2008年8月9日(土)掲載

◎野外劇に高橋知事出演
 特別史跡・五稜郭跡(五稜郭公園)で開かれている市民創作・函館野外劇の第21回公演「星の城、明日に輝け」(NPO法人市民創作「函館野外劇」の会主催)の8日の公演に、高橋はるみ知事がゲスト出演した。箱館戦争の場面で大鳥圭介役を務めた渡島支庁の畑秀叔支庁長とともに舞台に立ち、蝦夷共和国を誕生させた榎本武揚役を演じた。

 道知事が野外劇に出演するのは、1993年の第6回公演に出演した横路孝弘元知事(現衆院議員)以来。高橋知事は開演前、キャスト村でキャストやスタッフに対し「きょうは北京オリンピックの開幕と重なったが、観客に喜んでもらえるように一生懸命頑張りましょう」と呼び掛けた。

 さらに約1200人の観客を前に、「市民ボランティアで成り立っている国内的にも大規模な市民創作劇で、以前から出演したいと思っていた。活動を通じて、北海道の活性化につなげてほしい」とあいさつした。

 劇では刀を携えた軍服に帽子姿で登場。土方歳三が最後の決戦に向かうシーンでは、新政府軍に撃たれ絶命した土方に駆け寄り、フランス軍砲兵少尉ブリュネとの別れでは、ブリュネと握手を交わし、敬礼で見送った。

 終演後、高橋知事は「とても緊張しましたが、スポットライトを浴びるシーンでは感動しました」と話していた。(山崎純一、小橋優子)


◎企画【あの日を伝えたい(戦争体験者を訪ねて)】(1)
 一瞬のせん光が数十万人の命を奪い、運命を狂わせた原爆。その惨禍を知る人が函館にもいる。 函館市川原町の佐藤正毅さん(77)は1945年8月9日、学徒動員で長崎市内にあった魚雷製造拠点の地下兵器工場で作業していた。当時15歳。原爆投下の午前11時2分、突然胸に爆風を受け、辺りは真っ暗になった。工場は爆心地から2・3キロ離れたトンネルの中にあり、やけどはまぬがれた。「外に出て小高い場所から見下ろした街は踏みつぶされたマッチ箱のようだった」。辺りは不気味な静けさに包まれていた。

 爆心地に近い自宅に向かう途中、いくつもの衝撃的な場面に遭遇した。「橋の近くで人が立ったまま全身黒焦げになり、死んでいた」。原爆の恐ろしさを物語る光景だった。

 母親ときょうだいは、母親の実家がある長崎市近郊の諌早市に疎開し、当時は父親と2人暮らし。安否が分からない父親を数日間、1人で探し回った。長崎の街は人々のうめき声や泣き声であふれ、助けを求める人たちが足にしがみついてきた。父親と無事再会できたのは原爆投下から4日後だった。

 「父を探すのに一生懸命で何もできなかった」。あの時、助けを求めてきた人たちの姿が今も頭から消えない。長く被爆体験を語ることがなかった大きな理由だ。毎年8月が近づくと気持ちが不安定になり、睡眠薬に頼る。原爆の記憶は63年たった今でも佐藤さんを苦しめる。

 戦後60年の節目に初めて人前で被爆体験を語り、少し気持ちが軽くなった。「子どもたちには戦争の実態、悲惨な結末をよく知ってもらい、再び繰り返さないという強い信念を持ってほしい」と切に願う。

 同市西旭岡町の槙本喜一さん(83)は自らが被爆者と分かったのが1985年。広島の知人に原爆投下の2日後、市内に入ったことを話し、被爆者健康手帳の申請を勧められた。虚血性心疾患など体にも異変が出ている。

 愛媛県宇和島出身で松山経済専門学校(現・松山大)の学生だった20歳の時、通信兵として九州の部隊へ。静岡への移動途中、広島を通過した。裸同然の女性がぐったりとした子どもを抱いてぼう然としていたのが目に焼きついている。

 「直後の悲惨な状況は見てないが、被爆地を通過した1人として平和の尊さと核兵器の廃絶を伝えたい」。当時は学生でも勉強ができる環境ではなく、夜中でもたたき起こされ、訓練を強いられた。戦争に奪われたあの時間が惜しくてならない。「元気な若者は軍隊に送られ、特攻隊の志願兵も多かった。当時、日本の若者は死を運命付けられる消耗品のようなものだった」。言葉が重く響いた。

 「道南被爆者の会」(田口弘会長)の会員は佐藤さん、槙本さんを含めて34人。ことしも9日午後1時半から、函館市亀田福祉センターで原爆死没者道南追悼会を開く。“あの日”の語り部たちの平均年齢は78歳。戦争の記憶を風化させまい―。恒久平和への強い思いが支えている。(宮木佳奈美)

 戦後63年―。多くの犠牲者と深い悲しみだけを生み出す戦争は今なお、世界各地で繰り返されている。今を生きる者に課せられているのは、過ちを繰り返さないため、その悲劇を語り継ぐこと。15日の終戦記念日を前に、戦争を体験した函館市民を訪ね、刻み込まれた記憶に耳を傾けた。



◎道南でも不登校 増加傾向
 昨年度の渡島、桧山両管内の公立小・中学校の不登校児童・生徒数は計311人(速報値)に上ることが、渡島、桧山両教育局の調べで8日までに分かった。前年度比12人増で、全児童・生徒数の0・85%に当たる。2005年度から2年連続で増えており、全国、全道と同じように、道南でも増加傾向にあることが明らかになった。(新目七恵)

