2008年9月23日(火)掲載

◎洞爺丸台風から54年。生き残った乗組員の三島正明さん
 【北斗】1954(昭和29)年9月26日、台風15号が道南を襲い、青函連絡船の客船「洞爺丸」と貨物船4隻が転覆、沈没した。1400人超の犠牲者を出した青函連絡船史上最大の悲劇を今も知る人が北斗市にいる。洞爺丸の乗組員だった三島正明さん(83)。脳裏には今も、あの日の光景が刻まれている。「洞爺丸台風」の事故から54年―。今年も慰霊の日が近づいてきた。(新目七恵)

 青函連絡船遭難体験記録「台風との斗(たたか)い」(55年、青函船舶鉄道管理局発行)によると、洞爺丸はこの日午後6時半過ぎに函館桟橋を出航したが、約20分で突風に見舞われ、函館港付近で投錨仮泊した。

 当時29歳だった三島さんは事務員として乗船。船内は非常部署発令となり、三島さんは2等ホールの旅客の誘導を担当し、救命胴衣の着用などを指導した。16歳から船で働いていたが、初の事故に遭遇し、「不安だったが、乗組員の使命として客の暴動や混乱が起きないよう『船員の指示に従ってください』と声を出し、冷静な行動を心掛けた」という。「恐怖心から客は一カ所に固まり、寄り添うように手を取り合っていた。子をかばう親の様子も頭から離れない」

 機関室が浸水し、操船できなくなった船は、沈没を避けるために七重浜の砂地に座礁した。「座礁後、船の傾斜角度は激しくなり、一瞬で転覆した。座礁場所や船の角度が悪く、横から波を受けたようだ」と振り返る。

 転覆直前、危険を感じた三島さんは客を左舷側ドア付近に誘導。頭上から波が打ち付ける中、恐怖で興奮状態の客の手や着衣を鷲掴(わしづか)みにして、ドアから数名を船外に引きずり出した。しかしデッキ脱出後、客とともに波にさらわれ、海に投げ出された。気がつくと砂浜に打ち寄せられていた。疲れ切って足は動かず、四つん這いで陸に上がった。

 大きなけがはなく、事故後は遺族との連絡や遺体確認などに追われた。撮影した七重浜付近の現場写真は今も保管している。

 その後は船上人生を勤め上げ、80年の退職後、妻の照子さん(83)と一緒に山登りを始めた。13年掛けて百名山の登山を達成。百山目となった青森県八甲山大岳を登頂したのは奇しくも98年の9月26日。殉職した仲間や客への祈りを込め、山頂から津軽海峡の方角に向かって手を合わせた。

 三島さんは乗組員としての責務や後悔の念から、最近まで事故について一切を語らなかった。26日の慰霊法要には今年も出掛ける。

 洞爺丸台風 九州、中国地方を北上し、函館港沖で洞爺丸、第11青函丸、北見丸、十勝丸、日高丸の青函連絡船を転覆させた台風15号の呼び名。函館市史によると、乗客・乗員合わせて死者1430人(洞爺丸は1155人)、生存者は202人(同159人)のほか、不明者も多数出た。洞爺丸は豪華客船のシンボル的存在だった。この事故は1912年のタイタニック号に次ぐ海難事故とされた。


◎自民党総裁に麻生氏/期待と厳しい意見相次ぐ
 自民党総裁選で麻生太郎氏(68)が第23代総裁に選出された22日、函館市内ではテレビで投票の結果を見守った有権者から「地方の意見を聞いて」との要望、期待の声が聞かれた一方、「総選挙に向けシナリオありきの選挙」との厳しい意見も相次いだ。

 市内湯川町の主婦(44)は「新風を期待したく、同じ女性として小池百合子元防衛相に頑張ってほしかった。小泉前首相が応援したのに(小池氏)に地方票がなかったことは、小泉改革を地方が支持していない証し。麻生さんは地方の意見を広く聞いてほしい」と話す。

 物価高騰や年金、医療問題をめぐり、市内の町会長を務める男性(68)は「町内では75歳以上の高齢者が42%を占め、上がり続ける物価と医療費に不安を抱えている。日本を築き上げた高齢者の生活に目を向けてほしい」と訴える。

