2008年9月10日(水)掲載

◎「ひまわり会」が喜寿98人に手づくり「毛糸の靴下カバー」敬老の日に贈る
 【福島】「社会福祉の向上」を目標に掲げ、福島町内の主婦11人で構成するボランティア団体「ひまわり会」(堀繁子代表)は今年も敬老の日(15日)に合わせ、町内のお年寄りに手づくりの「毛糸の靴下カバー」を届ける。一年掛かりで製作したぬくもりあるプレゼントで、メンバーが町役場に持参し、15日前後に町職員から喜寿(77歳)の98人全員に贈られる。のし袋に一足ごと丁寧に入れて、「お元気でお過ごしでしょうか? どうぞ、足も気持ちもポカポカになりますようお祈りいたします」との手紙も添えた。(田中陽介)

 古里を長年支えてきた年配者の長寿を地域一丸で祝いたいと、8年前から続ける奉仕活動。これまでに贈った靴下カバーの総数は1000足近くに及ぶという。

 メンバーは家事やパートなど、各自の仕事の合間を縫いながら年中編み物作業に励む。「その年の人数分が用意できたら、また次の年、さらに次の年」と作業を地道に続けてきている。

 毛糸は肌触りの良い高級品を使用。毎秋の福島町特産品イベントで行うフリーマーケットの益金を購入費に充てている。

 毎月1度開催する会合では「男性は茶色かグレー、女性は赤にベージュ」「サイズも大きいのから小さいのと豊富。デザインも重要」など、さまざまな工夫を凝らしながら編み物作業に当たる。掘代表(61)は「全て手作業なので苦労も多いが、その分、『ありがとう』と感謝してもらえると心が和む」と笑顔を見せる。

 ひまわり会は毎年3月、町社協と協力して独居老人に手作り弁当を届けたり、初夏には青函トンネル記念館前庭の花壇整備、秋の文化祭では食堂スタッフとしても活躍している。メンバーの北條タキエさん(65)は「仲間がそろえば自然に話が盛り上がり、時間を忘れて活動を楽しんでいる。元気でいられる限り、ボランティアは続けたい。これが生きがい」と話す。


◎【インサイド】東日本フェリー撤退、燃油高の荒波直撃
 東日本フェリー(函館市港町3)の道内と青森を結ぶ3航路からの撤退表明は、地元・函館に大きな衝撃を与えた。青函航路の復権の切り札として導入された最新鋭の高速船「ナッチャンRera(レラ)」の就航からわずか1年。津軽海峡エリアの活性化や広域観光振興に商機を見た同社の狙いは、想定外の燃油高騰の荒波を前にもろくも崩れ去った。アイヌ語でレラは「風」の意味。文字通り“風”のようなスピード撤退に追い込まれた背景を追った。(森健太郎)

 「こんなに油が上がるとは思っていなかった。前年並みであれば何とかやっていけたが…」。函館市内で8日に記者会見した古閑信二社長は、想定外の燃油高騰に苦渋の表情を浮かべた。燃油高に伴う赤字は2008年12月期決算で青函航路だけで約33億円(在来船を含む)。このうち7割以上を占めるのが、燃料に割高な軽油を年間4万キロリットルも使う高速船だ。

 高速船の収益は事業全体の生命線だが、5月の大型連休後から「本業部分も急速に落ち込んだ」(古閑社長)。高速船の利用客は初年度約33万人にとどまり、目標の約55万人を大きく割り込んだ。特に「繁忙期の8月が前年比127―128%しか伸びなかった」(同)ことが撤退を決定づけた。

 さらに、原油高騰は旅行者の消費マインドの冷え込みへと波及し、「旅客」を中心とする高速船の低迷に追い打ちをかけた。古閑社長は「特に5月の暫定税率復活後、乗用車の利用がほとんど伸びなかった」と漏らす。近年の旅行形態は「安・近・短」の傾向が強まっていることに加え、ガソリン高に伴うマイカーの乗り控えやレンタカーの普及が進んでいることも傷を深くした。

 昨年と今年、鳴り物入りで導入した2隻の高速船の建造費は合わせて約180億円。就航に合わせて新築した青函両ターミナルの建設費も約38億円に上る。優に200億円を超える巨額な投資に見合った事業の成否をいぶかる声もある。ある地元経済関係者からは「公益性の高い事業に資本論理を持ち込みすぎた」との批判も聞こえる。

