2008年9月1日(月)掲載

◎ソバ畑で松前神楽
 【福島】地域の安全や繁栄を祈り、秋の豊作を喜ぶ「第7回福島町『千軒そば』の花鑑賞会」(実行委主催)が31日、福島町千軒地区のソバ畑で行われた。純白のソバの花が秋風に揺れる中で、町民有志8人が松前神楽を奏上。演目ごとに会場からは「ようそろう(良い候)」と大きな掛け声が響いた。

 鑑賞会は、特産と伝統芸能を織り交ぜた内容で、秋の福島を代表するイベント。ことしも町内外から大勢が来場した。

 松前神楽は道無形文化財で福島では小学生から社会人でつくる福島町松前神楽保存会が伝承に励んでいる。

 太鼓や笛に合わせ、楽人8人が、五穀豊穣(ごこくほうじょう)の「福田舞」や家内安全の「八乙女舞(やおとめまい)」など5座を披露。八乙女舞では、福島中3年の田中真実さん(14)と笹井奈保さん(15)が、みこ姿で優雅な舞台を見せた。

 主催者を代表し、千軒地域活性化実行委の三浦勇会長(71)が「皆さまのご多幸をお祈り申し上げます。多くの来場ありがとうございました」とあいさつした。

 昨年の様子を新聞で知り、ことし初めて来場した函館市の中村房江さん(65)は「幻想的な雰囲気がとてもすてきだった。また来年も来たい」と興奮した様子だった。(田中陽介)


◎函館競輪場で戸井マグロの解体ショー
 函館市金堀町10の函館競輪場で31日、道内外の市場で高値で取引されている「戸井マグロ」の解体ショーと即売会が開かれた。会場には多くの市民らが詰め掛け、地域を代表するブランド魚にまで成長したマグロが、手際よくさばかれていく様子をじっと見守っていた。

 函館ナイター競輪の来場者向けイベントとして実施。戸井漁協の森祐組合長は「前浜では現在、マグロ漁の最盛期を迎え、出荷先の全国各地で一番高い競り値がついている。一度賞味して、戸井マグロの味を知ってほしい」とあいさつした。

 解体ショーに登場したのは、津軽海峡で1週間ほど前に水揚げされた約80キロの本マグロ。船上で活締めにしたものを5、6度の低温冷蔵で熟成させたことで食べごろを迎えており、長い包丁でさばかれてあらわになっていく赤みを帯びた身に、見物客からは歓声とため息がこぼれた。

 解体後には、戸井マグロ3本約220キロ分を赤身やトロなどの部位ごとに切り分けて即売会が行われ、地元ではめったに手に入らない高級品を求めて、幾重もの人だかりができていた。(浜田孝輔)


◎【企画】新時代の青函交流 トンネル開通から20年(上)
 正念場迎えるツインシティ
 連絡船やフェリーで結ばれてきた道南と青森との交流は、1988年の青函トンネル開通により新たな時代の幕を開けた。両地域の中核都市である函館市と青森市は、青函トンネル開業1周年の89年3月に「ツインシティ(双子都市)」を提携。教育、文化、福祉、スポーツ、経済などあらゆる分野における市民レベルの交流を活発化させてきた。

 函館港まつりと青森ねぶたまつりへの双方の参加や、両市を会場に行われる青函対抗総合体育大会に夏と冬合わせて約1000人が参加するなど、その活動が成果として表れている事例も少なくない。

 しかし、交流事業全体の件数は、初年度の55事業が2001年度には149事業と順調に拡大していったものの、これ以降は伸び悩みが続いており07年度は131件まで減少。この131件には、休止34件、未定23件も含まれ、青函ツインシティ推進協議会が活動を確認しているのは72件と、01年度に比べ半減している。

 同協議会函館事務局の佐藤直孝市地域振興課長は「交流事業は各団体の判断によって行われているため減少している要因はさまざまだが、会員の高齢化、財政難、事業内容のマンネリ化などが多いようだ。協議会としては財政面で支援することは難しいので、各団体が自主的に活動内容を見直しするのを見守ることしかできないのが現状」と苦しい胸の内を明かす。

 提携の具体的成果としては1995年、青森産のブドウを使い、はこだてわいんが製造した「青函ワイン・すぐりの詩」を青函ブランドとして商品化した。しかし、開発費用や宣伝の難しさから以降は提携商品化は途絶えている。

 その一方、新たな展開を模索するため05年には「交流強化促進委員会」と下部組織の「青函ブランド構築検討小委員会」を立ち上げた。同委員会では「市場のニーズなどマーケティングも含めて、観光にも直結するようなPR効果の高い商品を開発していきたい」と活発な協議を重ねている。

 2009年には青森ゆかりの作家、太宰治の生誕100年を迎えることから、太宰の作品にちなんだ「赤い糸プロジェクト」の実施計画も進められている。佐藤地域振興課は「青函の結びつきを太宰の作品『赤い糸』に重ね、観光アイテムの創出や、モニュメントの設置などによって全国にアピールしていきたい」と考えている。

 また、新幹線新青森駅の10年度開業を控え来年、青森県での大規模な記念イベントが予定されており、同協議会は「停滞気味だった青函交流への盛り上がりを復活させる起爆剤にしたい」(佐藤課長)と知恵を絞っている。

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 青函ツインシティの締結から来年で20年を迎える。地域活性化に連携して取り組むことを目指した一時の熱気は陰りが見え、活動のマンネリ化や停滞感も指摘される。新幹線の開業に向けた広域観光の必要性が高まる中、転換期を迎えている青函両地域が向かうべき新たな方向性を探る。(小川俊之)