2008年9月20日(土)掲載

◎江差追分全国大会が開幕
 【江差】かもめの鳴く音にふと目を覚まし―。哀愁を帯びた音調が聴衆の心を打つ、第46回江差追分全国大会(江差追分会など主催)が19日、町文化会館(茂尻町71)で開幕した。21日までの3日間にわたり、全国の地区大会を勝ち抜いた402人の歌い手が一般、熟年、少年の3部に分かれて“追分日本一”の栄冠を目指す。

 初日は午前9時から開会式が行われ、大会長の濱谷一治町長、審査員長の青坂満江差追分会上席師匠が出場者を激励。続いて165人が出場する熟年大会、186人が出場する一般大会の予選会がスタート。国内外から集まった出場者は、念願だった全国大会のステージで、万感の思いを込めた追分節を披露。大勢の愛好家が「民謡の王様」と称される江差追分の世界を堪能した。

 20日は午後8時すぎまで予選会が行われ、一般50人、熟年20人の決選会出場者が決まる。同8時半からは、子供たちによる「江差追分大合唱」などのアトラクションも行われる。21日は午前9時の開会式に続き、51人が出場する少年全国大会、熟年、一般両大会の決選会を行う。結果発表と表彰式は午後6時半すぎから。一般、熟年、少年の優勝者が日本一の歌声を披露する。決選会当日の入場料はプログラム代込みで2300円。問い合わせは大会本部TEL0139・52・5207。(松浦 純)


◎中沢さんに無罪判決…業務上横領
 勤務していた八雲町内の調剤薬局で患者の保険負担割合のデータを改ざんし、売上金の一部を不正に取得したとして、業務上横領罪に問われた八雲町東町、無職中沢加奈子被告(29)の判決公判が19日、函館地裁であり、岡田龍太郎裁判官は「被告が不正処理のすべてを実行したと認定するには合理的な疑いが残る。犯人が被告であることをじかに示す証拠はない」などとして、無罪(求刑・懲役2年)を言い渡した。中沢さんは捜査段階から一貫して否認を続け、公判でも無罪を主張し、全面的に争っていた。

 判決によると、同薬局では起訴事実の4件を含め、2003年7月から06年5月にかけて、データの改ざんによる不正返金処理が1218件発生。公判では、被告の犯人性について争われた。

 岡田裁判官は、検察側が立証した業務データ入力時刻の記録や犯行日の業務再現実験などにおける他の従業員のアリバイ成立について、▽業務を行った際に、パソコンに入力するIDは、他人のIDを使用することもあり、各従業員の勤務状況を正確に知ることはできない▽薬剤が前日に作り置きされていた可能性があり、当日に調剤業務を行ったとする虚偽の記録が作成されていた―などと信用性を否定し、「(他の従業員のアリバイを基にした)消去法的な立証では、被告の犯人性を認定できない」と退けた。

 同事件をめぐっては、八雲署が今年2月、2006年5月8日に、勤務していた同薬局の売上金約2万円を盗んだ疑いで中沢さんを逮捕。函館地検は05年4月から06年5月にかけて、1件当たり約2万円、計4件約8万円について同地裁に起訴、中沢さんは逮捕から約3カ月間拘置されていた。今月3日の初公判で中沢さんは「すべての犯罪事実について無罪です」と主張していた。 函館地検の吉田克久次席検事は「予想外の判決で驚いている。判決の内容をよく検討し、上級庁と協議の上、控訴するかどうか決めたい」とコメントした。


◎「家族の支えに感謝」
 「夫や周囲の支えがなければこの裁判は戦えなかった。感謝の気持ちでいっぱいです」―。2月25日の逮捕から約7カ月間、取り調べや公判においても一貫して「犯人ではない」と主張し続けた中沢さんに、函館地裁は無罪を言い渡した。岡田裁判官が「被告人は無罪」と主文を読み上げると、傍聴席で見守った家族からも安Gヒ(あんど)の声が漏れた。中沢さんは閉廷後、弁護人の中村勉弁護士(48)と固い握手を交わし、笑顔で喜びを分かち合った。

 中沢さんは函館弁護士会館で記者会見に応じ、公判中と同様に毅然(きぜん)とした態度で記者の質問に答えた。「7年間一生懸命働いた会社に裏切られた思いもあり、絶望的にもなった」と心情を明かし「一日も早く検察が控訴をあきらめてほしい」と訴えた。同席した中村弁護士は「主張がおおむね認められ、満足している」と述べ、元検察官の経験から「今後、補充捜査をして、控訴審で逆転有罪とするだけの証拠はないと考えている。必ず無罪判決が繰り返されるだろう」と述べた。

