2008年8月31日(日)掲載

◎九死に一生を得たネコ 直売所の「店長」に就任…福島の大久吉田商店
 【福島】福島町三岳8の水産加工会社「大久吉田商店」(吉田隆悦社長)に隣接する直売所内に、新しく「店長の席」が設けられた。そこで来客を見守るのは雄ネコの吉田天(てん)店長(1歳4カ月)。一時は生命の危機にさらされながらも、吉田社長の家族や従業員の懸命な看病で奇跡的に回復した幸運なネコだ。地域住民の間で「あそこにはすごい店長がいる」「表情や振る舞いがかわいい」と人気を集め、客足も伸び、商売の盛り上げに一役買っている。(田中陽介)

 同社の水産加工場で昨年3月下旬、天井裏からネコの鳴き声が聞こえてきた。何日たっても鳴き声はやまず、吉田社長の妻寿子さん(52)や従業員らが心配して探してみると、小さな野良ネコが奥まった穴にはまって動けなくなっていた。

 何とか救出したものの脱水症状がひどく、すぐに函館市内の動物病院へ運んだ。診断では「手遅れかも」と告げられたが、寿子さんらは「何とか助けたい」と帰宅してからミルクや栄養剤をスポイトで少しずつ与え、排尿の世話なども続けた。

 その結果、1週間後には元気を回復。名前は助け出された天井にちなみ「天」と付けられた。温和で人懐こい性格から、家族や従業員らにもかわいがられている。ただ、水産加工場はネコにとって大好物だらけ。食品業は衛生、安全が第一なだけに、商品に手を出さないように、吉田社長は厳しくしつけた。今ではスルメやサケフレークなどを目の前にしても、用意された食事以外は見向きもしない状態になっている。

 愛らしい姿と心和ます雰囲気を買われ、8月1日付の人事異動ならぬネコ異動で、晴れて「直売所の店長」の辞令が出た。ネコが好む高さ70センチの座席で午前9時から午後5時まで、しっかり座り続けて勤務している。給料はマグロのキャットフードという現物支給だ。

 新店長就任が口コミで広がり、夏休み中には多くの小学生が「天ちゃんいますか?」と店に足を運んだ。「あそこに連れてって」と子どもにせがまれ、一緒に来店した保護者が商品を購入するという思わぬ“相乗効果”も生まれている。寿子さんは「子どもにいくら触られたり、なでられても鳴かないし、かんだりもしない。本当にやさしい性格です」と話す。

 出世を越された形となった工場長で、吉田社長の長男、隆寿さん(29)は「やさしいはずなのに、なぜかわたしにだけは“ネコパンチ”をしてくる。『仕事に精を出せ』という激励の意味だと理解しています」と笑顔。天店長は年内無休で、年明けに正月休みを取る予定だ。


◎「迷子ベル」実用新案登録…かとう時計店
 【木古内】木古内町本町47、かとう時計店(加藤幸矢店長)の代表商品で、山菜採りの際のクマよけにも活用されている「迷子ベル」がこのほど、特許に当たる実用新案登録となった。特許庁の認可を受け、今後は商品製造(技術)・販売のアイデアの独占権が与えられ、営業や広報活動にも有利となる。加藤店長(64)は「顧客と意思疎通を図りながら、開発に取り組んだ努力がこのような形で評価され、本当にうれしい。いつも応援してくれた家族や地域に感謝しながら、今後も皆さんに必要とされる商品を提供していきたい」としている。

 特許は13日付で、同店には28日に郵送で登録証書が届いた。

 ベルは、再利用のペットボトル(280ミリリットル)に小型音響装置を独自の技術で組み込み、キャップを閉める度に大音量のメロディーが無作為(6曲)に流れる仕組み。開店5年後の1975年に開発したラジオ型ベルを母体に、「コンパクトで持ち運びに便利なものを」「ただの大音量だけではなく遊び心もほしい」といった購入者からの意見、要望を参考に、製品開発に励んできた。

 ペットボトル型は3年前から販売し、山菜採りシーズンには「クマよけベル」の愛称で人気を博し、最近では防犯や自然災害時の救命グッズとしても注目を浴びている。

 「命を預かったという気持ちで、一切手を抜かずにつくっている。知恵も重ねた」と言うように、年々機能性は向上し、最新作は誤作動防止や衝撃防止のクッション加工(発泡スチロール)が施されている。医薬品や食料を入れることができる空間もあり、確かな技術とともに柔軟な発想が特許の原動力ともなった。

