2008年9月5日(金)掲載

◎青函など3航路撤退 高速船10月停止…東日本フェリー
 東日本フェリー(函館市港町3、古閑信二社長)が燃油高騰の影響などで函館―青森、函館―大間、室蘭―青森の3航路で展開するフェリー運航事業から11月末までに撤退する方針を固めたことが4日、分かった。昨年9月と今年5月に就航した新型高速船「ナッチャンRera(レラ)」「ナッチャンWorld(ワールド)」(各約1万トン)の2隻も10月末までに運休する見通しで、今後の青函圏の観光や物流に影響が出るのは必至だ。

 青函航路の高速船は売却かリースする方向で調整中。従来からの在来船については東日本フェリーの子会社・道南自動車フェリー(同市港町3、関根二夫社長)が2隻をそのまま引き継ぎ、計4隻体制で運航を継続させる方針。函館―大間、室蘭―青森航路については存続に向け、地元自治体の経営支援などを求めていくという。

 東日本フェリーは4日までに、道内航路を廃止する意向を函館、室蘭両市をはじめとする道内の自治体など関係先に伝えた。近く海上運送法に基づく事業の休廃止届を北海道運輸局に提出するとともに、8日にも古閑社長が市内で記者会見し、正式に発表するという。

 原油高に伴う燃料費の負担増に加え、当初の想定より高速船の利用客が伸び悩んだことが主な理由。燃料となる重油・軽油価格は前年に比べ倍増しており、本年度は3航路全体で赤字が数十億円規模に膨らむ見込みだ。このため1日からは高速船の運賃が一律30%引き上げられたほか、利用客の少ない深夜便などの一部を減便したばかりだった。

 今後は現在、金沢―釜山(韓国)航路で運航するフェリー事業と、商船三井フェリーの大洗―苫小牧航路や、川崎近海汽船の八戸―苫小牧航路の一部で運航する船舶貸渡業に業務を絞り込み、経営の効率化や赤字解消を図る。

 東日本フェリーは、2003年に会社更生法を申請した旧東日本フェリーを海運会社のリベラ(現リベラホールディングス、広島県呉市)が05年8月に吸収合併し、06年10月に道内のフェリー事業を分割、事業継承するため新たに設立された。

 函館―青森間を片道約2時間で結ぶ高速船は昨年9月と今年5月に1隻当たり約90億円かけて導入したが、投資に見合った集客効果が得られず、就航から1年で事業継続を断念する結果となった。函館では日本航空(JAL)や全日空(ANA)の関西空港便の廃止・減便、エアトランセの本社東京移転など、運輸業界の撤退、縮小が相次いでいる。 (森健太郎)


◎国保だけで2800人利用…通院者多い大間にも衝撃
 【大間】函館―大間航路の撤退で4日、函館などへの病院利用者が多い青森県大間町でも衝撃が走った。町によると、燃料高騰などによる東日本フェリーの経営圧迫、航路廃止の動きが伝わり始めた7月ごろから存続運動が始まり、「運動を強化しようとしていた矢先の知らせで、みな驚いている」状態。町民も不安を募らせているという。

 大間町は人口が約6300人。町総務課によると、国民健康保険加入者で2007年度に北海道の医療機関で診察や治療を受けた町民は延べ2881人。船員保険や政府管掌保険などを入れるとさらに増える。町には町立の国保病院があるが、内科と歯科が中心で、07年度の国保加入の町民の診察は延べ6463人。「専門的な病気になるとフェリーで1時間40分の函館を中心とした医療機関に通院している」という。

 車で約1時間のむつ市に総合病院があるが、バスを利用すると約1時間半。函館を中心とした医療機関は住民にとって心強く、定期的にフェリーを利用し通院している。

 町には5日、東日本フェリーの古閑信二社長が説明に訪れるという。説明を受け、町議会の全員協議会に金沢満春町長が報告し、議員から意見を聞く。今後の存続運動は12日に開会予定の定例町議会などの場で、金沢町長が考えを伝えていく方針。