 早期の衆院解散・総選挙を見据え、市内昭和の男性自営業(55)は「国民に総裁選の盛り上がりを見せ、総選挙に挑もうとしているシナリオがみえるようだ。民主党の小沢一郎党首と戦う自民党の顔として選ばれたが、麻生さんはしゃべり方に好感を持てるようになってほしい」と話した。

 市内富岡の無職男性(60)は「官僚との癒着をなくさなければ、誰が総裁になっても日本は変わらないだろう。政権交代に期待している」と厳しい表情を見せていた。(小橋優子、山崎純一)


◎江差追分少年全国大会、中島琴美さん2度目の優勝
 【江差】第12回江差追分少年全国大会(主催・江差追分会など)で、江差中学校3年の中島琴美さん(15)=かもめ会支部=が2度目の優勝を果たした。03年の第7回大会に続く“2冠”達成は少年大会では初めての快挙だ。(松浦 純)

 少年大会は中学生までの子供たち約50人が自慢ののどを競い合う。過去11回の優勝者のうち江差町をはじめとする地元勢は中島さんを含めて4人だけ。一般大会を目指す登竜門で、道内外の子供たちがしのぎを削る。一般・熟年大会とは違い、年齢制限を超えないうちは何度でも出場できる。

 小学1年の時から町内の杉山由夫師匠に師事し、江差追分を学び始めた中島さん。前回の優勝時は4年生だった。当時は真紅の優勝旗を手によろめきながらも、大人顔負けの歌声を披露した。

 5年後の今大会。身長も伸び、幾分大人びた表情で、持ち味の愁いを帯びた声で観客をうならせた。司会者が名前を読み上げた瞬間は「まさかと思った。今回は自信がなかったので。とてもうれしかった」という。再び手にした優勝旗とともに、喜びの追分節を歌い上げ、「あれが蝦夷地の山かいな―」という最後の節を歌い終えると、涙があふれて止まらなかった。

 杉山師匠や今大会で9位入賞を果たした妹の弥生さん(13)とともに、町内の介護施設などを訪れ、歌声でお年寄りを励ますボランティア活動にも携わっている。

 来年から高校生となり、数多くのベテラン勢が居並ぶ一般大会の狭き門に挑む。「追分はまだまだ難しいです。これからも続けて一般大会でも頑張ります」。真っすぐな瞳を輝かせながら誓った。


◎福島でソバ刈り
 【福島】福島町千軒地区のソバ畑で22日、収穫作業が始まり、茶色に実ったソバの実をコンバインで次々に刈り取った。収穫量は平年並みの約4―5トンを見込んでおり、関係者は「ことしも豊作」と喜び、これから始まる乾燥作業の準備に追われている。

 3カ所ある計約4・5ヘクタールの畑は、特産で古里を盛り上げる町千軒地区の農家などでつくる「千軒そば生産会」(佐藤孝男会長)が管理。今年は7月13日に種まきを行い、草刈りなどの手入れをしてきた。例年、8―9月にかけて台風や集中豪雨に見舞われてきたが、今年は天候に恵まれ順調に育った。8月31日には畑で松前神楽を奏上し、豊作を祈る「千軒そばの花鑑賞会」も行われた。

 畑近くの旧千軒小中学校体育館で乾燥作業を行い、10月下旬ごろには国道228号沿いのそば店「千軒そば」(同会経営)で、新そばとしてメニューに登場する予定。佐藤会長(62)は「天気が良かったので、今年のソバは最高の出来だと思う。間もなく紅葉も始まる。おいしいそばと美しい景色を味わいに福島に来てほしい」と話している。(田中陽介)


◎フェリー撤退 大間町長が函館市長へ協力要請
 東日本フェリー(函館市港町3)が11月末までに函館―大間など3航路から撤退することを受け、青森県大間町の金沢満春町長が22日、函館市の西尾正範市長を訪れ、航路存続に向けた協力を要請した。西尾市長は「大間町自体が医療や教育を中心に函館の経済圏で、生活航路として大切。共通認識を持ち、連携して存続に向けた運動をしていきたい」と述べた。(高柳 謙)

