2008年9月3日(水)掲載

◎イカのロボット 観光案内…函高専「現代GP中間報告会」
 函館工業高等専門学校(函館高専、長谷川淳校長)の専攻科2年生25人が、退職技術者と一緒にものづくりに取り組んだ成果を披露する本年度の「中間報告会」が2日、函館市湯川町の花びしホテルで開かれた。学生たちはイカのロボットが観光案内するガイドシステムなど、企業などから求められた5つのテーマについて、研究・開発の現状を示した。

 同校は2007年度に文部科学省の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」の対象校に選ばれ、実践的なキャリア教育の推進に取り組んでいる。

 企業の最前線にいた退職技術者を「マイスター」として招き、学生とチームを組んで地域企業などからの要望に応える「退職技術者による総合的ものづくり技術伝承」を実施。2カ年計画の最終年度となることしは函館市教委、道魚道研究会など4団体・企業から5テーマの依頼を受け、4月から学生がマイスター13人とともに、システム開発やデータ収集などに取り組んできた。

 報告会には企業関係者ら約90人が参加。函館空港ビルディングから「空港を訪れた方への函館らしいおもてなし」とのテーマで依頼を受けた三谷豪右代表(22)ら学生9人は、ガイドロボットによる観光案内システムを製作した。観光名所のジオラマを設置した約3メートル四方の土台の上をイカのロボットが移動し、各地のガイド音声を流して紹介する仕組み。三谷代表は「長く使うため電池が使えないなどの問題が出たが、レールの銅パイプから電源供給できるように考えた」などと作業過程を説明し、会場で実演も行った。

 この観光案内システムは10月ごろに函館空港内に設置される予定。10月からは専攻科1年生が活動を始め、来年2月には2年間を総括する最終報告会が行われる。(新目七恵)


◎自民8区候補定まらず…福田首相退陣
 福田康夫首相の退陣表明に伴い、新しい首相が早期に衆院解散・総選挙へ踏み切る可能性が出てきた。衆院道8区で民主党は、現職の逢坂誠二氏(49)=比例道ブロック=の擁立を決めているが、自民党はことし3月に公認候補となる前支部長が辞任し、新支部長が決まっていない。地元保守政界や支持層からは「早期に候補者選考を」との声があるが、順調に進まない事情もある。(高柳 謙)

 自民党道8区支部は4月、次期衆院選候補を決める選考委員会(委員長・川尻秀之道議)を発足。当初、現職の杉村太蔵氏(29)=比例南関東ブロック=と、東京在住の政策コンサルタント、高松智之氏(34)の名前が他薦で上がったが、擁立は消えた。杉村氏は道1区から出馬する意思を伝え、この後、川尻委員長が「選考候補がもう2人いる」と選考委で説明。高松氏はこうした選考過程に不信感を強め、仮に支部長候補に推されても受諾しない意向を川尻委員長らに伝えた。

 退陣表明を受け、川尻委員長は「事実関係を把握した上で、慎重に候補者を選考したい」との意向で、候補者選考は川尻氏と8区の今津寛暫定支部長(党道連会長)に一任されている。

 自民党8区は1996年の総選挙から、民主党に小選挙区4連敗を喫している。次期衆院選には前回と前々回、自民党公認で出馬し落選した佐藤健治氏(51)が保守系無所属で出馬する準備を進めている。地元の保守政界事情に通じている函館市内のある企業経営者は「佐藤氏の問題が解決されない限り民主党に勝てないし、現在、候補となり得る人物はゼロ。このままでは保守系代議士がいない政治空白期間をさらにつくることになりかねない」と懸念する。

 経済界も候補擁立へ積極的になれない事情がある。森町の官製談合事件で逮捕、起訴された函館市内の2人の人物が、政治経済活動を通して親しい関係にあり、別の経済人は「この問題が片付かない限り、経済界は動けない」と指摘する。

 自民党にとって不戦敗は避けなければならず、8区保守政界の迷走が続く。


◎福田首相辞任で市民「無責任だ」「またか」
 「無責任だ!」「なぜ、この時期に?」―。福田康夫首相が1日夜に退陣を表明してから一夜明けた2日、函館市民らは不可解とも映る辞任劇に憤りや困惑した表情を見せた。政治不信や失望も広がるばかりで、次の首相に対し「党や派閥の利害に関係のない政治運営を」「国民生活を考えて」という切実な声が聞かれた。

 函館市町会連合会の敦賀敬之会長(70)は「洞爺湖サミットが無事終わり、これからというときに辞任とは無責任だ。与野党が協力して政治を行うべき。いつまで国民に負担を掛けるのか」と語気を強める。道教育大函館校3年の山田奈央さん(20)は「またか、という感じ。ころころ変わっても」とあきれ気味。「自分の意見を持って正しいことができる人に次の政権をお願いしたい」と語った。

