2008年8月22日(金)掲載

◎ヒグマ、エゾシカ 食害に農家が悲鳴
 函館市郊外でヒグマやエゾシカの食害が相次ぎ、農家が頭を悩ませている。ヒグマが民家付近の畑まで下りて農作物を食い荒らす例があり、人間と接触する危険もある。畑にネットやテープを張り巡らせ、ロケット花火を打ち上げるなど自衛策を講じているが、被害農家は「いつクマに遭遇するか分からない状態で安心して農作業ができない」と不安を募らせている。

 市内赤坂町、上湯川町、見晴町など東部地区の畑で、7月下旬から8月中旬にかけてエゾシカやヒグマが出没し、ヒグマ1頭は8月6日に捕獲された。赤坂町の金子周治さん(68)方では自宅近くのスイートコーン畑がヒグマの食害に遭い、ジャガイモなどはエゾシカの被害が後を絶たない。「これから収穫時期のデントコーン(飼料用トウモロコシ)畑にも来るのでは」と懸念する。

 すでにヒグマが捕獲された地域でも不安は残る。上湯川町の松倉貞義さん(63)は所有する見晴町のニンジン畑が荒らされた。「駆除してもまた別のクマが入り込むかもしれないと思うと怖い。対策に手間や費用を掛けたからといって野菜が高く売れるわけでもないし」と嘆く。デントコーンを栽培する同町の酪農業松岡悟朗さん(65)も「飼料高の時の食害は痛い」とため息をつく。

 渡島支庁によると、管内の農業被害はヒグマが2003年度977万円、04年度591万円、05年度546万円、06年度967万円、07年度697万円でコーン類が主。エゾシカは根菜やジャガイモを中心に03年度36万円、04年度61万円、05年度275万円、06年度299万円、07年度892万円と年々被害が表面化してきた。

 ヒグマの捕獲頭数は05年度98頭、06年度59頭、07年度50頭。本年度は14日現在で15頭でまだ例年より少ないが、収穫期を迎える9月以降が要注意だという。

 同支庁は、ヒグマ対策でワイヤーに触れると電気ショックを与える「電気さく」を無償貸与(1年間)し、普及を進めている。「人里に下りてくるヒグマは安全上、駆除するしかないが、電気さくで近づけないようにし、人間とのすみ分けを徹底すれば、不要な捕獲がなくなる」と話す。エゾシカは増加傾向で、繁殖抑制のため05年度から狩猟期を設けた。

 一方、赤坂町付近に出没したヒグマはまだ捕獲されず、ハンターが出動中。ただ鳥獣保護法で道路上や夜間(日没後から日の出前まで)の銃器使用が制限されている。金子さんは「ヒグマが畑に現れる時間は日の出前が多く捕獲が難しい。法律とはいえ、何とかならないものか」と困り切っている。 (宮木佳奈美)


◎森町長が辞職へ…官製談合
 【森】森町発注の町消防防災センターの建設工事をめぐる官製談合事件で、偽計入札妨害(談合)容疑で逮捕、送検された町長、湊美喜夫容疑者(79)が21日、函館市内の拘置場所で接見した弁護士に辞職願を預け、同席した長岡輝仁議長らに「町政に迷惑を掛けている」として、直接辞意を伝えた。辞職願の正式な提出は弁護士が町側と調整した上で行う方針で、湊容疑者は任期を約8カ月残し、37年間務めた町長の座を退くことになった。

 同談合事件をめぐっては、これまでに道警が業者関係者や仲介役の男ら計9人を逮捕、函館地検は6人を談合罪で函館地裁に起訴し、1人を処分保留とした。湊容疑者と町の元建設課長釜沢弘容疑者(61)の拘置期限は22日で満期となり、同地検は同日、両容疑者についても起訴する見通し。

 湊容疑者は1日の逮捕後、談合への関与を一貫して否認しているが、町政の混乱を招いた責任から「議会が辞職してほしいということであれば、現在の地位にはこだわらない」と町側に辞意を伝えていた。町議会では一部議員が臨時議会に辞職勧告決議案を諮る動きがあったが、正副議長が町長に自発的な辞職を促すことで合意していた。

 接見後、長岡議長と中村良実副議長は、湊容疑者の様子について報道陣の取材に応じた。議会での協議経過や、議会の総意を受けて辞職を促しに来たことなどを伝えると、湊容疑者は「分かった」と了承の意志を示したという。中村副議長は「町長はすこぶる元気な様子だった。われわれの話をうなずきながら、聞いてくれた」と話した。

 渡島支庁によると、地方自治法では市町村長が辞職する場合、辞職しようとする日の20日前までに議長に申し出をしなくてはならないが、議会の同意を得た場合はこの期日前でも辞職が可能。辞職願を受理した後、選挙管理委員会が50日以内に選挙を執行しなくてはならない。

