2008年9月4日(木)掲載

◎市内最大361室に…ホテルパコ函館地鎮祭
 ホテルパコを全道展開するカネトモ(札幌市、松井鴻光社長)は3日、函館市大森町25の「ホテルパコ函館」を増改築する新館工事の地鎮祭を行い、大規模工事の安全を祈願した。目玉となる天然温泉を掘削するほか、ホテルの客室数が市内最大の361室に増える見込みで、市内のホテル間競争は一層激しさを増しそうだ。

 ホテルパコ函館は1991年に開業。新館は現在の本館北側にある駐車場の一部などの敷地約1520平方メートルに、本館と連結させる形で建設。新館は地上14階、地下1階建てで、完成後の延べ床面積は現在の2・5倍以上となる約1万3300平方メートルに拡張される。総工費は約34億円。

 客室は現在の157室に新館の2―10階部分の計204室が加わる。新館13階には日帰り入浴も可能な天然温泉の展望大浴場、屋上には露天風呂を設ける。2010年秋にもリニューアルオープンする予定だ。

 地鎮祭には来賓や工事関係者ら約70人が出席し、代表者がくわ入れや玉ぐし奉てんなどの神事に臨んだ。ホテルパコ函館の大橋勉支配人は「新館には温泉やエステ、カイロプラクティックなどのサービスを充実させることで他のホテルとの差別化を図った。地元の方々にも気軽に利用してもらい、函館の玄関口のシンボルタワーとして大門地区の活性化にもつなげたい」と話している。(森健太郎)


◎現職町議と副町長が出馬へ…森町長選
 【森】競売入札妨害(談合)容疑で逮捕、起訴されている湊美喜夫被告(79)の町長辞職を受け、10月19日に予定される森町長選挙で、町議の松田兼宗(けんそう)氏(52)と副町長の阿部眞次氏(66)が3日までに、出馬の意思を明らかにした。現職町議と副町長が一足早く出馬の意向を固めたことで、本格的な選挙戦に突入する形となったが、水面下ではさまざまな候補者擁立の動きもあり、選挙の構図はまだ流動的な要素を含んでいる。(笠原郁美)

 松田氏は函館新聞社の取材に対し、森町発注の町消防防災センターの建設工事をめぐる官製談合事件について「長期政権、多選の弊害」とした上で、これまで2度の町長選を戦った経験から「過去2回(の選挙戦)で町を変えられなかった責任を感じている。町長にならないとできないこともあるはず。役場の改革やガラス張りの町政で町を立て直したい」と意気込みを語った。

 一方、阿部氏は今回の事件について「町長は関与を否定している」としながらも、「慣習や慣行に甘んじてきた責任を感じる。初心に戻りたい」とし、「砂原の簡易水道や国保病院の運営など町民の声に応える政治を行いたい」と述べた。

 松田氏は「足で回りたい」と8日までに、長岡輝仁議長に町議辞職届を提出し、正式に出馬表明するものと見られる。阿部氏は11日から18日まで開会予定の町議会定例会終了後に副町長を辞職、出馬を正式表明し、選挙準備に入る見通し。

 松田氏は1956年森町生まれ。81年中央大学文学部を卒業後、83年から松田商店に勤務し、99年店主となり同年町議に初出馬でトップ当選。2003年と、旧森・砂原町合併後の05年に町長選に立候補し、ともに湊被告に敗れ、07年に町議に再選した。

 阿部氏は1942年森町生まれ。65年法政大学法学部を卒業後67年から町役場に勤務。総務課長や収入役を歴任し、2005年に助役に就任した。


◎松前町長に出馬要請へ…次期衆院選 自民党8区
 自民党衆院道8区支部(今津寛暫定支部長)と8区候補者選考委員会(川尻秀之委員長)は3日までに、次期衆院選候補者(新支部長)を松前町長の前田一男氏(42)に絞り、就任を要請する方針を固めた。ただ、前田町長は3日、函館新聞社の取材に対し「正式な要請は来ていないが、今は与えられた仕事を果たすことが大事と考えている」と述べ、慎重な姿勢を示している。