 加藤店長が商品開発に励む様子を見守ってきた妻蓉子さん(61)は「商品の売れ行きが芳しくないときも、笑顔を絶やさず、いつも前向きだった。特許はお客さまと築いてきた信頼の結晶だと思いたい」とほほ笑む。

 加藤店長は「特許がゴールではなく、この貴重な権利をどう生かすかが課題」と意気込み、「この特許で、小さな町からでも、頑張れば何でも出来るということが証明された。『木古内頑張ろう!』の合言葉で、このベルを生かして郷土を元気づけたい」と張り切っている。(田中陽介)


◎1200人躍動…「YOSAKOIソーラン祭り道南大会」
 函館市や道内外のYOSAKOIソーランチームが参加する「第6回YOSAKOIソーラン祭り道南大会」(実行委主催)が30日、メーン会場のクイーンズポートはこだて(市内若松町)で始まった。31日には道南や札幌、旭川市などの37チーム、計約1200人が市内の4会場で躍動感あふれる演舞を繰り広げる。

 30日は前夜祭で、福田繁幸実行委員長(42)が「笑顔と熱気あふれる踊りで会場を盛り上げて」と参加者に呼び掛けた。市内の大学や短大などの学生約40人で構成する「函館学生連合〜息吹〜」の演舞でスタート。赤や紫色など彩り豊かなそろいの衣装に身を包んだ踊り子たちは、アップテンポな曲に合わせて熱のこもった踊りを披露し、観客も盛んな拍手を送っていた。

 同大会に初めて参加した函館学生連合の函館大1年、笠井隆治さん(19)は「地元で踊ることが出来て最高の気分。満足の演舞ができた」と笑顔を見せた。毎年見に来ているという同市元町の三上文子さん(74)は「力強く若さあふれる踊りに元気をもらった」と話していた。

 31日はメーン会場のほか、大門グリーンプラザ(松風町)、金森赤レンガ倉庫群会場(豊川町)、東日本フェリー函館ターミナル(港町)で本祭が行われる。開始時間はメーン会場が午前9時半、金森、大門の両会場が同10時、東日本フェリー会場が午後1時から。(水沼幸三)


◎地デジの魅力 分かりやすく…聴覚障害者を対象に説明会
 聴覚障害者を対象にした「耳の不自由な人のための…地上デジタル放送説明会」(函館中途失聴者・難聴者協会主催)が30日、函館市総合福祉センターで開かれた。NHK函館放送局の協力を得て地上デジタル放送の受信方法や魅力などを説明。手話通訳や要約筆記などを通じて、参加した30人が理解を深めた。

 これまで地上デジタル放送に関する説明会があっても手話通訳などの配慮がなく、参加しにくかった聴覚障害者のために初めて企画。この日は会場に手話通訳、要約筆記のほか、補聴器・人工内耳にマイクの音声を直接送り込んで聞こえやすくする「磁気誘導ループ」を準備し、情報が行き届くようにした。

 同局技術部の白鳥義人さんがアナログからデジタルへの移行スケジュールをはじめ、実際にデジタル放送の映像やデータ放送を見せながら画像の鮮明さや利便性を解説。「ただ見るだけのテレビではなく、これからはデータ放送も有効に利用して」と話した。

 参加者からは「話をゆっくり聞ける技術はないか」「字幕放送では字幕が映像に重なって見づらくなる。何とかならないか」などの質問や要望が出た。

 同協会事務局の三好昭博さんは「参加者から取ったアンケート結果を踏まえ、要望があれば次回以降の開催も考えていきたい」と話している。(宮木佳奈美)


◎2年間で27人職場復帰…市のメンタルヘルス対策
 函館市が職員のメンタルヘルス(精神や心の健康管理)対策を本格的に実施して2年が経過した。うつ病などの早期発見や治療に向けたカウンセリング体制、スムーズな復職に向けた試験就労制度などを取り入れ、2年間で27人が職場復帰している。

 市は2006年7月からメンタルヘルス対策を実施。市役所8階健康管理室で毎週火曜日に臨床心理士によるカウンセリングを実施している。市職員厚生課によると、本人や上司による相談が2年間で延べ173件あった。メンタル面での休職者は増加傾向にあるといい、昨年度は10月現在で21人の休職者中14人がメンタル疾患だった。

 「うつ病などの『心の病』は誰もが発症する可能性があり、本人は心から苦しんで死を考えたり、自己を全否定したりする。病気に対する周囲の認識や理解が欠かせない」と同課は説明する。