容疑者は町職員を経て1971年の旧森町長選で初当選し、旧砂原町との合併後の2005年4月の新・森町長選でも当選。道内の現役首長で最長の通算10期37年にわたり町長を務めている。 (森町談合事件取材班)


◎企画【数字で見る函館市電…支える人たち】(2)
 旧式から新型まで多彩
 車両総数 38両(2007年3月から)
 平均車齢 37・8年(2007年3月末時点)


 路面電車の耐用年数は30年がめどとされる。函館市交通局が発足した際に、前事業者から受け継いだ客車は70両だったが、新車両の導入をその都度行っていながらも、路線の縮小に伴って車両台数は減少傾向にある。

 現在保有する車両のうち、購入時の姿のままで残る最古の一般客車は、茶と濃紺色に塗り分けられた車体が特徴で、1952年製の「530号車」。「カラオケ電車」「ビール電車」として親しまれている貸切専用車両「501号車・アミューズメントトラム」は49年製だが、87年に車内をLED(発光ダイオード)で電飾するなどの改造を施している。

 レトロ調のチンチン電車「箱館ハイカラ號(ごう)」は、市民団体の後押しを受け、92年の市制施行70周年記念事業として、翌93年5月に18年製の車両を改造し、復元した。バリアフリー仕様の低床式電車は2両あり、中でも2007年3月20日に運行を開始した「らっくる号」は、函館市電で唯一の2両連結式の車両となっている。

 客車以外では、函館港まつりの期間限定で運行する「花電車」が3両ある。降雪時に出動する排雪車「ササラ電車」は2両を有し、細く割った孟宗竹を車両前後部に装備して回転することで、線路に積もった雪をはね飛ばす。

 車両担当として、約30年のキャリアを誇る大谷正巳さん(52)は「古い電車が多いため、車体をいたわりながらの作業で、安全に走行させることだけを心掛けている」とし、「並走する自動車には事故を起こさないよう、無理な運転は控えてほしい」と願う。(浜田孝輔)


◎福士被告に懲役26年…せたな学校 職員殺害
 せたな町瀬棚区島歌の町立島歌小学校内で1月31日、同校の校務補田村亜衣子さん(当時24)が殺害された事件で、殺人罪や同校校長に対する殺人予備罪などに問われた同町瀬棚区本町、同校元臨時職員福士昌被告(22)の判決公判が21日、函館地裁(柴山智裁判長)で開かれた。柴山裁判長は「身勝手で自己中心的な動機に酌量の余地は全くない」として、懲役26年(求刑・無期懲役)を言い渡した。

 柴山裁判長は「用意周到ではないが、大枠では当初の計画通り田村さんを殺害している」と犯行の計画性を認定。校長への殺人予備罪で弁護側が主張した自首の成立については、「自発的に申告したとは言えない」と退けた。

 さらに、命ごいをする田村さんを複数の凶器で執拗(しつよう)に殴打し、刃物で刺すなどした犯行態様について「冷酷、残忍で極めて悪質。被害者の恐怖や苦痛は計り知れない」とし、「愛する娘を奪われた両親の喪失感、深い悲しみは筆舌に尽くしがたい」と断罪した。一方で「自分の犯した罪と向き合い、反省を深めている。犯行経緯には社会的未熟性もうかがわれた」と述べた。

 閉廷後、退廷する福士被告に、傍聴していた同校の岩井栄一教頭が「(田村さんの)お父さん、お母さん、お姉さんと遺影におわびしなさい」と泣きながら声を掛けると、福士被告は遺族を真っすぐに見つめ「申し訳ありませんでした」と頭を下げた。

 判決によると、同被告は昨年9月から12月にかけ、学校経費約21万円を着服。不正が発覚しそうになり、校長を自殺に見せかけて罪をかぶせようとし、校長とともに、犯行の邪魔になると考えた田村さんの殺害を計画。1月31日午前7時半ごろ、田村さんの頭部を手おのや金づちで繰り返し殴打した上、包丁(刃渡り約18センチ)で胸や背中、首などを複数回突き刺すなどし、失血死させた。


◎10期ぶり下方修正…函館財務事務所4―6月期の経済概況
 函館財務事務所(寺井順一所長)は21日、4―6月期の経済概況に関する「道南経済レポート」を発表した。企業の生産活動が一部で高水準にある一方、個人消費が「足踏み状態」から一段と厳しい「弱含み」となったほか、雇用や企業倒産も前年より悪化しており、総括判断を「一部に動意がみられるものの、総じて停滞している」と10期ぶりに下方修正した。