 川尻委員長は同日、「選考委員会の幹事会で前田さんに絞っていくことを確認した。行政経験があり、年齢的にも適任」と語った。正式な要請の日取りは未定だが、11日には今津暫定支部長が函館入りする予定で、川尻委員長は「受諾していただけるように、各方面で調整を図りたい」と述べた。

 一方、関係者からは「前田町長が受諾するのは難しい」との声がある。前田氏は前々回2003年の総選挙で、当時の自民党森派の後押しを受け、8区に保守系無所属で出馬。佐藤孝行元総務庁長官の二男、佐藤健治氏(51)も自民党公認で出馬したため保守分裂となり、共倒れした。前田氏には反佐藤派(阿部派)のグループが支持に回り、結果として前田氏には阿部派の「色」が付いた。仮に次期選挙に立つと前々回の再現となる可能性が高い。

 前田氏は04年4月、現職町長の急死に伴う松前町長選に立候補し、無投票で初当選。「4月に2期目の当選を果たし、一日一生の思いで町政に当たっている」としている。(高柳 謙)


◎聴覚障害者に音T聞かせたいU…手話通訳士・鈴木さん ミュージックサイン広める
 バックミュージックや効果音など、「音楽」「音」は映画に欠かせないが、耳が聴こえない・聴こえにくい人(失聴・難聴者)たちは、それを分からないまま鑑賞している。そんな環境を改善し、少しでも多くの情報を伝えようと、函館市に住む手話通訳士、鈴木三千恵さん(48)が中心となり、映画音楽を動作や絵などで表現する「ミュージックサイン」を広めている。全国的にも珍しい試みで、聴覚障害者の世界を広げる手助けとなっている。

 「映画のエンドロールに音楽が付いているなんて知らなかった」。3歳で失聴した函館市の藤原弘實さん(67)は、ミュージックサイン付きの映画を観てこう話した。

 ミュージックサインは5―7日に3回目を数える「北海道ユニバーサル上映映画祭」(実行委主催)で、上映全作品に取り入れられている。複数の人間が舞台に立ち、挿入歌や音楽を手話や動作などで表現するオリジナルの手法だ。昨年上映した「武士の一分」では、セミの鳴き声をセミの絵を描いた紙をゆらして伝えるなどした。

 鈴木さんは「ストーリーと関係なくても、季節を感じたり、イメージを膨らませる材料になる」と説明する。

 20代から手話通訳士として活動する鈴木さんは、手話のみの伝達手法にもどかしさを感じていた。歌や演奏が伝えられず、舞台鑑賞でも音が聴こえないために聴覚障害者だけが笑えない状況を目にしてきた。そこで、音のリズム感を動作で表したり、手話の型を破った表現手法を練り出した。

 ただ、スクリーンの脇でスポットライトを浴びて行うため、違和感を感じる観客がいたり、意味がうまく伝わらないなど課題も少なくない。見本やルールもないため手探りで作っている。鈴木さんは「聴こえないから、音楽や音の存在を知らないままで良いとは思わない」と力を込める。

 鈴木さんは非常勤講師を務める道教育大函館校の学生にもミュージックサインを教えるなど、その輪は少しずつ広がっている。現在は、第3回映画祭で上映する「しゃべれども しゃべれども」の主題歌をどう表現するか、聴覚障害者も交えて検討している。参加している函館市の石井茂憲さん(60)は「ミュージックサインが付くことで、映画を楽しむ幅が広がった」と話す。

 鈴木さんは「音が聴こえない人がもう少し幸せな生活を送り、自分の存在を肯定できる手助けになれば」と話している。実行委はミュージックサインの協力者を募集している。問い合わせは事務局TEL0138・31・0010。(新目七恵)


