2008年8月23日(土)掲載

◎官製談合、森町長を起訴
 森町が2005年9月に発注した町消防防災センターの建設工事をめぐる官製談合事件で、函館地検は22日、同町長、湊美喜夫容疑者(79)を競売入札妨害(談合)罪で函館地裁に起訴、釜沢弘・元建設課長(61)を函館簡裁に略式起訴した(罰金100万円の略式命令)。疑惑の発覚から約4カ月半。町のトップが直接関与した官製談合事件は今後、司法の場で全容が明らかにされる。(森町談合事件取材班)

 同地検は「湊被告はこれまでの調べの中で起訴事実を認めている。釜沢元建設課長は、課長としての立場や関与の度合いなどを総合判断し略式起訴とした」とした。処分保留としていた東急建設の男は起訴猶予とし、同事件で逮捕された9人全員の処分が決まった。

 同事件をめぐって同地検は、工事を落札した共同企業体(JV)を組んだ東急建設の幹部3人、森町内最大手の建設会社星組渡辺土建元社長、渡辺英明(56)、業者側と町の仲介役を務めた函館市内の会社社長藪下宏一(61)と登真人(のぼり・まこんど)(60)の被告6人を起訴している。

 入札に参加した他の4企業体の入札担当者ら6人も書類送検されており、同地検はこのうち5人を不起訴処分、同町内の工藤建設社長(63)を略式起訴した(罰金100万円の略式命令)。

 起訴状などによると、05年9月28日執行の指名競争入札において、工事受注をもくろんだ東急建設の幹部らは、藪下被告や湊被告とかねてから親交のあった登被告を介して、消防防災センター建設工事の指名競争入札に参加できるように働き掛け、星組渡辺土建とJVを組んで参加。湊被告は、東急建設と星組渡辺土建(渡辺被告)が参加できるよう、部下の釜沢元建設課長らに入札参加者指名選考委員会の偽造議事録作成を命じるなどした。業者側の被告らは入札参加業者として指名された他の4企業体の入札担当者らと共謀し、同町内の建設業者事務所などで、4企業体が同JVの指定する入札価格を上回る価格で入札するよう協定を結び談合した。

 同地検は「森町の談合の捜査は終了した。今後、公判の中で事実を明らかにしたい」としている。


◎森町官製談合、「残念…町政刷新を」
 森町発注の町消防防災センター建設工事をめぐる官製談合事件は22日、函館地検が町長、湊美喜夫被告(79)を起訴したことで、大きな区切りを迎えた。この日、森町の職務代理者阿部真次副町長は所用を理由に休暇を取り、庁舎には不在。片野滋総務課長も「町長が起訴された事実について正式に確認が取れていないので、町としてコメントできない」とするだけだった。

 「現職町長起訴」という予想された事態に至っても、町としての対応を拒む姿勢は、湊被告が町政に君臨した37年間のひずみとも言えそうだ。

 同町では、湊被告が逮捕された1日も、幹部職員らは報道陣への問いかけに答えず、役場を後にするなどし、阿部副町長が職務代理者となった4日も町長逮捕に対する公式なコメントを避けた。6日の町議会全員協議会後では、行政の責任を問う声も上がらなかった。協議会終了後の記者会見でも、長岡輝仁議長は「町長を信用する」と発言するなど、町と議会の“蜜月関係”を露呈していた。

 湊被告は21日になってようやく辞意を表明した。辞職願は弁護士の預かりとなり、正式に受理されていないが、早くも水面下で町長選挙に向けた動きも見られる。町内のある主婦(56)は「町のために頑張ってくれた湊町長が起訴されたのは残念。この機会に町政を刷新して再出発を願いたい」とし、地元経済界の幹部は「一日も早く町政が正常な状態になってほしい」と再出発を期待していた。

 また、道警が逮捕した計9人のうち、湊被告ら計7人が法廷に立つことになった。町内では、今後の裁判の行方を注視しようとする声も聞かれた。森町建設協会の野田剛会長は「『やっていない』と言っている町長を信じたい。裁判を通じて白黒はっきりすると思うので見守っていきたい」とコメント。町内の70代の女性は「町長には、知っていることを隠さずに話して、けじめをつけてほしい」と話していた。(森町談合取材班)


◎企画【数字で見る函館市電…支える人たち】(3)
 ピークには年間4千万人
 年間乗客数 656万6518人(2006年度)
 初乗り運賃 200円(1994年12月10日から)


 1950年代から60年代にかけて、年間の乗客数は4000万人を超えていた。65年度を境に前年割れが続き、92年度に1000万人超えだったのを最後に、翌年度以降は数百万人へと転じた。

 2006年度の実績を見ると、客車33両の運行回数は5万9383回。距離にして111万1573キロを走行したことになる。一日平均の乗客数は1万7990人で、全乗客のうち通勤・通学の定期券での利用は6・2%にすぎず、その他は回数券や1日・2日乗車券、現金などでの利用となっている。