 文部科学省の07年度児童生徒の問題行動などの調査に関し、両教育局がまとめた。人数は年間30日以上の長期欠席があり、主な理由が「不登校」の児童、生徒数を指す。

 渡島管内2市9町の公立小学校では、全児童の0・32%となる70人(前年度比14人増)、公立中学校では全生徒の1・87%となる211人(同4人減)が不登校だった。一方、桧山管内7町の公立小学校では全児童の0・13%となる3人(同3人減)、公立中学校では全生徒の2・25%となる27人(同5人増)だった。

 渡島教育局によると、渡島管内の小学校では、学年が上がるごとに不登校が増える傾向にあり、1年生でも不登校の児童がいる。中学校では2年生が特に多いという。

 不登校のきっかけで、最も多いのは「本人にかかわる問題」。不登校状態が続いている理由は「不安など情緒的混乱」「無気力」などが挙げられている。不登校の児童、生徒が登校できるようになった学校の措置として、「家庭訪問」などがあるが、そうしたケースは近年、全体として減少傾向にあるという。

 道教委学校安全・健康課は「調査結果を踏まえ、課題解決に向け、スクールカウンセラーの配置や教職員の研修事業の充実などを図りたい」としている。


◎ハートランドフェリー、奥尻便の運賃値上げへ
 【江差】船舶用燃料の高騰を受けて、江差―奥尻、せたな―奥尻の両航路を運航するハートランドフェリー(本社・札幌、蔦井孝典社長)は7日までに、10月1日以降の旅客・車両航送運賃に、燃料油価格変動調整金(バンカーサーチャージ)を加算することを決めた。調整金制度による運賃改定は2006年1月以来2度目となる。(松浦 純)

 両航路では、1等ラウンジ、1等和室・椅子席、2等船室の大人1人(子供半額)の片道旅客運賃に調整金を新たに加算することで200円の値上げとなる。同社は06年に調整金制度を初めて導入。旅客運賃に100円分の調整金を加算している。

 10段階に分かれている車両航送運賃は、江差―奥尻航路は、車両の長さに応じて3メートル未満は460円、最大の12メートル未満では2040円、せたな―奥尻航路でも3メートル未満340円、12メートル未満1440円の値上げとなる。自転車やオートバイの航送料金も両航路で排気量などに応じて120―180円アップする。

 同社江差支店(嶋野貞二支店長)は「燃油価格は急激な上昇を続けている。離島の重要な交通インフラである航路の運営が困難な状況にある」として、燃油価格上昇分を運賃に上乗せすることについて理解を求めている。

 運賃に関する問い合わせは同支店TEL0139・52・1066へ。


◎函館市湯川町の船矢深雪さんが句集発売
 函館市湯川町の船矢深雪(本名・美幸)さん(75)がこのほど、長年の俳句人生を振り返り、函館の町並みを題材にした句集「風わたる街〜箱館から函館へ〜」を美研インターナショナル(東京)から出版した。船矢さんは「函館の魅力を多くの市民に伝えたい。句集を手に、函館市内を散策してもらえれば」と話している。(小橋優子)

 船矢さんは函館遺愛女子高校から道教育大函館校を経て、道内で民放局のアナウンサーとして活躍した。俳句は大学時代から始めた。「俳句は世界で一番短い詩。その中で美しい言葉と感情を表現することに引かれた」と話す。

 現在は北海道俳句協会や函館俳句協会、南北海道現代俳句協会などに所属。句集発刊は2年ほど前から準備を進めてきた。「俳句に距離を置く人がまだまだ多い。だからこそ、写真やイラスト、地図を添え、誰もが楽しめる句集を心掛けた」と船矢さん。自ら撮影した函館ハリストス正教会などの写真や、市内の観光名所を記した地図も掲載している。

 句は「教会の鐘」「天界の街」「波止場」「鈴蘭」「翼から」の5部構成。ロープウエーの動きと恋する男女の気持ちを重ね合わせた「ゴンドラとかすかに揺れる夏の夕」、キリスト教の復活祭にちなんだ「チャチャ登り二人の手には彩卵」など全89句が盛り込まれている。

 出版後、市民や友人から「函館を離れてしまったが、句集を読んで懐かしい思いがよみがえった」などと手紙が寄せられ、感動したという。船矢さんは「函館を訪れるのが初めての人にも親しんでもらいたい。特に若い人たちに俳句の楽しさ知ってほしい」と話している。

 B6判48ページ。1050円で各書店で販売中。


◎競輪場に水遊びコーナー開設
 市営函館競輪場(函館市金堀町10)の芝生コーナーに子供向けの水遊び広場が開設され、地域住民や親子連れの来場者に好評だ。競輪ファンだけでなく、広く市民に公共施設として競輪場を利用してもらおうと、日本トーター函館競輪事業所が開設した。18日まで開設し、入場料、駐車料とも無料(12日は休館)。

 8月の夏休みイベントとして、競輪場の海側に設置。幼児から小学校低学年向けにビニール製のプールや噴水、滑り台など10基を配置した。芝生には休憩用のパラソルや他の遊具もあり、日本トーターは「地域住民の憩いの場としても、自由に利用してほしい」と話している。

 同市乃木町1の主婦中田洋子さん(35)は長男の爽太ちゃん(4)、二男の健太ちゃん(2)や友人たちと訪れている。「インターネットで開設を知り、何度も利用しています。弁当やお茶、お菓子を持ってゆっくり楽しめ、本当に助かっています」と笑顔で話していた。

 日本トーターでは16日から18日までの「お盆ナイター競輪」で、出店などのイベントのほか、第1コーナー観覧通路に観戦用のパラソルを設置し、迫力あるレースを楽しんでもらう企画も計画している。(高柳 謙)