 カウンセリングなどを通して「心の病」と診断され、病気療養で1カ月以上休んだ職員には、市幹部と産業医で組織する健康判定審査会で職場復帰に向けたプログラムを作成する。本人の気持ちと医師の見立て、職場の人員体制に配慮しながら通常で2カ月程度の試験就労をする。

 試験就労中は休職扱いで、本人に負荷がかからないよう午前中だけの就労、午後3時まで、フルタイムと伸ばし、仕事内容も軽易な内容から徐々に上げていく。復職も本人を含めた健康判定審査会で決定し、階段を一歩ずつ上がるように復帰し、元気を取り戻していく。休職と復職を繰り返していた職員が試験就労の結果、健康になり復職したケースもあり、一方で試験就労を通して自身をよく考え、退職の道を選ぶ職員もいるという。

 同課は「病気やけがなど一般疾病とメンタル疾患の区別はあっても差別があってはならない」と話す。管理職には病気の正しい認識を持たせるための講習を義務付けており、周囲の理解と適切なサポート体制、スムーズな復職ができるような環境づくりを進めている。(高柳 謙)


◎発掘の成果を解説…上ノ国町教委荒神堂説明会
 【上ノ国】中世の山城・勝山館跡(国指定史跡)で、城代・蛎崎基広(1509―48年)をまつる「荒神堂(こうじんどう)」の発掘調査を進めている上ノ国町教委の現地説明会が30日開かれ、住民や歴史ファンら約40人が参加し、町教委の塚田直哉学芸員の話に熱心に耳を傾けた。

 基広は主君の暗殺計画が発覚して殺害された。松前藩の歴史書「新羅之記録(しんらのきろく)」は、基広の埋葬場所近くにお堂を建てて、亡霊を鎮めたと記している。江戸時代後期の1841年には松前藩主が夷王山を参拝する際、周囲に玉石を敷き詰め、石積みや柵を設けるなどの改修工事を行ったとの記録もあるという。

 塚田学芸員は「江戸時代に作り直された荒神堂の痕跡は確認した。江戸時代より古い礎石(建物の基礎に使われる平らな石)の列も見つかった。最初に作られたお堂の痕跡かも知れない。今後詳しく調べていきたい」とした。

 荒神堂周辺の発掘調査では、新たに東側に面した沢沿いの斜面で5基の墓を確認。町教委では、地層や副葬品などの特徴から2基は江戸時代のもの、3基は勝山館が築かれた中世の墓とみている。中世の墓のうち1基は頭を東の方角に向け、足を伸ばして体をあおむけにするなど、アイヌ特有の埋葬様式がみられた。もう1基は和人の墓で、頭を北に向け体を折り曲げる「屈葬」だった。棺おけの痕跡も見つかった。

 勝山館の背後にある夷王山東斜面には、600基余の和人やアイヌの墓が密集する「夷王山墳墓群」があるが、勝山館の正面に当たる荒神堂付近で複数の墓を確認したのは初めて。塚田学芸員は「この場所で墓が複数見つかったのは予想外。今後の調査で意味合いを考えていきたい」とし、参加者も歴史のロマンに思いをはせていた。(松浦 純)


◎手づくり商品 完売御礼…3高校合同で販売イベント
 【北斗】大野農業、函館商業、函館水産の3高校合同イベントが30日、北斗市大工川48の農作物直売所「六輪村」で行われた。多くの地域住民らが訪れ、高校生が手作りした食品や菓子など目当ての品々を買い求めていた。

 3校が指定を受け、本年度までの3カ年で取り組んできた道教委の「北を活かす人づくり」推進事業の集大成イベント。農作物直売グループ緑友会「六輪村」(東寺百合子代表)の「消費者交流会」と合同で開催した。

 会場では、高校生の販売開始時間前から市民らが列を作った。函館商業の米粉で作ったシフォンケーキ50個や函館水産の缶詰約100個、大野農業のパウンドケーキ約40個は販売開始後20分で売り切れるほどの人気ぶり。3校の加工品を集めた特別ギフトセットや、福島商業高の出品した海産物加工品も注目を集めていた。

 各校の商品を買い求めた同市内に住む佐藤忠明さん(60)は「以前から興味があった。家で味わいたい」と話し、妻の元子さん(62)も「どれも安いし安全な品物ばかり」と喜んでいた。

 同日、大野農業が企画した景勝地などをバスでめぐる「フットパスツアー」も行われ、函館市民や保護者ら約20人が参加した。(新目七恵)