 医療過疎の町にとって、フェリー航路は町民の生命線でもあり、同課は「本当に重要な航路。運動を強化し、何とか存続させたい」と話している。(高柳 謙)


◎道南食材使い独自商品…サンクス地産地消企画第2弾 9日から全道販売
 大手コンビニエンスストアのサークルKサンクス(東京)は9日から、道南産食材を使った商品企画「HOKKAIDO MOT PROJECT(北海道もっとプロジェクト) 渡島企画」を道内全205店舗で一斉展開する。渡島支庁と連携し、管内の食材に特化した弁当や総菜、デザートなどの独自商品を販売。地産地消をテーマに道南の「食」の魅力をコンビニの販売網を通じて全道各地にPRする。

 同社が7月から開始した地産地消企画の第2弾で、今回は魚介類や野菜など農水産資源が豊富で、全道的にブランドイメージが高い函館・道南の食材を抜てき。支庁単位の商品群の企画・販売は初めての試みで、道が進める愛食運動にも連動して地域活性化を促進する狙いだ。

 森町内の2農場限定で飼育されたSPF豚を使い、パッケージに生産者の顔写真を添えた「豚生姜(しょうが)焼き弁当」(540円)のほか、函館産のマイカ(スルメイカ)を使用した「手巻きおにぎり いか照焼」(135円)や、函館酪農公社(函館市中野町)の函館3・8牛乳を使った「ミルクプリン」(180円)など独自商品8種類を随時発売する。

 市販品も主原料に道産食材を使った10品を「MOT認定商品」として販売。都市エリア産学官連携促進事業(函館エリア)成果品のブランド向上に向け、函館の特産昆布「ガゴメ」を使用したカレーパン、キャラメルなど4品目も新たに取り扱う。店頭の販促物には函館の観光資源をアピールするため夜景の写真なども掲載する。

 同社第一地域商品部北海道地区の北崎潤二バイヤーは「第1弾の函館牛乳を使ったパンも通常の商品より3倍以上も売れるほど好評を博した。今回も道民や道南の地域の方々になじみ深い食材を通じて、商品や店舗を身近に感じてもらえれば」と話している。今回の企画商品はいずれも10月13日までの期間限定販売だが、売れ行きが好調な商品については継続して取り扱う予定もあるという。0ァ40ィ(森健太郎)


◎思い出の校舎写真に残そう…弥生小児童、休み時間などに撮影
 来春に函館西小と統合する函館弥生小学校(佐野太三校長、児童178人)の全校児童らが、現校舎やグラウンドなど、校地内のお気に入りの場所を写真に残す「校舎思い出写真館」事業に取り組んでいる。子供らは、あと半年で別れる学舎への感謝の思いを込めてシャッターを切っている。作品は11月ごろから校内に展示する予定。

 現校舎は築後70年が経過して老朽化が激しいため、函館市教委は統合に伴い、正面玄関の外壁だけを残して新築整備する案を示している。函館市の景観形成指定建築物に指定され、卒業生や地域住民にもなじみ深い歴史的建築物だけに、同校職員らが「何か形に残し、校舎への思いを深める機会を」と、今回の事業を企画した。

 児童らは2学期から撮影活動を開始。学年ごとに1、2時間の授業や休み時間を使い、図書館や教室など学校の好きな風景を写真に収めている。

 4日は1年生25人が取り組んだ。ランチルームを選んだ稲垣一歩君(7)は「ロシアの人形があったり、友達と給食を食べたりして好きな場所だから」と説明した。現校舎最後の卒業生となる児童会長の6年、橋本花那さん(12)は通学路から見上げた校舎の外観を切り取った。「6年間通い続けて、なじみ深い風景。写真は皆の思い出になる」と話す。

 教職員も撮影しており、最終的には約200枚を集める予定。児童らが写生した学校の絵画と一緒に校内に並べ、参観日などで地域住民や保護者にも見てもらう計画だ。

 佐野校長は「校舎を大切に思う気持ちを育み、子どもたちの思い出の1ページに刻んでほしい」と話していた。(新目七恵)


