2008年9月27日(土)掲載

◎洞爺丸台風慰霊祭、犠牲者の霊 安らかに
  1954年9月26日に発生した洞爺丸台風事故の犠牲者をしのぶ慰霊祭が26日、北斗市七重浜7の「颱風海難者慰霊碑」前で開かれた。遺族ら約50人が参列し、犠牲者の霊を慰めた。

 青函連絡船殉職者遺族会(渋谷武彦会長)、函館市仏教会(広岡隆円会長)の共催で、1955年から毎年実施している。この慰霊碑には、同台風のによる突風や高波で沈没した「十勝丸」など貨物船4隻と青函連絡船「洞爺丸」に乗船していて犠牲になった1430人の霊が祭られている。

 慰霊碑は事故の翌年、遺族らによって建立されたが、老朽化が進んでいたことから、碑の手入れをボランティアで続けている函館北ロータリークラブ(山下清司会長)などが8月ごろから、碑の補修工事を行っていた。

 参列者たちは、きれいになった碑前で僧侶が読経する中、一人一人慰霊碑に向かい静かに手を合わせていた。毎年参加している北斗市七重浜2の安倍初枝さん(80)は「洞爺丸で機関士をしていた夫(享年32)を失った。近況を報告するため毎年参列している。今でも風の強い日などは洞爺丸のことを思い出してしまう」と話していた。

 渋谷会長(74)は「慰霊碑は自分の墓と同じ。会員は高齢化しているが元気なうちは慰霊祭を続けていきたい」と話していた。


◎大船、鷲ノ木遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が「世界遺産」候補地に
 文化庁は26日、世界文化遺産への登録を目指す候補として、函館市の史跡大船遺跡や森町の史跡鷲ノ木遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」などを追加することを発表した。北海道、青森、秋田、岩手の15遺跡で「顕著な普遍的価値を持ち、世界遺産委員会の評価基準を適用できる可能性が高い」と評価された。函館市は「数年後の世界遺産登録を目指し、関係機関と連携した運動をしたい」と話している。(高柳 謙)

 4道県の知事が昨年12月、国の世界遺産暫定リスト登載に向けて提案書を文化庁に提出。文化審議会の特別委員会が、全国各自治体から提案があった32件のうち、5件を世界遺産暫定リストに登載するよう答申した。

 「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、大船遺跡、鷲ノ木遺跡のほか、青森県の三内丸山遺跡、秋田県の大湯環状列石、岩手県の御所野遺跡など15件で構成。函館市教委生涯学習部の阿部千春参事は「円筒土器文化圏というまとまりがあり、土器の文様も同じ。アスファルトやヒスイ、漆(うるし)などが出土し、津軽海峡を往来して交易や交流があった」と説明する。

 縄文文化は自然との共生の中で1万年にわたって続き、高度に発達、成熟した安定的な採集、狩猟、漁労文化。同部の須田正晴部長も「縄文文化は日本の風土や文化、伝統を築く礎となった。昨年6月には南茅部地区の著保内野遺跡から出土した中空土偶が道内初の国宝に指定された。中空土偶は大船遺跡など南茅部の縄文遺跡群を象徴する出土品」と意義を語る。

 今後は世界遺産の登録に向け、ユネスコ世界遺産センターが国際記念物遺跡会議(ICOMOS)に評価を依頼。世界的な視野で縄文遺跡群を調査し、高い評価で登録候補となれば、同センターが世界遺産委員会に推薦し、適正と認められれば登録される。

 文化審議会の答申を受け、函館市の西尾正範市長は26日、「当市の縄文文化が日本を代表する文化遺産であると認められたことであり、大変喜ばしい。今後は青森などと連携を深めながら世界遺産登録を目指し、縄文文化を函館の新たな魅力として、まちづくりや観光振興にも生かしたい」とコメントした。

 ほかの4件は次の通り。

 「金と銀の島、佐渡」(新潟)、「九州・山口の近代化産業遺産群」(福岡、佐賀など6県)、「宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡)、「百舌鳥・古市古墳群」(大阪)