◎ホッキ貝など密漁摘発相次ぐ…函館海保管内
 函館海上保安部管内で、アワビやホッキ貝の密漁者の摘発が相次いでいる。6月には長万部町内で、八雲町立小学校の男性教頭(53)がホッキ貝など7個を密漁し、漁業法違反(漁業権の侵害)の疑いで、同海保の取り調べを受けている。この教頭は当初、職業を「露天商」などと偽っていたといい、同海保は近く函館地検に書類送致する方針。

 この教頭は6月9日、長万部町国縫の海岸でホッキ貝5個とバカ貝2個を所持しているところを摘発された。調べに対し、職業だけでなく、住所も函館市内と偽り、親族の電話番号を伝えるなどしていた。その後の調べに対し、「密漁がばれたら校長の昇進試験に影響すると思った」などと供述したという。

 同海保では今年8月末までに、クリガニで7件9人、ホッキ貝22件22人、アワビなど5件8人と、摘発件数が昨年の1件7人に比べて大幅に増加。8月には木古内町釜谷の海岸でアワビ計15キロ(約400個)、ムラサキウニなど計26キロ(約200個)を網の中に入れ、密漁した函館や北斗市内の20代の会社員の男3人を同容疑で捕まえている。

 同海保は「摘発者のほとんどは密漁と認識している。現行犯以外の取り締まりができないが、漁協と情報提供などで連携がうまくいっている成果」とする。

 上磯郡漁協(知内町涌元、山崎博康組合長)上磯支所(北斗市飯生)の横浜芳伸支所長は「これまで目の届かなかった場所もパトロールするなど、対応を強化している。漁業者は燃料費高騰や卸値も厳しい状況にあるが、少しでも資源を守るための努力を続けたい」とする。

 9月からは道海面漁業規則による一定区域のサケの採捕を禁止する河口規制が始まっている。同海保の小泉光一次長は「密漁は漁業者の生活を脅かし、資源の枯渇にもつながる行為。今後も目を光らせて、取り締まりをさらに強めたい」と話している。(今井正一)


◎【企画】新時代の青函交流 トンネル開通から20年(下)
広域観光ルート作り急務
 青函両地域の悲願である新幹線が2010年には新青森駅まで、15年には新函館駅まで開業する。ただ、「新幹線の開業は、必ずしもバラ色の未来を約束するものではない」と指摘する声は少なくない。それは20年前に開通した青函トンネルの例があるからだ。開業初年度こそ、話題性から利用者は322万人と前年度の青函連絡船利用者の253万人を大きく上回る順調なスタートを切ったが、その後は毎年減少し、06年度は約166万人と半減した。

 民間のシンクタンクは新青森―新函館間開業初年度の利用者を約340万人と試算している。東京から函館まで乗り換えなしで最短3時間12分(時速360キロの場合)は魅力的で、実現可能な数字かもしれないが、問題は新幹線を利用した観光客をどうやってリピーターにするかだ。もともと道南地域は主要な観光地がコンパクトにまとまっているため、日帰りや短期滞在の観光客が多い。両地域の行政と関係団体で構成する「青函インターブロック交流圏構想推進協議会」はそうした状況を背景に、道南地域と北東北にまたがる広域的な観光ルート作りに取り組んでいる。

 同協議会の活動のひとつに青函交流事業への助成があり、本年度の対象となった「高速フェリーで行く!青函の魅力再発見ツアー」は、なじみの観光ルートとは一味違った個性的な場所を訪れるプログラム。同協議会事務局の渡島支庁地域振興部、鳴海正一主幹は「知られざる観光スポットに光を当てることで、観光客の選択の幅を広げていければ」と期待する。