 来年には開港150周年を迎える函館市。3年連続で観光客が500万人を割り込むなど苦戦が続く中、“ナッチャン姉妹”は「希望の架け橋」(函館国際観光コンベンション協会)となり得る久々の明るい材料だった。それだけに関係者のショックは大きい。9月からは運賃の値上げと段階的な減便で経営改善を図ろうとしたが「焼け石に水」だった。

 「航路をやめたい訳ではなく、やめざるを得なくなった」。古閑社長が無念さをにじませた言葉に、市場原理と観光の起爆剤としての大役の間で揺れる姉妹船の憂き目が垣間見える。


◎秋田県の小学校が木古内で体験学習へ
 【木古内】木古内町の基幹産業である漁業と農業、酪農の一端を体験してもらう教育事業が16―18日に町内各地で行われる。秋田県北秋田市の鷹巣小(五十嵐經校長、児童91人)の6年生16人と教職員が2泊3日の日程で町内に滞在し、地引き網やホタテの耳づり、搾乳、野菜収穫などに汗を流す。地域住民が主体となって策定した北海道新幹線の開業に対応するまちづくり構想にも合致する事業で、町は「新幹線時代を見据えた活性化事業の開拓につなげたい」としている。

 総務省と文部科学省、農林水産省が子どもの自立心や規範意識の健全化を目指して本年度開始した「子ども農山漁村交流プロジェクト」として、木古内では初めて実施される。町内の農漁協、商工会、建設協会、町などの各機関、団体から構成する「まちづくり戦略会議」が町に答申した構想の内容が今回、色濃く反映されている。

 体験プログラムは、水産加工場でホタテ・ホッキの貝殻外しや養殖の下準備(耳づり)、牛の乳搾りなどを企画。地引き網では漁協婦人部らの指導で、水揚げした魚を炭火で焼いて味わい、農家では畑から直接作物を調達しカレーライスを作る計画だ。

 木古内小学校のバレーボール少年団と合同練習を行い、両校の児童や保護者がジンギスカン鍋を囲み、親ぼくを深める。最終日は道新幹線トンネル工事現場を見学し、午後からは引き続き修学旅行として函館市に入る。

 7月には五十嵐校長が木古内を視察。当日までに体験先の関係者が集まり、詳しい打ち合わせを行うという。各種体験は有料で、町まちづくり新幹線課の高谷郁郎課長は「利益幅は少ないが、これが成功して全国区で評判になることを期待している。普段行う仕事が子どもらの目には新鮮に映るはず。『格好いい』『勉強になる』という反応があれば、生産者のモチベーションも高まる。児童の思い出づくりのためにも念入りな準備で迎えたい」という。

 町は実績を重ね、いずれは観光協会や旅行会社などの民間主導で観光体験事業の活性化を図りたい考えだ。(田中陽介)


◎三笠フーズ汚染米問題で道南でも焼酎撤去
 米穀加工販売会社「三笠フーズ」(大坂市)が汚染された輸入米(事故米)を食用と偽って転売していた問題で、道南のスーパーや小売店の一部では9日までに、この輸入米を使っていた焼酎メーカーの商品を撤去する動きが広がった。

 農林水産省は8日、同社の販売先の焼酎メーカー5社名を公表。鹿児島県の喜界島酒造や西酒造、福岡県の光酒造などが挙げられた。

 函館を中心に道南に十数店舗を展開する地元スーパーでは、全店舗の約7割の店で西酒造の主力商品「薩摩宝山」を扱っており、8日中に十数本を撤去した。居酒屋に人気のある売れ筋商品で、担当者は「本来あってはならないこと。地域企業の原料のトレーサビリティー(生産履歴)を把握し切れていないのが問題だ」と語る。

 別の地元スーパーでは「(汚染米が)万が一出ないとも限らない」との理由から、9日の開店前に対象メーカーの商品すべてを撤去した。道南で展開する十数店舗中、半数の店に十数本置いていた。担当者は「消費者の食の不信を招く許せない行為。業界全体に影響する」と憤る。

