2008年8月21日(木)掲載

◎はこだて国際民俗芸術祭が開幕
 世界各地のアーティストが伝統舞踊や音楽を披露する「はこだて国際民俗芸術祭2008」(組織委主催)が20日、函館市内で開幕した。初日はニュージーランド自治領ニウエ島や韓国といった国内外の舞踊グループなど5組が登場。個性豊かなダンスや美しい楽曲を次々と繰り広げ、観客を華麗な民俗芸術の世界へといざなった。

 函館を拠点に世界各地で活動するバンド「ひのき屋」(ソガ直人代表)を中心とした市民有志が、初めて企画した。函館の街を国際s的にアピールし、音楽の楽しさを広く伝えるのが狙い。当初、元町公園(函館市元町12)で予定していた初日のステージは、雨天のため函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)に会場を変更した。

 最初に登場したニウエの男性ダンスグループ「タウ・フアタ・ニウエ」のメンバーは、顔を黒く塗り、麻の衣装に身を包んで島の歴史や戦いなどを表現する激しい踊りを披露。棒を手に足を踏み鳴らし、雄叫びを上げて相手を威嚇するような勇ましい演舞に、集まった市民約300人から大きな拍手が送られた。

 続いて、韓国のダンスカンパニー「カン・ユンサン&シン・ヘギョン」の少女ダンサー約15人が華麗な舞いを披露。インドネシアの音楽グループ「サラタスパーセン」のテンポの良い演奏で、一気に会場は熱気に包まれた。

 夫と訪れた会社員の長谷香奈子さん(29)は「普段見られない国の演奏や踊りに大感激」と興奮した様子。弘前市から家族4人で参加した会社員佐藤朋英さん(32)は「すごくいい内容で、命の鼓動を感じる」と話していた。

 同芸術祭には国内外の9組が参加する。23日までの連日午後6時―同8時45分にフリーステージ(無料、元町公園)、24日午後5時からは特別公演(有料、函館市民会館)が行われる。問い合わせはヒトココチTEL0138・51・5727。(新目七恵)


◎企画【数字で見る函館市電…支える人たち】(1)/時代に合わせ延伸・廃止
 停留場数 26カ所(1993年4月1日から)
 軌道延長 21・555キロ(1993年4月1日から)


 函館市交通局が民間事業者から路面電車の事業を譲り受け、65年目を迎えた。その間、人口流動やマイカー社会の到来などで事業全体の見直しを迫られ、路線の延伸・廃止が繰り返されてきた。

 市交通局は1943年11月に発足し、まず45年7月に鮫川(現在の湯の川温泉)―湯の川間を撤去。その後は国道5号を基点に延伸し、50年9月に亀田町―宮前町間を開設したのを皮切りに、51年7月に宮前町―五稜郭公園前間、54年11月に亀田町―五稜郭鉄道工場前間、55年11月に鉄道工場前―五稜郭駅前間と、事業規模を拡大していった。

 湯の川温泉―湯の川間を再開した59年9月にピークを迎え、停留場数は39カ所、軌道延長は35・898キロに達した。

 その後は規模縮小の道をたどることに。78年11月にガス会社前―五稜郭駅前間(1・6キロ)、92年4月に松風町―宝来町間(東雲線、1・6キロ)、93年4月に函館駅前―五稜郭公園前間(ガス会社前回り、3・6キロ)が次々と廃止され、以来、運行する路線は湯の川を起点に谷地頭、函館どつく前の2系統となった。

 線路は車道と並走、交差しており、安全確保のための定期点検が欠かせない。中でも電車に動力を送る軌道線は、600ボルトの電流が通っていて、神経をとがらせる作業だ。

 架線・信号の保守を担当する信太法男さん(53)は「技術を継承してくれた先輩をはじめ、業者、同僚など多くの人に支えられている」とした上で、「何かが起きた場合は大事故につながるどころか、市民にも迷惑が掛かるので、緊張の連続です」という。四六時中、携帯電話は手放せない。(浜田孝輔)