 83日間におよぶ拘置中の様子について「『良心を問う』とノートに書かれ(否認を続けていると)バツ印をつけられた」と、厳しい取り調べが続いたことを明かした。また「接見禁止で家族に会えなかった期間がつらかった。(気持ちが折れそうなとき)中村弁護士の励ましが支えになった」と話した。

 中村弁護士は「(長期間勤務していた中沢さんを犯人とする)先入観や見込みが先走ったのではないか。客観的に証拠を精査すれば、逮捕状の請求すら難しかったはずだ」と捜査手法を批判。国家賠償請求訴訟の提訴については「無罪確定を待って検討したい。(検察側の)過失を問うことは十分に可能」と述べ、今後、中沢さんの名誉回復の準備を進めるとした。(今井正一)


◎優先度1は市内10校…耐震調査
 函館市議会の総務常任委員会(井田範行委員長)が19日開かれた。市教委は、本年度実施する函館湯川小と函館宇賀の浦中の耐震診断に関連し、「文部科学省の耐震化優先度調査の結果、優先度1の学校が10校ある。一気に実施できればいいが、本年度はまず2校で実施するため補正予算を組んだ」と述べた。

 斉藤佐知子氏(民主・市民ネット)氏への答弁。1980年に耐震基準が強化され、それ以前に建設された学校施設で耐震診断が未実施なのは50校あるという。建設年度や規模、構造などから優先度を1から5までに分類し、優先度1の学校から順次、実施していく方針。実際に耐震補強が必要かは調査してみなければ分からない。

 斉藤氏は、調査の概要や費用などを質問。市教委の須田正晴生涯学習部長は「概算で1校当たりの耐震診断費用は1000万円で、50校あるため約5億円の財源が必要。まずは優先度1の10校を診断し、問題があれば改築や耐震補強をしたい」と答えた。 時限立法で、2010年度までに補強した場合、国の補助率が高く、有利な起債(借金)発行もできるという。

 また、函館西小・弥生小の統合に関連し、統合校舎整備の考えを求める意見があった。市教委がこれまでの経緯とともに、弥生小校舎を耐震補強して残した場合は約21億7000万円、外壁を一部保存し改築した場合は約11億4000万円で、保存の場合は約10億円の負担増となるため、一部保存の改築としたい考えを伝えた。

 小野沢猛史氏(市民クラブ)は「検討結果を了としたいが、市長の考えは」と質問。多賀谷智教育長は「市長の了解もいただいている」と答えた。(高柳 謙)


◎ペット処分 年間1000匹殺処分…きょうから動物愛護週間
 きょうから動物愛護週間―。昨今盛り上がりを見せているペットブームの陰で、飼い主が飼育を放棄した犬や猫が悲しい運命をたどっている。市立函館保健所(五稜郭町)に持ち込まれ、殺処分される犬や猫は年間約1000匹。ペットの高齢化や病気を理由にする無責任な飼い主は後を絶たない。動物保護ボランティア団体の函館ワン・ニャンレスキューは「最期まで責任を持てないなら初めから飼わないでほしい」と強く訴える。

 同保健所によると、2007年度に持ち込まれた犬は102匹、猫は937匹で、このうち犬29匹、猫915匹の計944匹が処分された。近年の処分数は06年度955匹(犬81、猫874)、05年度976匹(犬81、猫895)とほぼ横ばいで推移。

 一方、07年度に新たな飼い主に引き取られたケースは犬73匹、猫22匹と全体の1割程度しかない。同保健所は「離乳が済んでいない子猫は譲渡が難しい。世話が大変という理由で持ち込まれた病気や高齢の犬も新しい飼い主が見つかりにくい」と話す。

 18日現在、市野犬抑留所(見晴町)には迷い犬として収容された5匹が飼い主を待っている。捨てられたのか、飼い主とはぐれたのかは不明。狂犬病予防法に基づき抑留されるのは3日間だけ。人が近づくと激しくほえ続ける犬、おりを開けると必死で逃げようとする犬、ただじっと横たわっている犬…。期限を過ぎ、新しい飼い主の申し出もなければ10日間から2週間ほどで処分される運命だ。

 捨てられた犬や猫を保護し、新たな飼い主を見つける同レスキューが、活動を始めた2002年8月から保護した犬は750匹。市野犬抑留所から処分寸前の犬を引き取ることもある。メンバーは「抑留所に持ち込まれる犬猫の95%は健康体。ガスで苦しみながら死ぬのに安楽死という言葉は当てはまらない」とし、「犬は体や眼が不自由になっても最期まで飼い主を目で追う。『最愛の飼い主に抱かれて息を引き取りたい』という最期の望みに応えてあげて」と呼び掛ける。(宮木佳奈美)