◎国際貿易センター不正経理問題、市が以前から裏金認識
 函館市が出資する第三セクター「函館国際貿易センター」(社長・谷沢広副市長)の不正経理問題について、市議会の決算特別委員会(斉藤佐知子委員長)は26日、福島恭二(民主・市民ネット)、志賀谷隆(公明党)、紺谷克孝(共産党)の3氏による総括質疑を行った。同社の男性役員(70)が主導的にサハリンへの出張旅費を別会計にプールしていた事実を、市が以前から認識していたことが明らかになった。

 志賀谷氏は質疑の中で、これまで谷沢副市長が7月10日に裏金の存在を聞いたと述べてきたことに対し、「昨年12月には知っていたはず」と指摘。同社の所管である市港湾空港部の男性職員が裏金を保管し、同役員が主導し現金をプールしてきたという。25日の同委員会でも、福島氏が同職員の存在について追及したものの、市は否定していた。

 市の上層部が裏金の存在を知ったのは、昨年12月に同社へ派遣されている別の男性職員からの話を聞いた時点で、当時の同部部長がただちに返還するよう指示したという。しかし、谷沢副市長が初めてプール金の存在を知ったのは7月10日といい、会社の金庫に現金数万円が残っていたとされている。

 紺谷氏は「領収書の改ざんは紛れもない事実で、会社が再出発するための第一歩として、告発すべき」と提言。西尾市長は「法に触れる不正事実と解釈している」としながらも、「不正受給分を返還する申し入れがあり、社会的な制裁も受けていることから、告発しないという会社の意向に従う」との姿勢を崩さず、市として同役員を刑事告発する考えがないことを改めて示した。(浜田孝輔)


◎8月の道南求人倍率0・46倍 14カ月連続の前年割れ
 函館公共職業安定所は26日、8月の渡島・檜山管内の雇用失業情勢を発表した。仕事を求めている人1人に対する求人数を示す有効求人倍率は前年同月比0・06ポイント減の0・46倍と、14カ月連続の前年割れとなった。前月比では3カ月ぶりの悪化に転じ、「弱めの動き」とする情勢を3カ月連続で据え置いた。

 有効求人倍率は4月以降、前年同月比0・05―0・08ポイント減と下げ幅が広がりつつあり、同職安は「原油高騰に伴う物価高で消費が低迷し、企業収益が悪化するといった悪循環に陥っている。先行きも不透明で、中小零細企業を中心に求人への慎重化が目立つ」としている。

 雇用の先行指標となる新規求人倍率は同0・16ポイント減の0・68倍と5カ月連続の前年割れ。当月の新規求人数は同25・5%(516人)減の大幅な落ち込みで、ことしに入り漸減傾向が続いている。「管内企業の大半が現在抱える従業員の雇用で手一杯で、(求人募集の)余力がない状態」という。

 産業別では新規求人数がサービス業(同152人減)、卸売・小売業(同140人減)などが前年に比べ3割以上の急激な落ち込み。全16業種中、前年を上回ったのは金融・保険業や複合サービス事業など3業種で、人数ベースでも最大で10人程度の増加にとどまった。同職安は「今後は求人が減る冬場に入るため、雇用環境はさらに厳しさを増す可能性もある」とみている。(森健太郎)


◎漁場油濁被害救済基金が重油の回収実験
 財団法人漁場油濁被害救済基金(東京)は26日、函館市浅野町の函東工業(千田忠雄社長)で油回収装置の作動試験を行った。道内は、サハリン油田開発や大型タンカーの往来も増え、事故の可能性も高まっていることを背景に、同社が実験場所として乾ドックを提供。開発した4種類の機材で、実際に海面に流した重油の回収を行った。

 従来、重油の流出事故が起こると、漁業者がひしゃくを使って回収するなど、効率面や安全面に問題があった。同基金は日本財団の助成を受けて、効率よく大量に油を回収できる機材開発に着手。身近にあるドラム缶など低コストで簡易な素材を使用し、漁船のクレーンに接続して利用できる機材を4種類製作した。

 この日は、オイルフェンスで囲った水面に大型船の燃料に使われるC重油を流し、実際に油の回収量を機材の稼働状態を確認。また、午後からは海水と混ざり、高粘度状態となったムース重油で試験を行った。

 同基金の佐々木邦昭専門官(63)は「事故はいつあるかわからないが、被害の拡大を防ぐためにも短時間で大量に回収できる機材が必要。試験で得られた点を今後の改良に加えたい」と話していた。(今井正一)