◇  ◇  ◇

 函館市内では1897(明治30)年に馬車鉄道が開通し、1913(大正2)年には民間会社によって路面電車が開業した。その後、路面電車は市営化され、今日に至るまで市民の足、観光の目玉として多くの人を輸送してきた。公共交通機関の一翼を担う電車にまつわる数字にスポットを当て、運行を支える人に話を聞いた。



◎市内6校の「キャンパス都市函館」構想が文科省の支援事業に
 文部科学省は20日までに、国、公、私立大学間の積極的な連携を進める「戦略的大学連携支援事業」の選定結果を発表、道教育大函館校を中心とした函館市内6校の「高等教育機関連携による『キャンパス都市函館』構想」が選ばれた。

 同事業は地域に根差した教育研究水準の高度化などを目的に本年度から始まった。全国から94件の申請を受け、審査を経て対象となる54件が決まった。

 同構想は連携教育カリキュラムの開発やケーブルテレビを活用した公開授業、合同の就職支援などを通し、都市環境やそれぞれの機関の専門性を融合させた「キャンパス都市函館」を目指す。6校は道教育大函館校、公立はこだて未来大、函館大、函館大谷短期大、函館短期大、函館工業高等専門学校。

 文科省によると、「多面的な教育連携の取り組みが効果的で、自治体含め函館が一体となって取り組んでいる点」などが評価された。同構想は「総合的連携型(地元型)」に区分され、今後3年間に年間5000万円を上限とした財政支援が受けられる。

 この6校に北大水産学部、ロシア極東国立総合大函館校を加えた8校はこれまでも連携事業を進めている。同構想を運営する「キャンパス・コンソーシアム函館」の運営会議座長を務める道教育大函館校の鴈沢好博教授は「過去3年間に地道に取り組んできた蓄積があり、今回の申請につながった。全国的に認知されるきっかけとし、今後も市内の高等機関の魅力づくりを進めたい」と話している。(新目七恵)


◎西・弥生小統合校舎、一部外壁残し新築に変更
 函館西小・弥生小の統合校舎整備問題で、函館市教委は20日夜、弥生小で開いた住民説明会で、弥生小を全面解体し新築する案から、一部外壁を残して補修し新築する変更案を示した。多賀谷智教育長は「子供たちの教育環境を確保し、弥生小の景観を守る案で合意をお願いし、一定の理解を得た」と語った。(高柳 謙)

 「耐震補強をして歴史的建造物を残すべき」とする市民の声に配慮した形。新案では現弥生小の正面玄関部分の外壁を保存する考えで、市教委は「統合校の歴史や文化を伝えるメモリアルホールの整備も検討する」と述べた。

 7月28日に開いた1回目の説明会で、市民から「検討した整備案や統合校の基本的な考えが見えない」との指摘があり、2回目を開催。市民約70人が参加した。

 校舎を耐震補強し改修する案の工事費は概算で21億7000万円、解体・新築は同11億1000万円、外壁の一部を残し新築する案は同11億4000万円である検討結果を示した。補修・維持を求める声には、市都市建設部が「建物には寿命がある。税金を使って建物を残していくことにはある程度、限界がある」と述べ、理解を求めた。

 市民の意見は賛否両論に分かれ、補修派からは「何としても残すという気迫が感じられない。補修する際のデメリットばかり強調している」などの意見があり、新築を希望する市民は「残す、残さないの問題ではなく、子供たちにいかに良い教育環境を提供するかだ」と強調した。

 市教委は本年度、基本設計を実施。各方面から意見を聞きながら作業を進める。


◎せたな学校職員殺害/福士被告に無期懲役求刑
 せたな町瀬棚区島歌の町立島歌小学校内で1月31日、同校の校務補田村亜衣子さん(当時24)が殺害された事件で、殺人罪や同校校長に対する殺人予備罪などに問われた同町瀬棚区本町、同校元臨時職員福士昌被告(22)の論告求刑公判が20日、函館地裁(柴山智裁判長)であった。検察側は「動機はあまりにも身勝手。24歳という若さですべてを奪われた被害者に落ち度はない」とし、同被告に無期懲役を求刑し結審した。判決は21日午後2時。

 被告人質問で、同被告は「着服がばれたら、もう誰にも相手にされなくなるのではと思い、すべてを失ってしまうとしか考えられなかった」と供述、学校経費着服(約21万円)の発覚で信用を失うことに恐怖心を感じていたとした。