 会談後に会見した金沢町長は「函館―大間航路は国道の延長で、下北半島から北海道に渡る国土軸であることを国に理解してもらいたい。函館市と大間町、青森県と北海道が一緒に存続運動に取り組んでいただけると力強い」と語った。函館市の財政支援については難しいことを伝えられた。

 東日本フェリーは航路存続の一案として、大間町、青森県、同社がそれぞれ年間1億円を負担することを提案している。金沢町長は「7月末ごろに検討案として示されたが、具体的にその方向で動いている段階ではないし、新たな提案も来ていない」と述べた。同社は、航路存続の手続きを進めるためには10月初めにも方向性を決めなければならないとしている。

 大間町から函館市方面への病院利用者は年間で延べ約5000人。金沢町長は「通院利用者にとっては大変な問題。少しくらいは料金が上がってもいいから存続させてほしいという町民の声がある」と語った。


◎トマト農家・若松さん開発の廃油ストーブに注目集まる
 函館市西桔梗町でトマトハウス栽培を手掛ける若松健二さん(60)が開発した廃油ストーブ「フェニックス」が、燃油高騰の中で注目を集めている。燃料コストの大幅な削減が可能なことに加え、燃焼効率が高く耐久性や安全性にも優れており、農業だけでなくコンブの乾燥や工場の暖房用など、幅広い活用が期待されている。 (小川俊之)

 子どものころから物づくりが得意だった若松さんは「農家がコストダウンを図るには、暖房費の節約しかない」と、5年ほど前から廃油ストーブの開発に着手。廃油ストーブ自体はすでに存在していたが、若松さんは長期間の使用を見越した耐久性、安全性にこだわり、温風機能や温水循環機能を備えた試作品を完成。特許も取得し昨年から本格的な販売を開始した。

 その後も耐久性を高めるため、通常は使用しないステンレスを使ったタイプに改良。値段は1台200万円で他社の同タイプに比べて1割から2割高いが、若松さんは「1、2年で修理が必要となる鉄製のストーブに比べて、ステンレスを使用しているので格段に長持ちする。自分のハウスでも3台を数年間使っているが、耐久性、安全性ともにまったく問題ない」と話す。燃料の廃油も「ガソリンスタンドなど調達する場所はいくらでもあり、燃料代はほとんど無料に等しい。現在の灯油価格を考えると、ひと冬で150万円から200万円は節約になるので、1、2年で確実に購入代金は回収できるはず」という。

 昨年は千葉県の幕張メッセで行われた国際見本市にも展示され注目を集めたが、燃油の高騰が続くここ最近はさらに問い合わせが相次いでいる。若松さんは「実際に性能の高さや耐久性を理解してもらえれば、決して高い買い物ではないはず。コストダウンに加え、廃油を有効利用することで環境対策にもつながる。全道、全国に普及するのが夢」と話している。

 「フェニックス」に関する問い合わせは海渡産業TEL0138・49・5011。


◎ITモールが30日からの総合展示会に出展
 函館市など9団体でつくるグループ「はこだてITモール」は、30日から千葉の幕張メッセで開かれるIT・エレクトロニクス分野で国内最大の総合展示会「シーテック・ジャパン2008」に出展する。産学官を挙げて製品やサービスなどのPRに努め、函館の地域特性、独自の技術力を全国に発信する。

 出展するのは市のほか公立はこだて未来大、函館高専、エスイーシー、グローバル・コミュニケーションズ、マイスター、メデック、iD、エクスプローラ。市は06年に同大と初出展し、07年には7団体合同となり、ことしは民間企業2社が新たに加わった。

 会場では6メートル×9メートルのスペースに各ブースを設置。企業は自社製品を説明するパンフレットの配布や映像を放映するほか、同展に合わせて開発した新製品のソフトウエアを持ち寄るところもある。同大と同高専は研究成果を発表し、市は本州企業が函館に進出する上での立地環境の優位性などを周知していく。

 昨年は全国から895団体が出展し、来場者は約20万6000人に上った。今年は10月4日までの開催で、市工業振興課は「企業のイメージアップや、単独では得られない団体だからこその相乗効果が期待できる。今後の企業誘致、人材確保にもつなげたい」としている。(浜田孝輔)