 業務用の酒類を販売する地元の小売り店では9日までに、ホテルやスナックなど取引先の業者から「薩摩宝山」10本を回収した。一般消費者に対しても、対象焼酎の購入者には返金措置を取ることとし、返品を呼び掛けている。このほか地元の酒小売店や大手デパートの一部で対象メーカーの商品が撤去された。


◎国宝中空土偶の展示始まる
 市立函館博物館(函館市青柳町、長谷部一弘館長)で9日、特別企画展「国宝中空土偶と函館発掘物語」が始まった。会場では中空土偶の第一発見者、市尾札部町の主婦小板アヱさん(76)に西尾正範市長から市長賞が贈られた。展示は23日まで。

 中空土偶が同館で展示されるのは昨年夏の特別展以来。西尾市長は市長賞贈呈に際して「あらためて函館市民を代表してお礼の気持ちを込めて贈ります。国宝を活用して今後の南茅部の振興を図りたい」と述べ、小板さんは「感無量で、見付けた時のことを思い出します」と感慨深げだった。

 市内全域の旧石器時代から近現代までの発掘物など703点を展示。道や市の指定文化財も多数あり、ブラキストンが谷地頭で発見した国内有数の大形磨製石斧(せきふ)や、道内の学術的発掘の先駆けとなったサイベ沢遺跡の出土品も多数並んでいる。

 観覧時間は午前9時から午後5時(入場は午後4時半まで)。会期中無休。入館料は一般300円、高校・大学生200円、小中学生100円。(小泉まや)


◎障害者雇用考える講演会とシンポ
 【北斗】道南地区障がい者就労支援連絡協議会と障害者就労支援ネットワーク構築事業共催の講演会・シンポジウムが9日、北斗市総合文化センターかなでーるで開かれ、障害者を雇用する地元企業幹部や福祉施設の就労支援担当者が取り組みを紹介した。(宮木佳奈美)

 障害者雇用への理解、啓発を目的に地域住民や企業を対象に毎年実施し、障害者を支援する福祉関係者ら60人が参加した。

 シンポジウムでは、七飯町の日乃出食品の丸井昭雄専務、函館市内で「パチンコ富士」を経営する鳥海の恩田泰久副社長、就労支援に取り組むワークス一条就労等支援室長の佐藤浩樹さん、社会福祉法人かいせい就労支援員の鶴田宏樹さんが登壇した。

 丸井さんは「障害があっても健常者より優れた面はたくさんある。就労支援する施設や学校は障害者ができることをもっと情報発信してほしい」と強調。一方、支援側の視点として、佐藤さんは就労支援の現状などに触れ、「訓練が就労につながるようにしていきたい。そのためにも支援者が企業に働き掛けることが大切」と述べた。

 このほか、北海道中小企業家同友会函館支部の伊藤浩事務局長が同会の「2008全道障害者雇用実態アンケート調査」から学んだことについて講演し、同連絡協の尾形永造会長と対談した。


◎13日から青函交流美術展
 函館市と青森県内に住む若手アーティスト11人の作品を集めた「若手作家による青函交流美術展 アオダテハコ森」(実行委など主催)が13日から、BAYはこだてイベントホール(函館市豊川町11)で開かれる。絵画、彫刻、版画などさまざまなジャンルで活動する若手の感性を紹介し、アート分野での青函交流を進めるのが狙いだ。(新目七恵)

 ことしで開業20周年を迎える金森赤レンガ倉庫の記念イベントとして企画。函館側は道立函館美術館の大下智一主任学芸員(41)が代表を務め、幅広い分野で活躍する20―30代の地元在住の作家6人に参加を呼び掛けた。青森側は彫刻家の首藤晃さん(38)が中心で、青森在住の20代の作家5人が出品する。

 函館の参加作家は石川久美子さん(陶芸)、井上千尋さん(アクリル画など)、上田朋佳さん(イラスト)、佐藤志帆さん(彫刻)、隅田信城さん(絵画)、安田祐子さん(絵画)。函館会場の同ホールでは青森の作家を含めた作品約80点が並ぶ予定。17日までで、午前10時―午後7時。入場無料。

 青森側は青森県立美術館で10月12―19日に開催。作家によって展示内容が函館と異なる。午前9時半―午後5時、入場無料。14日は休館。

 大下代表は「この機会にあらためて青函の行き来を活性化できれば」と話している。函館会場の問い合わせは金森赤レンガ倉庫TEL0138・23・0338。