 市内日吉4の主婦須藤文代さん(77)は「後期高齢者医療制度の問題や価格高騰など何一つ改善されていない。党派に関係なく、本当の意味で日本を良くしてくれる首相を望む」と話した。

 教育関係者からは今回の辞任が児童、生徒に悪影響を与えると指摘する声も。函館桐花中学校の土橋裕二教諭(42)は「臨時国会の召集時に、なぜ今―との思い。何もない今の時期に辞めようと、以前からシナリオがあったのではと考えたくなる。生徒に公民・政治を教えているが、子どもたちもあきれている。生徒が政治家をやってみよう、面白いと、羨望(せんぼう)の眼差しで見ることができる政治家の登場を期待したい」とする。子供たちへの体験学習を通し社会教育を推進するNPO法人「なちゅらす」の赤石哲明代表(31)も「福田首相の発言はどこか他人事で、客観的な物言いだった。失敗を自分の責任としない風潮を助長しそうだ」と心配する。

 批判的な意見が大半を占める中、同情する声も聞かれた。市内白鳥町の主婦林千鶴子さん(61)は「小泉純一郎元首相のようなパフォーマンスと違い、福田首相は落ち着いた印象でまじめに政治に取り組んでいた。今回も逃げ出したのではなく、政治の流れを変えるために辞任したのでは」と理解を示す。

 C型肝炎問題に取り組む市民団体、北海道肝炎友の会「はまなす会」の川上博史会長(56)は「福田政権で患者の救済法が成立、肝炎患者の救済が一歩前進し、これから問題解決に道筋をつけようとしていた時期。次の政権で問題が棚上げされることがないか心配だ」と不安を募らせていた。


◎支庁再編の反対堅持…桧山町村会・議長会 あす合同臨時会
 【江差】桧山支庁管内町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)と町村議会議長会(会長・若狭大四郎上ノ国町議会議長)は4日に開く合同臨時総会で、道の支庁再編への反対姿勢を堅持する方向で意見集約する方針を固めた。支庁再編をめぐっては、管内の町長・町議会議長と個別に会談した桧山支庁幹部から、支庁存続運動への“圧力”とも受け取れる発言があったとして議長会の一部が反発。徹底抗戦に向けた強硬論も噴出するなど、道側との亀裂は深まるばかりだ。

 議長会が町村会に総会開催を要請。関係者によると、支庁幹部が複数の議長と個別に会談した際に「反対を続ければ道や道議会に冷遇される」「公共事業の予算が減らされる」と発言したほか、一部の議長には会談の申し入れが無かったという。こうした対応に議長会は態度を硬化。「道に歯向かえば予算を削るという“どう喝”」(ある議長)と反発を強めている。

 町村会・議長会は5月1日の緊急総会で、支庁再編に反対する方針を決定。道議会では支庁再編条例が可決されたが、支庁所在地の江差町は徹底抗戦の姿勢を崩しておらず、臨時総会では7町の意思統一を図り結束を深める狙いがあるとみられる。

 道町村会(会長・寺島乙部町長)は8月、反対姿勢を堅持する一方、地方分権や地域振興に対する道の施策に対して積極的に提言を行う方針を決定。臨時総会でも道町村会の方針に沿った意見集約が行われる見通しだ。

 支庁再編をめぐっては、総務省が支庁再編の前提となっている公職選挙法改正案を12日召集予定の臨時国会に提出する方針だったが、福田康夫首相の辞意表明を受け、国会召集が大幅に遅れる見通しとなるなど先行きが不透明な情勢。町村会・議長会は情報交換を密にして、道をはじめ政府や国会の対応を見極める構えだ。(松浦 純)


◎【企画】新時代の青函交流 トンネル開通から20年(中)
 「距離感縮める架橋構想」
 青函両地域の移動手段の中心が陸路に移行した現在も、フェリーの存在価値は決して失われていない。特に函館港から海路で約2時間の距離にある青森県大間町では、大勢の高齢者がフェリーで函館市内の病院に通っている。これは県内の鉄道や道路網が発達しておらず、函館への移動が最も便利なためだ。

 一方、函館市民が旅行や買い物などで足を延ばす都市といえば青森市ではなく、列車で3時間、車で5時間掛かる札幌市。このように青函両地域の双方に対する思いには微妙な距離感がある。

 この距離感を縮めようと取り組んでいるのが、市民グループ「本州・北海道架橋を考える会」だ。函館市戸井地区と大間町の最短距離約18キロに津軽海峡大橋を架ける壮大なプロジェクト。実現に向けての課題は山積みだが、定期的に専門家を招いてフォーラムを開催するなど、青函交流の本質について活発な意見交換を重ねている。

