庁の上級職試験の志願者が数年ぶりに増えたことから、最終的には前年並みとなるのではないか」と話し、今後の応募に期待している。

 ことしは8月4日から15日まで受け付けている。同課によると、例年、申込期間の終盤と締め切り日の消印有効の郵送分で大幅に伸びる傾向にあるという。

 11日現在の出願状況は、大学卒が39人(昨年36人)、短大卒が6人(同11人)、高校卒が7人(同13人)で、短大卒と高校卒の部で昨年を下回っている。

 過去5年間の一般事務職の出願と採用状況は、04年度815人(採用21人)、05年度544人(同22人)、06年度528人(同11人)、07年度332人(同9人)、08年度286人(同8人)。志願者が年々減少し、採用数も行財政改革の一環で抑えているため、ほぼ30―40倍超の高倍率となっている。

 同課は「就職を取り巻く状況は民間も厳しいが、市もPRが必要。まちの魅力だけでなく、市役所で働くという魅力を高めていきたい」と話している。申込書は市役所1階市民ホールや各支所で配布しており、市のホームページからも入手できる。 (高柳 謙)


◎北方民族資料館企画展「アイヌの伝統工芸」
 函館市北方民族資料館企画展「アイヌの伝統工芸〜木彫の技〜」(市文化・スポーツ振興財団主催)が10月21日まで、同館(末広町21)で開かれている。アイヌ民族の文様が彫り込まれた生活用具や、それらを作り出した小刀(マキリ)など150点を展示。23日午後1時半からは、アイヌ民族博物館(胆振管内白老町)の野本正博学芸係長の講演「アイヌの造形〜木彫りから見たアイヌ工芸の世界」を企画しており、同館は「企画展と連動した講演なので、1度見た人もまだの人も、より深く資料を理解する機会にしてほしい」と来場を呼び掛けている。(宮木佳奈美)

 企画展は今回で3回目。1、2回目ではアイヌの衣装やタマサイ(玉飾り)を特集し、女性の手仕事をテーマにしてきたが、今回は男性の手仕事とされ、父から息子へと男系で伝えられた木彫りの技術にスポットを当てた。昭和初期の写真や江戸時代から明治時代のアイヌを描いた絵を掲示し、儀式や作業の様子を伝えている。

 「マキリ」「生活用具」「精神文化の道具」、狩猟道具などの「男の生業」の4分野ごとに資料を展示。このうち、丸木舟に板をつなげて船首を高くした板綴舟(いたつづりぶね)の模型は、アイヌが作ったもので、明治時代に発見された貴重な資料だ。

 盆やすりこぎなどの生活用具、マキリのさや、ケースにまで文様が施され、用途に合わせたデザインとち密さが特徴となっている。儀式に使う捧酒箆(ほうしゅべら)、客をもてなす煙管など小さな道具にも伝統の技が凝縮されている。

 講演では、アイヌ民族博物館で行われている実物大の板綴舟制作の様子をスライドで見ながら、野本さんの説明を通じてアイヌの木彫りの技術、歴史的背景に理解を深める。参加費は300円。

 午前9時―午後7時。入館料300円(学生150円)。9月17日は休館。問い合わせは市北方民族資料館TEL0138・22・4128。


◎函館出身のプロレスラー大野さん26日に興行、故郷で活躍誓う
 プロレス団体「ドラゴンゲート」(本社・神戸市、岡村隆志社長)に所属する函館出身のプロレスラー、大野勇樹さん(22)が、26日午後6時半から函館市民体育館(湯川町1)で行われる興行に出場する。このほどPRのため函館入りした大野さんは「自分の成長した姿を見てほしい」と、故郷での活躍を誓った。 (鈴木 潤)

 大野さんは七飯高校卒業後の2004年4月、同団体の前身「闘龍門」に入門し、05年10月にデビューした。

 同団体のプロレスは軽快でスピード感あふれる試合展開が特徴だが、身長167センチ、体重105キロの大野さんはそのスタイルとは異なる重量感で勝負するタイプ。コーナーポストから跳んで相手を踏みつける「雪崩式フットスタンプ」などが得意技だ。

 函館の興行は3年連続で、9日から始まったタッグリーグ戦の試合も組まれている。大野さんは函館での過去2回の興行でまだ勝ち星がなく、「今年は絶対勝ちたい」と力を込める。目標としている選手は「新日本プロレス」「ZERO―ONE(ゼロワン)」で活躍した故・橋本真也さん(享年40)。中学生の時に見た橋本さんの勇姿がプロレスの道へ進むきっかけになったという。

 会社が企画する年間180試合にすべて出場することが当面の目標で、「函館出身のレスラーとして有名になれるよう実績を残していきたい」と語る。

 同団体は市内の児童養護施設「くるみ学園」(亀田中野町)、同施設「函館国の子寮」(鈴蘭丘町)の子供たち計約50人を無料招待する。

 チケットは前売り、当日とも4000円から。同体育館や市内プレイガイドで販売。問い合わせは同団体TEL078・333・9797。