 個人消費は食品スーパー(4社)の売上高が新規出店効果で前年同期比3・9%増となったが、大型小売店(7社)は消費者の慎重な購入姿勢に加え、低温で夏物衣料を中心に動きが鈍く、同8・7%下回った。新車販売台数は全体で同1・3%増と横ばいだったものの、レンタカーの新車登録台数を除くと前年割れとなり、人口減や若者の車離れがうかがえる。

 観光面では青函航路のフェリーが2船体制となった高速船就航効果で同25・1%増の9万8731人と好調を維持。ホテル、旅館の宿泊者数は道外のツアー客が減少したものの、JR函館駅前のホテル利用のビジネス客の増加で同1・9%増と前年をやや上回った。

 航空機による来函客数は関西空港便の利用減が響き、全体で同4・3%減の21万8550人。ただ、チャーター便は同22・9%増の好調ぶりで、「台湾客が定期便のある韓国客の約2倍に上り、国別シェアの大半を占めている」(同財務課)という。JRはダイヤ改正で函館―札幌間の特急が1往復減便されたことから同7・2%減の20万5000人と前年割れだった。

 住宅建設は貸家が同21・4%増と前年を大幅に上回ったが、持ち家、分譲とも減少し、全体では同3・3%減と落ち込んだ。生産活動は需要の高まりなどから造船や木材・木製品など一部が好調に推移。企業倒産は件数、負債総額、1件当たりの負債額のいずれも前年を上回り、建設業の倒産が約半数を占めた。雇用情勢は有効求人数が同15・0%減と大幅に減った。(森健太郎)


◎笑顔で一緒にダンス!…民俗祭・インドネシア・ブルガリア 2団体が北昭和小訪問
 函館市内で開催中の「はこだて国際民俗芸術祭2008」(組織委主催)に出演するインドネシアとブルガリアの民族芸能2団体が21日、函館北昭和小学校(武田誠校長、児童354人)を訪れ、全校児童の前で演奏や舞踊を披露した。子どもたちは団員らと一緒にダンスを踊るなどし、異文化交流を楽しんだ。

 同芸術祭には国内外9組のアーティストが参加。23日までは連日午後6時からフリーステージ(無料、元町公園)、24日午後5時から特別公演(小学生以上前売り1000円・当日2000円、函館市民会館)が行われる。学校訪問は、児童の情操教育の一環として同校が依頼した。

 まずインドネシアの音楽グループ「サラタスパーセン」のメンバー約30人が登場。伝統楽器などを使ったテンポの良い演奏が始まると、児童らはジャンプしたり、手拍子をして満喫していた。

 続いて、ブルガリアの舞踊団「ソフィア・シックス」のメンバー約20人が個性的なフォークダンスを披露。途中、団員が子どもたちの手を取ってダンスを教える場面もあり、笑顔で交流を深めていた。

 2年2組の井上統麻君(7)は「こんな踊りは初めて。足のリズムが楽しかった」と喜んでいた。

 出演者には、同校PTAの保護者らが用意したおにぎりやソーメンの昼食も振る舞われた。 (新目七恵)


◎道議会新幹線特別委が函館バス視察 バスロケーションシステムや現況を調査
 2015年までの北海道新幹線開業に向け、道議会の新幹線・総合交通体系対策特別委員会(佐藤英道委員長)のメンバーが21日、道南地区で路線バス事業を展開する「函館バス」(函館市高盛町10、寺坂伊佐夫社長)を訪れ、地域の公共交通の現状や取り組みを調査した。

 同委員会メンバーは、19日から3日間の日程で新幹線開業を見据えた渡島・檜山地方の現地視察を実施。最終日のこの日は委員9人のほか、畑秀叔渡島支庁長や道企画振興部の職員ら計約20人が参加した。

 函館バス本社では役員が事業内容や輸送状況、運行情報の検索サービス「バスロケーションシステム」などを紹介。原油高に伴う燃料費の負担増が前年比で1億円以上に上ることを明らかにし、寺坂社長は「このままでは不採算路線の廃止や縮小もあり得る厳しい状況。企業努力を超えた域に関して何らかの対策を」と訴えた。

 続いて委員らは同社が6月に導入した新型ハイブリッドバスに試乗してJR函館駅まで移動。同駅では担当者から「バスロケ―」の稼働状況について説明を受け、駅構内や待合所に設置された端末を見学しながら「各停留所でも見られるか」「ランニングコストは」などと質問していた。

 佐藤委員長は「サミットを契機に環境への意識が高まる中、ハイブリッドバスやバスロケーションシステムなどは道内で先駆的な取り組み。観光立国・日本を目指すため、道でも行政を挙げたサポート体制を取っていきたい」と話していた。(森健太郎)