◎検察、弁護側双方が控訴…せたな学校職員殺害
 せたな町瀬棚区島歌の町立島歌小学校内で1月31日、同校の校務補田村亜衣子さん(当時24)が殺害された事件で、殺人罪や殺人予備罪などに問われた同町瀬棚区、無職福士昌被告(22)に対する函館地裁判決を不服として、函館地検と弁護側双方が4日までに札幌高裁に控訴した。

 同地裁は8月21日の判決公判で、「自己保身のため他人の生命を奪うこともいとわない動機に酌量の余地は全くない」として、同被告に懲役26年(求刑・無期懲役)を言い渡した。

 函館地検は遺族の処罰感情や判決理由などを総合的に判断し、一審判決は量刑不当として2日に控訴。弁護側も同様に控訴期限の4日午後、同地裁に控訴申立書を提出した。


◎支庁再編 反対堅持の方針確認…桧山町村会、議長会
 【上ノ国】道の支庁再編をめぐり、桧山支庁管内町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)と町村議会議長会(同・若狭大四郎上ノ国町議会議長)は4日、上ノ国町で合同の臨時総会を開き、「地域を疲弊させるような施策には今後も反対姿勢を堅持する」との方針を確認した。管内の議長らに桧山支庁幹部が公共事業の削減を示唆しながら、反対姿勢の軟化を求めた問題については「反対意見はつぶすという姿勢は問題」として、7町が結束して不当な働き掛けに対抗する方針で一致した。

 会議は支庁再編をめぐる意思統一を図る目的で、議長会の要請で開催。管内7町の町長、議長が全員出席した。

 支庁幹部が議長らに「反対を続ければ道議会与党の反発を招く。道路整備など公共事業の予算が削られる」などとして、反対姿勢を転換するよう求めた問題について、寺島会長は「道庁の最高幹部の指示でやむなく動いたものと思われる。地域のパートナーである支庁と町村を離反させる行為は許されない」と非難。「道民の目線に立った道政の原点に戻り、信頼回復に取り組むべき」と述べた。

 景気低迷や過疎化で疲弊が進む管内の地域振興については「支庁再編の有無にかかわらず緊急の課題」として、道に対応策を求めていく。道の総合計画に基き14支庁ごとに策定する政策展開方針など、地域振興策の検討には積極的に要望を行う方針だ。

 また、福田康夫首相の辞職に伴い、12日召集予定だった臨時国会が先送りされ、道が支庁再編の前提とする公職選挙法改正が困難となり、来年度の支庁再編が暗礁に乗り上げる事態も予想されるため、町村会と議長会は、公選法改正に反対姿勢を示す民主党の動向、道町村会(札幌)による支庁再編の代替案検討などの状況も見据えて、緊密な情報交換を図った上で、具体的な対応策を検討していくことにした。(松浦 純)


◎函館市議会 定例会8日から24日間
 函館市議会の議会運営委員会(能川邦夫委員長)が4日開かれ、第3回定例市議会の日程を8日から10月1日までの24日間とすることを決めた。一般質問は11、12、16、17、18日の5日間で、22人が予定している。

 議案は本年度一般会計補正予算や市営谷地頭温泉使用条例の一部改正など34件で、各常任委員会に付託し、19日に審議する。昨年度の各会計決算審査を定例会会期中に行うことを決めており、16件の決算を24、25、26日に審査する。決算特別委員会は11人で組織し、民主・市民ネットと新生クラブが各3人、市民クラブと公明党が各2人、共産党が1人。

 議運ではこのほか、個別の許認可や人事など、市の専権事項に関する陳情の取り扱いについて協議。許認可事項に関する陳情を議会が審査し、何らかの判断を示すことは市の執行権の介入になるため、議長判断で各常任委員会に付託しないようにしてはどうか、と能川委員長が提案。各会派からは「議運で一定のルール作りをすべき」「グレーゾーンの陳情の扱いが不透明」などの意見があり、各会派が持ち帰って協議することとした。(高柳 謙)