 さらに、ここにきて新たなキーワードに「縄文文化」が浮上している。函館市の大船遺跡から発見された中空土偶が昨年、本道初の国宝に指定された。森町の鷲ノ木遺跡からも巨大なストーンサークル(環状列石)、青森県の三内丸山遺跡からは日本最大級の縄文集落跡が発見され、道南から北東北にかけて縄文時代に共通の文化圏が広がっていたことが明らかになってきた。

 昨年発足した「北の縄文文化を発信する会」(石森秀三代表幹事)は、本道から北東北地域ににまたがる縄文文化遺産全体を世界遺産に登録しようと活動を展開している。同会は「世界遺産に登録されるためには、地域全体での大きな盛り上がりが必要不可欠」と訴える。世界遺産登録という共通の目標の下、道南と北東北地域が一体となった活動を展開できるか、今後の青函観光の鍵のひとつといえそうだ。(小川俊之)


◎債権回収対策室設置へ…10月から函館市
 国民健康保険料や保育料など税外収入の未集金の徴収体制強化を進めている函館市は10月から、財務部内に「債権回収対策室」を設置する。3日に記者会見した西尾正範市長が明らかにした。西尾市長は「納付者に対する公平性を図る観点から、支払う能力がある滞納者に対処していく」と述べた。

 税金に準じた扱いで強制徴収ができる国保料、保育料、介護保険料についてはすでに作業を進めている。西尾市長によると、税外収入の未集金はこのほか市営住宅使用料、生活保護費の返還、各種貸付金、水道料金、市立病院の医療費などがあり、市が管理している未収金は市長部局で90億2900万円、企業会計で16億5800万円の計106億8700万円。

 市財務部によると、未集金の徴収は各部局で担当し、例えば国保料は市民部、保育料や介護保険料は福祉部が滞納者に督促や催告などをしている。今後は滞納整理業務のノウハウを持つ債権回収対策室が、未集金を抱える各部局に助言、指導、実務的な支援をして、徴収体制を強化していく。全国では川崎市や横浜市、北九州市などに同様の組織があるという。

 市税であれば徴収専門部署の納税課があるが、国保料や介護保険料はサービスが基本であるため、滞納金の徴収が難しい側面もある。西尾市長も「生存権の問題も出てくるが、払えるけど払わない人には一定の対応が必要。事情を聴きながらケースバイケースで対応したい」と述べた。

 同室が債権を一括管理し、全庁的な債権回収業務を強化することで、市の歳入確保も図ることができる。4月に新組織設立に向けた職員を財務部に配置し、準備を進めてきた。室長は次長職で、係長級の主査3人を配置する。(高柳 謙)


◎道南のホップPR サッポロビールと七飯町が共同栽培
 【七飯】サッポロビール北海道本社(札幌)と七飯町の農家が初めて共同栽培した大麦とホップの畑が3日、報道関係者に公開された。同社の2008年イメージガールの江頭ひなたさんが1株だけ残されたホップから実を摘み取り、PRした。収穫を終えた原料は札幌市内の工場に持ち込まれ、20日に仕込みをし、10月20日には道南産原料を使用したオリジナルビールが出来上がるという。

 2006年に創業130周年を迎えたサッポロビールが同社発祥の地・北海道への恩返しをしようと、道内農家との原料の共同栽培に力を入れている。同町には明治時代に北海道開拓使の官園(実験農場)があり、大麦やホップの研究が行われた歴史的背景から、単発企画として同町に栽培を打診。若手農業後継者でつくる「けっぱれ塾」が中心となって同町鳴川町で栽培された。

 4月に大麦は種まきからスタートし、ホップは上川管内上富良野町にある同社の契約栽培農家から分けてもらった10株を移植した。他の道内産も加え、道南産原料を使ったビール1キロ(ジョッキ3000杯分)がつくられるという。出来上がったビールの扱いは同町が今後検討する。

 同社は「道南でも栽培できることが分かり、上富良野と比べてもそん色のない出来」と評価。同町も「若い農家が新しいことに挑戦する機会になった」と話している。(宮木佳奈美)