 運賃は、物価上昇など社会情勢の変化に呼応するように値上げされてきた。函館市交通局が発足した翌年(1944年)の運賃は全線10銭均一だった。47年7月に1円、52年に10円、78年に100円と段階を踏み、88年10月には180円均一にまで上昇。92年10月には2キロまでの初乗り運賃が180円で、4キロまでが200円、7キロまでが210円、7キロ超が220円という、それまでの均一制とは異なる対?区間制が導入された。

 1日・2日乗車券は、値ごろ感や利便性だけでなく、その図柄に函館の街並みなどをあしらっていることから、修学旅行生をはじめとする観光客に人気。当時の街並みを映し出す過去の乗車券は、市電ファンのコレクションとして重宝されている。

 駒場車庫で乗車券・定期券の販売窓口に立つ菅原厚子さん(55)は「環境にやさしい乗り物の心地良い揺れを多くの人に楽しんでほしい。自動車に乗っている時には気付かない景色を発見できるはず」と利用を呼び掛ける。(浜田孝輔)


◎函館地裁、裁判員候補は1500人、有権者の277人に1人
 函館地裁は22日、来年5月21日から始まる裁判員制度に向け、2009年の裁判候補者名簿に登録する人数を1500人と定め、同地裁管内21市町村(渡島、桧山と後志支庁の一部)の各選挙管理委員会あてに、名簿に載せる人数の通知書を送付した。管内有権者(計41万6532人、6月2日現在)の277人に1人の割合で候補者名簿に記載される。

 裁判員裁判は、殺人や放火などの重大な刑事事件を審理の対象とし、候補者から選ばれた裁判員6人が裁判官と審理に参加する。来年5月21日以降に、起訴された事件が対象となる。

 同地裁は、1件当たりの裁判で約100人の候補者が必要と見積もり、過去5年間に開かれた重大事件の件数や、想定される辞退者の人数などを勘案し、候補者数を1500人と決定した。09年は5月21日のスタートから12月末までの約半年間のため、10年以降は、候補者数は増える見込み。

 候補者は、各市町村に必ず1人を配分し、有権者数の比率で割り当てた。管内で候補者数が最も多いのは函館市の864人で、以下、北斗市141人、七飯町86人、八雲町59人と続く。後志支庁島牧村は7人と最も少なく、同黒松内町と奥尻町が各11人など。函館の場合、有権者の281人に1人の割合で名簿に記載されるが、管内市町村の中では最も可能性が小さい。逆に、島牧村は240人に1人が選ばれることになる。

 今後、各市町村の選挙管理委員会は有権者の中から無作為に割り当てられた人数を抽出し、同地裁が名簿を作成。名簿に登録された候補者本人には、11月下旬から12月にかけて、記載されたことを通知し、調査書を送付。仮に、登録された場合で、弁護士などの司法関係者や自治体の首長、自衛官、警察官らは裁判員から除外されるほか、70歳以上の高齢者や学生などは辞退できる。

 紺野洋一函館家裁総務課長は「裁判員が足りなくなることは避けたいため、1500人となった。スタートまで約9カ月に迫り、市民の関心を高めていきたい」と話している。(今井正一)


◎振り込め詐欺被害防止に、函バス、市電に中づり広告
 道警函館方面本部と函館中央、函館西署は22日、道内でも急増している振り込め詐欺を食い止めようと、市民に注意を呼び掛けるポスターを函館バス(寺坂伊佐夫社長)の営業車両280台と函館市交通局の路面電車(市電)に掲示した。道警函本生活安全課によると、公共交通機関車内への啓発広告掲示は道内初の試み。同課は「バスや市電は利用者が多く、ポスターを見た人の被害防止につながってほしい」としている。

 ポスターは函館方面防犯協会連合会(谷口利夫会長)が作成し、函館バスと市交通局の協力を得て、市内200台と、函館近郊80台の路線バスの計280台、市電は35台に掲示した。ポスターはB3判で▽オレオレ詐欺▽架空請求詐欺▽融資保証金詐欺▽還付金詐欺―の4つの代表的手口を記載。「落ち着いて身内や警察に相談を」「振り込みは、その日にするな!一人でするな!」などのコピーで注意を呼び掛けている。

 同課によると、ことし7月末までに函本管内では、前年同期比26件増の35件が発生し、被害額は同約4400万円増の約5500万円となっている。全道でも認知件数が347件、被害額約4億円と、前年を大幅に上回るペースで推移している。

 同課は「『年金や税の還付金がある』などとだまして、携帯電話でATM(現金自動預払機)に誘導し、操作方法を指示して振り込ませる手口が増えている」としている。函館バスの片山暁郎常務取締役は「バスの利用者は高齢者が多い。被害防止に向けて今後も協力したい」と話していた。(今井正一)