 検察側は論告で、手おのや包丁などさまざまな凶器で執拗(しつよう)に田村さんの身体を傷つけ、命を奪った行為を「命ごいをする被害者の生命を奪うことにためらいもなく、鬼の所業と言うべき。反社会的で規範意識が欠如している」とした。捜査機関が同被告の自供前に校長の殺害計画を把握していたとし、殺人予備罪の自首も成立しないと指摘した。

 弁護側は「人格的未熟さが招いた事件。着服の発覚を恐れた被告は思考も近視眼的になっていた。被害者のことを思い毎日手を合わせるなど内省を続けている」とし、犯行の計画性を否定した。同被告は「自分自身の考えや行動がどれだけ浅はかで身勝手だったのか、田村さんの気持ちを考えると非常につらく、苦しい」と述べた。

 論告を前に、田村さんの父繁さんは法廷で「(同被告の)貧しい心がとても憎い。亜衣子の無念さを思えば苦しい。娘の命はたったの20万円なのか。娘を生かして返してほしい」と家族の苦しい胸の内を吐露し、厳罰を求めた。


◎福島商業が函館商業と遠隔授業
 【福島、函館】函館商業高校(三浦法久校長、生徒707人)と連携を図り、地域キャンパス校として教育の充実を図る福島商業高校(藤本義孝校長、生徒94人)で20日、高速情報通信技術を利用した「遠隔授業」が行われた。約70キロ離れた両校の教室を双方向テレビ会議システムの画面で生中継し、福島商業の2年生34人が函館商業の宮古智浩教諭から情報処理科目の講義を受けた。地域キャンパス校としては道内初の試み。(田中陽介)

 小規模校の教育活動を支援する道教委独自の地域キャンパス校制度は、生徒数が多い学校を「センター校」とし、出張授業や遠隔授業などで教育環境の充実を図るのが狙い。地域キャンパス校の福島商業は、センター校の函館商業と連携している。この日、福島商業の教室にはカメラ1台、大型集音マイク2本、大型スクリーンなどが用意された。

 スクリーンには、ほぼ等身大の宮古教諭が登場。授業開始のあいさつから、配布資料の具体的な説明や生徒からの質問など、一連の授業がスムーズに展開された。

 宮古教諭がなぞるホワイトボードの文字や記号なども瞬時に映像で流れた。宮古教諭が「教室内のおしゃべりも聞こえます」と指摘するなど、スピーカーによる会話も明りょうで、生徒たちはリラックスした表情で授業に取り組んでいた。

 澤田達郎君(17)は「マイクが近くにあって少し緊張したが、新鮮な感覚で楽しかった。授業も分かりやすく、すんなり理解することができた」と声を弾ませていた。

 宮古教諭は「生徒からの積極的な質問がきょうの授業の充実につながった。通信速度に改良の余地はあるものの、距離感を気にせず、十分授業として成し得ることが確認できた」と話していた。 9月にも同様の授業が行われるほか、今後は生徒会交流などの各種イベントでも高速情報通信が活用される。


◎道南の公立小・中学校で始業式
 渡島、桧山両管内の公立小、中学校122校で20日、始業式が行われ、2学期が始まった。子供たちは楽しかった夏休みの思い出を発表し合い、25日ぶりの授業に元気に取り組んでいた。

 函館高丘小(中西英明校長、児童376人)では、始業式で児童会副会長の長谷川昂紀君(11)が「全員で協力して多くの2学期の行事を成功させよう」とあいさつ。中西校長が「けがや事故がなく夏休みが終わってうれしい。秋には勉強やスポーツを頑張ってほしい」と呼び掛けた。

 その後、児童らは各クラスに移動。1年1組(土野伸子教諭、25人)の教室では、児童が夏休み中に作った作品を発表した。粘土の城や絵日記、手作りゲームなどが紹介され、子供たちは興味深そうに同級生の発表を聞いていた。貝殻で風鈴を作った高橋風輝君(6)は「夏休みにお父さん、お母さんと行ったキャンプが楽しかった。学校が始まってうれしい」と話していた。(新目七恵)