2008年8月25日(月)掲載

◎国際民俗芸術祭が閉幕
 函館市内で開かれていた「はこだて国際民俗芸術祭2008」(組織委主催)が24日、5日間の日程を終え、市民会館大ホールで開催された特別公演で閉幕した。最終日は、同祭に参加した7団体が集結し、自国の海の日没と夜明けを舞踊や音楽で表現した。

 特別公演は、函館を拠点に世界各地で活動するバンド「ひのき屋」(ソガ直人代表)の演奏で幕開け。篠(しの)笛や太鼓の音色に歌を交え、楽しげなリズムで会場を盛り上げた。同祭を企画した1人のソガ代表が「フェスティバルは絶対続けた方がいいと確信した。明日から来年の準備をすぐ始めるので応援をよろしく」と観客に訴えると大きな拍手が沸き起こった。

 続いて、台湾の「布農(ブヌン)文教基金会」は原住民族「布農」に伝わるアワの豊年祈願で歌われる8部合唱を披露。ブルガリアのフォークダンスアンサンブル「ソフィア・シックス」は、華やかな衣装に身を包んだ男女が伝統楽器に合わせ、軽快なステップを踏んだ。

 友人と来場した函館市内の自営業藤田道代さんは「それぞれの民族性が体で表現されているように感じた」と感激していた。(宮木佳奈美)


◎函館市の公共工事、来月から事前公表廃止
 函館市発注の公共工事で、複数の業者が最低制限価格と同じ入札額を入れ、くじ引きで落札業者を決めるケースが頻発している。公共工事の先細りや景気低迷を受け、何としても工事を受注しようとする業者の意向があるとみられる。市は、過度な競争が業者の経営を圧迫する懸念があることなどから、9月の入札公告分の工事から最低制限価格の事前公表を取りやめる。

 市は本年度から、指名競争入札を原則として廃止し、地元に本社や支社を置く業者を対象とした条件付き一般競争入札に改めた。談合防止の観点から、入札前に予定価格と、工事を完遂するために最低限は必要と積算した最低制限価格を示し、この範囲で業者は応札している。

 ただ、格付けがC、Dランクの中小企業が対象の工事を中心に、最低制限価格で入札する事例が多くみられるという。例えば予定価格が300万円、最低制限価格が200万円とすると、200万円の入札がそろう結果が頻発。

 市調度課によると、7月に入札が行われたとび・土工工事では、応札した10社とも最低制限価格を入れ、抽選となった。8月の町会館水洗化改修工事も6社中6社、河川改修工事は6社中5社が最低制限価格と同額で、こうしたケースは一例という。

 最低制限価格での入札は、市にとっては最安値で工事を発注できるが、同課は「無理をして最低価格で工事を取ると、経営の圧迫のほか、品質の確保や工事の出来などに影響を及ぼす恐れがある」と説明する。このため、9月の公告分から最低制限価格の事前公表を取りやめることを決めた。業者の見積もり能力を高め、適正な競争に導く狙いで、最低制限価格は入札後に公表する。予定価格の事前公表は従来通り続ける。

 市内のある建設業者は「公共工事の利幅は工事の種類や規模、落札価格、資材の調達などでそれぞれ違う。うまくいけば1割ほどだが、赤字を覚悟で安い価格で受注することもある。業界はどこも厳しい」と語る。

 過当競争は、予定価格に対する落札価格(落札率)の低下にも表れている。市調度課発注の2007年度の全工事落札率は91・45%だったが、08年度は7月末現在で87・38%に低下している。04年度は94・22%、05年度は93・85%、06年度は93・62%で、年々低くなっている。(高柳 謙)


◎森町「三業まつり」にぎわう
 【森】森町内の農産物や海産物などを中心とした特産品を展示即売する「もりもり盛り上がって三業まつり」(森町産業振興のまつり実行委員会主催)が24日、森町役場駐車場で行われた。小雨の降るあいにくの天候にもかかわらず、家族連れを中心にたくさんの来場者でにぎわった。

 同町ではこれまで、農業まつりと商工まつりを別々に行っていたが、今年から初めて合同で開催することとなり、22団体・グループが出店。農産物コーナーでは、200円でジャガイモを袋に詰め放題などに行列ができる人気ぶり。海産物コーナーでは毛がに一匹400円をはじめ加工食品なども格安で販売されたほか、日用雑貨リサイクル品によるバザーや、焼き鳥やかき氷などの実演販売もにぎわった。

 また特設ステージでは、もりまち太鼓の演奏や、スタンプラリー抽選会、もちまきなどの楽しいイベントも目白押し。牛乳早飲み大会では、会場から声援が飛び交うなど、一日中熱い盛り上がりを見せていた。 (小川俊之)


◎野本さん講演、アイヌ工芸の魅力語る
 北方民族資料館(函館市末広町21、沼崎孝男館長)の特別講演会が23日、同館で開かれ、アイヌ民族博物館(胆振管内白老町)の野本正博学芸員が「アイヌの造形〜木彫りから見たアイヌ工芸の世界〜」と題し、アイヌ工芸の優れた技術や魅力などを語った。

 同館で現在開催中の企画展「アイヌの伝統工芸〜木彫の技〜」に合わせて開いた講演会で、市民ら約50人が聴講した。

 野本学芸員は映像で「イクパスイ(奉酒箸)」や「タンパコオプ(タバコ入れ)」などの工芸品を示しながら、それぞれの用途や文様の特徴などを解説。「文様や形は多様性があり、作り手によって微妙に異なる」と話した。

 昨年6月から9月にかけて「イタオマチプ(板つづり舟)」の復元に取り組み、その作業の様子も紹介。1966年に苫小牧市の勇払川海岸で発掘され、道の重要文化財に指定された丸木舟を参考にしたことや、富良野市で伐採した「センの木」を材料に使ったことなどを示した。

 アイヌ文化の伝承について、「伝統工芸を生業とする若手の育成が遅れている。物作りを進めることによって活性化につながっていく」と述べた。 (鈴木 潤)


◎アイマスク着け写真撮影会
 視覚以外の感覚で写真撮影を体験するプログラム「こころの写真展ワークショップ」(実行委主催)が24日、函館市湯川町3の市営熱帯植物園で開かれた。参加者はアイマスク姿でボランティアガイドに導かれながら、“心の目”で切り取った風景をカメラに収めた。

 3月に国立函館視力障害センター(湯川町1)を卒業し、現在は筑波大学(茨城県つくば市)に通う全盲の大平啓朗さん(29)が、函館で出会った仲間たちと企画。視覚に頼らず、音や香りなどで被写体を感じてもらい、人間の持つ感覚の素晴らしさに気付いてもらうのが狙いだ。

 この日は市内の学生や会社員ら約10人が参加。アイマスクを着けた参加者は、ガイドのアドバイスを頼りにシャッターチャンスを探り、水の流れや鳥の鳴き声、草花の香りなどに「四感」を働かせながらデジタルカメラで撮影していた。撮影後には30、31日にJR函館駅で開く展示会に向け、写真を選別した。

 参加した市内の女性会社員(25)は「これまで自分がいかに視覚に頼って生きてきたかがよく分かった。見えない苦労を実感することで、今後は目の不自由な方への接し方も変わりそう」と満足げ。大平さんは「視力が無くてもこんな楽しみ方ができることを知ってほしかった」と話していた。(森健太郎)