 6月に函館市で行われたフォーラムでは、弘前大大学院の北原啓司教授が政府の交通ネットワーク構想について「新幹線や高速道路整備で主要都市間の移動時間は短縮されるが、幹線ルートから外れた地方には大きなしわ寄せが来ている」と問題点を指摘。戸井と大間の「交通過疎」地域に橋を架けることは、この問題を解決する糸口になるかもしれないという。

 くしくも戸井と大間の両地域は高級本マグロの産地として、全国的に脚光を浴びている。青函地域のマグロ関係者が一堂に会した「津軽海峡マグロサミット」が6月、東日本フェリー函館ターミナルで初めて開催された。同サミットをバックアップしている東日本フェリーの古閑信二社長は「青函両地域にとって津軽海峡は古くからの共通財産。マグロという魅力的な素材を活用して、新たな観光ルートを構築できれば」と期待を膨らませる。

 マグロを通じた青函の取り組み例として、函館湯の川温泉地域で繰り広げられている「オンパク(温泉泊覧会)」のプログラムにある大間町を訪れる「オーマの休日」が挙げられる。このイベントを積極的に進めてきたのが、大間町のまちづくり集団「あおぞら組」の島康子組長だ。島さんは「大間町のように交通の面で過疎地域でも、インターネットを使えば全国に情報発信ができる。都会にはない田舎ならではの魅力を武器にアピールしていけば、必ず人を呼ぶことはできる」と自信をのぞかせる。(小川俊之)


◎日舞にバイオリンとビオラ…日本舞踏家 藤間扇藤さん6日にリサイタル
 東京を拠点に活動する函館出身の日本舞踊家藤間扇藤(せんふじ)さん(65)のリサイタル「扇藤の会」(扇藤会主催)が6日午後2時から、函館市民会館(湯川町1)小ホールで開かれる。ゲストにバイオリン、ビオラ奏者を迎え、西洋楽器との競演で日舞の新たな魅力を表現する。藤間さんは「踊りになじみがない人にも楽しんでもらいたい」とPRしている。

 藤間さんは函館にも教室を持ち、毎月指導に訪れている。リサイタルは1995年から1年半に1回のペースで開催し、函館朗読奉仕会の叶加奈子さんによる朗読やゲストを交え、古典から創作まで趣向を凝らした舞踊を披露している。

 今回は藤間さんや弟子の藤間扇里さんによる演舞、叶さんの朗読のほか、東京を拠点にフリーで活躍するビオラ奏者成谷仁志さんと、バイオリン奏者遠藤雄一さんがゲスト出演し、バッハの名曲を演奏する。

 日舞とバイオリンの競演「白鷺(さぎ)幻想」では、古典舞踊の曲で知られる長唄「鷺娘」を、人間の娘になりたい1羽のサギが望みをかなえるが、魔法が解けて鳥に戻るというおとぎ話にアレンジ。終盤で鳥に戻った悲しみをバッハ作曲の無伴奏バイオリンソナタ1番「フーガ」に合わせて表現する。藤間さんは「自由な発想で表現できるのが創作舞踊の魅力。『鷺娘』にこんな表現方法があるということを知ってもらいたい」と話している。

 入場料2500円。当日券も販売。問い合わせは扇藤会事務局(大野さん)TEL0138・52・0608。(宮木佳奈美)


◎節目の年 子どもにスポット…12日に函館友の会が愛読者会 ひこばえ幼稚園長が講演
 月刊誌「婦人之友」の読者でつくる函館友の会(竹中郁代総リーダー)は創立80周年を記念し、12日に函館市民会館(湯川町1)で愛読者会を開く。ひこばえ幼稚園長などを務める東京在住の小塩節さんの講演「子育ては一生」を企画。同会は「子どもを取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、子どもの生きる力が育つために何が大切かを考えるきっかけにしたい」と来場を呼び掛けている。

 友の会は、日本初の女性ジャーナリストとして活躍した羽仁もと子さんを中心に、「婦人之友」を愛読する主婦が1930年につくった全国組織。函館友の会はこれに先駆け、28年に読者13人で発足し、現在の会員数は220人に上る。「婦人之友」を教科書代わりに、衣食住の工夫や子育てなど家庭生活全般について学び合い、会員以外も参加できる料理教室や家計簿講習会なども開講している。

 80年の節目を迎え、次代を担う子どもにスポットを当て、子育てに関する著書を多数出版している小塩さんを講演に招いた。当日は会場で創刊106年の「婦人之友」の歴史を振り返るパネル展「読者と歩んだ一世紀展」も開催する。竹中総リーダーは「先輩たちが培ってきた土台に感謝し、今後も『よい家庭がよい社会を作り出す』の信念のもと、みんなで学んだ生活の知恵を世に広めていきたい」と話している。

 午前10時―同11時45分(開場は同9時半)。入場料700円(当日券800円)。事前の予約で託児も受け付ける(託児料150円)。申し込みは同会TEL0138・59・3875(月・火・金曜の午前10時―午後3時)。(宮木佳奈美)